遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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こちらの好意に気づいているのに気づいてない振りしてからかってくるお姉さん系女の子って良いよね


A.ありがとうございました(何もわかってない)

「先攻はもらいます。スタンバイ、メインフェイズ」

 

デュエルディスクが示した先攻は俺。フェイズの移行処理をしつつ手札の確認を行う。

今回使用しているデッキは、いつもイベントでの人数合わせをする際に使うデッキ。かつてリョウさんとのデュエルで使用したガジェットデッキを、少しだけ調整したものだ。

 

決して強い、とは言えないデッキだがこれがイベントの穴埋め要員としてはすこぶる丁度良い。モンスターの火力、魔法罠の性能がこの世界の一般人のデッキの強度を本当に僅かだけ上回る程度で収まっているので多少忖度すれば大人から子どもまで、まんべんなく相手取ることができる。

 

あと、機械族でデッキのモンスターの9割を染め上げてるからな!機械族最高!機械万歳!

 

っと、そんなことよりもデュエルだ。手札は……oh。普通にやったら、ちょっとコウちゃんには酷なことになる。ここは忖度発動!

 

「手札から『イエロー・ガジェット』を召喚。効果により、デッキから『グリーン・ガジェット』を手札に加えます」

 

『ウィーン』

 

呼び出したのは、いつも通りガジェット。今回はイエローからスタートだ。気合十分なようで、両のこぶしをガチガチとかみ合わせやる気をアピールしている。

 

「続いて、手札よりカードを1枚セット。ターンエンドです」

 

「私のターンです!」

 

さて、おおまかな話は聞いているけどコウちゃんのデッキについてはあえて聞いていなかった。どうせやるなら、相手が何を使うのかなっていうワクワクが欲しいじゃん?

 

上手くデュエルできないって話だし、闇鍋みたいなのかな?それともテーマカードだけだと何もできないマテリアクトルみたいな奴かな?

 

「いきます!手札から、『宝玉獣 トパーズ・タイガー』を召喚!」

 

『行くぞコウ!』

 

キェァァァアアシャベッタアアアア!?

 

「バトルです!トパーズ・タイガーで、イエロー・ガジェットに攻撃!」

 

あるぇええ!?モンスターが喋ってることは誰も触れないの!?っと、まずい!

 

「リバースカードオープン。『月の書』を発動。モンスター一体を裏側守備表示にします。対象はトパーズ・タイガー」

 

「!ト、トパーズ!」

 

(うおっ、すまない、コウ!)

 

俺の伏せカードが発動し現れた書物(というか月の書)が開き、そこから漏れ出た光によってトパーズ・タイガーが照らされる。するとフィールドに出現していたカードが裏返りトパーズ・タイガーは消え、さっきまでいた場所に全モンスター共通デザインのセットモンスターのソリッド・ヴィジョンが現れた。

 

「そんな……タ、ターンエンド」

 

「?セット出来る防御カードなどは無かったでしょうか?」

 

「え、……あ!?」

 

(あー、何も考えてなかったのか……)

 

何も追加のアクションが無いことに疑問をもって指摘してみれば、コウちゃんは目を丸くして口をポカンと開ける。うーむ、これデュエルが上手い下手以前の問題では?

 

っと、まぁいいや。アドバイスや指導はデュエルが終わってからにしよう。

 

「ターンをもらいます。ドローフェイズ、続いてスタンバイ、メインフェイズへ」

 

さて、先程のターンでサーチしたガジェットとドローカード。そして手札。実はもう勝てるところまでカードが揃ってたりするわけだが、流石にまだ終わらせるわけにもいかない。

 

なんせまだコウちゃんのデッキを完全には見れていない。この状態でアドバイスなんてとてもできるものではないし、何より先ほどまでボコボコにされていたというコウちゃんに負け癖のようなものをつけさせてしまうかもしれない。

 

(ってなわけでまずはピンチを演出ッと)

「手札より『グリーン・ガジェット』を召喚。その効果により、デッキから『レッド・ガジェット』を手札へ」

 

ガジェットを展開、そして追加を補充。古き良きガジェットの特性である「後続を途切れさせず、相手の動きを妨害しながらモンスターを並べて殴る」が噛み合えば当然こうなる。

 

まぁあらゆる面でインフレが止まらない現代の遊戯王なら、この程度の「除去ガジェ」というデッキは簡単に突破できるものだ。このデッキが環境として活躍してたの何年前だって話だし。

 

まぁ、今この場では普通に強いデッキとして通用するけどネ!

