遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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わぁー、デュエルだデュエルだー。
遅くなった理由は、ふっつーに書き貯めしてたら投稿忘れてました。
なんか閲覧伸びないなー。とうとう飽きられたかw。とか思ってたら投稿してなかっただけでした。馬鹿かな?
※2話同時投稿です。この話から読み進めることをおすすめ致します。


A.先ずは地獄の一丁目

先攻はハンデにより、俺と林檎のチームからとなった。

 

「では俺からいきます」

 

フィールドに出る前、控え室で軽く打ち合わせはしておいたので特に相談とかも無く林檎少年がターンを受け取る。相手のプロ2人は......こっちを見もしないで手札見てるや。

 

「俺のターン!手札から、『神機王ウル』を召喚!」

 

林檎少年のフィールドに現れたのは、真紅の装甲を持つ機械兵器。下半身は足が無く、ふわふわと浮かぶその姿は名前の通り神の機械の様である。

フロート系の足回りに明らかに物を掴む事を想定していないような腕、ほっそいくびれのある胴体に無機質通り越して無機物な頭部、これが堪らない。

うーん、やはり機械族は最高だな!

 

「続いて手札から、『強欲で謙虚な壺』を発動!デッキトップから3枚を確認し、そのうちの1枚を手札に加える!」

 

続いて発動したのは、強欲で謙虚な壺。別にそれが普通ってわけじゃなかったが俺とかは強謙って呼んでたな。効果もシンプルに強力な壺シリーズ伝統のもので、3枚見て1枚拾える。デメリットとして発動ターンは特殊召喚できないけど、そもそも特殊召喚をしないデッキや、林檎のように大量展開を行わないデッキならばあまり気にならないで採用できる。俺も欲しいんだけど、アレ高いんだよなぁ......。まさか強謙1枚で万単位まで行くとは。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

林檎少年がエンドを宣言する。セットカードとモンスターの召喚。ついでに有用なカードの補充。静かながらもお手本のような立ち上がりだ。ふむふむ、伏せカードは......流石にスキドレでは無いか。でも伏せたのは『禁じられた聖槍』......なるほどね。妨害にも妥協召喚モンスターにも使える良い択だ。さっきの強謙で引いたな。

 

デュエルディスクを操作すると、相方である林檎少年が場に伏せたカードの名前とテキストがディスク上部の液晶へと表示される。うーん、流石にスキドレはまだ来ないか。

 

毎回手札に引き込める訳でも無いし残当だな。そもそも、こちらのデッキは頑張って調整はしたけど、それでもスキドレと明確に相性の良いデッキには仕上げられなかったから今スキドレ貼られたら俺のデッキ死ぬし。

 

さて、相手のプロチームは一体どういうデッキかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

(ま、普通だな)

 

感想としてはその程度であった。

プロとしては俺も、相方のストリートエネミーも、決して上澄みでは無い。プロランキングにすら載れていない、ここにいる観客のほとんどが認知していない所謂マイナーリーグに属するデュエリストだ。そして、プロデュエリストにとって重要なのはデュエルの腕だけでは無い。その品性、印象などがその後の大成に繋がってくる。

 

そんな俺らがこんなイベントごときで必要以上にオラついた所で、好印象は稼げない。控え室では不満を隠す気もなかったが、公の場で漏らすほど馬鹿じゃない。印象に関わることは今後の活動に響くのだ。

今回の仕事だってそうだ。相手が無難すぎるくらい無難だろうと、素人が相手だろうと、基本接待プレイに甘んじる......筈だった。

 

講師として大勢のイベント参加者へとデュエルの技術を教え、多大な疲労感に襲われながらもどうにか表面上誤魔化して迎えたメインイベントは、対戦相手のドタキャン。

更に代役を見つけたと言いつつ相手は準備すら出来て無いとの事で、こちらが10分は待たされる。

 

相手が素人で手間取っているとかの理由があるんだろうが―――明確に舐められてるだろう、これは。

 

