遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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vs不審者パーカー男、続き。次からしばらく機械万歳がメインの話が動きます。そっちの方が筆の運びが良いんだよなぁ...


第4話(2)

―高良コウ―

 

一体、今自分の胸に到来している感情は、何なのだろう。

目の前のデュエルを見守りつつ、私はそのようなことを考えていました。

 

「しつっこいなぁ!?『シャインブラック』で攻撃!」

 

「リバースカードオープン!『ガガガガード』!」

 

「あ゛あ゛!?」

 

相手のパーカーの人は、変わらず昆虫族モンスターを展開し物量で攻め立てています。現在は既に、5体の昆虫族モンスターがフィールドにひしめいており、非常に精神衛生上よろしくない圧をかけてきている。

 

「戦闘破壊耐性……!まだあがくのか、鬱陶しい!ターンエンド!」

 

「これでディフェンダーはまだまだ耐えれる!とことん、あがかせてもらうぜ!ドロー!」

 

最初の攻防から数ターンが過ぎました。依然として遊笑くんが不利なのは変わらない。

フィールドにはどうにか用意された『魔法都市エンディミオン』や『魔導騎士ディフェンダー』などの布陣が築かれてはいるが、守ることで精いっぱい、相手に攻め入ることなどできない状況にある。

 

(なのに……今追い詰められているのは、パーカーの人?)

 

攻めているのに、イラついているパーカーの人。攻められているのに、笑みすら浮かべてそれを凌ぐ遊笑くん。そんな二人の姿を見て、握った拳をほどくことも出来ず、趨勢を見守り続けるしかない私の胸にあったのは―――感動だった。

 

私はデュエルが下手だ。自分の家族同然な精霊たちが傷つくのが我慢できず、デッキの中の妨害カードも使いこなせない。その妨害も、相手のカードをバウンス―――手札やデッキに戻す効果のこと―――するものしか無いほどに、破壊という行為への忌避感を持ってしまっています。

 

原因は理解しています。けれど私にはそれを変えられなかった。デュエルという行為を、何処か怖いものとしてすら感じてしまっていたんです。

 

そんな私が、今。目の前のデュエルに感動している。

時に泥臭く、時に優雅なコンボで。魔法使いと魔法カード、時折罠で。魅せ方様々に凌ぎ切る様は、まさに「魔法使い」でした。

 

彼の振る舞いもまた、そのデュエル内容に合わせ変化していた。通常のスタンディングデュエルでありながら、ドローやカード効果の発動、モンスターの破壊などのあらゆる場面において大袈裟ともいえるリアクションでもって応えている。その姿はまるで、プロのアクション・デュエリストのような―――。

 

そしてそこからもう一回のターンの応酬を終え、遊笑くんが笑う。謎の結界の影響か、モンスターの破壊の余波やダイレクトアタックに本物の様な衝撃が乗っているこのデュエルで何度も攻撃を受けた彼の体は既にボロボロだ。それでも、遊笑くんの表情に陰りは無い。

 

「さぁさぁ、お立合い!世にも奇妙で、それでいて素晴らしき魔法の力をご覧に入れましょう!フィールド魔法『魔法都市エンディミオン』の魔力カウンターを6つ取り除き、墓地からこの魔法都市の主のご登場でございます!紳士淑女の皆さま、拍手喝采にてお迎えください!」

 

「何!?」

 

魔法都市の中心にそびえたっている巨大な建造物。その頂上が光り輝き、それを後光として一身に浴びながら、ゆっくりと何もない空間を踏みしめて一体のモンスターが降臨する。

 

「魔導を統べる絶大なる王よ!今こそ現れ、その威光を示せ!『神聖魔道王エンディミオン』、特殊召喚!」

 

呼び出されたのは、その名に魔法都市の名を持つ、都市の王にして最高レベルの魔法使い。黒い法衣のような装束に身を包み、手に持った大仰な杖を振りかざすことで衝撃波が周囲へと伝わっていく。

 

「マジかよ……ここにきて、まだこんなモンスターを隠してやがったのか!」

 

「す、すごい……!」

 

「エンディミオンは、自身の効果で特殊召喚に成功した場合!墓地の魔法カードを一枚、手札に加える事が出来る!……さぁて、準備は整った!」

 

驚愕している私とパーカーの人がその言葉にハッとすると、遊笑くんは先程手札に加えた魔法カードをディスクへとセットする。

 

「発動!『拡散する波動』!このターンエンディミオンは、可能な限り相手のモンスター全てへと攻撃を行う!」

 

「なにぃ!?全体魔法攻撃!?」

 

すごい、パーカーの人のフィールドには五体の昆虫族モンスターが、全員攻撃表示で存在している!すべてのモンスターに攻撃すれば、遊笑くんの―――!

