投稿が遅れた原因は、本作の「Q.伝説って?」回にしれっと追加しておきました。
「先攻は俺ッスねぇ!俺のターン!」
相手の妙なパーカー男が、威勢よくターン開始を宣言する。
コウと別れてすぐにディアベルスターが妙な力を感じたと言い出した時は、何が何だかという状況だったが……。
探して正解だった、このクソ野郎はコウの精霊たちを何らかの方法で奪っていったらしい。
俺の持つ精霊も奪う、と言っていた。やり方は分からないが、奪えると言うからには「出来る」のだろう。
「気をつけろよディアベルスター。何されるか分からない以上、警戒するに越したことはない!」
『わかってる、まずはデュエルで勝て。その後で縛って囲んで叩いて尋問だ』
「わぁおすげーこと言うなお前」
「ヒョッヒョ、随分と物騒なこと言う精霊だなぁ?でもそんな未来は来ないねぇ!俺はフィールド魔法、『Gボール・パーク』を発動!」
パーカー男が自信満々でカードをディスクへと差し込み、周囲の風景が変化する。カードが適用されて現れたのは……野球場?
「ゆ、遊笑くん、気をつけて……!このフィールド魔法、すごく危ない効果を!」
「おおっと、それ以上は許されねぇなぁ!敗者は敗者らしく、大人しくしときな!」
「!うぅ……」
「サンキュー、コウ。それ以上は大丈夫だ、絶対お前の家族は取り返す!」
相手の発動したフィールド魔法について教えようとしてくれたコウを労いつつ、フィールドからパーカー男へと視線を移す。コウはどうやらこのフィールドのせいでやられたようだ。
そして相手のあの自信満々の姿、間違いなく何かしらのギミックを仕込んでいるタイプだろう。
『油断してないのは良いが、既にここは相手のテリトリーだ。慎重にな』
「わかってる。さぁ、次はどうすんだ!」
「そう叫ばなくても良いさ。折角の先攻だが、俺のデッキは展開しまくるデッキじゃないんでなぁ?俺は手札から、『ゴキボール』を召喚!更にカードを1枚伏せてターンエンドだ!」
「うげっ、ゴキボール!?」
パーカー男が召喚したのは、『ゴキボール』。名前の通りの黒光りする不快害虫そのものな姿は、並み居るゲテモノモンスターを押しのけて「ソリッド・ヴィジョンで見たくないモンスターランキング」にて上位をキープし続けている。
ついでに言うと、「GCC何考えてるんだ」と常にネットで不満が書き込まれるくらいパックから出てくる、所謂「ハズレカード」でもある。
『……おい、アレってゴキブ』
「やめろぉい!それはアカン、名前を呼んではいけないあの人レベルにアカン!」
『どの人の事言っているんだそれ』
「あ、あそこまで直接的なイラストはちょっと無理です……」
『大丈夫かコウ!?くそ、たかがゴキ「言うなって!」のくせになんて影響力だ!』
「ヒョッヒョッヒョ!この程度で弱ってるようじゃダメだぜ?俺様の蟲デッキの恐ろしさは、これからなんだからなぁ!」
「さぁ!俺のターンは終了した!かかってこいよってなぁ!」
「俺のターン!ドロー!」
なんとも言えない空気になってしまった2人(と精霊1人)だが、努めてそれに触れることなくデュエルが続行される。
ちなみに、ここまでの流れの中でゴキボールは何も反応していない。
それが精霊の憑いていないカードだからなのか、それとも精霊そのものにそこまで感情が無いからなのかは分からない。
なので、何故か彼(もしくは彼女)の目に当たる部分が水気を含んでいることからは、全員が目を逸らした。
(ちょっと変な流れにはなったけど、こいつが悪人だってことには変わりないんだ。どうにか勝って、宝玉獣達を取り戻す算段をつけないと!)
手札は……よし、悪くない!