まぁ、それについては腹は立つが妥協して割りきれる。というか割りきる。

 

「俺が行く」

 

「......ご自由に」

 

ストリートエネミーへと一言声をかけ、デッキへと手をかける。横をちらりと見れば、呆れた様子でため息をついている様だ。

これも仕事だ、プロとしての自身の知名度にも関わるこのイベントに不満はあれど否定はしない。杜撰な運営も、土壇場のアドリブも小規模なイベントではよくある事だ。

 

 

 

――――――だが、目の前のクソふざけた格好の一般参加者とやらは許せん。

 

 

なんだ、時間を無駄に浪費させておいて相手が着ぐるみって!おちょくるにも限度があるぞ!

しかも遅れてきた謝罪すら無しでシレッとデュエルおっぱじめやがって......一言くらい謝れや!

 

「俺のターン!ドロー!」

 

『おおっと!プロチームの先手はクライゼンからだ!』

 

司会が大袈裟に叫べば、観客からもそれに合わせて歓声が上がる。さすがはプロのデュエルでも呼ばれることのある司会、盛り上げが上手いこった。

 

(潰す。どこの馬の骨が連れて来られたのかは知らんが、一般参加だとか関係ねぇ!ここまで調子に乗った野郎は1度叩き潰す!)

 

「手札から『暴れ牛鬼』を召喚!更に、永続魔法『セカンド・チャンス』!」

 

呼び出したモンスターは、運営から渡されたハンデカードの1枚。本来ならもっと強力なカードを入れている所だが、この位の難易度調整カードは入れておかないと相手に勝ち目がない、と判断されているんだろう。致し方ない。

 

不本意ながらも現在俺たちプロチームのデッキは、全力のおよそ50%程度しか発揮できない構築だ。相方のストリートエネミーも同じだが、俺たちの本来のデッキにはアンチシナジーとまではいかなくとも普通は入れることの無いカードが入っている為、デッキと手札の回りは非常に拙いものだ。

 

「暴れ牛鬼の効果!コイントスをし、裏表を当てる!当たった場合、相手ライフに1000のダメージ!外せば俺に1000のダメージだ!」

 

『出たー!クライゼンの真骨頂、ギャンブルカードだー!』

 

「先ずは景気よくぶち当てる!宣言は表、コイントス!」

 

俺の宣言と同時に、フィールドに出現したソリッド・ヴィジョンの巨大コインがデュエルフィールドの真ん中で跳ねる。ゆっくりと上空へと上がったコインは、重力に従ってフィールドへ落ち、2、3回バウンドしてから着地した。

 

『コインは――――――表だぁぁ!クライゼン、見事的中!』

 

「1000ダメージ!対象はそこの着ぐるみだ!」

 

俺の宣言をうけ、牛鬼はその名に恥じぬ暴れっぷりを見せ、勢いよくもけもけへと突っ込んでいく。ソリッド・ヴィジョンには実体はないため当たることは無い、だが人より大きい牛が突っ込んでくる様は恐怖だろうな。

 

「っ!」

 

Ms.もけもけLP4000→3000

 

「カードをセット、後攻だがこのデュエル中の特殊ルールにより全員へターンが回り切るまでは攻撃出来ない。だが効果ダメージなら問題ねぇなぁ!ターンエンドだ」

 

ターンが変わり、次はあのふざけた着ぐるみ野郎だ。アップルボーイとやらの初手を見るに、流石にズブの素人を連れてきたわけじゃないことは理解した。本当に一般の人間を入れたのなら、もっとひでぇ盤面も有り得ただろう。人によるが、カードをセットする事すら無くモンスターを棒立ちさせてエンドする奴も居るには居るのだ。

 

だがそれだけだ。使っているカードを踏まえても俺たちの敵にはなり得ない。......本当に、一般の参加者ならな?