 

しかし、すぐに私が、少し遅れてパーカーの人があることに気づく。私はそのことに気づいたことでまた笑みを消してしまい、逆にパーカーの人は勝ち誇るように笑う。

 

「だ、だが忘れてねぇっすかぁ!?俺のフィールド魔法、Gボール・パークでお前の戦闘でのダメージは消せる!フィールドに空きが出来りゃまたゴキポールを墓地へ送ってエンディミオンを破壊することだって……!」

 

 

「……エンディミオンの、効果発動!手札の魔法カードを糧とし、フィールドのカード一枚を破壊できる!」

 

「ゲェー!?」

 

「当然、Gボール・パークを破壊だ!」

 

「グワー!?」

 

エンディミオンの効果で、フィールド魔法が破壊された!パーカーの人には伏せカードも無い……!

 

「相手のカードを大切にする。そんな基本的なことも出来ていないお前なんかに、コウの……友達の笑顔を奪わせはしない!」

 

「ば、バカな……!?こんなガキに、俺が」

 

「バトルフェイズ!」

 

「ヒッ!?」

 

バトルフェイズに入ったことで、遊笑くんのモンスターがゆっくりと杖を構える。杖の先端に光が満ちると同時に、パーカーの人のモンスターたちがおびえる様に一歩後ずさった。

 

「神聖魔道王エンディミオンで、お前の全てのモンスターに攻撃!『魔導波・拡散』!」

 

「アバー!?」

 

黒パーカーLP0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―最希遊笑―

 

デュエルが終わると同時に、俺たちを覆っていた闇の様な結界が消えた。パーカー野郎は倒された時の衝撃で吹っ飛んではいるが、意識はあるようで苦しそうに呻きながら頭を振っている。

 

『よくやった、遊笑』

 

「ああ、お前もお疲れさん、ディアベルスター」

 

今回は早い段階で倒されてしまっていたディアベルスター、背後でデュエルの行く末を見守ってくれていた相棒の労いに応えて互いにつきだした拳を合わせる。

その時、背後に軽い衝撃。そして腰回りに回る腕に拘束された。動きづらいので首だけで背後を見れば、コウが背中へと頭を預けて抱き着いていた。

 

「コウ……?」

 

「あり、がとう……!遊笑くん……!それと、ごめん……!私のせいで」

 

「……感謝だけ、受け取っとくよ。悪いのはコウじゃないし、何より友達を助けるのなんて当たり前だろ?」

 

「……うん。……うん!」

 

そのまま泣き始めたコウに背中を貸していると、パーカー野郎がようやく回復したようで起き上がってくる。

 

「あ、ありえねぇ……!この俺が、負けるなんて……」

 

「デュエルには勝った!お前の決めてたルールだろ、宝玉獣たちは解放しろ!」

 

「チッ、分かってるよ……」

 

心底悔しそうな舌打ちをしながらも、パーカー野郎は素直に懐から七枚のカードを取り出す。そこから光が溢れ、それが収まると真っ白なエラーカードへと変化していた。

 

それを見たコウが慌てて自分のカードを取り出すと、カードたちが光に包まれ、そして今まで消えていたルビー達が飛び出してくる。

 

「みんな!」

 

『やったー!戻ってこれたぞ!』

 

『キューゥ!』

 

「ルビー!良かった……!よかったぁ……!」

 

飛び出してきた宝玉獣たちの中から真っ先にルビーがコウへととびつき、二人はもう離さないと言わんばかりに抱き合う。

 

周囲に浮いている他の宝玉獣達も、抱き付きはしていないがコウの周囲に集まり、互いの無事を確認するかの様に固まっている。

 

「うん、やっぱり彼らはこうでなくちゃな」

 

『……あぁ、そうだな』

 

その様子をディアベルスターと共に見守っていると、パーカー野郎が不機嫌そうに足を鳴らす。

 

「ケッ、くっだらねぇ……でも、ヒョッヒョッヒョ!結界がいったん解けたのは丁度良いっすねぇ!」

 

「なんだと!?」

 

『まだやろうっていうのか?次は私も容赦しない。というか、当初の予定通り尋問するか』

 

