「だがまだ俺の攻撃可能なモンスターは残っている!行け!ティンダングル・イントルーダ―でダイレクトアタック!」
『……!』
その細長い体をくねらせながら、イントルーダ―が少女へと迫り、その不気味な頭部をゆっくりと開いて襲い掛かる。この一撃で、勝負を振出しに戻し……!?
『……?』
「……」
しかし、そんな思惑をよそにイントルーダ―は、少女の目と鼻の先で動きを止めた。
「な、なんだ!?イントルーダ―!攻撃だ!」
『……』
「攻撃が、出来ない……!?」
俺の指示に、再度攻撃しようと少女へと首を向けたイントルーダ―だったが、そのまま少しの間逡巡するような様子を見せた後、攻撃をすることなく俺のフィールドへと戻ってきてしまった。
「な、なぜだ!?奴には伏せカードも何も……!」
「直接攻撃宣言時、手札からこのカードを捨てさせていただきました」
そう言って少女が見せつけてきたのは、手札の一枚のカードだった。バカな、手札から妨害を!?
「『速攻のかかし』。直接攻撃を無効にし、バトルフェイズを強制終了させていただきました」
「!それで、イントルーダ―の攻撃が止まったのか……!」
伏せカードも無く、折角召喚したエクシーズモンスターを破壊されてもなおその表情が変わらなかったのは、防御手段を手札に抱えていたからだったのか……!
「俺は、これで、ターンエンドだ……!」
こちらの攻勢を完全に防がれた。認めるしかないだろう、精霊の数だけを脅威と見ていたが、この少女……!俺よりもデュエルにおける読みや戦術が圧倒的に上だ。
いや、ひょっとしたら俺たちの『組織』のボスよりも……!
「……ターンをもらいます。カードドロー」
(いや、まだだ。相手がエクシーズモンスターを使うと分かった以上、次はこの伏せを直撃させる。もう、エクシーズはさせない!)
初手では使い渋ってしまった伏せカード、『皆既月食の書』を確認しつつ、少女の出方をうかがう。一方、少女の方はカードをドローしたところで完全に動きを止めてしまった。
表情に変化は見られないが、それでも何かを悩んでいるようで手札をじっと見つめながら何かを呟いている。
「いや……でもこれ出来るんだしやりたい……でも伏せカードあるし……うーん」
(一体、何を悩んで……?しかしティンダングル・ハウンドの攻撃力は、永続的に上がったまま、下がるような仕様ではない。攻撃力4700のモンスターだ、そう簡単に突破は出来ない!)
そこからさらに数十秒考えを巡らせていた少女が、不意にこちらにも聞こえる声で一言、呟いた。
「……ま、いっか。このターンで勝てることは変わらないし」
「なっ!?」
「メインフェイズ」
今、何を言った!?
驚愕している間にも、少女はなんてことはないかのように手札からカードを抜き放つ。
「手札のモンスターを一枚捨て、『サイバー・ドラゴン・ネクスステア』の効果を発動。このカードを特殊召喚します」
呼び出されたのは、小柄な機械族の竜。小さいながらも恐ろしい名を持つそのモンスターは、フワフワと浮遊しながらこちらへと小さな威嚇の声をあげている。
「サイバードラゴン……そして、エクシーズ……まさか、才羽家の者......!?」
「?続いて、手札から永続魔法『機械仕掛けの夜―クロック・ワーク・ナイト―』を発動します」
「これは……!」
少女の正体について嫌な予感を感じていると、発動された永続魔法によってフィールドの景色が、重厚な歯車が一定の速度で回り続ける夜の工場のような世界へと塗り替えられる。
バカな、ただの永続魔法に、こんなフィールド魔法レベルの変化があるはずは……。
「!ど、どうした!何があったお前たち!?」
『…、…』
『g、gr……!』
『……』
フィールドが完全に塗り替えられた瞬間。俺のフィールドのモンスター達が突然うめき声をあげ―――その有機的で生物的だった身体を、鉄と錆が入り混じった機械の体へと変化させていた。
「この永続魔法が発動している間。互いのフィールドのモンスターは全て種族を機械族へと変えられます。更に、こちらのモンスターは攻・守を500アップ。相手方……つまりあなたのモンスターの攻・守は500ダウンします」
「!種族の変更と、バフ・デバフ効果だと!」
何とも厄介な!確かにこれで少女のモンスターとの攻撃力の差は縮まった。それでもまだハウンドの攻撃力は十分に高い、召喚権を使っていないとはいえ、ここからモンスターをアドバンス召喚したところでハウンドを上回る攻撃力のモンスターを呼び出すのは難しいはず……!
