存在しないものを考えすぎて実際はいないキャラデザを考え始めたし、挿絵の執筆に取り掛かってしもうたし、少しずつ文字数が増えていく。私は何をやっているんだ......?
《謝罪》
第1話(下)にて、ディアベルスターの効果が致命的にミスっている......ように描いた理由がこの話で書いてありますが、設定の後出しなので帳尻合わせと言われてもしょうがない感じになりました。第1話の効果は間違った効果処理してます。申し訳ない。
「......朝か」
目を覚ますと、カーテンの向こうから朝日が差し込んでいる。
まだ動きたくないと駄々をこねる様に痛みを伝える体に鞭打って、そっと体を起こす。
「は...〜あぁ、何か変な夢見た気がするな......変なフードの奴にデュエルさせられたり、変なカード拾ったり、よく分からねぇ夢だっ、た......」
『起きたな。随分と長い睡眠時間だったな』
欠伸しつつ伸びをして、朝日が照らす窓の方へと再び顔を向ける。
そこには、フヨフヨと窓の外に浮かぶ黒い外套の女がこちらを見ていた。
「......」
目を擦る。見る。まだいる。
『......』
「......ははは、疲れてんのかな俺。さて、もう一眠りしとくか」
『おい、見なかったことにするな。それと夢じゃないぞ』
「......」
もう一度目を擦る。二度寝しとうとする。止められる。もう1回見る。......やっぱりいる。
『......おい?』
「わあああああああああなんだお前ぇぇええええ!?!?」
ようやく現実を認識し、驚きながらベッドから飛び上がり床へと落ちる。
なんだ!?夢、じゃない!?え、なに、じゃあ昨日の夜拾ったカード......ああ、ある!?机の上に置いてある!?
「ちょ、まて!1回、1回整理させろ!」
『整理も何も、特におかしい事なんて無いだろう?』
「おいコラ今最も整理しなきゃいけない奴が言うことじゃねぇだろそれ!」
『落ち着いたか?』
「......おう」
ドタバタとした起床になったけど、とりあえず着替えるということで目の前の謎の女には1度部屋から出てもらった。......窓の外で浮いてたような奴だし、普通に扉も開けるんじゃなくすり抜けて行ったのには驚いたけど。
「さて、とりあえず俺の方から質問させてもらうぞ?」
『ああ、それでいい。なんなら私の方は最後でいい』
着替え終えたら、謎の女を呼んで部屋に入れる。愛用のちゃぶ台を挟んで向かい合って座るが、いくらすり抜けられると言っても気にはなるのか、ちゃぶ台に当たらないようドッカリと胡座で座っている。......男の俺が言うのも何だが、色気ねぇなこいつ。
「んじゃあ最初の質問。俺がこのカードを拾って変な男とデュエルしたあの夜は、夢じゃないってことだな?」
『ああ。というか、まだ信じてなかったのか?』
「当たり前だ、あんな経験初めてだったんだぞ!?」
リアルにダメージが来るソリッド・ヴィジョンなんて、プロ専用の『アクション・デュエル』用装置でもないと不可能なはずだ。しかし、あの夜のデュエルでは確かに痛みを、衝撃を感じた。
「次だ。お前は、一体何なんだ?何であんな道端に落ちてたんだ?」
『......』
俺の質問に、謎の女はすぐには答えない。あのデュエル以上に分からないのが、こいつの存在だ。拾ってしまったあのカードに描かれているモンスターと同じ姿をしているが......まさか、本人というわけでは。
『私は......』
「......」
『......』
「......」
『......分からない』
「は!?」
予想外すぎる答えに思わずズッコケる。一方あちらはというと、頭をガシガシと掻きながら困ったような表情を浮かべている。
