段々この野郎変態なんじゃないかと思い始めてきた。加減してくれんかなこの阿呆。
感想欄はドミナントかリンクスレベルに予測能力高い人ばかりなのか、色々先の展開やデッキを的中しまくる人ばかりで震える。
やはりコーラルの恵みを生でいってる方々は違ぇや!
どうも、仕事終わりの着ぐるみ記憶喪失系TS野郎、機械万歳です。
「あっ、つぅ......」
「そりゃそうだろ、いくら空調の付いてる着ぐるみだって言っても蒸れるし暑いわ」
「もう、無理......林檎、脱がして」
「ばっばばばば、バカかお前!?その中下着だろうが!?」
「林檎、照れてる?顔真っ赤。林檎、だけに......」
「やかましい!全然上手くないからな!?」
いやー林檎はからかい甲斐が有るなぁ。あ、でも着ぐるみ脱ぐのはまじで手が欲しいかも。後ろのチャック開けらんねぇ。......あ、手届いた。
さて、プロ相手のタッグデュエルに挑んだ俺たちなのだが......少し前に終わった所だ。結果は前回を見れば分かるんじゃないかな。
えー、はい。俺たち一般枠チームが負けました。
はっはっは、あの後すぐに手札にあった『ダブルサイクロン』を発動、信じられないものを見る目でこっちを見てくる林檎のスキドレを割りつつ、相手の伏せを破壊しました。いやぁ、相手のプロチームも清々しいほどにバカを見る目だったね。別に被虐嗜好は無いからそれで興奮はしなかったけど。表向きの理由としてはまぁ、伏せが怖かった、とか言っておけば良いか?
この致命的プレミの結果、モンスター効果を使えるようになった相手チームが戸惑いつつもエクシーズを駆使して俺と林檎のライフを詰めてゲームセット。ライフ残り少なかったし一瞬の返しが致命傷になった形だ。
俺がクライゼンを倒したあたりでジャイアントキリングに盛りあがっていた観客も、最後の方は「えぇ......」みたいな雰囲気をしていた。うーむ残当だな。イベントの盛り上がりについては最後グダグダにしたから、途中の盛り上がりを加味してもマイナスだろう。
「マジでお前さぁ......いや、予め聞いてた話なんだけどさぁ?なんでよりにもよってあの場面でやらかすんだよ......」
「すま、ない。反省、はしてる。後悔は、してない」
「だろうな!」
悔しそうに頭を掻きむしり、ヤケ酒のように控え室に置いてあったペットボトルの水を呷る林檎。......ちょっと、まじでこれ脱がして欲しいんだが?着ぐるみって何でこんなに脱ぎづらいわけ?
本来するはずのないプレミ同然の動きをして負けた理由は......プロに華を持たせる為だ。
いやね?勝てそうな雰囲気になった時はもうこのまま勝ってしまおうとか思った。実際、あのまま行けば林檎がバルバロスや妥協召喚モンスターとかでボッコボコにしてたと思うけど、それをするとどうなるか。
プロ2人の名に傷が着くのである。
こちらはカード・プロフェッサーとしてでは無く、「一般参加者の中から当選した人」としてあの場に立っていたのだ。事実はどうあれ、このイベントの後観客が持つ印象は、一般相手に負けたプロというレッテルだ。
一般人にプロ2人が負けたなんて噂が流れてしまえば、プロ失格だとか雑魚のプロみたいな謗りを受けること請け合いだ。
俺としては戦績に1敗がついてしまうのはそんなに痛くないけど、相手2人は今後の人生がズタボロ案件だ、流石に可哀想だろう。
なお、この考えはその場の思いつきでは無くデュエルの前からのものだ。林檎と一緒に着ぐるみを着ている間に考えた事である。
って事で林檎には悪いが『いい所まで追い詰めていくけどあえて土壇場でミスした感じで負けます』という作戦をした訳だ。はい、プロに華を持たせるとか言ってるけど、明らかに滅茶苦茶舐め腐った煽りになります。林檎もめっさ驚くと同時にキレてたし心配してたわ、さっきも言った通り反省も後悔も無いけどネ!