 

「バトル。グリーンでセットモンスターのトパーズを攻撃」

 

「っ!トパーズ!」

 

『くそぉ、何もできんとは!』

 

グリーン・ガジェットがセットモンスターへと跳びあがり、重力も加算した急降下パンチを繰り出す。リバースしたことで姿を取り戻したトパーズ・タイガーだったが、あえなく拳に突き飛ばされ光の粒子となって消えていった。

 

……ってか破壊された時にもしゃべってなかった君?なんなの、精霊か何か?おいおいおい、マイデッキにもきてくれよぉ精霊ぃ!

 

「トパーズ・タイガーの効果!宝玉獣は破壊されたとき、その身を宝玉と化し永続魔法扱いで私の魔法罠ゾーンに置きます!」

 

コウちゃんの宣言を受け、散っていった光の粒子が再び集まり、一つの宝玉―――トパーズとなってコウちゃんのフィールドへと鎮座した。

宝玉獣特有の共通効果という奴だ。

 

「ほぉ、不思議な効果を持つモンスターだな。墓地へ行くことがまず無く、そして自分の魔法罠ゾーンを圧迫する……しかし場のカードが減らないから、場のカードの枚数を参照するカードとの相性を考えるべきか」

 

「普通に考えればデメリットにしかならない効果ですね、魔法罠ゾーンを埋めてしまうのは。何かそこからの活用方法でもあるんだろうかね?」

 

「ええい、俺を差し置いて機械万歳にデュエルを挑むなんて……!」

 

観客してる常連組はコウちゃんの宝玉獣の効果について色々考察をしているみたいだな。やっぱ大人組は歴が長いだけあってカード効果への理解は早いなぁ。

 

実際、ただのモンスターとして扱うだけであれば、宝玉獣の共通効果は非常に扱いが難しい。破壊されても墓地へ行かないという事は、墓地から蘇生する系のカードで呼び戻すことが出来ないという事でもある。

 

魔法罠ゾーンからのモンスターの召喚は、カードパワーのインフレが進んだ現代遊戯王であればそれなりに選択肢がある方だ。だが、この世界に来てからこれまでの間で、そんな最新鋭の時代のカードにはまだほんの僅かしか出会えていない。おそらくまだ大多数は流通すらしていないと考えるのが妥当だろう。

 

(と、なればコウちゃんのデッキにもそれらのカードが入っている可能性は限りなく低い……でも、あのデッキがトパーズ・タイガーだけたまたまってわけではなく『宝玉獣』デッキならば……まぁ何とかするだろう)

 

「イエローでダイレクトアタック」

 

「うぅっ!」

 

高良コウ LP4000→2800

 

イエロー・ガジェットのジャンピングキックが命中し、コウちゃんがひるむ。まぁこのターンはこれで許しちゃろう、なんせ俺は遊笑くん達にも教えを説いていた師匠であるからな!

師匠として、弟子の友人を鍛えることなど容易い容易い、ガッハッハ!