『私自身、なんであんな所に居たのかてんで記憶が無い。ある目的で色々探し物をしていた所だったんだが。野宿していて眠くなって、目を瞑ってまた開けた時にはこの世界だ。全く訳が分からない。......まぁ、私の名前を呼ぶなら、ディアベルスターと呼べば良い』
そうぶっきらぼうに言いながら、謎の女―――ディアベルスターは一つ欠伸をしていた。
「じゃあその......ディアベルスターの目的って何だ?」
『私は......「罪宝」っていうお宝を探して回る宝探しを生業としていた。異名も貰っていた......確か、「罪宝狩りの悪魔」だったか』
「なにそれ超かっこいい......待て、罪宝?」
「ああ、強力な力と、謎の意志を持ったお宝だ」
そう言って、ディアベルスターは自身の肩についてた獣のような爪のファーと着ていた上着をちゃぶ台の上へと置いた。
「ただの服、じゃないのか?」
「いや、これは服じゃない。この2つは私の持つ罪宝だ」
「ヨロシクー」
「ドモー」
「うわびっくりした!?」
ちゃぶ台に置かれた罪宝とやらが勝手に動き出し、こちらへ向けてヒラヒラと手を振る方に揺れだした。
その光景はマジで見た事がない光景であり、思わず後退って壁際へ避難してしまう。何だこれ、玩具とかの機械的な動きじゃない。そういった生物であるかのようなその動きは、とても自然でなんというか......こう『生きている』ものなんだと思い知らされる動きだ。
『こっちが『シルウィア』、可愛いものが好きだ。こっちは『ルシエラ』。なんと言うか過保護なやつだ』
「エヘヘー」
「カホゴジャナイゾー」
シルウィア、と呼ばれた爪のついたファーは少し揺れが大きくなる。......嬉しそう、なのか?別に表情とかがある訳でも無いからすごく判断に困る。
一方のルシエラ、こっちはなんか......怒ってね?過保護って言われて怒ってね?上着の裾が形を変えて鉤爪のついた手になってバシバシとディアベルスターを叩いている。
『いたっ、痛い、痛いから......痛いと言っているだろう、やめ、ちょ、痛っ』
「コンニャロー」
「えーと、話進めたいんだが?」
「テイコーセヨー」
『ふぅ......で、どこまで話進んだんだったか?』
その辺にあった荷造り用の紐で雁字搦めにされた哀れなルシエラがビッタンビッタンと水揚げ後の魚みたいな動きをしている中、キメ顔で話を続けるディアベルスター......だいぶ抵抗されたからすっごい引っかき傷だらけの顔だが。
「ディアベルスターが罪宝って物を探す奴だった、って所までだ」
『なんだ......まだそんな序盤か。全く、状況整理は手短に早くするものだ』
「こっちのセリフなんだよなぁ」
一つ咳払いをして誤魔化し、ディアベルスターが雰囲気を真剣なものに変える。
『さて、それじゃあ次は私の番だ。と言っても、何となくだけど状況は理解し始めてる』
「えぇ、俺全然なんも分かんねぇんだけど?」
『まぁ黙って聞け。私としてはなぜこの世界に来てしまったのか知りたい。更に言うなら、元の世界に戻る方法を探りたい』
そう言ってディアベルスターはこちらへと指を三本立てる。......別に、別に良いんだけど上着を脱いでるとこいつ大分露出高くないか?っと、今は大事な話だ。
『そこで私からお前に3つの提案がある』
「3つ?」
『そうだ。まず一つ、私をこのままお前の所で住まわせて欲しい』
そう言って指を一つ折る。まぁ予想は出来ていた願いだ。ディアベルスターは別の世界にいたっぽい発言をしていたし、住む場所も無いだろ......いやこいつ今カードだよな?カードの住む場所?ストレージとかカードケース用意しとけばいいのか?
