遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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はい、デュエルにたどり着きませんでした。
しゃーないんです、ちょっと間繋ぎを挟みたくなったんです......。
次回はちゃんとデュエルしますので......。


A.その答えはデュエルの中で見つけるしかない

「おい!おい!!アレ有りかよ!?」

 

「......わ、分かる訳無いでしょう私が」

 

ん?何だろうか、対戦相手のプロが怒ってる―――いや、困惑してるっぽい。

 

「林檎、林檎。何で、あんなに騒いで、るんだ?」

 

「いやそりゃぁ騒ぎたくもなるでしょう」

 

林檎からもすっごい呆れた様な言い方でツッコまれた。えぇ、特に違反とかはしてないんだけど......。よくよく周囲を見渡せば(なんで視界見えてるんだろうかこの着ぐるみ)、観客席の人々も司会の人もすんごい口をあんぐりと開けてて若干ゃ草生える。

 

何故俺が『もけもけ』の着ぐるみを着ているのか。話は10分ほど前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、問題ないでしょうか」

 

「うん」

 

「それでは、契約書類へとサインを」

 

受け取ったペンで書類へとサインをすると、傍付きのSPの人が書類を受けとって控え室から退出していく。......さて、デッキ調整を続けよう。

 

「にしても、流石に今日は変な格好じゃないんですね」

 

「?」

 

「いや、俺との代表デュエルではその......目のやり場に困るタイプの様相でしたので」

 

そう言って頬を赤らめながらそっぽを向く林檎少年。なんだなんだぁ?初心な反応見せてくれるじゃん。

 

「そもそも、仕事する、つもりじゃ無かった、から。それに、仕事、する時毎回あの格好、って訳じゃ無い」

 

「そ、そうか。いや、そりゃそうですよね」

 

「......着て欲し、かった?」

 

「べべべべべべべえっっっべ別に!?」

 

ちょっと揶揄う感じに服の裾をほんの僅かに上げてみると、もんの凄い首がねじ切れるんじゃないかってレベルに背けた。何こいつ揶揄うの面白......待てよ?

 

「!?!?!?ま、まずい!」

 

「な、何ですか?」

 

「......服が、無い!」

 

「......?服なら、今着てるじゃないですか」

 

「違う、衣装。仕事、の時は必ず、衣装、使ってる!」

 

しまったぁぁぁぁぁ〜!まさか参加どころか仕事するって考えてなかったから仕事で使う衣装置いてきちまった!マズイ、ひじょーにマズイ......!

 

「衣装、ですか?別にカード・プロフェッサーにその辺の着用義務とかはあまり無い筈ですが......」

 

「......故あって、あまり、身バレするような、事態になりたく、ない」

 

「だったら何で水着パーカーが変装なんですか。身体晒すより顔隠してくださいよ」

 

黙れぃ!真顔で正論ぶっこむんでない!格好だけなら伝聞で伝わっても俺にたどりつけないからセーフだと思ってたんだよ!ただ今回は中継してるっぽいカメラも居たしバレること必至だ!

 

俺がカード・プロフェッサーを始めるにあたり、デッキよりもまず着手したのが仕事で使う衣装の準備である。

理由は言わずもがなリョウさんだ。ちょっと前にも考えたことだが、プロデュエリストに誘ってくれたリョウさんの提案を蹴ってこんな事やっているのだ、もしこれでカード・プロフェッサー活動がバレたら......。

 

『おいゴラァ。アタシの話フッておいて随分楽しそうだなぁ!?』

 

......いかん、ちょっとチビりかけた。

 

「と、とにかく!このまま、だと出れない!何か、せめて顔、を隠せる、もの!」

 

「えぇ、いやそんな事急に言われても......」

 

デッキは後回し、とにかく手当たり次第に控え室の中をひっくり返す。最悪顔が入る大きさの紙袋でも良いから何か!

 

「無い......無い!」

 

「そりゃそうでしょう、イベント前にしっかり清掃するもんでしょうし」

 

クソォ!とても管理と掃除の行き届いている控え室には、必要最低限の物しか置かれておらず変装に使えそうな物は何も無かった。

......手詰まり、か?

