遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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ガハハ、久方ぶりの連投だ!
ウッソだろまだデュエルいかんのか...
次回はまるっとデュエルです。


第3話(4)

精霊を探すため、俺と高良は交換会と呼ばれる交流場へと入り込んだ。最初の方は交換を行っている人々へ声をかけていき、精霊が周囲に居ないかを見ていた。

 

「どうだ?」

 

『......ダメだな。この辺りにはいない』

 

「皆、どう?」

 

『......こっちもだ、見えねぇ』

 

宝玉獣達もディアベルスターも、少しだけジッと卓上のカードや周囲を見渡していたが首を横に振る。ダメか、まぁそんな簡単に見つかるとも思ってなかった。後は時間かけて歩き回るしかないな。

 

「よし、このまま歩き回ろう。高良、ちょっと疲れるかも......って、余計なお世話だったか」

 

「わ、私は大丈夫です。少し長く歩くくらい、全然平気です!」

 

ムンと腕を曲げ力こぶを作る仕草でドヤ顔を見せる高良。まぁ山駆け回ってたって言ってたし、ちょっと歩くくらいそんなもんか。

 

そんな訳で高良と二人(プラス精霊たち)で人のすき間をぬうように歩き回り、会場をひたすら歩く。

これで見つからないなら一度デュエルフィールドの方を見に行くのも、そう思いながらも内心ちょっと焦る。

正直ここしか精霊のカードがありそうな場所は心当たりがない、もしこれが外れれば心当たり無しで宛もなく歩き回るしかなくなるし正直キツい。

 

(何とかこの辺で見つけたいんだが......無理か?)

 

歩き回ること30分、めぼしい場所も見終わりもうこの辺には精霊は居ないのかもしれない。そう結論づけそうになった次の瞬間だった。

 

『!いた!何か不自然な奴!』

 

「「!」」

 

『どこだ?』

 

『あれあれ!交換してる横、カードの山の中!顔しかでてないっぽいけど、アレそうじゃない?』

 

宝玉獣の1人、エメラルドが声を上げた。俺と高良の2人でバッとエメラルドの指さす方へ顔を向ける......見えた!確かに!

 

そこでは俺たちより年下、小学生くらいの子が交換をしている所だった。交換が白熱しているようで、カードをバラッと机へ広げて相手とこれが欲しいあれが欲しいと話しているようだ。そのバラけたカードが重なり合って少しだけ山になっているところ、その頂点から青い何かがニュっと顔を出している。

 

その青い変なのは時折左右に揺れており、周囲の人はおろかカードの持ち主である少年も気づいていないようだ。見えていないっぽい。

俺たちが近づくまでの間に少年がカードへと手を伸ばした時も、明らかに青い変な何かを手がすり抜けた。実体がなく、見えてもいない。間違いなく精霊だろう。

 

「ごめん!少しいいかな!」

 

「うわっ、な、なに?」

 

「ま、待て待て高良!」

 

精霊だとわかりちょっと興奮しているのか、高良が交換中の少年へと声をかける。......交換中に割り込みはマナー違反だ。明確に定められてるわけじゃ無いけど、印象は良くない。

実際に少年の交換相手は高良の登場に少し不満げな表情を向けている。

 

「その、そのカード見せてもらってモゴッ」

 

「ごめんな!また後で良いから!」

 

「は、はぁ......?」

 

興奮した様子で交渉を始めようとした高良の口を慌てて塞ぎ、そのまま引きずる様にして少しだけ離れた机のところまで移動する。

高良は戸惑った感じで悶えているが、敢えてその状態のまま引きずっていく。

 

「......ぷはぁ!な、遊笑さん一体?」

 

「阿呆、交換中に割り込みは不味いって!マナー違反!」

 

「え......あっ」

 

高良も気づいた様で、口元へ手を当てながら目を見開く。まぁ、初めて来た場所なんだししょうがないか......?