 

「ターンを受け取ります。ドローフェイズ、カードドロー」

 

Ms.もけもけがカードをドローする。......声が着ぐるみで籠ってて低いな。だが背丈を見る限り子ども......いや、学生か?

 

「メインフェイズ。手札から、『マシンナーズ・ソルジャー』を召喚」

 

現れたのは、まるで軍隊の歩兵のような姿を模した機械族モンスター。その顔は人に似せてはあるが全く似つかない一つ目。ギュポン、と不気味な音を立ててその目が光ると、片手に接続されたアーミーナイフの様なものを振りかざし攻撃態勢を取る。

 

「マシンナーズ・ソルジャーの効果。このカードの召喚時、他にモンスターがいないので手札のマシンナーズモンスターを特殊召喚する。手札から、『マシンナーズ・スナイパー』を特殊召喚」

 

「っち、なかなかやるじゃねぇか」

 

もけもけのフィールドに新たに現れたのは、これまた機械仕掛けの兵士。今度は狙撃兵の様で、その手にはソルジャーとは異なり大型の狙撃銃が握られている。

 

「カードを1枚......ウーン、イヤデモ......1枚セット。永続魔法、『機甲部隊の最前線』を発動し、ターンエンド」

 

一瞬妙な間があったが......まぁいい。

 

「俺のターン!」

 

ターンは回り、相方であるストリートエネミーのターンとなる。

カードをドローしたストリートエネミーは、手札とドローカードを見比べ数瞬考えてから手札からカードを抜き放った。

 

「手札から、永続魔法『強欲なカケラ』を発動」

 

ストリートエネミーが発動した永続魔法は強欲なカケラ。数ターン必要ではあるがドローソースとして有用なカードだ。それなりに普及している汎用カードでもある。......が、これまた運営からの要望で入れたのであろうカードだ。こいつのスタイルにはあまり合わないカード。

 

「......」

 

「さらに手札より、『魔界発現世行きデスガイド』を召喚。その効果で、デッキから悪魔族レベル3モンスター、『魔界発現世行きバス』を特殊召喚!」

 

現れたのは、禍々しいオーラを纏ったバスとそのガイド。2体とも特にストリートエネミーのデッキとのシナジーがある訳では無いが、今はこれで十分だろう。

 

「!林檎、来る!気をつけて!」

 

「!?な、何故だ!?」

 

「はぁ?......っ、あーもう!」

 

ストリートエネミーのフィールドに揃えられたモンスターを見て何かを察したのか、もけもけが慌てた様子で相方へ何かを言っているが......遅かった様だな、もう優先権はストリートエネミーに移っている。

ストリートエネミーがデュエルディスクを操作し、満を持して手を空へと掲げた。

 

「俺は場のデスガイドとバス、2体のレベル3モンスターで、オーバーレイネットワークを構築!」

 

ガイドがバスへと乗り込み、フィールドへ現れた宇宙のような世界へ繋がる穴へと光となって吸い込まれていく。

 

「エクシーズ召喚!現れろ、『グレンザウルス』!」

 

現れたのは、真っ赤な体色に鋭い牙を持つ凶暴な恐竜。体表から噴き出す炎や体の各所に施された銀の装甲が、こいつがタダの恐竜ではなくモンスターであると思い知らせる。

 

......にしてもこいつら、初動の動き方と言いさっきのエクシーズ召喚の察知と言い、プレイングやカード知識が素人のそれじゃ無い。予想はどうやら当たっている様だ。

 

「分かってるなストリートエネミー!コイツらカード・プロフェッサーだ!」

 

「言われなくても分かっている」

 

アップルボーイとやらの動きを見ただけでは多少腕の良い一般参加者程度の疑惑だったが、もけもけの方の澱みない展開、それに先程の反応を見て確信を得る。

相方のストリートエネミーの方も察した様で、既に思考のスイッチを『接待』から『勝ち』へと切り替えたようだ。

 