 

「!確か、ここの横、倉庫だ、よね!?」

 

「ま、まさか......」

 

「借りる、だけ!」

 

慌てて先程貰ったパンフで読んだ地図を思い出し、控え室横の扉を開ける。......ビンゴ!

予想通り、隣の部屋は倉庫になっていた。

カラーコーンやマット、その他諸々の機材を含め色んな物が置かれている。とりあえずそういった器具類は無視して体に身につけられそうな物に絞って漁る事にした。

 

「ちょ、それ使って良い物じゃ無いですよ絶対!怒られるじゃ済まないですって!」

 

後ろの方で林檎少年が何か言ってるが、もうこれしか方法が無い。何か、最悪顔が隠せるもの!出来れば全身隠せるやつ!......ん?

 

「......!アレは!」

 

「!?ちょ、待、本気ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で、晴れてもけもけの着ぐるみをゲットしたのである。

 

『エー、ハイ、ハイ。エ、リョ、リョウカイシマシタ......うぉっほん!失礼しました、対戦相手の一般参加枠の名前に不備がございました!改めてご紹介しましょう!「アップルボーイ」さんと、「Ms.もけもけ」さんです!』

 

「ちょっと待てや!?本気か、マジであの着ぐるみとやれってか!?」

 

「......もう、始めましょうクライゼン。時間押してますしもう何でも良い」

 

「正気かよ!?」

 

本物のDネームで呼ばれた時はちょっとドキッとしたが、先程運営に報告しておいた偽名に差し替えられた様だ。こういう時、主催者側が雇い主だと話が早くて助かるな。後はこれでリョウさんがこの場に居なければヨシだ。

後で聞いたことだが、この時主催者のイヅモマテリアルの代表の人は俺の入場時驚きすぎて腰が危うかったらしい。腰は大事にな、良い歳だろうし。

 

さて、着ぐるみを着てのデュエルとなる訳だが......実はこの着ぐるみ、中は案外快適である。

サイズ合わせの時間など無く置いてあったものをそのまま着ているので中は俺の体格に対してとてもガバガバだ。ただ、結構隙間がある故に割と暑苦しくは感じない。空調ファンもあるみたいでさっきから結構息も楽だ。

デュエルディスクについても無問題。腕の素材が結構変形しやすいものなのでデュエルディスクのリストを無理やり林檎少年に巻き付けてもらえばこのとおり。ミチミチと着ぐるみが悲鳴を上げているが着いているので無問題だ。指が出せる小さい穴も空いてるのでドローやカード保持もできる。

 

欠点を挙げるなら、服着たままだと腕のところが上手く入れなかったので上だけ下着状態で入るしか無かった事だな。

1人で着るのは至難だったので手伝ってくれた林檎少年には感謝だ、下着姿見られたけどまぁ許してやろうではないか。

 

何とは言わないが、試しにちょっとジャンプしたりで揺らしてみたら、何かすごい鼻のところ抑えていた。まぁ見なかった事にしてやるか、百面相が面白かったし。

 

『さぁて何はともあれ両者揃いました!ここで、タッグ・デュエルの簡単なルール説明を行います!』

 

っと、ようやく始まるか。相手のプロの2人も動揺は落ち着いたみたいで、既にデュエルディスクとデッキの準備を終わらせているな。こっちも説明を聞きながらデッキとディスクの準備を始める。

 

『本日のデュエルは2vs2!ハンデのため先攻は挑戦者、一般枠に譲られます!アップルボーイさんかMs.もけもけさんのどちらかからスタート!続いてプロチームのどちらかのターン、続いて一般枠のもう片方、最後にプロチームのもう1人、交互にターンを返していくこととなります!』

 

司会の人の説明と同時に、デュエルフィールドの上空に超大型ディスプレイが投影されそこで図解しつつの説明が流れる。あー、やっぱこういう形式でも便利だよなぁソリッド・ヴィジョン。

 

『フィールドは両者それぞれのデュエルディスクの数、すなわち魔法罠ゾーン・モンスターゾーン10箇所体制!ワァオ!これはすごい!』

 

え、マジで?共有でやるもんだと思ってたから思わずシャッフルの手が止まる。おい林檎少年、変な顔でこっち見るな。何?よくシャッフル出来るなその手で?知らん、出来るんだから良いだろ。

 

『これは派手なモンスターの軍勢が見れそうだぞ!ライフも個別!1人4000です!なお、もしフィールドにモンスターや魔法罠がある状態で片方のデュエリストがライフを全損した場合、そのデュエリストのフィールドはその時点で使用不可。存在していたカードも即座に消え効果も適用されなくなります!』

 

ふむふむ、マジで完全に個々でデュエルしつつの味方が横にいるよってくらいな感じか。......これタッグ・デュエルにする意味あるかぁ?