 

「ご、ごめんなさい。私、浮かれちゃってたみたい......」

 

「ん〜まぁ、俺じゃなくて後であの子に謝っとくか。しゃーないよ、俺もその辺教えてなかったし俺も悪かった」

 

「そんな、私の方が、もっと考えて行動すれば......」

 

『コウゥ、すまねぇ俺が急に言ったせいで』

 

『まぁ気にするな、探していた精霊に出会えたってだけでも浮かれてしまうのは無理もないだろうし』

 

エメラルドの方も少し反省しているようで、ほかの仲間やディアベルスターに宥められている。......甲羅の中に籠るのは反省、なのか?

 

「ねぇ、兄ちゃんと姉ちゃん。どうしたの?」

 

そんな事をしていると、先程の少年が声をかけてきた。どうやら交換は終わったようだ。

 

「あ、ごめんな。ちょっと、欲しいカードが見えたみたいで慌ててたんだ。邪魔だったろう、すまん」

 

「えっ、欲しいのあったの?全然いいよ、ちょっと驚いたけど別に困ってはいないから!」

 

「うぅ、ちっちゃい子の優しさが心に痛いぃ......」

 

『落ち着け高良、まだ致命傷だ』

 

『致命傷だと不味いんじゃないか?』

 

『まぁコウはこういう時ヘタレだからな』

 

『ああ、失敗を良く引き摺るし、立ち直りも遅いし』

 

『キュゥ〜』

 

「精霊達の方が手厳しい......ルビーまで同意しちゃうし......」

 

「?せ、何?」

 

「あの姉ちゃんは気にすんな、ほっといて良い」

 

背後の方で精霊たちから言葉でボコボコにされて膝を着いている高良は気にしないことにして、少年と話を進めることにする。幸いにも少年の機嫌は悪くない、このまま精霊のカードを交換する事が出来れば......!

 

「じゃあさっきの所でやろうよ交換!僕まだあそこにカード置いてるし!」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

 

「はいコレ!僕の出せるカードはこれ!どれが欲しいの?」

 

先程少年が交換をしていた机へと戻り、対面に座ったところで少年が持っているカードをまた机の上へと広げる。すぐ後ろではそっとディアベルスターが覗き込んでおり、そのまた後ろではとぼとぼと高良が着いてきている。

 

「ええとだな......」

 

『まだ居るな。あの山の下にある様だ』

 

(あの下だな)

 

「その下の方にありそうだ」

 

「?ここ?」

 

カサカサと少年がカードをよけていくと、あっという間に目的の精霊のカードが現れた。ここまで来ればディアベルスターじゃないが俺でも感じる。精霊が宿っているのだろうそのカードは、他のカードとは違いほんのりと光を纏っていた。

 

「このカードだ」

 

「???」

 

精霊のカードを手に取り少年へと見せる......のだが、何やら少年の顔が曇る。

流石に精霊のカードをいきなり交換指定はまずかったか?

 

「流石にダメか?」

 

「???ごめん、それ僕のカードじゃないや」

 

「は?」

 

「何で僕のカードに混じってるんだろう?それ初めて見たよ!」

 

少年は首を傾げてそう言う。どういう事だ?カードは確かに、少年のカードの山に入っていたものだと思うんだが

 

「あ!じゃあこれ僕のじゃ無いし、お兄ちゃんにあげるよ!」

 

「え、ちょ、待っ」

 

「じゃあね!僕のじゃないし、交換はいいや!僕友達と遊ぶからもう行くね!」

 

「......て」

 

予想外の事に驚いている間に、少年はカードを片付けてあっという間に行ってしまった。後に残されたのは、俺の手に持っていた精霊のカードだけである。

 

「あ、あの、上手くいきました?」

 

「あー、うん。上手く......は無いけどまぁカードは貰えた、かな?」

 

背後から覗き込むように俺の手にあるカードを覗き込む高良。まだ落ちこんでいたと思ったが持ち直したようだ。

 

『あれを上手くいったとは、まぁ言えないだろうな。でも目的の物は手に入れられたんだからヨシだろう』

 

『お、お仲間か?』

 

『どんな精霊何だろうな!』

 

『あれ、カードから出てきてないのか。恥ずかしいのかな?』

 

何はともあれ、当初の予定通り精霊を見つけることが出来た訳だ。宝玉獣達やディアベルスターも興味津々な様で全員で手に入れたカードを取り囲むように覗いている。

ええい、見えてない人には気にならないんだろうけど見えてるからすっごい邪魔!