そんなわけで好き放題暴れた後控え室へと戻りのんびりしているのである。......と、不意に扉が開かれ見知らぬ男の人が入ってきた。
(......うん?誰だ?)
「?......!?!?え、ちょ、な!?」
入ってきた男を見て、なんか林檎が飲んでた水を吹き出したんだが。誰だろう、有名人なのかね?それとも知り合い?
男の人は控え室内を一通り見渡したあと、俺を見てまっすぐこちらへやってきた。
「君がMsもけもけか?」
「え?......あ、はい」
「ふむ......」
確認だけして、謎の男の人はジロジロと俺を眺めている。な、なんだこいつ?見世物じゃないんだけど?......いや、ある意味で見世物だったか。見た目は普通の私服で、髪も短く切りそろえられ清潔感溢れる出で立ち。顔もかなりのイケメン......俺が女だったらときめいてたかもね。いや俺今は女か。
それはそれとしてイケメンが真剣な表情でMsもけもけって言うの笑えるな。俺の表情筋は微塵も動かないが。
そんなイケメンさんなのだが―――いやずーっとこっち眺めてるけどマジで何?視線で穴が空くなら俺もう穴だらけなレベルなんだけど?
「ああ、すまない。先程のデュエルを見て、少し気になったので挨拶にと思ってね。休息の邪魔するつもりはなかったが......ああいや、自己紹介だけはしておこう」
そう言って男の人は俺に向かって手を差し出す。
「プロデュエリスト、名前は『有澤隆文』。有澤重工13代目社長も兼任している。その関係でDネームを本名で登録しているので分かりやすいとは思うがよろしく」
「?よ、よろしく、です」
差し出された手を握りつつ会釈する。なるほどプロの人か。道理で強者オーラが隠せていない訳だ。あ、着ぐるみ越しに挨拶はシツレイか?
「ちょっと、だけ、すみません。コレ、脱ぎます、ので。少々、待ってくだ、さい」
「ん?ああ、着ぐるみだからか。いいとも」
「え、ちょ待っ!機械万歳それ不味っ!?」
何やら後ろの方でガチガチに緊張していた林檎が再起動して慌てている。何?今脱ぐのに忙しいんだけど、っとよし脱げた。
「!?!?」
「え、と。改め、て、機械万歳、です。もけもけ、は偽名、です。よろしく、です」
「う、うむ。よ、よろしく......」
どうにか着ぐるみの上半身だけ引っこ抜いて手を差し出す。が、何故か有澤さんは一瞬ギョッとした表情を浮かべた後、スイッと視線を右にずらしながら握手に応じる。
林檎の方もなんか頭に手を当てて「ダメだこいつ」みたいな表情。......待てよ、顔が赤い?
「あっ、失礼、しました」
「う、うむ。出来れば上を着てくれると助かるな......」
そうだった、着ぐるみ着るのに邪魔だったから下着だったんだよな。いやぁうっかりしてた。まいぼでー、無駄にでっかい乳袋してるから目立つことこの上ない。普通に下着はつけてるけども。
にしても、ほぼ水着か裸みたいなもんだからこりゃ着ぐるみよりよっぽど失礼だわ。
でもまぁ、有澤さんは指摘するのでもなく目を逸らして対応するあたり、こういう格好を見なれてる大人の対応っぽいな。林檎、これが紳士だぞ林檎。ガン見してんのバレてるからな林檎。手で隠してるつもりだろうが隙間ひらきまくってるぞ林檎。
ササッとシャツを着て改めて握手を交わす。上を着た時点で有澤さんはもう切り替えたみたいだな。
林檎の方はまだ顔が赤いし、こちらを見るのもチラチラと視線を向けるくらいで顔が全くこちらへ向かない。ヘタレか。
すぐに切りかえて対応出来る感じもかなり大人だなぁ有澤さん。名前はちょっとヤバい気もするけど。
......いや、半裸見せつけたこちらの方がヤバいな、うん。大変失礼してるし何なら土下座とかした方が良い気がしてきた。
「デュエル、見せてもらったよ。負けてしまったのは残念だが、良いデュエルだった」
「ありがとう、ござい、ます。あと、一歩、及びません、でした」
そう言って手を離すと、有澤さんはクスリと笑みをこぼした。あ、これはわざとなのバレてますね......。
「ああ、そういう事にしておこう。今日は良いものが見れた。だから、これを礼として渡しに来たんだ」
渡されたのは、1枚のカード。ふむ、カードねぇ。貰えるもんは貰っておくが、なんじゃろな......え???