プロと比較して一般での知名度はそこそこといった具合のカード・プロフェッサーではあるが、その性質上世間一般への露出度はかなり低い職業だ。

その仕事は対企業・対デュエリストに限定されがちであり、一般の目に晒されるのは大体こういったイベントの場でのみ。

更には、カード・プロフェッサーがイベントに参加している場合9割方主催者側からの依頼であってカード・プロフェッサーであると分かるように現れることは無い。

 

理由は様々あるが、最も多いのがイベントの話題性をあげる為の「一般の優勝者」の捏造。

「一般のデュエリストでも勝てました」という実績を残させることで、さぁ次は俺もあの人みたいに、みたいな客を呼び込むのだ。

 

えげつないところでは、優勝商品を超高価にしたりレアカードをダシにする事で集客し、雇い入れたカード・プロフェッサーを大会に潜り込ませる事で優勝商品を手元に残しつつ話題性を獲得する、なんてセコい真似をする為に雇うこともあるそうだ。

 

(だが解せない......このイベントではそこまでする価値のある商品なんかは無い。カード・プロフェッサーをわざわざ雇う理由は何だ......?)

 

思考に耽っている間にも、相方のストリートエネミーのターンが進む。

 

「さらに手札から魔法カード、『二重召喚』。もう一度通常召喚を行う」

 

「ゲッ、アカンかも」

 

「まさか、追加で!?」

 

相手チームが慌てているが、もう遅い。これならストリートエネミーの方は、それなりに動ける手札だった様だな。

 

「手札から、『アーマード・フライ』を召喚。さらに、『B・F―連撃のツインボウ』を特殊召喚。コイツは自身の効果で特殊召喚出来る。......ただし、この後は昆虫族しか特殊召喚出来んがな」

 

新たに現れた2体の昆虫族モンスター。アーマード・フライの方は火力はあるが昆虫族が居なければステータスがダウンするデメリット効果があるが、今はツインボウがいることで解決出来ている。

 

「......牛鬼だけでは心もとないか。俺はアーマード・フライとツインボウを、特殊ルールによりクライゼンのフィールドへ」

 

「べっつにいらねぇってのに......まぁいい、リリース素材になる」

 

ストリートエネミーのフィールドから俺のフィールドへ2体の虫が移動する。どちらも好戦的に口をカチカチ鳴らしているが、生憎俺のデッキとの相性は良くないんでな。精々リリース素材として役立ってもらおう。

 

「まぁ、なんだって良いが......。カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

(どういった経緯があるかは知らんが、相手はただナメて来ている相手って訳でも無さそうだ。手加減は要らないだろう)

 

目線を送れば、ストリートエネミーからも同様の思いが感じ取れる視線が送られてきて、そっと互いに頷く。

 

こちらのデッキが大幅な弱体化を受けているとはいえ、それでも俺達はプロ。イベントデュエル程度で敗北など受け入れられるものでは無い、ましてや相手がカード・プロフェッサーであるのならば、同じデュエルを生業とする者として負けられん。

 

ストリートエネミーと俺はギアを上げていく。

目の前の奇っ怪な不届き者たちを倒す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......それはそうと、あのもけもけ野郎さっきからハァハァうるせぇな。暑いなら脱げや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほ!いやはや、まさか着ぐるみとはの。先日の仕事でもそうだったが、随分と奇抜な格好が好きな様だ。こちらの狙いも、案外察していたりするのかね」

 

VIP用の観戦ルームにて思わずと言った様子で膝を叩きながら笑いデュエルを眺めているのは、機械万歳の雇い主でありアップルボーイの上司でもあるイヅモマテリアル代表の老人。

 

そばに控える黒服のSPが手に持ったタブレットを操作し画面を見せると、タッグデュエルを観戦している観客席の人々の様子が監視カメラによって映し出されていた。

多少のざわめき等はあるものの、人々の反応は概ね好評と言って良いものだった。

 

「ランク外とは聞いておったが、盛り上げるデュエルについては十分。重畳重畳、これなら今後も仕事を回して見るのも良いかの」

 