 

「ちょ、どけお前ら!見えない、見えないから!」

 

「ゆ、遊笑さん!ここでそんな動きは、ちょっと......」

 

「あ。か、蚊がとんでる〜」

 

思わず手をはらいのけるように振り回して精霊達を退かす。が、当然その動きは精霊が見えない以上周囲の人々からは奇行に見えているだろう。周囲で交換していた人達や、通りがかった高校生くらいの人や大人の人、パーカー姿の人など多くの人からの視線を集めてしまっていた。

 

慌てて誤魔化すように独り言を言いつつ適当に手を振ると、見ていた人達は去っていく。

 

「ふぅ......ここじゃ人の目もある、一度落ち着ける場所に移動しよう」

 

「そうですね。皆も、まずは移動しよう」

 

『ま、それもそうだな』

 

『楽しみだなぁ、どんな仲間なんだろうな』

 

『......』

 

「ディアベルスター、どうした?」

 

『ん、いや。何でもない』

 

という事で、俺達は新たな精霊と会話するため人目につかない場所へと移動することにしたのだった。

 

 

 

『......今、何か。気のせいか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、とりあえず見つけたのがここか」

 

「ここなら、そう滅多に人は来ないですね!」

 

『念の為周囲に結界でも張るか?』

 

『そんなことも出来るのか!?ディアベルスターはすごいな!』

 

『魔力は食うが、まぁ......それほどでもあるな』

 

「魔力は節約して欲しいんだが?」

 

場所を変えて、やってきたのはアリーナの外に設置された休憩所。アリーナの入口から少し離れており周囲で行われている催しや出店からも遠いため人の往来は少ない。というか無い。

 

イベントで需要が増えたことで、仮設の休憩スペースもあるためわざわざ遠いここを使う人もいないようだ。

 

「さて、んじゃご挨拶といくか!」

 

「はい!」

 

件の精霊のカードをベンチの上へ置く。さて、カードイラストはあるが精霊そのものはどういった姿になるのやら。

 

「あ、出てきましたよ!」

 

『おお?』

 

カードを置いて少し離れたらすぐにカードがぼんやりと光り出す。光は直ぐに納まり、完全に光が消えた後には一体の小さな精霊が佇んでいた。

 

青い大きな円形の頭......いやカサ、その下は茶色いからだに覆われており、横から伸びるのは絶妙に人間っぽい腕。カサの下にはこちらを刺すような睨みをきかせた赤い目が......

 

( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

 

いやすっごい気の抜けた顔になった。なんだこいつ。

 

「「『......誰この精霊???』」」

 

『ンフンフ』

 

思わず精霊と高良と一緒になってツッコんでしまった。まじで何だ、姿は......キノコだし、でもカサは青いし、大きさもそこそこにあるし。

 

「えーと、その、ディアベルスター。頼んだ」

 

『私?何でだ』

 

「いや、精霊の間でしか言葉が分からないって可能性もあるし、いきなり人よりは同じ精霊が声掛けた方が、な?」

 

『......ハァ。まぁ良いが』

 

謎のキノコ精霊の前にディアベルスターが移動する。高良や宝玉獣達はとりあえず成り行きを見るようで俺と同じく少し横にずれて様子を見ている。

 

『おいお前、名前はなんというんだ?』

 

『ンフ』

 

『......精霊だよな?』

 

『ンフ』

 

『......どこの世界から来た?』

 

『ンフンフ』

 

『........................』

 

「うわ待て待て!それはダメだって!?」

 

『おおお落ち着いてディアベルスター!ちょ、皆も止めて!』

 