『私は今実体を持たない存在だ。カード一枚分の面積さえどうにかしてくれればどうとでもできる、何なら今置いてある机の上でも良い』
「まぁ別にお前がそれで良いなら良いんだけど......お前って飯とかってどうするんだ?」
『?べつに、食べなくても問題は無いな。何せ実体が無いから食べ物を口にするのも......出来なくは無いけど面倒だ』
「あ、出来るんだな」
『住むことについてはまぁこのくらいにして、二つ目だ』
話を戻し、ディアベルスターが次の指を折る。
『私が元の世界に戻るための手段を探す手伝いをして欲しい。今の私は1枚のカード、それに宿る存在でしか無い。身動きすら一人では出来ない状況のこのままだと、私一人では調査も出来んからな』
「それは、そうだな?」
うん、これもわかる。さっきもそうだがこいつ今身体を持たない―――昨夜のフードの男は精霊って言ってたか?―――精霊だからな。情報収集にも手伝いは必須だろう。
「うん、それもわかる。それで?3つ目は?」
『3つ目は、だな』
最後の指を折り、少しだけ煮え切らない様子のディアベルスターに首をかしげていると、意を決してこちらを見てくる。
『私を......私のカードをデュエルに使って欲しい』
「え?」
戸惑う俺へと頷くディアベルスター。これはちょっと理由が分からないな。こいつが元の世界に戻ることと、デュエルに使うことの関連性がまるで見えない。
「どういうことだ?他の願いは分かるけど、最後のは一体何だってそんな事を?」
『あー......それは、だな。見た方が早いかもしれん、私のカードをちょっと見てくれ』
何だ?急にカードを見ろって?不思議に思いつつもちゃぶ台の上をススッとこちらへ差し出されたカードを受け取り確認する。ふむふむ、やっぱり昨日使った時も思ったけど強力なカードと言って差し支えないな......あれ?
「効果が違う?それに、ステータスこんなに低かったっけ?」
思わずディアベルスターの方を見るが、気まずそうな表情で目を合わせないようにしている。
カード効果の一部と、ステータスが昨夜使った時から変化してしまっている。レベル・種族・属性は変化していない、問題は効果欄。
変わっているのは一番最後の、復活効果だ。なんか余計なテキストが......「相手ターンに」って効果が引っ付いてる。
あと一瞬気づかなかったけど、攻撃力/守備力も若干の下方修正食らってるんじゃないか?2500/2000だったはずのステータスが、2400/1000と変化してしまっている。
「どういうことだこれ!?」
『その、だな。昨日、私を使う場面が来た時、お前に発破をかけたよな?』
「あ、ああ」
『ちょっとピンチだからということで、私の魔術でカードの書き換えを行ってだな......その反動で弱体化した』
「はぁ!?」
両手の人差し指を付き合わせてチョイチョイと体の前で動かすディアベルスターに思わず食ってかかる。いや何を無表情であざとい事してるんだこの魔女!?
魔術ってのはまぁ魔法使い族だしわかる。カードの書き換えについても、驚きだけどそもそも超上の存在である精霊だ。納得せざるを得ないだろう。
でも弱体化は何でだ!?
『多分だが、私みたいなのはこの世界ではイレギュラーな存在だろう。それで、元の世界では問題なくやれたアレコレ、私で言うところの魔術だな。コレが世界的には許容範囲外のものなんだろう』
「それが、なんで弱体化に繋がるんだよ?」
『私が行ったのは効果の書き換えだ。ステータスは変えていない。だが、昨夜のデュエルの後カードに戻ると同時に一気に力が抜ける感覚に襲われて、今朝確認したらこの弱体化だ』
『まぁ、無茶した分を別の部分で帳尻を合わせられたって所だろうな』
「えぇー......」
