遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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予約投稿を忘れてたみたいです。毎日投稿は途切れたけど大丈夫、まだエタッてないよ……!
今話は説明ばっかりですけど設定の半分くらいしか開示してないので残りはまたいつか。


Q,シャカシャカシャカシャカパチパチパチパチ

「ここだ。入れ」

 

「う、うい」

 

コウちゃんの指導の翌日。カドショの休業日で、予定も無く一日空いていた俺は、リョウさんと共に近所の喫茶店へとやってきていた。

普通に休日だし、カードプロフェッサーとしての仕事も無かったので縁側でだらしなくのんびりする予定だった所を「少し付き合え」の一言である。全く、雇われなうえに居候させてもらってる身分はこういう時断れないから辛いもんだ。

 

「いらっしゃい」

 

想像していたよりずっと落ち着いた良い雰囲気の喫茶店に入ってみれば、昼間の良い時間帯だというのにお客さんは一人もおらず、静かにグラスを磨きながら挨拶する従業員の方が居るだけだった。店内には雰囲気のあるジャズっぽい音楽が流れ、仄かに香るコーヒーの香りが良い感じにモダンな空気を演出している……様に思う。別に喫茶店によく通ってるわけじゃ無いしわがんね。

 

「カウンターの方だ。ほら、さっさとしろよ」

 

「あ、はい。でも、なん、でここ、に?」

 

「その辺も全部、まず座ってからだ」

 

リョウさんに急かされてカウンターの席に着くと、従業員の人がそっと目の前に水の入ったグラスを置いてくれたので、会釈を返す。

リョウさん自身は、俺の横に座ってコーヒーを注文していた。……え、俺もなにか頼んだ方が良い?

 

「さて、本題の前にとりあえず紹介する。こいつは白灘剛三郎。この喫茶店『Blue Eyes』の店主だ」

 

「どうも」

 

「え、あ、どう、も」

 

急に紹介されたのでいつも以上にどもってしまったが慌てて挨拶しつつ改めて店主の方を見る。

俺やリョウさんよりずっとデカい身長に、強面な表情。頭はフィールド魔法『荒野』が発動しているように見えるが、荒れているといった印象は与えられないのでスキンヘッドなのだろう。

あと眉がすごく濃い。威圧感を与えるヤクザスタイルにしか見えないよ、声的に多分怒ってるわけではなさそうだけど。

今着ているエプロン姿より、ゴリゴリに真っ黒なスーツ着てた方が似合いそうなくらいだ。

 

「裏では情報屋の真似事もしている器用な奴でな?主にデュエル関連の人探しをしてるんだわ。ついでに言うとアタシの元同級生」

 

「ほえ、なる……ほど?」

 

凄いな、喫茶店経営しながら情報屋って、今時アニメとかでもなかなか見ないぞ……ん?デュエル関連の情報屋?

 

「つい最近の話だが。こいつに頼んで、お前に関する情報をずーっと集めてもらってたわけよ。記憶喪失のお前が一体、どこのだれか……まぁぶっちゃけ身元をな」

 

「……」

 

な、なんだかわからないけど猛烈に嫌な予感がしてきたぞ……!

 

「ところで……その依頼でこいつの所に顔を出した際、不思議な奴を見つけたんだ。カードプロフェッサーだろうけど、企業のイベントに出ていた奴でな?テレビ見てたらそこに急にもけもけの着ぐるみ着た頭おかしいやつ出てきたんだわ。しかも特定の種族のモンスターが出る度に頭をブンブン振り回すキチガイときたもんだ。あまりに驚きすぎて、コーヒー噴いた」

 

 

あっ

 

「そいつ、機械万歳っていうんだわ」

 

そこから先を聞く前に、俺は真っ先に椅子から下りてリョウさんの足元へ土下座を敢行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えと、その、あの……わ、わっ、わぁっ……!」

 

「え、なんで泣くんだよ……とりあえず落ち着い――――――うん、落ち着いてるな」

 

5分強ほど、言い訳含む弁明的なことをしながらの土下座フェイズを挟み、椅子に座り直す。リョウさんは苦笑いしながらそれを見ていた。聞くところによると、自分の提案を蹴っておいてしれっとカードプロフェッサーしてることはむかつくが、それ以外のことは驚きこそすれど別に怒ってはいないとのことだ。……じゃあなんで土下座したとき頭に足が乗ってたんすか???