『うわわ待って!ダガーは不味い、って力強!?』

 

『思ったより鍛えられてるぅぅ!オイラ達じゃ止められないよォ!』

 

『キュゥ~!』

 

ダメだ、会話が成立しないからディアベルスターがキレてしまった。頑張って質問を繰り返していたがかえってくるのは返事なのかも分からない「ンフ」とかいう鳴き声だけ。

無言でメンチをきりながら懐からスラァッとダガーを抜きはなったディアベルスターを、宝玉獣達に頼んで必死に止めて貰う。

 

宝玉獣総出で止めているにもかかわらずズルズルとキノコ精霊へと近づいていく姿は、なかなかにホラーだ。あいつ本当に魔法使い族か?

 

「ちょ、落ち着けって!もういい、もういいから!」

 

『斬っていいか?いいな?いいよな!?』

 

『良くない〜!』

 

「じゃ、じゃあ私がお話を聞きますので!ディアベルスターさんは落ち着いて、ね!」

 

『ンフ?』

 

「「『『お前(あなた)はもっと慌てろ(てください)!?』』」」

 

この後、5分くらい必死でディアベルスターを宥めた。

 

 

 

 

 

 

「えーと、とりあえずの状況確認するか」

 

「は、はい......」

 

ディアベルスターの怒りをようやく抑えたところで、改めて高良と状況を整理する。少し離れたところではディアベルスターが未だにイライラしているのを隠すことなくカツカツと貧乏ゆすりをしている。とりあえずは話が聞こえる位置ではあるので参加する気はあるのだろう。

 

宝玉獣達は先程のディアベルスターを止めるので限界が来たようで、高良の周りで各々ぐったりとのびている。

 

「とりあえずカードからわかった事として、この精霊の名前は『マタンゴ』、全くそうは見えないけど戦士族のモンスターだな」

 

「......戦士、です?」

 

「言いたいことは分かる。話が止まるから、今はのみこんでくれ」

 

高良がすごく疲労した表情で首を傾げる。こいつもディアベルスターを説得するのに参加していたのでもう疲れているが、流石に疑問が勝った様だ。

 

この精霊、マタンゴというのだが......どう見てもキノコなフォルムだし、なんなら質問したところ本人の認識でも菌糸類らしい。頷いたり首を横に振ったりはできるからYESかNoかで答えられる質問には答えてくれた。

なのに戦士族だそうだ。

 

デュエル・モンスターズのカードでは良くあることでもある。「え、お前どう見ても○○族じゃん」と思うカードでも、全く見当違いの種族だったりするのだ。種族は自己申告制なのでは、なんて言われているというのも納得のガバ設定だ。

マタンゴもそうだ、お前どう見ても戦士族っていうか植物族じゃんか、という見た目をしている。

なのに戦士族だそうだ。

 

「えーと、じゃあ戦士族なのは良しとして、精霊について何か知ってたり元の世界に帰る方法を知ってたりは......」

 

『ンフ』

 

「だそうだ」

 

「え、いやだそうだって......いえなんでもないです」

 

肩を落とす高良に、俺も肩を落としたい気分になる。

諸々ツッコミどころはあるがそれを無視してなお、致命的な事にこの精霊『マタンゴ』、会話によるコミュニケーションが取れないのである。

喋ったと思えば「ンフ」、ボディランゲージ出来るけどなんか左右にフラフラしてるだけで全然理解できない。

 

「お前さぁ、もっとこう、会話とかしてくれよ......」

 

『ンフ?』

 

「ああ、もういいわ......」

 

どうにもならないので首を傾げてユラユラ揺れているマタンゴのカードをそっとカードケースへしまう。こうすると何故かマタンゴの姿は消えるのだ。ディアベルスターとか宝玉獣達とはこの辺何で違うのかはまた調べる必要がありそうだ。

 

『ッチ、結局分からないことが増えただけじゃないか』

 

