燃え残った全てに火を付けたくて!   作:伊勢うこ

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 (リハビリ投稿なので実質)初投稿です。
 コーラルキメて書きました。


燃え残った全てに火を付けたくて!

 

「この子が新しい同胞、ですか」

 

「しかし、この失血……。これは、間に合う……でしょうか?」

 

「御託はいいわ。治療を始めなさい」

 

「621番」

 

「貴女に、意味を与えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

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「621番、仕事の時間よ」

 

 

────作戦内容伝達開始

 

 

 某国某所 とある館。

 息が白く染る季節。

 夜の帷が降り、月が雲に隠れた時分。

 二人の人物は人知れず顔を合わせ何事かを打ち合わせていた。

 

 一人は金の長髪に深い蒼の瞳。

 怜悧さを感じさせる眦をもつ長耳の麗人は、その見た目と違わぬ声音で淡々と言葉を紡ぐ。

 

「目標はミドガル王国ガワキタ地方にある教団支部。規模はそう大きくないけれど、このまま放置するわけにはいかない」

 

 もう一人は全身を黒衣で包まれた人物。

 目深にフードを被り、その表情は伺えない。

 口を動かす彼女の言葉を逃さぬべく耳を傾けながら、彼女が持つ資料と同じものに目を通し内容を記憶していた。

 

「貴女の仕事は当該拠点の破壊と、拠点内にいる教団メンバーの殲滅。ただ、奴等に関する情報資料がある場合は可能な範囲で回収すること」

 

 敵対組織に対する武力制裁。

 この手の仕事は今の組織に加入する前から散々やってきたことだと、もう一人の少女は受け入れた。

 今更戸惑うことなどない。

 それは説明をする目の前の麗人も既に承知しているためか、やり方についても特に言うつもりはないらしい。

 

「単独での強襲任務になるけれど……それは今更ね」

 

────作戦内容伝達完了。

 

「作戦内容は以上よ。期待しているわ、621番」

 

 任務開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 気がついたら野良犬野郎になっていた件について。

 

 いや失礼、言葉を間違えた。

 女になっていたので、野郎ではなく女郎だった。

 ……まぁ、そんなことはどうでもいいか。

 

 目が覚めると知らない場所で知らない男女──後に判明した私の両親──に顔を覗かれていた。

 口を動かして何か喋っているが、意味はまるで分からない。

 慣れ親しんだ日本語でないことだけは確かだった。

 

 一体何がどうなっているのか。

 覚えている範囲で思い出せる最後の記憶を引っ張り出そうとしてみる。

 

 記憶に残っている最後の光景は、ゲーム画面。

 アーマードコア6の三周目をどうにかクリアした……ところまでは覚えているのだが、何故かそれ以降はとんと思い出せない。

 

 

 そんなこんなで二度目の生を受け。

 俺改め私はなんとびっくりワンコガールになっていた。

 死んで畜生道に落ちたのかと思ったが、完全な獣というより獣に近い人間といった感じだ。

 

 毛の色は灰、カッコよく言えば鋼色。

 獣人の特徴である大きな耳は垂れており、瞳の色は赤。

 初期機体みたいなカラーだなと思いました(小並感)。

 

 

 前世から変わった性別や種族、生活に戸惑いつつ、早くも10年。

 え、具体的に何があったか? 

 長くなるので割愛します。大して重要ではないので。フヨウラ! 

 

 そうして私が十歳の時、部族間戦争があり。

 私が住んでいた村は他所の部族との戦いに負け、両親も死亡。

 そのタイミングで村に留まる理由が無くなり、勝った部族に捕まる前に村から逃亡。

 敵前逃亡は本来なら部族の掟的に再教育案件なのだが、そのままだと吉兆が見えなかったからね。仕方ないね。

 

 

 

 故郷を離れた私は、外貨を稼ぐ為に仕事を始めることにした。

 とはいえ当時まだ子供だった私が出来る仕事など限られている。

 オマケにこっちの世界の読み書きなどザルもいいとこ。

 普通に就職しようとしても無理なのは分かりきっていた。

 

 

 なので独立傭兵になった。

 

 

 生まれつきなのか、獣族の中でも腕っぷしに恵まれた私にはそれくらいしかなかったのだ。

 どこかの雇われになろうにも子供がそんなこと言ったところで一笑されて終いだからね。

 まぁ本名をそのまま名乗るのも気が引けたので偽名、というか傭兵としての名を名乗ることにした。

 

 勿論レイヴン一択だ!! 

 借り物の翼で羽ばたくよ何処までも!! 