「?......!?!?!?いい、いいい、いいんです、か!?」
「ああ、先程のデュエルで、上手く揃えていたからね。きっと君なら使えるだろう」
「ありがとう、ございます!どうしても、欲しかった、カードなんです!」
「ふふふ、そうだったのか。喜んでもらえて何よりだよ」
うおおおすげぇぇ!まじで『これ』くれるのか!?いいの!?超嬉しい、今回のデュエルの報酬なんかよりずっと嬉しいわ!
「おっと、長居は失礼だな。では私はこれで失礼するよ」
「はい、お疲れ様、です!」
「ああ、お疲れ様。君も、よく健闘していたよ」
「ああああ、ありがとうございます!」
感謝のあまり深々と頭を下げて見送ると、有澤さんは不敵に笑い林檎へと一声かけてから去っていった。うーむ、端々から伝わる出来る大人の雰囲気。プロだって言ってたし、自分......ファン、良いっすか?
「ああ、びっくりした......まさかあの有澤隆文に出会えるとは」
「林檎、知ってる人、だった?」
「はぁ?機械万歳、お前知らなかったのか?あの人は現在のプロランキングで100位圏内に入ってるプロ上位陣の1人だぞ?なんならあの人は10位以内にも入ってる上位中の上位だ」
「うっわ、強い、人だ」
「強いってじゃないぞ。あの人はプロデュエリストでありながら、企業の社長も兼任する滅茶苦茶規格外の人だ。声をかけて貰えただけでも相当すごいことだからな!?」
「うへへ、機械、機械......やっぱり、機械族は、最高だぁ......」
「お前自分で話振ったなら最後まで聞こうな!?」
有澤と機械万歳が出会っている頃。プロデュエリスト2人の控え室ではプロ2人が不機嫌そうに見つめる中、代表が端末を手に何処かへと連絡を入れていた。
「ああ、そうだ。報酬は振り込んでおきなさい。あの者とは今後も良い関係を築いておきたいのでな......そうだ、色をつけておけ」
「「......」」
「うむ、では手筈通りに......さて、待たせてしもうたな」
端末を控えていたSPへ渡した代表は、不機嫌さを隠そうともしないプロ2人へと声をかける。
「おい、アレは何のつもりだ」
「アレ、とは?」
「惚けんな!あの着ぐるみがワザと負けた事についてだよ!」
そう言ってクライゼンが、控え室の机を殴りつけるように叩く。横で静かに成り行きを見ているストリートエネミーも、行動には移していないがクライゼンと同様の気持ちであろう、険しい表情をしている。
「ふぅむ、確かにアレは惜しいデュエルであったなぁ。2人とも良いように翻弄され、敗北寸前まで追い込まれておったしの」
「だぁから!惚けるなって言ってるだろうが!それ以上はぐらかすなら今後アンタんとこの企業の仕事は受けねぇぞ!?」
「ほう、良いのかね?仕事を回さないで」
「はぁ?」
烈火のごとく怒りを露わにしていたクライゼンだったが、代表の一言に一瞬固まる。ストリートエネミーの方も先程から全く動きが見れないが、表情は僅かに歪んでいた。
「別に構わんよ。君が仕事を受けてくれなくなるのは痛いが、まぁあのカード・プロフェッサーは仕事を受けてくれるだろうからな。君らが仕事を受けてくれない影響は少しはあるかもしれんが許容範囲内だろうて。それに......」
「あのデュエリストとのリベンジマッチ。また仕事を受けてくれれば出来る場を設けてやれるんだがのぅ?」
「てめぇ......」
クライゼンはあっけらかんと言い放った代表を悔しげな表情で睨みつけるしか出来ないでいた。
そこでおもむろにストリートエネミーが声を上げる。
「もうとぼける必要は無いので答えて頂きたいのですが。あの着ぐるみに何故ワザと負けさせたので?」
「はて、ワザととは?」
「とぼけるなと言ったはずだぞ。さっさと答えろジジイ」
「ちょ、ストリートエネミー急に口が悪く」
「黙れ」
(ふむ、これは相当怒らせてしまったかな?)