 

『た、だ、し!ここからが特別ルールの真骨頂!デュエル中、回数無制限で自身のフィールドのモンスターを相方のフィールドへ移動させることが出来ます!これで相方のフィールドががら空きでも、モンスターで壁を作ってあげることが出来るぞぉ!』

 

「!」

 

......今の解説。ふむ、ちょっと気になるけど黙っておこう。

 

『更に更に〜!今回はプロチームのデッキはハンデとしていくつかのカードが運営の用意したカードに変更されております!これにより、プロチームの戦力は大幅ダウンだ!』

 

ふむふむ、本来なら相手はあの闇鍋パックからデッキ組んだ人になる訳だから、このハンデは妥当だろうな。本来ならね。

 

『その他にも追加ルールはありますが、これ以上は尺が足りない!という事でデュエルする4名のディスクへとルール概要データを送信!』

 

「ん」

 

「お」

 

「よし」

 

「......」

 

相手のプロ2人とこちらのデュエルディスクから電子音が鳴り、「Special―Rule Download」と表示される。

 

『っさあ皆さん!これより始まりますはメインイベントっ!プロチームvs一般参加枠2名変則タッグ・デュエル!ご唱和下さい!ンン〜〜〜!』

 

タメにタメる司会に合わせ、観客席のボルテージが上がっていく。歓声はひとつのかけ声へと集約され、司会と観客の声が揃っていく。

さて、ここからは真面目なデュエル。格好は無様でもデュエルで手を抜くつもりは無い、全力で行こう。

 

「ッチ、さっさと終わらせるぞ!」

 

「足だけは引っ張らないでくださいよ」

 

「ふぅ......良し。準備は良いな?」

 

「とう、ぜん。そっち、こそ、遅れない、でね」

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『デュエルッ!スタートッ!!!』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「デュエル!」」」」

 

 

クライゼン・ストリートエネミー

 

vs

 

アップルボーイ・Ms.もけもけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいま......珍しいな、お前がここに顔出すなんて」

 

機械万歳がデュエルを開始した頃。商店街に店を構える小さな喫茶店に、パーカー姿の女性―――リョウが入店する。カランコロンと小気味良く鳴るドアベルに反応しカウンターの奥でグラスを磨いていた店主は、入店を迎える挨拶もそこそこに厳しく結ばれた口元を僅かに緩める。

 

「っせぇな、たまにはアンタのコーヒー飲みたくなるンだよ」

 

「冗談よせ。お前はコーヒーより酒飲んでる方が多かっただろう」

 

「ンなことどうでも良いわ。しっかし相変わらず昼間は空いてんなぁこの店。採算取れてんのか?」

 

「余計なお世話だ」

 

リョウは店主と会話しつつもズカズカと無遠慮にカウンター席へと足を運び、ドッカリと席へ鎮座する。

店主はそんな横柄な態度のリョウにも慣れているのか、気にすることなくグラスを磨く作業を続けている。

 

「......で、要件はなんだ?本当に飲みに来ただけなら追い返すぞ、まだアイツはお前のことかなり執着してるからな。この後来る予定だし店を壊されたらたまらん」

 

「マジで?懲りないねぇあンのアホ。要件ならある」

 

ヘラヘラと笑いながらも、声色は変わらず平坦。そんなリョウは胡乱気な表情の店主へとそう言って、カウンター越しに1枚の写真を差し出す。

 

「これは......女性、いや少女か?」

 

「ああ、ウチで今バイトしてる阿呆の写真だ」

 

そこに写っていたのは、1人の少女。推定高校生くらいだろうか、携帯端末で撮影されたらしいそれはリョウの店のショーケースを真剣な表情で整理している様子が撮影された物だ。

 

「初見の娘だな。バイトってことは、お前が見つけてきた子か?」

 

「いや、ウチのお婆が拾ってきた」

 

