新たに曇らせタグ追加ヨシ!
嫌いだよって人はごめんね!
「負け......た......?」
膝をつき呆然と地面を見つめるしかない。
後攻からのワンターンキルです。なんの言い訳の余地もない、完敗。
「ヒョッヒョッヒョ、手札が良かったとはいえ手応え無さすぎるねぇ〜?」
「っ......!」
デュエルが終わり、ニヤニヤと嗤いながらこちらへ近づいてくるパーカーの人。
その不気味な様子に、思わず肩に乗っていたルビーを抱きかかえました。
「さて、勝ったからには貰うっすよ?あんたの精霊、ぜーんぶ」
「い、嫌です!第一、無理やり始めておいて、素直にアンティルールに従うと思いますか!?」
突き出された手とともに告げられる、精霊の譲渡......いえ、もはや強奪に近い宣言。
パーカーの人を睨みつけながら後ずさるが、やがて背後の謎の闇にぶつかってしまいました。見た目は不気味に蠢いているだけだが、どういう訳か物理的な接触が出来るものの様です。
「はぁ?......あ〜〜〜なぁるほどぉ。俺とした事が。ヒョッヒョ、まともに教えてあげてなかったっすねぇ?」
「な、何をですか......!?」
私の様子を見て一瞬動きが止まったパーカーの人。しかし次の瞬間には、やれやれと首を横に振りながら苦笑していました。
説明って一体......?
嫌な予感を覚え、パーカーの人から距離を取ろうと何度も闇へぶつかりどうにか逃げられないかと試みる。するとパーカーの人は、悠然と1枚のカードを取り出して見せた。
「これ、なぁんだ?」
「カード......いや、白紙?」
それは本来モンスターのイラストが描かれている部分が真っ白な背景のみの、いわゆるエラーカード。珍しくはありますがデュエルでも使えず、コレクションとしての価値も無いとアカデミアでも習った代物です。実用性皆無のそれを不意に見せられたことに怪訝な表情を向けていると......
『コウ、気をつけろ!何か嫌なよか』
「......ぇ、ぁ?」
私とルビーを守ろうと、翼をはためかせパーカーの人の前に躍り出てくれたサファイアが......消えた。最初からそこに居なかったかの様に忽然と姿が。いや、先程まではためかせていた翼から舞い落ちていたいくつかの羽すらも、1枚も残っていません。
「サファイア...?サファイア......!?どこ!?」
『き、消えた......?一体何g』
「!トパーズ!?」
『どうなって』
『コウ!ルビーとにげ』
「エメラルド!アメジスト!?」
トパーズ、エメラルド、アメジスト。3人もサファイアと同じように消えてしまいます。
......まさか!
不意に生じた予感に従い、パーカーの人を―――いや、パーカーの人が持っているエラーカードを見る。
「!!!な、なんで......!?」
さっきまではエラーカードだった、白紙のカードには。本来のイラストよりも苦しそうに表情を歪めた『宝玉獣 サファイア・ペガサス』の姿があった。
「はーいげぇーっと!ついでに最後の挨拶させてあげるっすよォほれほれぇ、ヒョーッヒョッヒョ」
「え、あ......」
上機嫌にカードを見せびらかしてきていたパーカーの人が、新たに数枚のカードをポケットから取り出す。全部で6枚、そしてそのうちの3枚には......トパーズ達が描かれていた。
「あ......あぁ......!」
「そんでもってそこの3匹、そいつらも対象なんだよねぇ。って事でぇ、いただきまぁ〜す」
『コウ!』
「アンバー!?」
意気揚々とカードを掲げるパーカーの人。頭が真っ白になってしまい、動けないままにその様子を見ているしかない私を守るように、アンバーが立ち塞がってくれる。
『こいつはヤバい!コバルト、ルビー!コウを連れて早くここから出』
『う、うわああああ!?助けてくれコウ!』
「コ、コバルト......!」
しかし、そんなアンバーの試みも虚しくあっという間に姿が消え、スゥっとパーカーの人の持つカードへ吸い込まれてしまう。
その横では必死に羽ばたき逃げながら私へと助けを求めるコバルト。咄嗟に伸ばした手は空を切り、また同じ。
パーカーの人の手に持ったカードは、6枚がイラストを得ていた。......皆、苦悶の表情を浮かべて。
「こいつらの効果......俺のデッキには入んないかぁ。っち!使えねぇ」
「......は、はぁっ、は、はっ!はぁっ!!」
何か、パーカーの人が言っている。でも、何も聞こえません。息が、肺が苦しい。上手く呼吸ができず胸を抑えてうずくまってしまう。