丁寧な物腰すら消えてしまったストリートエネミー、代表が表情を伺えば、無表情ではあるが額に青筋が浮かんでいる。唐突な変化にさっきまで怒っていたクライゼンの方が戸惑っている始末だ。
しかし、残念ながら2人の詰問には正直に答えている。まさか接待が如く勝利を譲るとは、こちらも想定していなかった事なのだ。
「確かに依頼は出した。ただ、わざと負けるとは夢にも思わなかった、これは本当だとも。そもそも契約では、勝利時に報酬の追加も入れていたのだから、勝ちにいくと思っていたのだよ」
「本当かぁ?」
「少なくとも私は、あれほどの実力があるデュエリストならあんな凡ミスをするとは思えない。なにか裏があるのではないのか?」
2人共、代表の話を一切真に受けず猜疑心の塊のような視線を向ける。代表はそれに残念そうに首を振り、後ろのSPへ手を挙げる。
プロ2人の前に置かれたのは、2枚のタブレット。
「裏など無いよ、本当にな。まぁ信じて貰えないのはこの際しょうがない。今後の仕事で誠意を見せるしかないだろうからね」
「......おい」
「......まぁ、そこが落とし所ですか」
そう言ってタブレットを手に取る2人。本日のイベントへの参加への報酬を確認しているのだろう。
表情を変えることなく2人を待つ代表だが、内心では会心の笑みを浮かべていた。
(さて、想定外の事態はあったが上手くいったと言える。機械万歳の実力を改めて確認出来た上で、プロ2人ともかかわりが持てた。今後も機械万歳を起用する事をほのめかせば2人ともリベンジする為我が社の依頼をより受諾してくれるだろう。プロとのコネはいくらあっても足りんわい)
「全く、良い撒き餌だな」
「ん、なんだって?」
「いやいや。独り言じゃて、気にするほどの事では無い」
(にしても、即席のタッグでここまでプロを追い詰められるとは。ハンデはあったと言っても2人とも簡単な相手ではなかったはずじゃが......それだけ機械万歳の腕が良い、という事かの)
ますます欲しい、と代表はプロ2人に隠れてそっと笑みを浮かべるのだった。
「むふふ......」
突発的な仕事が終わったということで、現在イベント会場のアリーナから出る。手には領収書と有澤さんから受けとったカード......いかん、また変な笑いが。
「うへへ......良い、時間だった、な」
いやー、今回の仕事は個人的に有澤さんから貰ったカードが1番報酬として嬉しい!機械族でデッキに枠があればどーしても入れたかったんだけど、如何せんこいつアニメ時空のデュエルじゃ強すぎるからかめちゃんこ高価だからな。0が7桁じゃ足りないと知った時は納得と同時にキレ散らかしたわ。
しかし、そんなエグいカードをポンと手渡しで渡せるとは、上位プロってヤベェな。給料幾ら貰ってるんだろ......。
まぁ、俺だって今回の仕事は報酬もたんまり貰えたし、これでまたデッキ完成に近づいたな!2回デュエルしただけでこんだけお金が手に入るとは思わなかったが、これかつてのデッキの5割くらいは完成できるんじゃないか?いやー素晴らしい!
「あれとあれ、それとこのカード、を使うためにはあれ、も探す、として......」
はぁ、こういうカードやデッキの構築について考えを巡らせる時間はやっぱ良い、心が踊る。自前のデッキが出来たらテーマ毎で集めて作るのもアリかもしれんな!
(仕事としてデュエルして、得た報酬でもっと強いデッキにして、さらにデュエルして......永久機関が完成しちまったなぁ〜!)
ノーベル賞はいらんが素晴らしいループだ。いやぁ〜興奮してきた、さっさと帰って明日ショップでカード買おう。
「......て!高良!......ろ!」
「待っ......!ルビー!おね......返し......!」
「?」
まだ見ぬデッキの完成系へ思いを馳せながらアリーナを離れようとした時。何やら叫びが聞こえた気がして立ち止まる。
悲痛な、何かを懇願するような声とかなり力の籠った怒声。周囲にはイベントが終わったことで参加者が大勢帰路についているというのに、その喧騒を飛び越えて妙に耳に入ってきた。
「......こっち、か?」
何となく気になった俺は、声のする方へ足を向けた。いや、何となく聞き覚えがあるような声が混じってたからさ?