 

「さて、そしてここからが本題なわけだ」

 

「あ、はい」

 

土下座からまたカウンター席に戻り、真剣な表情のリョウさんにつられて俺の背筋も伸びる。しかしリョウさんは美味しそうにコーヒーを飲んでいるだけで話を始めない。なんだ?と思っていると、俺たちのことを黙って見ていた店長さんがそっと封筒を取り出し話の続きを請け負う。あ、さっきの依頼の話か。

 

「結果の途中報告だ。そこの、えー……機械万歳?の身元だが――――――」

 

「「……」」

 

俺とリョウさんが固唾を飲んで見守る中、白灘さんが難しい表情のまま顔を上げる。手に持っている封筒から取り出した紙は、何も書かれていない白紙であった。

 

「―――不明だ。何処にも何の情報も無い」

 

「「えぇー……」」

 

「無いんだからしょうがないだろが。おいやめろ、その無能を見るような目をやめろお前ら」

 

だってしょうがないじゃん?身元がどうとか、結果報告とか言われたんだし、なにかしらは分かったもんだと思うじゃん?そんなわけで肩透かしを食らったわけだが、そのままカウンターへと顎を乗せてだれる俺とは違い、リョウさんは何かを考えるように腕を組んで唸る。

 

「だがこれで、少しだけ候補が絞れたな」

 

「え?」

 

その言葉に思わず頭を上げて隣を見ると、コーヒーを口にしながら俺へと指をつきつけ、苦虫を嚙み潰したような表情のリョウさんと目が合う。

 

「お前は『御三家』に関係する分家、もしくはそのまんま本家筋の人間の可能性がある」

 

「……ま、そうなるか」

 

何だか、店長さん―――剛三郎さんでいいか―――剛三郎さんも納得した表情で頷いているが……え、ごめん御三家is何?この三年間であまり聞いたことないワードかもしれない。

 

「えと、ごさんけ……ゼ〇ガメ、派です」

 

「その御三家じゃねぇよ―――『御三家』ってのは、この街において影響力がデカい一族の総称だな。その呼び名を知らないのは、相当の世間知らずなんだが……マジで知らねぇみたいだな」

 

「は、はぁ……」

 

「となると、それぞれの家についてよりもまず、御三家って役割の説明だな」

 

そう言ったリョウさんは、剛三郎さんが手元へと置いたティーカップを一口だけ傾けて、指を三本立てた。

 

「……御三家は、読んで字のごとく三つの家のことを指す。それぞれがこの街でもとんでもない権力を持っているのが特徴っちゃ特徴だな。三つの家の持ってる権力や役割はそれぞれ違っているんだが、互いの領分にも結構首を突っ込んだりしているから正直その辺の区別はあってないようなもんだ」

 

「リョウの説明を補足すると、御三家ほどじゃないがその下に分家も存在している。本家と分家、それぞれ合わせての頭数がその家の勢力、と言えるな」

 

「ほ、ほぉ……?」

 

首をかしげていると、白灘さんが何やらカウンターの下から板とペンを取り出し……気づいたら何やら手持ちのホワイトボードとマーカーがリョウさんの手に渡っていた。

え、なにそれ準備良い。

 

「お前記憶喪失どうこう抜いても世間知らずだから。どうせ知らないだろうしってことで解説の準備はしておいた」

 

準備良いなまじで!?

俺の驚愕を他所に、二人が解説を続けていく。

 

「まず最初の一つ目、白灘家だな」

 

そういってリョウさんがホワイトボードにキュキュッと家名を書いていく。……あれ、でもこの苗字。

 

「白灘、って」

 

「ん、ああ。俺の苗字だな。一応、白灘家の筋の者だ」

 

御三家の人、意外に近くにいた!?

 

「えと、じゃあなん、で喫茶、店を?」

 

「家が嫌で飛び出してきた。まぁ勘当されたし」

 

(思ったより触れない方が良い案件!?)

 

「続けるぞー」

 

リョウさんの声で我に返ると、既にホワイトボードに書かれていた家名の下に色々追記されていた。

 

「この家が一番御三家の中でも知名度がある方だな。なんせデュエルモンスターズを牛耳ってるGCCはここの一族が経営してるし。今は確か、10代目くらいの学生が社長してるんだっけ?」

 

「ああ、俺の年が離れすぎた弟ってやつだな。家について更に補足をすると、かつてこの国でデュエルモンスターズの技術でトップだった企業と合併した結果膨れ上がった企業でもある」

 

(学生が社長でデュエルモンスターズの技術がすごい、ねぇ。なんか社長って呼び方と言い学生なことと言い、海馬社長みたいだな……え、まさかね?)

 

遊戯王においてキャラ的にも物語的にも超々重要人物だったかの最強の社長のことを思い出す。もう見ることはできないだろうその御姿に思いを馳せている間にも、剛三郎さんが話を続ける。

 

「白灘家はさっき言った通りGCCを仕切ってる。つまり、この街のデュエルモンスターズのカードの生産を独占している家だ。まぁ当然、利権とかその他諸々の関係上、好き放題パワカを刷れるわけじゃ無いんだけどな」

 

「この家は現当主兼社長が学生というインパクトある話もあってそこそこ知名度がある方だ。それに御三家の中でも特に貴族的な責任感が強い。ノブレス・オブリージュだっけ?」

 

「まぁ間違ってはいない。力ある家柄で、権力ある企業で、そしてデュエルモンスターズのカードを生産・運営するという仕事を、世の中をよりよく発展させるための一族全体の責務としてみてるからな」

 

ほ、本当に貴族だな……。カード刷れる権限って、マジで持ってるだけでこの世界だと最強と言えるレベルだ。やろうと思わないだけで、やろうとすりゃ『ぼくのかんがえたさいきょうのかーど』を作ることも出来るってわけだし。