「まぁ、それでも進歩がない訳じゃないし、とりあえず精霊探しでやり方が間違ってはいないって分かっただけマシだ......と思う事にしよう」

 

『うぅ、それは良いんだが、今度は会話ができる精霊だと良いな......』

 

『ディアベルスター、力凄いんだなぁ。オイラ達全員でも振り回されそうだったぞ』

 

『罪宝狩りの名は伊達じゃない。常に鍛えているからな』

 

「まぁそこは良いとして......高良、とりあえず帰るか?」

 

「え?」

 

疲労感に包まれた体を無理やり動かし立ち上がり、目を回しているルビーを膝の上で介抱している高良へ声をかけた。

時計を見ればそれなりに良い時間。そろそろ空も赤くなりそうな頃合だった。

イベントの方も終わりが近づいているからだろう、聞こえてくる賑わいも何処か落ち着いている様に思う。

 

「そうですね、ルビー達もそろそろ休ませないと。皆も帰ろっか」

 

『そうだなぁ、今日は疲れた』

 

『まぁ、1番疲れた理由は精霊探しじゃ無いってのがアレだけど』

 

『何か?』

 

『『『『いや別に』』』』

 

「遊笑さん、今日はありがとうございました。私、知らないことも沢山知れて嬉しかったです」

 

後ろの方で精霊達がワイワイやっている中、高良がそう言って頭を下げる。

 

「ああ、別にそんな頭下げるほどの事じゃ無いって」

 

「いえ。今までこんな体験した事が無かったです。お友達と一緒に遊ぶなんて、考えられなかった事ですから......」

 

「んじゃ、また行くか」

 

「え?」

 

そう言って少しだけ寂しそうな微笑みを浮かべる高良。それを見ていると、思わず口から言葉が零れた。

 

「今まで出来なかったからって、これからも出来ないなんて事も、しちゃいけないって事も無いだろ?俺でよければこのくらいの遊び、これからも何度でも行ってやるよ」

 

「......!」

 

「だからお礼とか止めてくれよ、恥ずかしい。これからも仲良くしたいんだし、もっと別の言い方が良いよ俺」

 

そう言って頭をかいていると、高良は一瞬呆けた後、嬉しそうに笑いながら何度も頷いていた。

 

「はい......はい!じゃあ、また明日!」

 

「ん、おう。また明日な!遊鮮と遊香も呼ぶから、明日はRYOに行こうぜ!折角だし高良のデュエルの腕を鍛えてやるよ!」

 

「そ、そうなると頑張らないと。ですね」

 

「ああ!」

 

高良の顔に笑顔が戻る。少し目元が湿ってるっぽいけど、笑えるならよかった。

 

『......わぁお』

 

『キザなセリフ......いやコウくらいの性格ならこのくらいグイグイ来た方が良いか?』

 

『遊笑がお友達になってくれてマジで良かった!』

 

『キュゥキュゥ~!』

 

『素でコレとは中々にやるな』

 

......後ろの方でわちゃわちゃしてたはずの精霊達が、いつの間にかこちらを見てニヤニヤしていた。あーくそ、そう思うとなんか恥ずかしい!

 

「じゃあな高良!また明日、んじゃ昼に来いよ!」

 

「あっ、は、はい!また、明日!」

 

気恥ずかしくなったので、勢いで誤魔化すようにまくし立ててそのまま走り去る事にした。振り向く直前、高良はずっと手を振っていた。

 

「あーくそ、恥ずかしかった......」

 

『......遊笑』

 

「......うん?」

 

高良達と別れてから少しして。アリーナから離れたところで不意にディアベルスターが声をかけてくる。

その声色は普段のやや気だるげなものではなく、敵意の籠ったものだ。

 

「なんだ一体?」

 

『......いや、何でもない』

 

「?変な奴」

 

『......』

(妙な気配を感じたと、思ったんだがな。一瞬で消えた......警戒しすぎか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日は良かったなコウ』

 

「うん、皆も楽しかった?」

 

『ああ!でもあの射的ってやつは惜しかったよなぁ〜』

 

