………ここは何処だ。
見渡す限りの草原が目の前に広がっている。風が心地よく身体を凪いでいた。どうやら私は草原の中で寝そべっていたみたいだ。
「いっ!?」
身体に電撃を食らったかのように痛みが奔る。節々が悲鳴を挙げているのに気付かなかったようだ。
「………」
状態を確認しよう。腕は外傷無し。肩は古傷有り。胴体は左脇腹に損傷。足は怠さ有り。そして心臓には、私が覚者となった証の傷跡。
「……うん」
この程度であれば大丈夫だろう。脇腹には懐に回復薬が残っていた筈、それを使えば一発だ。
「………無い?」
懐にあった袋が無い。しかも武器や防具、ランタンが消失していた。幸い王様からくすねた指輪は健在している。
よくよく見れば服装も漁師をしていた時の布の服になっている。
「………」
まあ平気か。魔法は両手が健在であれば使えるのは検証済みだ。威力・持続力は減少するが。
しかし此処は何処だ?私の知る限りこのような平原は無いはずだが…。必ず何かしら岩が積み上がっていたり海が見えたりした筈だ。
そしてだ。私の最後の記憶は黒いドラゴンを仕留め自分の分身と戦ったのが新しい記憶だ。そこからの記憶が全く無い。
あれは新鮮だった。私と分身が火だるま状態になりほぼほぼ密着しながら斬りあった。あの紅いドラゴンですら『いい加減離れんか!』と言ってきたぐらいだからな。
それはさておき
現在私は素寒貧。これでは飯も食えん。これはマズイ。果てしなくマズイ。このままではファイアボールひとつ唱えるだけで息切れ確実だ。野草や茸で腹を満たすのも1つの手だが、見知らぬ場所でそれを行うのは自殺行為。一度やってみたら従者に腹パンで吐かされた事がある。尚その
「………」
覚者としての勘が太陽に向かって走れと言っていた。そちらに向かえば良いことがあると。その良いことが私にとって良いことなのか、それとも相対者にとって良いことなのかはわからないが取り敢えず全力で走った。
まあ肝心の村に着くまでに十回程休憩挟んだ。
◇◆◇◆◇◆◇
どうにかなった。
やはり村の人達には訝しむ様な目で見られはしたが、服装や傷だらけの姿を見ると逆に心配するような目で見られた。
特に親切にしてくれたのは賢そうな女性だった。彼女が「この人は無害かと。それでも不安であるならば私のところで預かります」と村民に訴えたのが切っ掛けだろう。
しかし彼女の弟からは不満気な顔で今も見られているが、それはおいおい。
流石に甘えるだけではいかない為、杖は無いか?と訪ねたが「無い」と言われたので木の枝で代用する。
軽い肉体労働と得意の魔法でサポートを始めた。とは言っても火起こし程度だ。私の回復魔法は全快ではなく致命傷を治す程度でそこまでの効果は無い。だが、村民達はその回数に驚いていた。十回以上使用しても火魔法や回復魔法、雷魔法、氷魔法を放つその姿に。そんなに変なのか?と首を傾げると村民も首を傾げていた。
ただ子供達はキャッキャと群がるようになった。「他には他には!?」「もっとみたーい!」「見せて見せて!」とせがむようになってしまった。このままでは私のスタミナが持たん。
__________すまないが次で最後だ。
告げると「えーー?」と皆して不満気な声を出した。
____すまん許せ。せめての代わりに私の使える魔法の中で一番威力の強い魔法を見せよう。
その言葉に先程の不満は消え、「ヤッター!」と言う言葉が響いた。
但し近くにいたら確実に巻き添えを食らう魔法なので遠く離れるようにと告げる。
村の外に出、子ども達が遠くにいることを確認し詠唱を始める。
どうやらこの場所の魔法は私達とは違うみたいだ。何でも神から啓示を受けることで魔法という奇跡を授かることが出来るようだ。
私達が知る魔法は神様とやらの啓示ではなく自分達の経験を魔法という形に固めた不思議な力と認識している。そのため詠唱なんかは要らず頭の中で形にする事を重要視する。モノによっては数秒で済む魔法と数十秒掛かる魔法とで差がある。
今回使うのはその数十秒掛かる魔法だ。その威力故に無闇矢鱈と使うことを禁じられた程だ。……巻き添えが半端ないからな!
自分の周りに4つ火の玉が出現する。次第に身体が宙に浮くと同時に追加で4つ出現する。……遠くで「浮いた!?」と驚く声は気にしない。
魔法を放つ際、子供達とは別の気配を感じる。真正面の木々の中に人や動物達とは違う気配を察した。私の知る限り一番近いのは…ゴブリンか?にしても数が多い。恐らく20はいるだろう。この村に襲わせる訳にもいかない為、標的は彼奴等としよう。
さあ!いけ!彼奴等をぶちのめせ!
そんな気持ちで魔法を放つ。宙に浮いていた火の玉は瞬時に消え失せた。
遠くの子ども達が「あれ?」と言う言葉が聞こえるがそんなのは気にしない。逆に近づくのを止めさせようとする。
その時だ。空から火の塊が降り注いだのは。
一発一発が地面に巨大な穴を形成するほどの威力の火の塊が上空から降り注いでくる。
子供達には頭を伏せる様にと伝えてその場から動かさないように指示した。そうでもしないと流れ弾が当たるかもしれない。
____こう言っちゃあ何だが私にも落ちる場所は大体しかわからん。……その今更言うの!?という顔はやめい。
だが狙いは良かった。着弾地点近くにあったゴブリンの気配は無くなっていた。どうやら一層できたようだ。
____こんなもんだ。
その時の私の顔はドヤッとしていただろう。しかし子供達は大泣き。想定していた反応とは違うため狼狽えてしまった。
「どうした!?何があった!?」
先程の着弾時の音に気付いたのか。子供達の親が心配する声を挙げる。ギャン泣きする子供達をあやしながら理由を聞こうとする親だが、反応は泣くだけでわからずじまい。
その時、肩にポンと手を置かれる感触が生まれる。振り向くとお世話になってる女性が笑顔で立っていた。
「正座」
____ん?
「正座」
____いや…あの?
「正座」
____…はい
その時の女性の顔は、私の人生の中で過去1番怖かったと言っておこう。
この覚者は何でもありです。あと主人公は……どうしよ