 

 そんな感じで活動を始め。

 子供であることがバレると舐められる可能性を考慮して顔を隠し、報酬さえあれば何でもやるような活動をすること数年。

 思い返せば碌なことがなかった。

 

 なにせ独立傭兵だから何から何まで自分でやらなければならない。

 パートナーもいないから実行係は勿論、仕事の受注、裏どり、交渉なんかも含め諸々のことを全部自分でやった。

 まぁその過程で文字なんかも分かるようになったのは良かったか。

 

 だが独立傭兵の扱いなんてそう良いものではない。

 一言で言うなら雑だ。

 ドンパチやってる戦地に先行して突っ込まされたり、明らかに厄ネタな案件に関わることになったり、酷いと仕事そのものが偽りで騙し討ちされそうになったことも。

 独立傭兵の扱いなんて、どこの世界でもそんなものなのかも。

 

 そうして孤軍奮闘すること数年。

 近隣にだが徐々に名が広まった頃に、私はある病を患った。

 

 

 悪魔憑き。

 

 

 徐々に身体が腐ったように黒く変色していくその奇病は、ゆっくりとではあったが着実に私を追い詰めていった。

 ただでさえ仕事で怨みを買うこともある中での発症は厄介極まる。

 オマケに全く覚えのない謎の集団に身柄を狙われるようになったりと散々だった。

 

 身体の異常を治す術を探すも見つからぬまま仕事をこなし、追手を粉砕していていく日々。

 焦らざるをえない中で、時間だけがじわりじわりと過ぎていく。

 

 限界は予想よりも早く来た。

 

 全身を蝕む黒。

 そこに刻まれた大小複数の切創から赤が滲む。

 身体が痛い。意識も朦朧としてきた。

 こうして考えていられる時間も、もう僅かだろう。

 

 樹木に背を預け、夜空を見上げながら半生を振り返る。

 枯れ木の枝に濡羽の鳥が止まる。

 

 

「レイヴン、か……」

 

 

 己の意思で戦う、自由意志の象徴。

 自称とはいえその名を名乗ってきた私は、はたしてそれに見合うだけの存在だっただろうが。

 

 成り行きで傭兵になり、ノリで名乗り始めた称号。

 こちらの世界では誰も知らないだろうその事実は、しかし私にとってはいつからか心の支えのようになっていた。

 私を俺でいさせてくれた、唯一の前世の名残。

 

 結局、何故転生したのかは未だに分からない。

 分からないままに二度目の生を受け、戦い続けてきた。

 

 何故? 

 生きるため……だけだったのだろうか。

 死にたくなかったから、だけかもしれない。

 

 それでも。

 

 それでも私は。

 最期まで自分の意思で戦った。

 己の自由意志で戦い抜いた。

 

 枝に止まっていた鴉が羽ばたき、何処かへと去っていく。

 

 

 未練は無い。

 私のこの奇妙な生涯は、そこで幕を下ろす────

 

 

 

「貴女が独立傭兵レイヴンね」

 

 

 

 ────筈だった。

 

 

「私はアルファ。貴女の状況は理解しているわ。そして、それを解決する手段を私は知っている」

 

「私たちの手を取っても取らなくても、貴女のソレを治す。けれど、無関係ではいられなくなる」

 

「貴女にその意志があるのなら、力を貸して。私たちは貴女を追っていた連中と戦っている」

 

 

 唐突に私の前に現れた女性、というより少女と言うべき人物。

 金砂を溶かしたような髪。深い海を思わせる瞳。

 幼さを残した顔だが、女性として既に完成された美しさを見せる肢体。

 黒衣を纏い月光を背に立つ彼女は、私に時間が残されていないのを理解してか簡潔に要件を告げた。

 

 混濁しかけた意識の中、私は。

 彼女の提案を受けかろうじて動く手を伸ばし。

 

 

「ようこそ、シャドウガーデンへ」

 

 

 その日から、私は飼い犬になった。

 

 

 

 

 

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「て、敵襲!」

「なんだと!? 数は──」

 

 鮮血が宙を舞う。

 

「い、いたぞ! 報告にあったヤツだ!!」

「何をやっている! たかが侵入者一人に」

 

 臓物が地に溢れる。

 

「ダメだ、抑えきれん!?」

「お、オイ貴様! 此処が何処だか判って……」

 

 それは、戦いでもなければ闘いでもなく。

 争いでもなければ諍いでもなく。

 

 

「う、うわあぁああアアあぁあ!?」

 

 