『精霊も、まさかマタンゴみたいな者がいるとはねぇ』

 

『喋れないだけならルビーとかの前例あるけど、あそこまで会話が出来ないとはな』

 

『キュゥ』

 

遊笑さんと別れて、宝玉獣達とおしゃべりをしながら帰路につく。人通りの少ない路地裏を歩いているので、遠慮することなく精霊達と会話していた。

 

今日はとても楽しかった。今までは家の方針もあって外の催しに行くことも友人と遊ぶ事もなかったからどうなるかと思ったけど、遊笑さんは私のことをとても良くしてくれた。

 

(私なんかの、為に......)

 

遊笑さん。遊鮮さん、遊香さんと共に私の初めての友達になってくれた人。そして、精霊が見える人。私と同じく精霊を見ることができる―――私と同じ世界を見てくれる人。

 

「明日。また、明日。ふふっ」

 

明日も、友達に。友達に会えるんだ。

その喜びを噛み締めるように、思わず口から独り言がこぼれてしまう。ハッとなって皆を見れば、生暖かい目で見守られていた。うぅ、浮かれすぎてて恥ずかしい......。

 

『ん?コウ、人だ』

 

(あ、本当だ)

 

ふと前を向くと、人が1人、歩いてくるのが見えた。あまり人が通らないような路地裏を選んだのに、なんて思いながらすれ違う為精霊たちとは喋らずそっと横へ避け―――

 

 

 

路地裏を選んだ?あれ、私この辺りへ来たのは初めてのはず―――

 

「ヒヒッ、かかった」

 

「え?」

 

『え?』

 

すれ違う寸前、その人―――黒いパーカーの、フードを目深に被った人がそう呟いた。それに驚き固まった次の瞬間

 

 

精霊の1人、エメラルドが私から離れていった。

 

 

 

 

『えぇ!?』

 

『ちょ、エメラルド!?』

 

『どうした、なんで離れられてるんだ!?』

 

『お、オイラにも分からない!?』

 

『!コウ、カードケース!』

 

「え......!ウソ、開いてる!?」

 

サファイアに言われて慌ててカードケースを確認すると、ちゃんと閉めていたはずのケースが開いていた。そこで不意に、遊笑さんと一緒にいた時共有した精霊についての話が蘇る。

 

『精霊は、カードから1、2mくらいしか離れられない』

 

「......!」

 

状況と、先程の言葉。そしてエメラルドが離れてしまった事実。弾かれたように顔を上げ通りすがった黒パーカーの人へと目を向ける。

 

その人は、そのまま去っているなんてことはなくこちらへ向いて立っていた。フードで隠した顔からギリギリ見える口元は悪辣に笑みを浮かべている。

そして手には、エメラルドのカードが握られていた。

 

それに気づいた時には、自然に体が動いていた。滅多に表に出さない怒りの感情のままに、ズンズンと距離を詰め黒パーカーの人へとぶつける。

 

「返してください!それは、私の大切な!」

 

「はいよ」

 

「!?」

 

ひったくろうとしたカードは、意外にもすんなりと手渡された。拍子抜けな状況に思わず固まっていると、黒パーカーの人が空いていたもう片方の手を動かし、エメラルドが放れた事で空いた手と勢いよく合わせ、パンと乾いた音が鳴る。

 

「ヒーッヒッヒ!引っかかった引っかかった。嬢ちゃん、わっかりやすいねぇ」

 

「な、何を......?」

 

『コウ!今は逃げろ!この人間、何かヤバい!』

 

不気味な行動に恐怖を感じ1歩後ずさる。その時アンバーがそう警告し、それに反応して半ば無意識に踵を返し走り出す。

.....が、何故か少し離れた辺りで見えない壁にぶつかってしまった。

 

「キャア!?」

 

『コウ!?』

 

「ハイ残念、逃げられないんですねぇ〜これが!」

 

ぶつかった衝撃で倒れてしまった私を嘲笑うように、黒パーカーの人はげらげらと笑う。

 