「......それで、どういった用件で私をここへ?まさか、イベント程度のデュエルを見せる為に呼びつけたんですか?」

 

「おお、すまんすまん。放っておいてしまったのは謝ろう」

 

代表へと厳しい言葉をなげかけたのは、VIPルームへと呼び出された1人の男。代表の横に用意された座り心地の良い椅子、そこに座るその男はジーパンにTシャツ、ジーンズ素材の上着を羽織ったごくごく一般的な格好をしている。しかしその表情や声色、身に纏うオーラのようなものは一般人のソレでは無い。

 

少しだけ不機嫌そうな男は代表へと一瞬だけ睨みつけるような視線を向け、そのまま目の前で行われているデュエルへと意識を戻す。話を続けろ、と言っているかのようなその姿に代表はタブレットをSPへと返し杖をつく。

 

「さて、君を呼んだ訳だったかな。あのデュエリスト......着ぐるみの方を見てほしい。どう思うかね?ちなみに相方の方は我が社の専属だからな、何か言う必要は無いよ」

 

「着ぐるみ?」

 

代表の言葉に、僅かに眉を上げた男は言われるままに着ぐるみ―――Msもけもけへと視線を向ける。

 

相変わらず場にそぐわない惚けた表情のもけもけの着ぐるみからはその感情も容姿も読み取ることは出来ない。容姿も見える訳では無いためそこに言及しろという訳ではないだろう。

 

流石に『もけもけ』デッキでは無い様だが、それでも特筆すべきものは感じられないデッキだ。

見た所機械族を多用したデッキである、分かるのはそれだけだ。

 

......あと、何故か機械族モンスターと思われるモンスターが出た時だけヘッドバンキングで荒ぶっている。

着ぐるみ自体が中の人物とサイズが全く合っていない様で、頭の部分が盛大にグネングネンとしており非常に滑稽だ。

ヘドバンが始まる度に観客からは笑い声が上がっている。相方と相手のデュエリストは迷惑そうに顔を顰めているのだが......まぁ当然だろうな。

 

「......もけもけなんてモンスターをわざわざ着ぐるみに使うんですね。随分とクオリティが高い」

 

「いや、着ぐるみの感想を求めたのでは無いよ?何か、感じるものでもないか聞きたいだけだ」

 

「......」

 

「......」

 

(......じゃあそう言えよジジイ)

 

こういう勿体ぶった話をするからこの爺さんと話すのは面倒くさいんだ。

 

「そ、それで。あのデュエリストをどう思うか、ですか」

 

「そうじゃ。あのデュエリストを、是非君に見定めて欲しいと思ってな。その為にわざわざクレストの若造に言伝まで頼んでこの場へ引っ張ってきたんだがね。まさか着ぐるみを用意しておるとは......」

 

「......確か、このイベントの一般参加者がデュエルする予定だったのを、急遽のドタキャンがあったとの事でカード・プロフェッサーへ依頼を出したと聞いておりましたが?」

 

「ほっほ、そうだったかな?」

 

(初めからあの着ぐるみをデュエルさせるつもりだったか。この様子じゃ最初から一般のデュエリストなんて抽選してないな)

 

軽く笑っている老人へ企業特有の腹黒さを感じながら、改めてもけもけの着ぐるみへと視線を戻す。デュエルの方は2ターン目に入ったことで攻撃が可能となり、若干の動きを見せている。

 

着ぐるみの相方、アップルボーイだったか?彼は流石にエクシーズモンスターを相手に出来る攻撃力は揃えられなかった様で場のモンスターを守備表示にしてエンド宣言。

 

『オラオラオラァ!俺のターン、「融合派兵」発動!』

 

『!融合!?』

 

「ほぅ、クライゼンが動いたな。相手が一般ではないと1ターンで気づいたとは、流石にプロという所かね」

 

プロのターン、クライゼンが呼び出したのは彼の本来のデッキでも使用されるカード、『リボルバー・ドラゴン』。その名の通りリボルバー拳銃を模した機械仕掛けのドラゴンにアップルボーイが驚愕しつつ伏せカードを発動している。......まぁ、悪手だと思うが。大型モンスターに臆したか?