その最中、辛うじて頭を持ち上げ自分の目の前を見ると―――最後の一人になっても、私を守ろうとパーカーの人へと威嚇するルビーがいた。
ヒュッ、と呼吸が止まる。決して、安心したからじゃない。むしろ、嫌な汗がドッと溢れ出し息が詰まった感覚がした。
まずルビーを、次いでパーカーの人へ視線を向け......パーカーの人が満面の笑み、いや嘲笑を浮かべてカードを掲げているのが目に留まる。
『クルルルルル!キュゥ!』
「っ!だめルビー!逃げて!」
「はいお疲れ〜」
パーカーの人へと飛びかかったルビー。手を伸ばし、静止しようとした次の瞬間には
「............ルビー?」
その姿は他の皆と同様に消えていった。
「ルビー......?」
目の前の事態が理解出来ず、どこかへと消えてしまった家族の名を思わず呟きました。
しかし返事は無く、血の気が引いた顔でゆらゆらと周囲を見渡し......そして目の前で薄ら笑いを浮かべたパーカーの人が持つカードへと目がいく。
「ありがとうねぇ、精霊を一度にこの量ゲット出来る機会なんてそうそう無いから助かったぜぇ、ヒョッヒョッヒョ!」
「ぁ......?」
7枚のカード、そこには先程まで一緒にいたはずの......家族同然だった7人の宝玉獣達が、ルビー達がいた。
弾かれたように慌ててデュエルディスクからデッキを引き抜き、カードを見る。
「あ......あぁ......!」
7枚の宝玉獣のカード達。イラストやカードテキストに変化は無い。しかし、そこには今まであった気配の様な......生気のようなものが完全に失われた、ただのカードとしか言いようのない物が残っていた。
そしてパーカーの人の持つカードには......そこには、確かに精霊たちの気配があった。
皆、苦悶の表情を見せている。
何故?
私が負けたからだ。
私が負けて、そして奪われた。
だから、あそこで皆、苦しんでいる。
「......して」
「あん?」
「かえして、下さい......」
パーカーの人は、怪訝な表情でこちらを睨みつけています。普段の私であれば、そのような態度を取られれば気が引けて黙り込んでいただろう。
でも、今は。今だけは、どうしても引けなかった。
「お願い......します......ルビー達を......返してください......」
「はぁ〜?」
「お願いです......家族、なんです......他の、何でも渡します......皆を、返して......」
立っていられなかった、というのもある。誠意を見せるというのもある。色々な理由があったが、必死にパーカーの人の前に膝をつき、頭を下げる。
いわゆる土下座に近いくらいまで頭を下げ、願い出る。
それ以外に、何も思いつかなかったからだ。頭の中は、悲しみと焦燥感でいっぱいだった。ただ、精霊たちを返してもらう。それのみしかなかった。
喋るのが困難な程に涙も溢れ出て、ポツポツと地面に染みを作る。
だからだろう。歩く音が近づき、パーカーの人の気配が自分の前まで来た時。愚かにも私は、ああ、返してくれるんだ。なんて酷く楽観的な事を考え、頭を上げてしまった。
「だぁれがせっかく手に入れたもん返すかよばぁ〜か。ヒョッヒョッヒョ、残念でした〜。じゃあな〜♪」
「ぇ、え?」
パーカーの人がそう言って、精霊たちが閉じ込められたカードを私の目の前でヒラヒラと揺らしながら嗤っていた。私が呆然とそれを見ている間に、パーカーの人は路地の向こうへと歩き出しす。
まだ周囲の闇は消えていなかったが、それでも迷い無い足取りを見るにあの人はこの闇に縛られないのだろう。このまま見ていれば、あの人はいなくなり......もう、ルビーたちには。皆には会えなくなるのだ。
「......ぁ、ぃゃ......!」
そう気づいた時には、私は駆け出していた。
「ダメぇぇぇぇ!!」
「うぉわぁ!?」
パーカーの人に背後から飛びつき、これ以上行かせまいと踏ん張る。完全に油断していたのだろう、パーカーの人は慌てた様子で私を引き剥がそうと体を揺すり始める。
「離せよ、もう勝負終わったんだからさぁ!諦めろよ!」
「お願いです!返して!皆を、皆を返してください!」
「物わかりの悪い奴だなぁお前!お前は負けたの!敗者が勝者に奪われるのなんて、常識だろうが!」
必死にくらいつくが、相手はおそらく男性、体格差や力の差は歴然であり腰あたりを掴んだ手はあっという間に剥がされてしまい、慌ててパーカーの裾を掴む。
段々相手も鬱陶しく思い始めているようで、辛うじてあったのであろう遠慮が消え、腕が痛くなる程にほどきにかかる力が強くなる。
でも、離せない。離したくない......!