「では、永続魔法の発動まで終了――――――」
何か、ありますか?
「―――っ!?リバースカードオープン!『皆既月食の書』!手札一枚を捨て、俺の場のジレルスとお前の場のサイバー・ドラゴン・ネクステアを裏側守備表示にする!」
瞬間、俺の口と手は俺自身の考えよりも先に動いていた。
(な、何をしている俺は!?まだ、こちらがやられるような盤面ではなかった!)
遅れてきた思考がそう判断するが、もう発動してしまったカードは止まらない。効果を受けて少女のモンスターとジレルスが伏せられ、姿を消す。自分で自分のプレイングを理解できていなかった。
攻撃力0のジレルスを裏側にすることで、攻撃の的にならないようにする、という意図は不思議ではない。だが、少女のモンスターは対処を要する程の強敵ではなかった筈だ。
なぜ、どうして……と思考するなかで、やがて一つの結論に至る。
(使わなければ、そのまま負けていた……?俺の、デュエリストとしての本能がそう感じたのか!?)
有り得ない。そう思いつつ、しかしそうとしか思えない。混乱の極みの中、少女が無感動に自身の伏せられたモンスターを一瞥して、間髪入れず手札からカードを抜き放った。
「ブリキンギョを召喚。効果により、手札から『グリーン・ガジェット』を特殊召喚。さらに効果を使用、デッキから『レッド・ガジェット』を手札へ」
「ぁ……」
レベル4モンスターが、二体……。
「では」
オーバーレイネットワークを構築。
そこから先は、先程のターンの焼き直しだった。呼び出される、二体目のアイアン・ヴォルフ。オーバーレイ・ユニットが使用され、バトルフェイズ。
「ダイレクトアタック」
黒ローブLP1800→0
宣言通り、少女はこのデュエルを2ターンで終らせたのだった。
―機械万歳―
「対戦ありがとうございました」
デュエルが終了し、デュエルディスクのランプが切れ、格納されていく。黒ローブの人は……なんかぼーっとしてる。どしたんやろか。
周囲を覆っていた黒いモヤも晴れており、先程の路地裏へと戻っていた。俺の背後をちらっと見てみれば、先程見つけたG〇NTZはまだあった。そっちはまだ終わってないのか。
デュエルディスクを外し、んーっと伸びをしてから、未だ放心状態っぽい黒ローブに声をかける。
「約束、覚えて、る?」
「っ、あ、ああ。闇のデュエルによるアンティは絶対だ。望み通り、俺は今後お前には近づかない……というよりも、近づけん」
「?」
「近づかない、の定義をお前は決めていなかった。よって闇のデュエルがその定義を定めたようだ。俺の体が勝手にこの場を離れようとしている。どうやら、デュエルできるレベルでの距離の接近ができないようにされているようだ」
「ふー、ん?」
何それ闇のデュエル便利。勝手に色々決めてくれるなんて、フォローサービス充実してんねぇ。あ、いやでも勝手に決めてるってことは不便な感じにもなりかねないのか。うーん、闇のデュエル不便。
いや便利な闇のデュエルって何だよ。
「じゃあ、もう、会うことは、ないね」
「ああ。……全く以て残念だが、ここは退くとする」
そう言って、黒ローブはバサッとなんかかっこよくローブを翻して路地の向こうへと歩いていく。……あ。
「待って」
「?」
「しつこい、し。もう、会いたくない、っていうのは、確かだけど。それで、もデュエル、したから」
黒ローブの方にたったかと近づく。接近禁止を言っておいて何してんだって感じだが、一人のデュエリストとして礼儀は通したい。
ってことで、足が勝手に動いてるっぽい黒ローブに無理やり傍まで寄っていき、手を取る。
「な、何を」
「ありがとうございました。良いデュエルでした」
「――――――」
はい、対戦終了の挨拶。こういう礼儀は大事だからね、当然だね。
成り行きでデュエルを教えてる年下の子らにも教えてることだし、師匠である俺だって実践しないとね~。