「何だそれ。というかよく見りゃコレ、手ブレがひでぇな。カメラで撮って無いだろ」

 

「ああ、阿呆が目を離してた隙にスマホで盗撮した」

 

「......お前なぁ」

 

呆れた声色でため息混じり、店主が綺麗なスキンヘッドの頭を撫でる。対するリョウはと言えば、してやったぜと言わんばかりのニヤケ顔で応えた。

 

「まぁお前のわいせつ犯罪については身内のよしみで見なかったことにしてやる。......んで、この写真を見せてお前は何がしたいってんだ?」

 

店主は写真をリョウに返しつつ尋ねる。そっと受けとった写真を懐に仕舞いながら、リョウはニヤけた顔を真剣な表情に戻しながらカウンターから身を乗り出さんばかりに顔を店主へとつき出す。

 

「この娘の身元が知りたい。辿れるか?」

 

「いやそういう人探しはウチじゃ無くて警察とか、それか市役所とか頼れよ」

 

「それがぜーんぶ空回り、戸籍すら見つかん無かった訳で」

 

「......何?」

 

リョウが肩を竦めながら言った言葉に、店主の手が止まる。リョウの方へと店主が視線を向ければ、そこには普段はボーッとしている目を見開いたリョウがいた。

 

「どうだ?戸籍が無く、警察も特定できてない謎の少女。......気になるだろう?」

 

「まぁ、な」

 

「何ならこいつ、エクストラデッキを『使いこなせる』っぽいんだよねぇ」

 

「!」

 

その一言で、店主が一段と強く反応する。もう既に先程まで磨いていたグラスはカウンターへと置かれ、体も耳も顔もリョウの方へとしっかりと向けられている。

 

「......それ、は。マズイな」

 

「ああ、ひじょ〜にマズイ。だからお前に頼んでるんだよ」

 

「......3日。3日時間をくれ、最大限調べる」

 

「よろしく頼む」

 

入店直後からは考えられないくらい真剣な表情で、店主はリョウに頷く。それを受けたリョウは満足したようで、何時もの気だるげな表情へと戻りカウンターへと突っ伏した。

 

「って事で、コーヒーよろしく〜。はーもう喉カラッカラ」

 

「はいよ.....砂糖とミルク」

 

「ありありで〜。あ、気分転換してぇしテレビ点けろよ」

 

「自分で点けろ」

 

先程までの真剣さは何だったのかと言わんばかりにグダついた空気になり、店主からの素っ気ない返事を受けたリョウはえぇ〜、と言いつつカウンターの最奥に設置されたテレビへと向かい、電源を入れる。

 

「おら、コーヒー」

 

「お、さんきゅ〜......んだよ、ロクな番組やってねぇじゃん」

 

「そりゃ昼間だからだろ」

 

「ふーん?お、デュエル中継。あ?これ童実乃坂アリーナか?今日イベントあったのか」

 

大股を広げ、肩肘をカウンターへと乗せてテレビを眺めるリョウ。女性としてはかなりはしたない格好ではあるが、店主は特に注意することなく顔を顰める程度に留める。これが他の客がいるタイミングであれば締め出すと心に決めて。

 

「はっは、見ろよ。タッグ・デュエルで着ぐるみ着てる奴いるぜ。ああいうエンタメなのか知らんがバカだよなぁ」

 

「今のお前に言われるんなら確かに阿呆だな」

 

「どういう意味だコラ」

 

若干の険悪ムードを抱えつつも、2人とも特にそこから発展させる事は無く、店主は作業に、リョウは何もせずボーッとテレビの音に耳を傾けていた。

 

『ななな、なんとー!?一般参加者枠「機械万歳」、まさかまさかの着ぐるみで登場だぁぁ!!これは一体、どういう意図があるんだー!?』

 

「ブーーーーーッ!?」

 

「うわっ!?汚!?」

 

次の瞬間、静かな喫茶店の中に黒い雨と虹が吹き出した。




TS野郎「身バレ防止の着ぐるみと偽名ヨシ!」

リョウ「何をもってヨシとしたんですか?(憤怒)」

感想欄ですごく惜しい予想が割といるんで、やっぱデュエリストの集合知ってすごいんだなぁって。

次回、今度こそデュエル回。
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