 

「メイン2。カードを二枚セットし、ターンエンド」

 

……本当に大丈夫だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、これは……」

 

そこから更に2ターンが経過した。盤面やデュエルをしている俺たちの状況をみて、観戦していたモリンフェンLOVEさんが呻く。

 

「何とも……」

 

その横に立っていた月月火水木金金さんも苦笑いを浮かべており、それにつられるように周囲の観客全員が戸惑っている様子だ。

 

「ええい、弱い!」

 

「っ……!」

 

最も言っちゃいけないところをはっきり言い切る胆力はすごく評価するよ厨二。でもあとでバインダーチョップの刑ね。

厨二がいった通り、コウちゃんは想像以上にデュエルが下手だった。ターンが経過したのに、俺のフィールドには三色ガジェットが並び立ち、伏せは一枚のみだけど手札も潤沢。

手札的にも、このターンどころか此処から追加で2ターンくらいは耐えられそうなくらい万全な手がある。

 

一方のコウちゃん……驚くことに、2ターンの間で手札の総量ほぼ変わってないし、盤面も変わってない。宝玉獣は、フィールドにエメラルド・タートル。魔法罠ゾーンにはトパーズがいるけど、今の所それを活用できる魔法罠を使う気配もない。大丈夫?ちゃんと宝玉系カード入れてるんだろうか。

 

「マズいね……高良さんの手札次第だとは思うけど、このままだとモンスターの数だけでなく手数でも勝ち目がない」

 

「……うぅ~!何とかならないの遊鮮!確かにキーさんのがじぇっとデッキは時間をかけるほど手強くなるけどさぁ」

 

「……」

 

コウちゃんの背後でデュエルを見守っていた遊ーず三人衆も、コウちゃんのことを心配してソワソワしている。うぅん、確かにこれを乗り越えるのはきつそうだけどこれくらいは乗り越えてもらわないと、強くなるってのは難しいんだよなぁ。

俺の手札で腐ってる防御罠を伏せてないのも、一応優しさだしそろそろ詰めるつもりもあるぞ?

 

「わ、私の、ターン……」

 

(あっちゃぁ、ダメな方に転んだか)

 

ターンを受け取ったコウちゃんだが、声も表情も完全に沈んでしまっている。う、うーんこう見ると初心者をいたぶっているみたいで心外なんだけど。どうにかドローはしたみたいだがカードを見て表情を歪めているあたり、この状況を打破できそうなものでも無かったんだろう。……詰みか?

 

「コウ!」

 

「!遊笑、くん」

 

不意に、遊ーずの一人、遊笑くんが声をあげる。口元をへの字にして不機嫌そうにコウちゃんを見据えている彼は、コウちゃんがそちらを見たと同時にビッと人差し指をつきつけた。

 

「お前良いのかよ!このまま負けて!」

 

「で、でも……」

 

「それじゃあお前、また大事なもん盗られちまうぞ!」

 

「!」

 

(おん?何の話?)

 

「お前がそれでいいなら知らん!けど、お前昨日言ってただろうが!絶対に、ルビー達を……家族を守れるようになるんだって!」

 

「ならここで!こんなただの一戦のデュエルで簡単に負けようとするんじゃねぇ!というか勝て!勝つ気でやれ!今お前に必要なのは、デュエルに勝つっていう強い意思だろ!」

 

何かすごい熱いこと言ってるよ遊笑くん。横で聞いていた遊ーずの二人は呆れた様子で、でもどこか同意しているような笑みを浮かべて肩をすくめている。一方のコウちゃんはというと―――うお、泣いてる!?ツーッと頬を伝うように涙を流すコウちゃんに内心驚いていると、再起動したコウちゃんが涙を袖で拭い顔をあげた。

 

「……ありがとう、遊笑くん」

 

そこには、もう沈んだ表情は無く、最初のオドオドした雰囲気も消し飛んで覚悟を決めた子の表情をしたコウちゃんがいた。

 

「お待たせしました。続き、お願いします!」

 

「……うん。別に、気にして、ない」

 

再び俺の方へ向き直るコウちゃんに、俺は少しだけ羨望を以て答える。いいなー、俺も欲しいな~あーいう熱い声援くれる友人。

そんなことを思っている間に、周囲では先程の遊笑くんとコウちゃんのやり取りを見ていた観客からあふれんばかりの拍手が送られる。

 

「いいぞー嬢ちゃん!頑張れよー!」

 