流石は別世界の存在、カードの書き換えとかぶっ飛んでるな。でもそれの影響で弱体化してるのはなんと言うか......。
『それで本題に戻ると、だ。このステータスの低下が、どうやら私の魔力の状況に直結しているみたいなんだ』
「ほー......つまり?」
『今の私は、精霊としてはかなり弱った状態って事だ』
成程、無茶した分のフィードバックが帰ってきている状態で今のディアベルスターは魔力が減っている状態、と。
「じゃあデュエルに使ってくれって言うのはもしかして、デュエルで魔力が回復するってことか?」
『ご明察。まぁそういうことだ、私の持つ罪宝はともかく、私自身の魔力が足りないのは本気で洒落にならない。早急に回復したいが、静養できる様な場所も持ってない』
「あー、それでデュエルで魔力の回復を、休むために俺ん家で住ませろってことか!」
ディアベルスターが我が意を得たり、というように頷く。ふむ、確かに現状ディアベルスターは一人で生きていくのが大変な状況だ、元の世界に戻るためにも俺の協力は必要って訳か。
俺としては......メリットしかないな?ステータスのダウンはあるけど、それでも俺のデッキで見れば滅茶苦茶有用なカードであるディアベルスターとその関連カードである罪宝たち。彼女らを使えるというのなら俺のデッキは大幅に強化されるだろう。
「......よし、分かった!お前が良ければ、俺の家で匿うよ!」
『!そうか、ありがたい』
「ああ、俺としてもお前っていう強力な仲間が増えるのは嬉しいしな」
『そうか、理由は何であれ私も陰気なフードの男よりはお前の方が性に合っていたから良かったよ。......流石にこれから居候するのにお前呼びは違うか。名前は?』
「俺は最希遊笑。遊笑でいいぜ。これからよろしくな!」
『遊笑......私も改めて名乗るか。ディアベルスターだ、これからよろしく頼む』
「おう!よろしくな!」
「ヨカッタネー」
「コレホドイテー」
少しだけ表情を綻ばせ、安堵のため息と共に頭を下げるディアベルスター。まぁ俺にとってもかなり利のある話だしな。互いに自己紹介をしつつ握手を交わす。......新発見、どうやらカードの持ち主である俺はディアベルスターに触れるようだ。ちょっと肌色は悪めで女的な細い手は握ると折れてしまいそうに見えるが、握手すると力はかなり強かった。流石は罪宝狩りの悪魔。
主人の住まいが決まったことで、後ろでまだビッタンビッタンしてるルシエラとちゃぶ台の上でヒラヒラ踊るように震えるシルウィアも嬉しそうだ。
「ところで、なんか昨日のフードの男は精霊がどうとか、精霊のカードが俺を闇のデュエルに誘うとか言ってたけど、何か知ってるか?」
話も終わり、ふと気になった事もありディアベルスターへと尋ねる。昨日の変な男は、そういえば精霊について詳しそうだった。
質問を受けたディアベルスターは、怪訝な表情を浮かべ少し考えるが、やがて首を横に振った。
『いや、知らないな。そもそも私はお前が拾ったから所持されてただけで、別に私からお前を選んだわけじゃない』
「だよなぁ......あ、そういえば。もう1つ、デュエルで勝たないと精霊のカードは手放せないとか言ってなかったっけ」
『それも私は知らないぞ』
「......お前なんにも知らねぇな?」
『......無知の存在みたいな言い方は心外なんだが』
(無知ってか、ムチムチではありそうだけど)
胡座をかいていることでより太く見える太ももを一瞬だけ見て、アホなことを考えていると不意に頭をシルウィアにはたかれた。
「あいたー!?」
「ナニミテンノー」
『?なんだ急に』
「いてて、何でもない」
くそ、ちょっと見ちゃっただけなのに......って待て、今何時だ?