声を頼りに歩いていると、案外直ぐに目的の場所へ辿り着く。
アリーナから少しだけ離れた場所にあるビルとビルの隙間の裏路地。そこに少しだけ入った場所から声は漏れ聞こえていた。とりあえず何も考えないで路地の奥を覗き込む。
しかし、そこには誰もいなかった。路地の入口から奥を覗き込んでも、何も見えない。
いや、訂正。人影「は」見えない。しかしそこには確実にナニカはあった。
ナニカ、と表現したのはソレがあまりにも非日常的すぎるものだったからだ。
「なぁにこれぇ?」
そこには光すら反射しない、真っ黒な球体が浮かんでいた。路地の壁と壁の間にピッチリと、ギリギリ当たらない程度の大きさの変な球体だった。
え、GA●TZ?
球体からは妙なオーラの様なものが出ているようにも感じ、それを見ていると何故か「この場から離れよう」みたいな感覚に襲われる。
(うーん、どう考えても遊戯王世界特有の不思議案件だよな。ってことは感覚に従ってさっさと離れるべきか......)
聞き覚えのある声について気になるっちゃなるが、ヤバそうなものに首を突っ込むほど馬鹿じゃない。触らぬ神に何とやらだ。
という訳でその場を後にしようと振り返り立ち去ろうとした、その時だった。
「人払い用の結界に抵抗する者がいるとは思ったが貴様か......久しぶりだな」
「?」
路地の入口に、真っ黒なローブを纏った不審者が立っていた。肩幅はびっくりするほど広く、ソイツが路地に入ってくると路地自体が狭くなったと錯覚する程だ。
「あの、どこか、で会いました、ですか?」
「......忘れているのか?まぁ良い、見られた以上人違いでも関係は無い。排除するまでだ」
何か、話が通じない感じがする......どうしよう、この体の元の持ち主の知り合いだったか?
って、あれ?何かまじで見覚えあるなこの不審者......あ。
「変な、黒フード野郎?」
「随分な覚え方だな。だが、思い出したか」
不審者が若干呆れたような声色でそうツッコんでくる。そうだ、なんか空から降ってきた変なカツアゲおじさんじゃん。いやおじさんかは知らんけど。
何だよ、仕事終わりはカツアゲに遭うのお決まりなの?仕事で着ぐるみ着たのとかですっごい疲れたしはよ帰りたいんだけど。
そんな事を考えていると、推定おじさんの黒ローブがデュエルディスクを構える。......前回はよく分からんうちに帰ってくれたのだが、今回はそうはいかない様だ。
「貴様に出会うのは想定外だがちょうど良い。そこのガキ共より先に、貴様の精霊も頂くとしよう」
「何を、言って、いる?こちらに、デュエル、するメリット、が無い」
よく分からん事を言ってくる黒ローブの横を通り過ぎ、さっさと帰ろうとする......が、そのタイミングで気づいた。何やら周囲が黒いモヤの様なものに覆われており、路地から出ることができなくなっている。
しかもそのモヤの出処は黒ローブの構えたデュエルディスク。うーんこの。
「また、か」
「そうだ。デュエルフィールドに囚われた以上、デュエリストならば道はひとつだ」
そう言って黒ローブが俺の横から歩き出し、ある程度の距離まで離れた場所で再度ディスクを構える。......あー、クソがよ。これはもうそういう流れじゃん。
「......わかった、やろう」
「よし」
「ただし」
そう言って、黒ローブの方へと向き直る。ここまで粘着されるとは思わなかったが、この際一度痛い目にあって貰うことにしよう。そうすれば、もう訳分からん奴に絡まれることも無くなるだろうし。
というわけで訝しげな雰囲気の黒ローブを睨みつける。今回は、カジュアル志向ではなくガチで行こう。なんかもうここまで来ると腹立ってきたわ、この不審者め。
「俺が、勝ったら、もう二度と、近寄るな」
「ほう......自信があると見える。良いだろう、ただし貴様が負けた時は貴様の全てを奪うぞ」
「それで、良い」