「キーちゃんのデュエル見たくて来たけど、嬢ちゃんも応援するわ!頑張れよ!」

 

「ふむ、良きデュエリスト魂……彼女にモリンフェンを託すことが出来れば、どれほどの力を得てくれるだろうか」

 

「むむむ、良い……だが、我の方がまだ強い……はず!」

 

「うーん青春ですねぇ」

 

ありったけの声援を受ける中、コウちゃんが手札の確認を終えた様でこちらを見据えてくる。さて、もしも詰みならば早々に終わらせるところだが……。前世も今世も、勝敗がほぼ確定した後での当てつけのような無駄展開……いわゆる「煽り展開」ってやつは好きじゃない。でも、もしコウちゃんのあの手札の中に、現状を打破できる手段が残されているのならば。

 

それはとても、とても素晴らしいことだ。ふふふ、どうやってこの場を凌いでくるかにゃ~?

 

「行っけ~!コウちゃ~ん!」

 

「頑張れ、高良さん!」

 

「コウ!……頑張れ!」

 

「―――頑張るっ!」

 

最後に一言、気合を入れ直してからコウちゃんは手札のカードを一枚引き抜き、デュエルディスクへと読み込ませる。

 

「メインフェイズ!手札から、『宝玉獣 サファイア・ペガサス』を召喚します!」

 

『今日こそは勝つぞ、コウ!』

 

呼び出されたのは宝玉獣デッキの中でも重要な位置にいるモンスター。共通効果の他に仲間を魔法罠ゾーンへ送る効果を持つため、実質宝玉獣のサーチ札みたいなもんだ。前世では宝玉獣の数少ない三枚採用候補だったくらいには大事なモンスターでもある。

 

「サファイア・ペガサスの効果!デッキから宝玉獣モンスターを、永続魔法扱いで置きます!」

 

「……通ります」

 

「デッキから『宝玉獣 コバルト・イーグル』を魔法罠ゾーンに!」

 

デッキから光が延び、魔法罠ゾーンへ新たな宝玉が置かれた。順調に宝玉獣は増えてるし、良い傾向だな。

 

「更に私は、手札から魔法カード『レア・ヴァリュー』を発動!私の魔法罠ゾーンの宝玉獣を一体、キカさんに選んでいただきます!選ばれた宝玉獣を墓地へ送り、私は二枚ドローできます!」

 

「……コバルトを選択」

 

むむむ、ようやく宝玉系魔法が来たと思ったらドローカード。厄介なことしてくれるぜ、これで現状を打開できるカードを引かれなきゃいいんだが……。

 

「ドロー!……!」

 

(あの表情は。……うーん、何か引いたかな?)

 

「私は魔法カード、『宝玉の契約』を発動します!私の場で宝玉となっている、トパーズ・タイガーを特殊召喚します!」

 

「……それも通ります」

 

ふむ、これでコウちゃんの場にはエメラルド・タートルにトパーズ・タイガーとサファイア・ペガサス。墓地にコバルト・イーグルか。

 

「なるほど、永続魔法扱いになった宝玉獣をコストにするカード。それに、魔法罠ゾーンから呼び出す手段もある」

 

「宝玉獣という一つのテーマなのでしょうね。あの動きを基本として設計されているようです」

 

「ふん、だがそれでもまだ油断できる状況ではないだろう!我とのデュエルでもそうだったが、機械万歳の戦術はいやらしいものだ。相手の展開の重要な場面を狙い撃つ形であの伏せが牙をむくこともあるだろう」

 

「……女の子をつかまえて、言うに事欠いていやらしいって」

「う~ん、R18はちょっと……」

 

「え、ちょ、な!?」

 

外野うるさい。あと厨二はデュエル終わったら二倍バインダーチョップの刑だ。エッチなのは駄目、死刑!