まだ何かを企んでいる様子のパーカー野郎に、俺は再びデュエルディスクを構え、ディアベルスターはダガーを抜き放つ。それを見たパーカー野郎は一瞬後ずさったが、すぐに持ち直した様でニンマリと笑みを浮かべ勝ち誇るように指をつきつけてくる。

 

「てめぇらが一人じゃなかったように、俺だって仲間がいるんだよぉ!このデュエルのルールの関係上、もう俺はデュエル出来ないが……俺の仲間は俺より強いし、その人に任せるとするぜぇ!」

 

「なっ!?仲間がいたのか!」

 

『デュエルのルールだと?』

 

「ヒョッヒョッヒョ!さぁお願いしますよぉオッサァン!」

 

パーカー野郎より強い仲間!こいつも相当強かったのに、それよりも上だなんて相手にして勝てるか……!?いや、でもやるしかない!逃げれるなら逃げたいが、あの雰囲気。

その仲間はかなり近くに居るのだろう、しかも路地の出口側にパーカー野郎が陣取っている。こうなったらやるしかない――――――

 

「……」

 

「……」

 

『……』

 

「「『……』」」

 

――――――しかし、その仲間とやらは来なかった。

 

「……え?おい、オッサン?近くで見てるっつってたよな?おい、どこ行ったんすか!?」

 

「……いないのか?」

 

『分からん、油断を誘っているのかもしれない』

 

「み、みんな!一度カードに戻っておいて!また盗まれちゃうかもだから!」

 

戸惑っているパーカー野郎を見つつ周囲に気を配っていると、パーカー野郎が懐から携帯端末を取り出し、どこかへ―――さっき言っていた仲間だろうか―――連絡をする。

 

「おいオッサン!あんた何処に……は?負けた!?契約のせいでそこに近づけない!?ちょ、何言ってんだ!?」

 

連絡はつながったようだが……パーカー野郎の慌てようと、たまに漏らしてしまっている内容からどうやら仲間は来れない状況らしい。

 

未だに携帯へと喚き続けているパーカー野郎に、どう動くべきか思案していると、俺たち以外の何者かの声が聞こえてきた。

 

「お知り合いでしたら、もうここから去っていきましたよ」

 

「な!?だ、だれだ!?」

 

「……修道服?」

 

「シスター、さん?」

 

声の主は、パーカー野郎の背後。路地裏の入り口に立っていた。手には紙袋をもち、その身を黒と白の二色しかないゆったりとしたローブ状の衣類を纏っているその姿は、まさしくシスターであった。

 

先ほど声をあげたのは一人だったが、謎のシスターはもう1人。同じような修道服を着こんでおり、声をあげたシスターと同じ所属なのだと分かる。

こちらは紙袋は持っていないがその手には携帯端末を持っており、こちらを、正確にはパーカー野郎をにらみつけながらその画面をつきつけていた。

 

「そこまでよ!それ以上その子らへ危害を加えるなら、このままこの通話ボタンを押します!110、といえばわかりますよね?」

 

「先ほどお伝えした通り、お知り合いは去りました。その方にもお伝えしましたし、あなたも去るのが賢明ですよ」

 

「な!?……くそぉ、仕方ねぇ!『シャインブラック』!」

 

「あ!?」

 

状況を不利と見て、パーカー野郎は自分の精霊を呼び出す。黒光りする人型モンスターはそのままパーカー野郎を抱えると、ググっと体を伸縮させる。

 

「遊笑とか言ったな!次は絶対にお前の精霊を奪ってやるからな!」

 

「!と、とんだ!?」

 

「待てこらぁ!色々と説明……!」

 

次の瞬間には、パーカー野郎を抱えた精霊はものすごい勢いで跳躍し、路地の上へと消えて行ってしまったのだった。

 

「行って、しまった……一体何者だったのでしょう」

 

「!あ、その、ありがとうございます。助けていただいて」

 

逃げて行ったパーカー野郎を見上げていると、シスターの片方が呟く。形は何であれ、この人たちが声をかけてくれなければどうなっていたか……。

俺が礼を言い、コウが慌てて頭を深く下げて続いてお礼を述べる。そんな俺たちに対して、シスターさんの一人が微笑みながら首を振った。

 

「いえ、お気になさらず。困っている人を助けるというのは、私どもの使命ですから」

 

「ふん、お姉さまに感謝しなさい。わざわざあのよくわからない黒いもやが晴れるまで待ってあげていたのですから」

 

「ふえ?え、ええと」

 

「こら、ソフィ。恩着せがましいですよ」

 

「ですがレーヌお姉さま」

 

「ですが、ではありません。それに言葉遣いも、もっと品格ある言葉をお使いなさいな」

 

「むぅ……」

 

「お二人とも、お怪我は……なさそうですね?」

 

「あ、はい」

 

シスターの一人、レーヌさんと呼ばれていた人が俺とコウのケガを確認すると、それはよかった、と言って背を向ける。もう一人のシスターさん、ソフィさんはというとどこか不機嫌そうに顔をしかめてこちらを、特に俺をにらみつけてくる。……あれ、俺何か怒らせるようなことしたのか?