横で浮いているディアベルスターへと目配せすれば、頼もしい相棒は言葉は無くとも力強く頷いてくれる。
「俺は手札のカードを1枚墓地へ送り、モンスターを特殊召喚する!」
『早速仕事だ、コウの分までぶちのめしてやる』
俺のフィールドに不可思議な光が描かれ、それはゆっくりと魔法陣を形作っていく。
「漆黒の罪宝纏いし魔女よ!数多の宝を解放し、我が敵へと滅びを齎せ!―――特殊召喚!『黒魔女ディアベルスター』!」
「……フン」
現れるのは、頼もしき俺の切り札である魔女、ディアベルスター。手に持ったダガーをクルリと回すその姿は様になっているが、友人であるコウや同類である宝玉獣達を苦しませたパーカー男に思う所がありまくる様で、その表情は先程マタンゴを襲おうとした時以上に恐ろしいものとなっていた。
「ほうほう?簡単に出せる条件付きの高レベルモンスター……ヒョッヒョ!種族属性はアレだが俺のデッキでも活躍しそうな効果だ!これはゲットした後が楽しみだなぁ!」
「そんな未来は来ないぜ!ディアベルスターの効果発動!このカードの召喚・特殊召喚時、デッキから『罪宝』カードを1枚、フィールドへセットする!俺はデッキから、『裏切りの罪宝―シルウィア』をセット!」
『マカセロヨー』
伏せられたシルウィアが、頼もしいgoodサインをしつつ伏せカードへと入っていく。一連の効果を見ていたパーカー男は、何故か怪訝な表情を浮かべているようだ。
「罠カードにも精霊だと?いやまさかな、気のせいか……」
「何を呟いてるんだか知らないが、まだ俺は召喚権を残しているぜ!俺は手札から、『魔導戦士ブレイカー』を召喚!」
『ハァ!』
「効果で召喚成功時に魔力カウンターを一つ、こいつに乗せるぜ!攻撃力もアップするので、これで攻撃力は1900!」
呼び出したのは、俺のデッキでもよく先陣をきるモンスターであるブレイカー。その手に持った盾に魔力が宿り、勇ましく剣を構えて攻撃に備えている。
「おぉ怖い怖い、ゴキボールの攻撃力じゃあそっちのモンスターたちの攻撃力には敵わねぇなぁ~?」
パーカー男はそう言っているが、声色や態度は少しも焦っていない。むしろ積極的に攻撃してほしいと言わんばかりの態度だ。それにコウの発言……!
「ブレイカーの効果を発動!魔力カウンターを一つ取り除き、フィールドの魔法罠カードを一枚破壊する!対象は―――フィールド魔法!」
「!」
「へぇ……?」
ブレイカーが盾を空へとかざす。盾に付いていた宝玉のような装飾から光が放たれ、周囲の景色にヒビが走る。やがてそのヒビはフィールド全体に広がり、次の瞬間には耐えられなくなったように砕け散っていった。
「なるほど、そっちの子よりは『分かってる』デュエリストだったわけだねぇ?いいね、少しは本腰入れる気になったぜ」
「でもこれで、フィールド魔法はもう無い!いくぜ、バトルフェイズ!」
コウを苦しめたらしいフィールド魔法は破壊したが、伏せカードが一枚。普通ならあれも対処してから攻撃したかったがこれ以上魔法罠を処理できるカードは手札には無かった。
攻撃するべきかは迷いどころだろうが、それでも行く!あのフィールド魔法、先程の反応を見るに攻撃や戦闘に関連した効果を持ってると見た。それなら今、このターンで攻める!
フィールド魔法はその特性上、相手ターンに張りなおすのは難しい。次のターンまで待ってしまって、もう一回張りなおされたりしたらまた処理する必要が出てしまう!
「行くぞ!魔導戦士ブレイカー、ゴキボールに攻撃!」
『ハァァ!』
『⁉⁉』
ブレイカーは俺の攻撃宣言を受けて、相手モンスターに突撃する。その手に持った剣が鈍く光り、その切っ先が向けられるのはゴキボール。これでまずはダメージを与えて優位に……!
「ヒョッヒョ。良い思い切り、でも今回は俺の勝ち!」
「!?」
「攻撃宣言時、リバースカードオープン!『メタバース』!」
「なっ!?」
攻撃反応罠……じゃない!?発動と同時に周囲の風景が、再び姿を変えていく。これってまさか!?
「メタバースは、デッキからフィールド魔法を一枚!手札に加えるか―――直接フィールドに発動できる!」
「しまった!?」
「策は良かったが、伏せカードにも対処できなかった時点でアウトっすよぉ!俺はデッキから再び、『Gボール・パーク』を発動!」
まっずい!攻撃してしまったこのタイミングで、またこのフィールド魔法!周囲が再び野球場のような場所へと姿を変えてしまう。ってことは、やっぱりこのフィールドの効果は……!
「さぁて、お待ちかね!この戦闘のダメージ計算時、Gボール・パークの効果発動!この戦闘でのお互いのダメージを0にする!そしてデッキから、レベル4以下の昆虫族モンスターを一体墓地へ!俺はデッキから、『ゴキポール』を墓地へ!」
「ダメージを0に!?」
ブレイカーが一刀のもとに切り伏せ、断末魔のような絶叫を上げゴキボールは爆発、撃破出来た。しかし、そのダメージは0となってしまう。
それに、さっき墓地へと送られたモンスター。普通ならただのコストだけど、ひょっとして何かヤバい効果でもあるんじゃ……。
『な!?遊笑、何か来る!』
「ディアベルスター!?」
何だ!?攻撃したわけでもないディアベルスターが、急に地面から現れたモンスターに囲まれていく。これは……さっき墓地へ行ったゴキポール!?