 

「続けます!手札から、装備魔法『宝玉の解放』を発動!対象は、サファイア・ペガサス!」

 

ふむ、あのカードは宝玉獣専用の装備カード……たしか攻撃力を800アップさせるんだったっけ?いかんな、全く知らないわけじゃないけど宝玉獣はあまり使ったことないしマイナーなサポートは知らんぞ。

装備カードの効果を受け、サファイア・ペガサスは体をサファイアと同じ青い光で包まれる。

 

「バトルです!サファイア・ペガサスで、グリーン・ガジェットを攻撃!」

 

『倒させてもらうぞ!』

 

む、来るか。サファイア・ペガサスが突っ込んでいくのは、ガジェットの中では高い攻撃力を誇るグリーン。セオリーなんてものは無いけど、攻撃力の高いモンスターを先に落としておきたいというのは心理的にも分かるが……。

さっきよりは思い切りも良いとは思うけど流石に伏せカードを考慮しなさすぎじゃないかな?

 

「リバースカードオープン、『弩弓部隊』。こちらのフィールドのイエロー・ガジェットをリリースし、相手のカード一枚を破壊します。対象はサファイア・ペガサス」

 

発動するのは、シンプルな破壊効果を持つ罠。普通に使うとディスアドだし、本当は別のカードを入れたいところなんだけど……。

まぁガジェットの損失はガジェットで補填できるので割と無問題だったりする。

 

「サファイア……ごめん」

 

『いいさ、それよりも!』

 

「うん!サファイア・ペガサスの効果!このカードもトパーズ同様、永続魔法扱いで魔法罠ゾーンに置きます!更に、装備魔法『宝玉の解放』の効果!デッキより宝玉獣モンスターを魔法罠ゾーンへ置きます!私がデッキから置くのは―――『宝玉獣 ルビー・カーバンクル』!」

 

『キューゥ!』

 

おぅ、お前さんかいルビー・カーバンクル。宝玉獣の展開の要として中核を担うモンスター。今回は魔法罠ゾーンでのご登場なので、宝玉状態でのエントリーだ。

 

「トパーズ・タイガーで追撃!対象はグリーン・ガジェットです!」

 

「通ります」

 

「メインフェイズ2へ!魔法カード、『宝玉の恵み』!墓地からコバルト・イーグルを魔法罠ゾーンへ永続魔法扱いで置きます!」

 

 

……あれ、でもこれ……‼やぁっべ、宝玉獣が四枚!?さっきのレア・ヴァリューで『アレ』を引いたってことか!?そんな豪運ありかよ!?

 

「みんなの力を、このカードに……!魔法カード発動、『宝玉の氾濫』!」

 

ぎゃあああああ!?マジで持ってたああああ!?

コウちゃんが発動した魔法カードから光が溢れだし、魔法罠ゾーンに置かれていた宝玉獣達が次々と墓地へ送られていく。やがてすべての宝玉獣が墓地へ送られ、その次の瞬間には俺のフィールドのガジェットたちが全て爆散していった。アカン、パワーがメテオにっ!?

 

「えぇぇ!?嘘、コウちゃんのフィールドもキーさんのフィールドも全部吹っ飛んだよ!?」

 

「こ、これは一体……!?」

 

「すげぇぜコウ!」

 

観戦してる遊ーずが驚きと賞賛の歓声を上げている。いや、確かに全ぶっぱもヤバいけどあのカードの真価はこっからなんだよ……!

 

「宝玉の氾濫の効果!私の永続魔法扱いの宝玉獣4枚を墓地へ送ることで、フィールドのカード全てを墓地へ送ります!更に、この効果でキーさんの墓地へ送った枚数まで、墓地の宝玉獣を可能な限り特殊召喚します!戻って!エメラルド・タートル!サファイア・ペガサス!トパーズ・タイガー!」

 

俺の場で墓地へ行ったカードは、三色ガジェットの三枚。よってコウちゃんのフィールドへ呼び出される三体の宝玉獣達。……メイン2でよかった!