 

「お二人とも、見た所学生さんですね。先程の様な輩に出会わないよう、今後は路地裏には近づかない事をおすすめしますよ。......それでは、お気をつけて」

 

「あ、はい……あ、改めて、ありがとうございました!」

 

「はい。世に平穏の在らんことを」

 

「ふん、世に平穏の在らんことを」

 

コウが頭をブンブンと振りながらお礼を言い見送るのを、二人はそれぞれの反応をしながら去っていくのだった。

 

 

 

 

シスターさん達を見送り、路地から出る。アリーナでのイベントも完全に終わったようだ。片付けも始まっており、周囲には家路についていると思われる人々が駅の方へ歩いているのが見られる。……なんだろう、もけもけお面付けてる人たちが多い気がするんだが。

 

「にしても、災難だったなぁコウ。精霊を狙う奴が襲ってくるなんて」

 

「うん、でも……遊笑くんが、助けてくれたから」

 

『本当に、今回は助かったぜ。ディアベルスターもさ、ありがとうな!』

 

『……私としても、交流が容易な同類は近くにいた方が都合が良い、それだけだ』

 

『おっ、照れてるぞ!これはオイラにもわかるぞ、ツンデレってやつぎゃああああ!?』

 

『エ、エメラルドが死んだ!』

 

『この精霊でなし!』

 

「元気だな、捕まってたとは思えないくらい」

 

「あ、あはは……」

 

「あー!二人ともこんなところに!」

 

「ん?」

 

精霊達のドタバタを聞きながら歩いていると、不意に叫ぶように声をかけられ立ち止まる。この声は、まさか……?

 

「あれ?遊香に遊鮮?」

 

「やぁっと見つけた!全く二人とも、どこ行ってたのよー!」

 

「はぁ、はぁ、ちょ、遊香待って……というか君の買ったものなんだし自分で持ってよ……」

 

やっぱり、遊鮮と遊香だ。なぜかプリプリ怒って頬を膨らませている遊香、少し遅れる形で遊鮮がやたらと袋を持ってやってくる。漂ってくる匂い的に、持っている袋の中身は出店の食べ物だろう。

 

「ふ、二人とも来てたの?」

 

「う゛っ、あ、あははまぁねぇ~?」

 

「というか遊鮮、大丈夫か?なんでそんなことに……」

 

「ま、まァ色々とね。あはは……」

 

なにやらぎこちない笑みを浮かべている二人に、俺とコウはそろって首をかしげる。するとそんな空気を変えようとしてか、遊香が遊鮮の持つ袋に手を突っ込み中から串焼きや焼きとうもろこしなんかを取り出す。

 

「それよりさ、二人とも!もう帰るでしょ、途中にある公園でみんなで食べていこうよ!ほら、焼きそばとかもあるんだよ!」

 

「え、でも……」

 

「ほらほら、善は急げ、だよ!」

 

「きゃっ!?ま、待ってソースやタレが付いちゃう!?」

 

あっというまに遊香に抱き付かれ、連れて行かれるコウ。……まぁあんなことがあった後だし、気晴らしはいるだろう。諸々の相談は明日にまわすとするか。

 

そうして俺は、遊鮮のもつ袋を一部受け持ちながら皆で家路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったですねぇ、お二人とも。何か、ありましたかぁ」

 

「いえ、神父様。困っている子どもがいたので助けていただけですよ」

 

「そうですかぁ。それは素晴らしい。その善行には、神もお喜びになるでしょう」

 

「それはそうと神父様。少々気になる方に出会いました。――――――精霊を、多数連れた方です」

 

「……ほほう、それはそれは」

 

 

 

 

 

是非、ご挨拶せねばなりませんね。




実際には多分現代遊戯王でもうこのレベルのターンの応酬は無いですね。
そこは残念でもあり、それでいてそうした相手ターン含めてのカードのやり取りを楽しんでいたりもするので悪い事だとはあまり言いたくないですが...。

神父様(cv.若本規夫)だったら面白そうかな......
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