互いの賭け金は設定した。この不思議空間をさっさと出て帰るためにも、早急にぶちのめすとしよう。
「さぁ、闇のデュエルの始まりだ。貴様の魂ごと、精霊を頂く」
「ぶっ○す」
「「デュエル!!」」
黒ローブ
vs
機械万歳
「クソっ、あのジジイ偉っそうに言いやがって......!」
「......」
一方その頃、クライゼンとストリートエネミーの2人は不機嫌さを隠しもせず歩いていた。
互いに会話するわけでは無いが、クライゼンはブツブツと恨み言を呟き続けており、ストリートエネミーは静かに歩いてはいるがその目はハイライトが無い。
通りすがるスタッフも何人かいたが、誰も話しかけることが出来ないほどの圧をばら撒きつつ2人は会場を後にしていた。
「......あ?」
「!貴方は......」
そんな2人の行く先に、1人の男が立っていた。何処かをボーッと眺めているようだったその男は、2人が来たことに気づくと上機嫌に手を挙げる。
「やぁ」
「おいおいおい、有澤重工の社長様が何でこんなとこにいやがる?」
「君らと同じ、イヅモマテリアルの代表の爺さんに呼ばれてね」
男―――有澤はそう言って微笑みながら、立ち止まった2人へと声をかけた。男の陽気な態度とは正反対に、クライゼン達の表情は固い。
「......ランカーの社長が、何の用だ。こっちは仕事終わりだ、帰らせてもらいたいんだが」
「てめぇと話すことなんかねぇよ、そこ退けや」
同じプロ同士とはいえ、片やプロの中でも上澄みのランカー、片やランク圏外。コンプレックスの様なものもあってかクライゼン達の反応は良くない。しかし、有澤はそんなことは何でもないと言わんばかりに笑みを浮かべつつスタスタと近づいていく。
「いやね、私としては特に何かをするつもりで来たわけじゃ無いんだ。呼ばれたというのもあるが、あの老人から「面白いものが見れるぞ」なんて言われて渋々見に来ただけだしね。......ただ」
近づいてきたことで、クライゼン達は有澤の左腕に歪な機械―――デュエルディスクが装着されていることに気づく。少しだけ離れた位置で有澤は近づくのをやめ、腕のデュエルディスクから音声が鳴る。デュエルの準備を始めた合図だった。
「......本気か?」
「何考えてやがる!?」
「ちょっと、いやかなり感化されてしまったようなんだ。全く、自分でも堪え性が無いと思うよ」
問いには答えず、有澤は一層笑みを濃くしながらデュエルディスクを構える。
その目はとても輝いており、少年のような瞳をしている。
「少し発散したい気分なんだ。悪いが相手してくれ」
しかし2人には、それが無邪気かつ無慈悲な悪魔にしか見えなかった。
企業代表:プロ相手のそれなりのコネ、機械万歳の実力把握・本人とのコネ
機械万歳:企業とのコネ、デッキに採用即決の強いカード
林檎:見た目だけなら美少女な同僚の下着姿
プロ2人:着ぐるみに負けそうになった事実(オブラートに包んだ表現)。勝ったけど相手のミスだからね、しょうがないね
有澤:おもしれー女の発見
得た物だけ見るとプロ2人だけ非常にお労しいことに。ひとえに実力がねぇからだが。
あと林檎はただただ役得。そこ変われ。
プロの認識(ついでに実力差)
ランク圏外→越えられない壁→ランカー→越えられない壁→上位ランカー→トップ10ランカー
つまりクライゼン・ストリートエネミー(ランク圏外)
vs
有澤社長(上位ランカー)
なので越えられない壁が2つほどあります。多分ウォールマリアとローゼくらいの。
次回、存在しないモンスターズ。そろそろ主人公を動かさんとね
※投稿している別作品の活動報告にコメントが来てたので、存在しないモンスターズの分の活動報告を置いておきました。ただのプレミ指摘用投書投げ込み箱にするのも何なのでちょっとだけ提案を書いてます。興味のある方は覗いていただければ。覗くと、作者が喜んで筆を手に取ります。