 蹂躙。

 放たれた猟犬による、一方的な狩りであった。

 

 

 その日、その一晩で。

 長年に渡り巧妙に隠れガワキタ地方を裏から操っていた集団の拠点は壊滅し。

 

 

「バ、バケモノ────」

 

 

 あまりにも唐突に、地上からその姿を消すこととなった。

 

 

「凄まじいわね……」

 

 

 作戦領域から数キロ離れた森にさえ伝わる衝撃と光。爆音と熱。

 それらを引き起こした爆心地であるディアボロス教団支部──正確には支部だったもの──は瓦礫しか残らぬ焦土と化していた。

 

「あの子がアルファ様が拾ってきた例の元独立傭兵、621番……。戦闘能力なら既にナンバーズに匹敵……いえ、或いはそれ以上」

 

 仲間内から「堅実」の名で知られる銀髪の女エルフは、眼下にある光景から偏見なく対象の能力を評価する。

 幹部であるナンバーズを凌駕し最高幹部である自分たち七陰にさえ匹敵するやもしれない、隔絶した戦闘能力。

 覚醒により溢れる魔力の制御、傭兵であった期間に培った経験。

 

 この様子なら、そう遠くない内にナンバーズ入りを果たすだろう。

 

 

「何かあれば手助けを、とは言われていたけれど……この様子ならその必要は無さそうね」

 

 

 突入から数分で灰燼に帰した敵拠点。

 今では熱を孕む煙を吐くだけとなったその抜け殻に立つ黒い影。

 微かな月明かりに照らされ濡れるように光る武装を解除し、もはや要はないとばかりに作戦領域を離脱する。

 

 残ったのは跡形もなくなった更地のみ。

 この様子なら後片付けも必要ないだろう。

 それほど徹底した破壊ぶりだった。

 

 アレが優れた猟犬であることはもはや疑いようもない。

 飼い主の命令通りに仕事を熟す。

 あの仕事のこなしようならば他の仕事を任されても手抜かりはないだろう。

 基本的に単純な壊す仕事しか出来ないどこかの駄犬と違い。

 

 自分の上司は思いの外いい拾い物をしたらしいと、銀髪の女エルフ・ベータは素直にそう感じていた。

 

 彼女自身は621番と交流したことは殆どないが、その噂は以前から耳にしていた。

 

 独立傭兵レイヴン。

 その正体は不明だが、活動開始から僅か数年で名を馳せるようになった腕利きの傭兵。

 曰く、妥当な報酬さえあればどんな危険な仕事も引き受ける。

 曰く、どんな激戦地にも現れては単身で敵を蹂躙する。

 

 その元傭兵一人の手で、魔剣士数十名はいた拠点が落ちた。

 拠点の壊滅により、敵は打撃を被ることとなる。

 しかし今回潰したのはあくまで幾つもある支部の一つに過ぎない。

 世界中に根を広げる奴等からしてみればたかが支部の一つだが、いずれはその全てが同じ末路を辿ることになる。

 

 奴等を──ディアボロス教団を滅ぼすことこそが、彼女達シャドウガーデンの目的なのだから。

 

 

 

 

 

ディアボロス細胞という物質がある。

 

取り込み適合した者に絶大な力と生命力を与えるその細胞は、歴史の裏である組織により研究され彼等の力として利用されていた。

 

魔人ディアボロス。

かつて世界を混沌に陥れ、やがては英雄オリヴィエの手により鎮められた伝説の存在。

英雄により左腕を落とされ、その存在は御伽話となって痕跡は消失したかに思われた。

 

だが。

魔人の細胞は皮肉にも、英雄自身により密かに受け継がれていた。

 

 

やがて人々は気づくことになる。

魔人とその細胞が引き起こす戦いと。

その火種に────

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下雑設定やら。

 

 621番

 TS転生した野良犬で駄犬な忠犬。悪魔憑きを治してもらって強化獣人になった。

 

 アルファ

 ごす枠。621番の転生人生に意味を与える飼い主。

 

 魔人ディアボロス

 一度生まれたものは、そう簡単には死なない。

 

 ディアボロス細胞

 関わると死人が増える。

 

 アウロラ

 ワンチャンエア枠。

 

 多分この世界では敵が「そんな、私は……次期ラウンズだぞ!?」とか言って死ぬ。

 いや、原作でもそんな感じなヤツいたような……。

 




 ちなみに作者はAC6から始めた新人独立傭兵です。
 過去作は現行機器じゃ出来ないってマジすか?

 (続きは今のところ予定)ないです。
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