「当然、ただ墓地へ送っただけな訳ないっすよねぇ!『ゴキポール』は、墓地へ送られた場合効果でデッキから昆虫族を一体、手札に加える!そしてそれが通常モンスターだった場合、そのまま特殊召喚しその攻撃力以上の攻撃力を持つフィールドのモンスターを破壊できる!
俺がデッキから手札に加えたモンスターは『甲虫装甲騎士』。通常モンスターなので特殊召喚し、ついでにその攻撃力よりも高い攻撃力を持ってたお前のモンスター、ディアベルスターを破壊って寸法よぉ!ヒョ―ヒョッヒョ!」
『遊笑……!っち!ダメか、後は頼む!』
「ディアベルスター!」
のばした手は届かず、ディアベルスターはそのままゴキポールに囲まれたまま地面へと消えてしまった。それに合わせてデュエルディスクでも処理が行われ、ディアベルスターのカードは墓地へと送られてしまう。
「ダメージを失くし、更に妨害まで出来るのか……一枚でやりすぎだろ!」
「おいおい、ダメージは無くてもゴキボールはやられちまったんだし、別にそこまでおかしくはねぇぜ?まぁありがとよ、おかげでゴキボールより強いモンスターを持ってこれた!」
「……バトルフェイズを終了、ターンエンドだ」
厄介なことになってしまった。盤面だけ見れば、相手も俺も減ったモンスターは一体ずつ、残っているモンスターの数も一体。数では互角だけど、相手のモンスターは攻撃力が1900、下級モンスターの中では手強い攻撃力だ。ブレイカーも本来は同等の攻撃力を持っているんだが、今は魔力カウンターを使ってしまったから1600、負けてしまっている。
相手の厄介なフィールド魔法は健在。でもそれよりも、何よりもマズいのはやっぱりディアベルスターがやられた事だろう。
切り札がやられてしまう、というのはやはり相当ショックだし、何より戦略的に辛い。相手を詰める手段が一つ減る、というのはそれだけでデュエルの流れに多大な影響を及ぼす。……師匠が言っていた通りか!
『くそ、最悪な気分だ。しばらく虫は見たくないな』
「ディアベルスター!大丈夫か!?」
『精霊としては問題ない。だが、このデュエルではマズいことになったぞ。ここからは状況にもよるが私抜きで、アイツに勝たないといけない』
「ああ、分かってる」
分かってはいるけど、正直きっつい!ディアベルスターは出しやすいし攻撃力もあるし、効果も便利だしで重宝してるからなぁ……!伏せもあるし手札もまだやれる。だから相手の攻撃を凌ぐのはまぁ頑張れそうだが、その後俺のターンで勝てるかどうか……。
「さぁて、あとはなぶり殺しっすかねぇ?俺のターン!」
パーカー男がカードをドローし、ニヤリと笑う。その姿は非常に楽しそうで、こちらを甚振りたいと顔に書いてあるかのようだ。
「ゆ、遊笑くん……!もういい、もういいよ!遊笑くんだけでも、逃げ」
「……大丈夫だコウ」
「え?」
背後で心配げな声をあげるコウへと振り向き、いつもより頑張って口角をあげ親指を立てる。
「大丈夫だ、絶対にお前の家族は取り返してみせる!安心して見てろ!」
「!……う、うん!」
未だに不安げな様子ではあったが、目元に涙をにじませながらも少しだけ微笑み、気を持ち直した様子のコウを横目にデュエルへと意識を戻す。
背後に立つディアベルスターは、そんな俺たちの様子をひどく冷めた目で見つめていた。
『コウにはああ言っているが……状況はかなりマズいだろう?それに、勝敗がつくまでこのデュエルからは逃げられないだろうし』
「ああ、でもやるしかねぇ」
相手のフィールドには、戦闘で無類の厄介さを誇るフィールド魔法がある。あのフィールドを何とかしないと、どれだけ強いモンスターを呼び出せても意味がない。
また昆虫族モンスターを墓地へ送られて適当な昆虫族の展開と破壊で取られるのがオチだ。
(そうなると、デッキの中身と手札的に「あの」カードを引かないと勝てない……)
「上等!」
「?へぇ、まだ戦うつもりか?」
ドローフェイズ、デッキに手をかけた俺を見てパーカー男は見下したように笑う。その様子や発言は、もう勝負はついたと言わんばかりだ。
―――冗談じゃねぇ!
「デュエルは最後まで分からない!最後のドロー、最後の手札!墓地に除外にエクストラ、全てが逆転の一手になる!それが、デュエルモンスターズだ!」
(だよな、師匠!)
記憶の中、今この場にいない人物のその凛とした後ろ姿と、たなびく若干の灰色が混じった白い髪を幻視しながら―――デッキから勢いよくカードを引き抜いた。
「……ドロー!」
活動報告にデッキ案を投げてくださった方には申し訳ないのですが、作ったデッキの大半がぜんっぜん使いこなせてないです...
あ、明日も同時刻投稿予定。