 

「ふむ、随分と肝が据わっていますね。アップルボーイとは違い、リボルバー・ドラゴンに全く臆していない」

 

「機械族だから、相変わらず興奮はしている様だがね」

 

「それでも、上級モンスターへの警戒も無くただ興奮するだけというのは余裕の表れかと」

 

リボルバー・ドラゴンが効果を潰されるが、それでもクライゼンはプロデュエリスト。簡単な相手では無い。すぐさま先程相方から譲り受けたモンスターをリリースし、追加の上級モンスター『ブローバック・ドラゴン』が呼び出される。

 

呼び出したブローバック・ドラゴンの効果が発動するが、破壊されたのはリボルバー・ドラゴン。観客や司会は戸惑いの声を上げているが、もけもけの方は全くの無反応。どうやら本当に相手の意図を読み切ってしまっている様だ。

 

破壊をトリガーとして呼び出されたのは、クライゼンの切り札たる上級モンスター『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』。名前からわかるように、リボルバー・ドラゴンが強化されたモンスターである。

自爆のような動きに最初はプレイングミスかと考えていただろう観客たちだったが、強力なモンスターの出現にどよめいている。

 

伏せカードによる妨害が裏目に出てしまった事にアップルボーイが歯噛みする中、それでも着ぐるみのデュエリストは焦る様子は見られない。......いや、めっちゃヘッドバンキングしている。あれか、機械族ならどんなモンスターでもそうなるのか。

 

「それに先程、ストリートエネミーがモンスターを並べた際すぐに次のプレイを察知してました。エクシーズ召喚の知識については持ち合わせているようですね」

 

「ふむ、やはりそうか」

 

同レベルのモンスターを複数体並べる。これに反応するデュエリストはほぼ確実にエクシーズ召喚に対する知識を持った者だと言えるだろう。一般の、本当に素人のデュエリストであればここに反応する者はまず居ない。

 

エクストラデッキからの召喚法としては割と簡易な方であるエクシーズ召喚ならば、一般でも存在だけなら知っている人は知っていたりする。ただ、それを使いこなし相手の召喚を防ぐ為の知識まで持っているとなれば......

 

「少なくともプロデュエリストと比較してランク圏内にギリギリ入らない程度の実力者、といった所が私の所見でしょうか。まぁ、ここからの展開次第では上方・下方修正も出来ますが」

 

「ふぉっふぉ、成程のぉ」

 

顎に手を当て面白そうに趨勢を眺める代表。とりあえず振る舞いやデュエル内容を見て感じたことを言ってみたが......随分と、代表の反応は薄い。

 

「......何か見落としでも?」

 

「いやいや、そんな事は無い。流石は今最も注目されている若手プロデュエリストの有澤君だ、良い眼をしておる」

 

しかし、と。代表は手に持ったタブレットをSPへと返しこちらへいたずらっ子のような笑みを向ける。

 

「あの者のデュエルを、1度とはいえ見た者としては。彼奴がそれだけで終わる様なデュエリストとは思えんのぉ?」




クライゼン→ギャンブルデッキ。どちらかと言うと機械族闇属性に寄ってるコイントス中心

ストリートエネミー→レベル3軸エクシーズ。やや昆虫族寄り

ぶっちゃけガッツリとギャンブル全振りデッキと昆虫族エクシーズに寄せようと思ってましたが思ったよりデッキパーツが集まらずまともに試せなかったので妥協案で弱体化パッチ(イベントハンデ)が入った設定の仮案デッキを採用。

当たってた人は......一応いたかな?
次回、デュエル決着。なお決着と言いつつ多分決着じゃない模様。
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