 

「そして、特殊召喚されたサファイア・ペガサスの効果により、デッキから『アメジスト・キャット』を永続魔法として場に置きます!」

 

『よくやったわ、コウ!』

 

ああもう、また増えたよ宝玉獣。しかもなんかまた喋ってるし……宝玉状態でも喋れるのマジで便利よね。

 

「こ、これでターンエンド!」

 

「なるほど、永続魔法扱いの状態の数によって使える魔法罠が存在する、その究極系があの魔法カードだったわけか!」

 

「4枚も必要という事は、魔法罠ゾーンをほぼ埋めたうえで戦わなければならない。うむ、これは中々に条件の厳しい……しかしそれに見合う豪快な魔法ですな!」

 

「だが、先に使用した魔法で魔法罠ゾーンのカードを消費する魔法もあったぞ。そのあたりの兼ね合いを考えなければならないなら非常に扱いづらい、メリットは大きいがそれに見合うかというと怪しいのではないか?」

 

遊ーず以外の観客には、考察を深める者もいるが興奮した様子で応援に熱が入る面々が多い。分かりやすい忖度はあったがそれでも頑張るコウちゃんの姿は、客のみんなから見ても素晴らしいものだったみたいだな。

 

「ターンをもらいます。カードドロー」

 

さて。コウちゃんがしっかり頑張って逆転の目を作ったわけだが。今の手札的にもこのターンで詰める事は全然できるし、相も変わらず伏せカードを伏せることもしないので非常に攻め易い。

 

(これはどうしようか……勝たせてあげたくもあり、このままの実力で勝てると思われてもなぁ……。粗も多いし)

 

どうしたもんか、と思いつつふと顔を上げると、デュエル・フィールドの外で、携帯を耳に当て肩でささえながら何かの書類を見ているリョウさんと目が合った。

?あれ、いつもの定位置のレジにいないの珍しいな……なんて思っていると、通話を終えた様子のリョウさんと目が合う。一瞬呆れた表情をしていたリョウさんだったが、俺と目が合ったことに気づくと少しだけ眉をひそめながら「来い」と言わんばかりにチョイチョイと手招きをした。……うーん残念。

 

「ごめんなさい。時間切れのようです」

 

「え……?」

 

一応コウちゃんにだけ聞こえる声でそう伝える。戸惑うコウちゃんだったが、仕方がないのだ。俺はあくまで雇われ、何ならバイトである為雇用主から来いと言われたらすぐに行くしかないのである。

 

え?そもそも無断で備品使うのもおかしい?あーあーきこえなーい。きかいばんざいあたまわるいからよくわかんにゃーい。

 

「メインフェイズ。手札から、『ゴールド・ガジェット』を召喚。効果により、手札から機械族・レベル4モンスター、『レッド・ガジェット』を特殊召喚。効果によりデッキからイエローを手札に」

 

ってなわけで、先程のような悠長な動きはせず速度重視の展開に入る。そうだな……早めに終わらせるんだし、少し手を見せても大丈夫だろう。厨二には結構な回数ぶち込んでるし、最近もやったし。

 

「フィールドの二体のモンスターで……オーバーレイ」

 

「オーバーレイ!?」

 

「うっそ、あれって!?」

 

「まずい!コウ!」

 

「な、何……!?」

 

遊ーずはそりゃ知ってるよね、散々泣かされてきてる動きだし。観客の方からも困惑のどよめきが……ああそうか、テーブルデュエルでやってただけでソリッド・ヴィジョンでやるのは初なのか。まぁいいや、厨二がすごい表情してるけど、面白いからバインダーチョップをもう一つ追加することでゆるしてやろう。

 

「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。……エクシーズ召喚、『重装甲列車アイアン・ヴォルフ』」

 

『プシュー』

 

呼び出されたのは、つい先日もでてきたこのデッキのクソゲー要素、アイアン・ヴォルフ。コウちゃんのライフはたしか……ああ、2000か。ごめんね。

 

「エクシーズ、モンスター……!?そんな……!」

 