「お願いです!何でもあげます!他の、私の持ってるものならなんでもあげます!だからどうか!皆だけは、私から奪わないでください!」
「やだね」
「あっ!?」
振りほどかれ、勢い余って後ろに倒れてしまう。慌てて起きた私へと、パーカーの人は変なものを見るように顔を顰めて吐き捨てる様に言った。
「負けたんだからさっさと消えろよ、うざってぇ。精霊を持たないお前に用はねぇっての。はーやだやだ弱者ってのはこれだから」
「あ、ああ......!」
行ってしまう。パーカーの人は言いたい事は言い切ったのだろう、こちらをもう見もせずに歩き出す。
私にはもう、先程の攻防でそれを止められるだけの力は残っていなかった。
「あぁ......!!」
......ああ、もう、皆には会えないのか。
その事実がふと頭をよぎった時、私の中の何かが限界を超えたのを感じた。
「たす、けて......たすけて......!遊笑くん......!」
『シルウィア!』
『イッテイーヨ!』
「は!?」
「―――――――――ぇ?」
その時だった。路地裏を覆っている闇、その一部に亀裂が走る。パーカーの人にとってそれは予想外だったのか、驚愕したような声がした後、闇がまるで鏡を割ったかの様な音を立て、亀裂の部分から崩れ壊れていく。
その先から、1人の―――いや、2人の人物が中へと飛びこんできた。
「な、何事ぶべらっ!?」
「間に合ったか!」
『!いたぞ、高良だ!』
2人の人物のうちの一人は、驚愕して固まるパーカーの人を盛大な飛び蹴りで吹っ飛ばしてしまい、もう1人とと共に私の目の前まで滑り込んできた。
1人は黒いフードをかぶり、片腕に真っ黒な怪物の頭をつけた長身の女性。
私ともう1人の人を守るように前に立ち、パーカーの人を警戒している。
そして......もう1人。別れたのはつい先程だが、もうずっと会っていなかった人に会った様な、そして先程までの絶望感を払ってくれる頼もしい背中。私を守る為に、目の前に立ってくれるその姿に思わず涙がこぼれた。
「よく頑張った、コウ。後は任せとけ!」
「遊笑、くん......!」
振り返り、安心させてくれる笑みを見せてくれるその人―――遊笑くんに見とれている間に、パーカーの人は頭を擦りながら起き上がり私と遊笑くんを睨みつける。
「ってぇ〜、何だお前?どうやって入って......って、なぁ!?け、結界が!?」
驚きの声をあげるパーカーの人、その視線の先には、さっきまではどうにもならないと思うほど頑丈だった闇がバキバキに壊れ、大穴が空いていた。信じられない、という表情のパーカーの人に、長身の女性―――ディアベルスターがドヤ顔で手にした鎌を肩に乗せ直す。
『結界だったのか?随分と脆かったもんだから、簡単に入れたぞ』
「何をぉ!?って、んん?お前......精霊か!?」
「おい、黒パー野郎」
パーカーの人へと声をかける遊笑くん。その声は今日一緒にいた中で聞いた優しさを感じる声からは程遠い、酷くドスの効いた声だった。
「てめぇ、コウに......俺の友達に手ぇ出して、タダで済むと思うなよ!」
「......あっ、てめぇさっきそいつと一緒にいた奴か!」
パーカーの人は驚愕の表情を浮かべつつも、すぐにニヤリと笑いながらデュエルディスクを構えた。
それに呼応する様に、遊笑くんもデュエルディスクを取りだしている。
デュエルが始まる。その予感に従い、私は遊笑くんの傍から少し離れる。
「まぁいい、ついでにその精霊も頂いてやるよ!」
『遊笑、気を抜くな。こいつの雰囲気、嫌なものを感じる......!』
「わかってる!全力でいくぞ!」
「「デュエル!!」」
2人の威勢の良い掛け声とともに、デュエルが始まりまるのだった。
実は(5)と(6)はまとめて1話にする予定でした。
分けた理由は...まぁ、1万字はちょっと長すぎるなって...
次回、パーカーのナントカゼクターさんvs遊笑くん
〜軽い報告〜
今後は余程のことがない限り18:30投稿で時間を揃えます。
週一で投稿できればアニメ放送の時間っぽくて良いんだがなぁ...
あと、活動報告で登場させて欲しいデッキ募集に投稿してくださった方々へ。
ありがとうございます。デッキ全部作ったんで全部出します(大盤振舞侍)
これからも活動報告の投稿は確認しますので、これぞというデッキのある方はどうぞお気軽な投票を。強欲で強欲な壺の作者は感想も大歓迎です。