話が終わって気を抜いていたが、先程の攻撃で大事なことを―――今が朝であり起床したばかりだということを思い出す。
慌ててベッドの枕元に置かれたスマホを手に取り時刻を見れば、デジタル時計には無情にも大幅に遅れていることを示す8:00の表示が。
「ち、遅刻だあああああああああああああああぁぁぁ!!!!」
「酷い目にあった」
机の上で、歪んだネクタイをいそいそと戻しつつ項垂れる。
あの後、状況がよく分かっていない様子のディアベルスターを余所に急いで着替え、カバンとデッキケースを持って家を飛び出した。どう足掻いても遅刻確定な時間だったこともあり全力全開で走ったが、まぁ当然間に合わない。
俺が必死の思いで走っている横をフヨフヨと浮遊しながら着いてきていたディアベルスターは『大変なんだなぁこの世界の子どもも』と呑気なことを言っていた。たまに街中の物を物珍しそうに物色していたが、現在はアカデミアが珍しいのか教室内を浮遊しながら見物している。
どうやら教室内程度の範囲なら俺が持つディアベルスターのカードから離れられるようだ。
アカデミアに息も絶え絶えになりつつ到着した際、苦笑いしているメガネの長身で髪の長い先生が「始業当日の遅刻は君が初めてだニャー」と言いやんわりと窘められた。
素直に謝罪しやれやれと思いながら教室をめざしていると、風紀委員の先輩からそれはもう烈火のごとく怒られた。お陰で一限の直前だって言うのに、既に6限分授業を受けたあとのようにクタクタである。
「全く、何度も連絡したのに全く起きなかったのか?」
「もう!昨日といい今日といい、余裕を持って行動出来ないの?」
「......以後気をつけるって」
机の上でしんでいると、遊鮮と遊香が呆れた表情で声をかけてくる。スマホを見ると、2人からの着信と怒涛のスタンプ爆弾が届いていた。
......話に夢中で気づかなかったなコレ。
起きることは出来ていたんだが、と思わなくもないがディアベルスターの事を言う訳にもいかないので甘んじてバカにされることにした。くそぅ、変な男に絡まれるわ、変なカードに居候されるわ、遅刻するわと入学早々ろくな事が無い。
「遊笑、なにかあったのか?随分と疲れてる様子だが」
「家から全力ダッシュで学校に急いだんだからそりゃ疲れるだろ」
「そうならない様に早起きしないのが悪いでしょ......あ、先生来たね」
3人で他愛もない会話をしていると、ガラガラと扉を開けて担任の先生が入ってくる。俺ら以外の生徒もそれを見て自然と自分達の席へ戻っていく。
全員が席に着いた事を確認し、担任の先生は教卓へ手に持っていた荷物を置いて黒板の代わりのディスプレイを起動する。
「ようこそ、デュエルアカデミアへ。私が君達の担任を務める、下怒というものだ。よろしく」
ディスプレイに下怒という名前が表示され、担任が挨拶をする。何だか頭に残るタイプのねっとりとした発音だなぁこの人。見た目は中年男性っぽいが、声的にはかなり渋くもっと歳をとっているように聞こえる。
「さて、本日の最初の授業だが......早速で悪いが君達の実力を見る必要がある。よってこれよりデュエル演習場へと移動しデュエルを行ってもらう」
下怒先生の発言に、教室内がさざ波のようにゆっくりとざわめく。それもそうだ、小中の始業ではこんな授業は無かった。何よりデュエルモンスターズを授業で取り扱うこともなかった。
基本的な学習内容を修めるため、小中学校ではデュエルに関連するものは授業に入らないと言われている。
「静かに。......ふむ、まだアカデミアに入ったばかりだからな、デュエルが急に始まることへの戸惑いは理解しよう。だが、このアカデミアでその様な態度をとっていると一瞬で落第するぞ、諸君」
そう言う下怒先生は不気味な微笑みを浮かべて教室の出入り口に手をかける。
「時間は有限だ。君達も直ぐに用意したまえ、移動するぞ」
数分後、クラスの生徒全員がアカデミアに用意されている第2デュエル演習場―――なんと校内に8箇所もあるらしい―――へと集まる。各々の手には、自分の愛用するデッキの入ったケースを持っている。
「さて諸君。先に説明を終わらせておこう」
そう言って下怒先生が手に持ったタブレットを操作すると、ソリッド・ヴィジョンを用いた空間ディスプレイが展開される。......これすごいな、ソリッド・ヴィジョンってデュエル以外ではこう使うのか。
「まず、急な話にはなったがこのデュエル。見るのは決して勝敗では無い。諸君が現在どれだけデュエルモンスターズへの知識を持っているか、どれだけの実力を持っているのかを見る」