「アイアン・ヴォルフの効果。オーバーレイ・ユニットを一つ墓地へ送り、アイアン・ヴォルフを対象。このターン、アイアン・ヴォルフは直接攻撃が可能」

 

『はぁ!?』

 

『いかん、コウ!』

 

『オイラ達は素通りかよ!?』

 

なんか精霊が入ってるとモンスターってあんなに表情豊かなんだね。慌てた様子でコウちゃんを心配した声をあげてるけど、もう遅い。あの手札に、速攻のかかしやらバトル・フェーダーやらが無い限りはこれで終いだ。

 

「バトル・フェイズ。アイアン・ヴォルフでダイレクト・アタック」

 

「……!」

 

アイアン・ヴォルフがその目を光らせ、ゆっくりを加速し宝玉獣達の間を通り過ぎ、コウちゃんへとせまる。手札へと視線を落としているコウちゃんは、一瞬悔しそうな表情を浮かべた後……ゆっくりと息を吐き、手をおろした。

 

「ああ……悔しいなぁ。頑張った、つもりだったんだけどなぁ……」

 

コウLP2000→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―高良コウ―

 

「対戦ありがとうございました」

 

デュエルが終わった。ライフがゼロになったことを知らせるブザーが鳴り、ソリッド・ヴィジョン・システムが停止し、フィールドが光を失い、それに合わせてカードたちも消えていきました。

周囲からは先程のデュエルを讃えるようにまばらに拍手が起こっている。……私に、讃えられる資格があるんだろうか。

 

(何もできていなかった。何も、なにも……!)

 

最初の動きの時点で、キーさん……機械万歳さんは手札に最後に使ったカードたちを持っていた。つまり、私が最初のターンで躓いた時点でキーさんは勝つために動けば2ターンで勝てたのだ。

ではなぜ、それをあえて数ターンも引き延ばしてくれたのか……分かり切ってる、私の為だ。

 

私を鍛える、その為に実力が見たいからと始めたデュエル。その前提が無ければ、私はこのデュエルで、一切の良いところ無く終わっただろう。

結局わたしは、変われてなどいないのだ。遊笑くんが助けてくれた、昨日のデュエル。あれを体験したことで、変わろうと思った。強くなろうと。ルビー達を、家族を守ろうと思ったのだ。

 

「でも……!勝てない。私は、弱い……」

 

「そんなことは無い」

 

「……え?」

 

不意に聞こえてきた声に、俯いていた顔を上げる。いつの間にか、目の前にキーさんが立っていました。デュエルが終わり、腕に装着していた備え付けのデュエルディスクは外している。

不思議とその声色は私を非難するようなもので、表情は一切変わっていないのにどこか不機嫌そうなオーラが見えます。

 

「何となく考えていることは分かる。負けたことを、自分を責めているんだろう」

 

「っ」

 

図星だった。心なしかさっきまでとは違い詰まりなく会話をしてくれているキーさん。その指摘に何も言えないでいると、その沈黙を肯定ととったのかキーさんは続けるように語りだす。

 

「確かに、問題点は多く見えている。伏せカードを伏せない、妨害手段が少ない、逐一自身のモンスターの破壊に悲しそうに反応する」

 

「……」

 

「それに最後の方、遊笑に発破をかけられるまでは諦めていただろう。実際、氾濫を使える下地を整えられるだけの手札ではあったんだし、諦める場面ではなかった」

 

何も言えなかった。あの時ああすれば、こうすればというのは理想だ。でも、このデュエルでの自分の動きはどれも最善とは言えないものばかりだった、それは痛いほどよくわかる。

 

周囲では、キーさんが喋っている関係で声をかけては来ないけどルビー達が心配そうに見てくれている。ここまで私のことを想ってくれているみんなに、あんな不甲斐ないデュエルをしてしまった事実がまた重くのしかかってきて、私はまた顔を下に向けてしまいそうになります。

 

「……でも、発破の後の爆発力。あれは良かった」

 

「え?」

 