「な、何なんですか......!私、何もしていません!」

 

「うんうん、何もしてないよねぇ〜。でもねぇ」

 

恐怖でいっぱいになる頭をどうにか振り払い上辺だけでも強気に叫ぶが、パーカーの人はそれすら可笑しいのかヘラヘラと笑うのをやめない......と思った次の瞬間、スっとその笑みが収まり尋常ではないほど不気味で冷えた声色に変わる。

 

「君ィ、持ってるよねぇ精霊?」

 

「!精霊を、知ってるんですか!?」

 

「あーまぁ見えてるってのはずっと監視してて気づいてるしまぁいいや」

 

『か、監視だと?まさかコイツ、ずっと尾行してきてたのか!?』

 

「その通りだよ?」

 

「!?」

 

(今、精霊に反応を......!)

 

この人は一体?そう思いつつどうやって逃げようかと考えていると、黒パーカーの人は再び笑みを浮かべこちらを指さしてきた。

 

「逃げようってのは無理だからね?今この場所には人払いの結界とか、中の存在が条件を満たさないと出られない結界とか、まぁ色々あるからさぁ」

 

「......その、条件って?」

 

「デュエル」

 

「!」

 

気づいた時には、パーカーの人の腕に見覚えのある機械―――デュエルディスクが装着されていた。

パーカーの人はゆっくりと、見せつけるようにデッキをシャッフルしてデュエルディスクへとセットする。

 

「勝ち負けはまぁ関係無いんだよねぇ。デュエルして、どっちかが勝てば終わり。ね、簡単でがしょ?」

 

「......」

 

「出たくないなら良いよ?でも出たいならデュエル、やる以外の選択肢は無い」

 

『コウ、罠だ。絶対何かある、乗せられるな!』

 

こちらを伺うようにデュエルディスクを構えて待つパーカーの人。周囲では皆が私を守るように集まってくれているが、罠があるかもと止めてくれる。

でも、この状況は......!

 

(確かに怪しいし、本当にデュエルする「だけ」なわけが無い......でも!)

 

「分かりました。やります」

 

「good!」

 

『コウ!?』

 

持っていた鞄から最新式のコンパクトタイプのデュエルディスクを取りだし、腕にセットする。

「READY」というアナウンスと共に伸縮式のディスクが展開しカードケースからデッキをセットする。盗られたエメラルドも大事に確認してデッキへ入れ、スイッチを押せばデュエルディスクのオートシャッフル機能が作動しデッキが混ぜられる。

 

「怪しい、怪しいけど逃げられない以上どうしようもないよ」

 

『そ、それはそうだが......!』

 

「それに、勝てば問題は無いでしょ?」

 

『キュゥ~』

 

心配するように不安げな表情で肩にすり寄ってくるルビー。それもそうだ、私はデュエルが非常に苦手なのだ。

授業でも同級生に驚かれるほど弱く、少・中学校でも授業の試験ではいつも及第点しか貰ったことがない。

実際今も、強気なことは言ってみたけど手の震えが止まらない。緊張とも、恐怖とも分からない感覚に前後不覚に陥りそうな状態だ。

 

......それでも。

 

「エメラルドを、家族を危険な目に遭わされて、黙っていることなんて私には出来ないよ!」

 

「ッヒョ〜!良いねぇ家族愛。勝てる勝てる、愛と勇気は負けないもんね〜」

 

小馬鹿にするような発言をするパーカーの人、口調は嘲るような感じだがそれ以上にこちらへの敵意のようなものがヒシヒシと伝わってくる。

 

「それでも!負けないもん!」

 

「ヒョーッヒョ、んじゃまぁ早速、闇のデュエル開始...ってかぁ!」

 

「「デュエル!」」

 

 

 

高良

vs

黒パーカーの人




なっっっが!1万文字は流石に助長がすぎるか。
メンチきりベルスターの表情は、「スネークアイ追走劇」ってカードを検索して見てください。イメージは大体あの面です。
次回、デュエル回
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