なんだかまたしてもフリーズしている黒ローブから手を離し、今度こそ去っていくのを見送ることにする。軽く手を振りながら見送っていると、フラフラと歩いていた黒ローブが立ち止まってこちらへと振り向く。
「……あり、がとう。妙な話だがな。俺も……そう、楽しい、デュエルだった」
「ん」
それだけを告げて、黒ローブはまた歩き出し、街の中へと消えていったのだった。
「さて、これ、どうしよう」
黒ローブを見送ってから、再びGA〇TZの前へと戻る。中は相変わらず見えないし、触っても動かせない。中の音とかも聞こえてこないときた。うーむ、どうしたもんか……。
そんなことを考えていた時だった。
「そちらの方。いったい何をしていらっしゃるのですか?」
「?」
不意にかけられた声に振り返ると、そこには二人の女性が立っていた。
2人とも、教会とかにいそうなシスター服……修道服だっけ?を着ており、何処かの教会の所属だろうなと思う。
そんなシスター二人は路地裏で妙な黒い球の傍に立っている不審者な俺に近づき、警戒心マックスな表情で見てくる。
「濃密な、闇のエネルギーの塊……あなたがこれを?」
「ううん、見つけ、ただけ、です。これを、作ってる、人は、もう、どっか行き、ました」
「ちょっと貴方。レーヌお姉さまが尋ねているんですよ。もごもご喋ってないでもっとはっきり喋っていただきます」
「こら、ソフィ」
う、うーん辛辣!俺だって別に好きでこのどもった喋り方してないよ?というか、初対面でその態度はきついなんてもんじゃなくタイヘン=シツレイでは?
「ごめん、これ、はちょっと、直らなく、て」
「いえ、こちらの方こそ申し訳ございません。ソフィ、そのような態度を取り続けるのは失礼ですよ」
「ですがお姉さま…………申し訳ございません」
「大丈夫、気に、してない」
ほんとだよ?別に、無表情なのを良いことに後ろ手に中指立てたりなんかしてないよ、ほんとだよ??
「ですが、困りましたね……この闇のエネルギー、何かを閉じ込めるもののようですね。貴方がやったのではないなら、消すことも出来ないでしょうし……」
「中、でデュエル、行われてる、らしい。それが終われ、ば解ける、……と、思う」
俺がこれを見つけた原因がそもそも誰かの争う声だし。多分そこまで間違っちゃいないはずだ、さっきの黒ローブもやってて、デュエルが終わったら勝手に解除されてたし。
「ふむ……分かりました、ではこれが解除されたら、中にいる方々を私達の方で助けます。貴方は、この場をお離れになっても大丈夫ですよ?」
「……ん、じゃあ、お願い、します」
そう?なんか知らない人に丸投げしてる感じで悪いなぁ。でも実際俺いても役に立たないしな!
ってことで、シスターさん達にGANTZ〇は任せることにし、俺は帰路につくことにしたのだった。
「では、さよう、なら」
「ええ、お気をつけて」
「ふん」
「ソフィ、落ち着きなさい。先程も言いましたが、態度が露骨過ぎですよ」
「でもお姉さま。アイツ、あんなに引き連れて見せつけてきて、『私は関係ないです』なんて……!」
「それでも、です。……これに対処したら、急いで帰りましょう。
探していた悪魔を、見つけたかもしれません、と。
作中の黒ローブさんのティンダングルデッキ、
・リンク無し(切り札不在)
・耐性をつける永続魔法(機械万歳は存在知ってるから直接攻撃に重点おいてて素通り)
・テーマ内のとある最強罠カード(リンクモンスターに関係している効果のせいで作中にまだ無し)
となっており、飛車角どころか金銀桂馬香車も落としてるレベルです。ちなみに歩は成ることが無いくらい弱い。可哀想...
なお機械万歳「2ターン無いと詰み出来ないし、まだまだ未完だよなぁこのデッキ」
次回も閲覧いただければ幸いです。
感想もよろしければお願いします。