下に向かっていた顔が、その発言で無意識に上がりました。キーさんはそんな私に言い聞かせるように、こちらをじっと見つめながら言葉を続けます。

 

「過程はどうであれ、あそこでコウは前を向いた。負けたくないと、勝ちたいと前を向き困難に立ち向かう。その姿勢がここにある以上、私は君が強くなれると確信を持てる」

 

キーさんはそう言って私の胸を差し、そして周囲へと顔を向ける。

 

「君は負けた。でも、このデュエルで―――君はこれだけの人に肯定されているんだ。それだけでも、『勝ち』なんじゃないか?」

 

それにつられ、私も周囲を見渡します。そこで初めて、私の耳が周囲の音を……あふれんばかりの拍手を聞き取りました。

 

「負けたけど、よく頑張ったぞー!」

 

「大丈夫大丈夫!俺たちもガチのキーちゃんには勝てたことないから!」

 

「むしろ途中の盤面大崩壊、豪快で良かったぞ!」

 

「ねぇ、次は私ともデュエルして!卓で待ってるねー!」

 

皆、初対面の方達です。どんな人かもわからない、それでもこの方々が、温かい心を持っていること。私のデュエルを、不甲斐ないデュエルを見て、それでも頑張ったと、良くやったと言ってくれている。

 

「……自分の中に閉じこもるより、最初の一歩として、ここは素直に受け取るべきだと、私は思う」

 

「……っ、はいっ!」

 

あぁ、ダメだなぁ。私、もう泣かないようにって思ってたのに。強くならなきゃって、思ってたのに。

 

「今日は、ありがとうございました!」

 

「……ん、こちら、こそ」

 

でも、泣き虫な私の事を、ほんの少しだけ。肯定して良いのかもしれない、そう思えることができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―機械万歳―

 

「おう、お疲れさん」

 

「はい」

 

感極まって泣き出しちゃったコウちゃんを遊ーずに任せて、リョウさんの所へと戻る。まぁ、あの泣き方はネガティブな感じじゃないし大丈夫だろう。いやまぁ実際氾濫食らった時はビビった。もし、使っているデッキが古いタイプの除去ガジェだったなら……。

負けるとは思わない、手札には激流葬も奈落の落とし穴も、なんなら切り札でデストロイ・リボルバーも来てたし。でも、アイアン・ヴォルフが入ってないタイプだったなら、あそこから一瞬で逆転は難しかったと思う。

 

それに、初対面での感じで決めてかかってたけどあの娘、ちゃんと負けん気は持っている。若干心が脆いところはあるけどそこはまた修正していけばどうにかなるだろう。

 

「まぁ、どうせ使うだろうとは思ってたし全然良いが、後片付けはしとけよ、デュエル・フィールド」

 

「はい。それ、で、お仕事、ですか?」

 

「ん、まぁちがうんだがな。明日は時間あるか?」

 

おや、呼ばれたときは新しい仕事かと思ったがどうやら違うようだ。明日は確か……休みだな。あれ、でもリョウさんが休み決めてるんだし確認取る必要なんて無いはず?カード・プロフェッサーの仕事も受けて無いし……時間はあるな。

 

「?一応、休み、です」

 

「……仕事入れていないか。丁度いいな」

 

「???」

 

頭に?を浮かべていると、リョウさんは何かを呟いた後少し嫌な予感のする笑みを浮かべた。

 

「明日、朝少し付き合え。良い所に連れて行ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘つきぃ!リョウさんの嘘つきぃ!?




Q,コウちゃんに負け癖つけないようにするんじゃなかったの?
A,機械万歳「リョウさんが呼びつけたのが悪い」
次回、世界観と設定の無駄話が多いかもしれません、あしからず。
ちなみに機械万歳がデュエル後も流暢に語ってるのは、彼女(彼)の中でまだデュエルモードが切れて無かったからです。

感想、お待ちしてます。返信するより話を進めるの優先しているだけでしっかり見て喜んでます。
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