「あ、あの!私、デュエルの自信が無いんですけど、その......この授業は成績には反映されるでしょうか......?」
先生の説明の途中に女子が1人、手を挙げて発言する。今どき珍しいどころかそれ自分で選んだの?と聞きたくなるような瓶底メガネをかけた女子生徒は、発言したことで周囲の他の生徒からの視線を一身に受け縮こまっている。
「先生の話の途中に割り込むのは結構勇気あるなアイツ」
「いや、めっちゃ萎縮してるし思わず言っちゃったとか、どうしても気になりすぎたとかじゃない?」
「なんにせよこれはちょっと可哀想よ」
そんなこんなでメガネの女子へと集まっていた視線だったが、下怒先生がパンパンと手を叩き注目を集めて一つ咳払いをする。
「あー、美鈴くん。君の事情は分かるが、成績に関する事はあまり言うことは出来んぞ」
「は、はいぃ......。すみません」
「......まぁ、今回は始まったばかりということもある。成績には入ることは無い、あくまで今後の指導のため君達の実力を見るだけだ」
「!あ、ありがとうございます!」
「......さて、それでは時間も押している。今から空間ディスプレイの方へ組み合わせを出す、それに合わせて総員デュエルを行うこと。なお、デュエルの様子はカメラによって映像記録が取られる。不甲斐ないデュエルをするな、とは言わんが不正行為はしないように」
「「「「「はい!」」」」」
下怒先生へと生徒全員で返事をすると同時に、空間ディスプレイへと対戦相手が張り出される。
「さて、俺の相手は......げっ」
「げっ、とは随分失礼だね遊笑」
背後から声をかけてきたのは、見た事のある顔だった。
「授業でお前とデュエルすることになるとはな、遊鮮!」
「僕もびっくりだよ。まぁ、気心知れてる相手なら緊張せず相手できるから有難いけどね」
そう言ってメガネを拭いてかけ直す対戦相手......遊鮮。俺たち幼馴染の中では唯一決闘塾へと通っている奴であり、その影響か俺たちの中でも勝率が1番高い奴でもある。
「にしても、これじゃあ遊香の方は1人か。あいつは......」
「あー!貴女が私の相手!?よーっし、負けないからねぇー!ね、こっちでやろーよ!」
「......大丈夫みたいだね」
うーん、流石のコミュ力だ。遊香は遊香で相手を見つけたようであっという間に談笑する仲になっている。まぁあいつは元から快活すぎる性格してて誰かと反りが合わないなんてことが少ないし無用な心配だったか。
「僕達も始めようか」
「そうだな。今日は敗北を味合わせてやるぜ......!」
「ふふ、遊笑のデッキは大体内容わかってるし、そうそう負けないさ」
遊鮮と互いに挑発し合いながらデュエルフィールドへと向かう。アカデミア内でしか使えないロックがかかっている代わりに、アカデミア内であれば無条件でいつでも使用出来る貸し出しデュエルディスクを用意し装着する。周囲のデュエルフィールドでは既にデュエルを始めている者も多い......あ、遊香が切り札出してる。早くね?
「準備はいいかい遊笑?」
「!おう、いつでもいーぜ!」
今は自分のデュエルに集中しよう。遊鮮のデッキはよそ見しながら戦える相手じゃないからな!
『お、やーっとデュエルか。待ちくたびれたよ』
「うわびっくりした!?」
「?」
マジでびっくりした!デッキをデュエルディスクへとセットした瞬間、背後に浮かび上がるようにディアベルスターが現れた。
「な、何でもない!......おい、大丈夫なのかよ!?」
『心配するな、遊笑にしかまだ見えていない。デュエルで召喚されれば見えるようになるがな』
「なら良いけど......邪魔すんなよ?成績に響くわけじゃ無いとはいえ、遅刻したぶんの心象をどうにかしてぇからな」
『はいはい』
ディアベルスターは少しつまらなそうな表情で生返事をすると、器用にも浮遊しながら寝転がり昼寝を始めた。
「よーっし、行くぞ遊鮮!」
「ああ、来い遊笑!」
準備完了、デュエルディスクを構え、遊鮮とのデュエルに臨む。
「「デュエル!!」」
遊鮮
vs
遊笑
「......あれは、精霊、さん?」
次回、vs遊鮮
遊鮮のデッキのヒントは...名前としか言いようが無いなこれ。遊香も名前でデッキ割れるけど、多分これ遊笑だけだな名前と関係ない魔法使いデッキ使ってるの。
お暇であればぜひ、デッキ予想など...。
罪宝達は喋っているように描写してますが遊笑達には聞こえていません。