その権利を、家の持つ取り決めだけで守り通しているのだとしたら相当な覚悟と精神性してるぞ。

 

「じゃあ、なん、でその家、が嫌に?」

 

「まぁ当然っちゃ当然の疑問だな。……その責務ってのが、俺には負担だったんだよ」

 

そう言って剛三郎さんは少し寂しそうに笑い、カウンターへともたれかかる。

 

「御三家の人間っていう重責が、あの家じゃ半端じゃないものだったんだよ。それこそ幼少期には、デュエルの腕だけじゃなく帝王学とかの経営者としての勉強に押しつぶされそうになっていたしな。期待ってのは、多けりゃ良いってものじゃないらしい。実際身体も壊したしな……。それで、こんな生活はもう嫌だってなって、当主だった親父とは話し合いもなしのつぶて、そんで最後は互いにデュエルで押し通す段階になって……一応勝ったおかげで、今に至るわけだ。でも、長男じゃなかったのは幸いだった。出ていきたいと言っても勘当だけで済ませてくれて、こうして出て行った後ものんびりできる訳だし」

 

何でもない事の様にそう言う剛三郎さんだが、苦労は計り知れないほどしてきたのだろう。笑っていても、話している間の表情は陰りが見える。

 

「んじゃ、次な」

 

(リョウさん容赦ないね!?絶対気づいてるよね剛三郎さんが暗い表情してるの!?)

 

「次はここ、榊家だ」

 

容赦なく話を進めるリョウさんに、もうこれ何を言ってても話をごり押しただろう雰囲気を感じる。……にしても、榊家か。遊戯王世界的に聞き覚えはあるけどこの世界では知り合いのいない家名だ。

 

「ここは良く言えば中庸、悪く言えば中途半端な家だな」

 

「……ずい、ぶん辛辣?」

 

「あー、まぁしっかり説明するから少し待て」

 

リョウさんのざっくりとした総評に困惑していると、剛三郎さんがホワイトボードにまた家名を記入し、コンコンとペンで叩く。

 

「榊家は、御三家の中でも最も新しくできた家だ。ま、新しいとか言っても相当古い事に変わりは無いんだが」

 

「んで、この家の連中は新しいことを取り入れたり、始める事に躊躇が無い。それゆえに発展しているともいえるんだが……面倒なのは、ゴリ押しが酷いってところだな」

 

「ゴリ押し?」

 

首をかしげて反復すると、リョウさんはペンを手に取りホワイトボードを使いながら話を続ける。

 

「ここが取り仕切っているのは、主にプロデュエリスト関連だ。例えば、現在のプロデュエリストのランキング制度や大規模イベントの実施。そして今かなり力を入れているのが『ライディング・デュエル』と『アクション・デュエル』だ」

 

「!」

 

あ!それ知ってる、遊戯王ゼミでやったところ!

 

「『ライディング・デュエル』は、専用のビークル型デュエルディスク『D―ホイール』を用いた、レースをしながら行うデュエルだ。それ独自の免許がいるが非常に人気の高いデュエルだな。榊家が懇意にしている企業『フォーミュラ・フロント』社がメインの運営をやってて、その他の企業からチームを招聘して大会を執り行ってる。今じゃそのスピード感とインパクトで、並のスタンディング・デュエルよりも人気なくらいだ」

 

「ふむふむ」

 

うんうん、そうだよなぁ!立ってやるデュエルを悪いとは言わないけど、あのインパクトある方式と加速感は、一度知るとやりたくてしょうがないよなぁ!どうしてD―ホイールと合体しないんだ?

 

あほなことを考えている間にも、リョウさんの説明は続く。

 

「それと『アクション・デュエル』。こっちは10年くらい前から発展し始めたモンだ。『アクアビット』社と『キサラギ』重工が中心になって開発した、『質量を持ったソリッド・ヴィジョン』ってやつを使うらしい。まぁ、アタシはあんまり興味なかったしそれ以上のことは知らんのだけどな」

 

あ!知ってるけど!知ってるけどなんか遊戯王ゼミでやってない企業!っていうかお前らが組んだらダメだろ!?厄ネタの宝庫じゃねーか!

 

「モンスターの手を借りたり自分の体を駆使したりしながら行うデュエルで、まだ他の手法と違って受け入れられているかは微妙だが最近プロから流れてきたデュエリストが盛り上げてるらしい」

 

「……ま、これらの運営をしているのが榊家ってわけだ。で、話を戻してそれのどこがゴリ押しが酷いんだって言うと……会場となるスタジアムやらコースやらを作るのに、土地の所有者相手に相当後ろ暗いことしまくってるって噂だ。それこそカード・プロフェッサーを雇って影討ちしたりもザラらしい。……余計な口を挟む気はないが、お前が今後カード・プロフェッサーやるならここの依頼は考えて受けろよ?」

 

「うい」

 

「……まぁ否定はしないが、依頼よりも出会ったならまずお前の身元について聞くのが先じゃないのか?」

 

あ、そうだった。まぁこうして話を聞いていても記憶が蘇ってくる気配は無いし、まぁ違うんだろなぁ。さて、最後の御三家は一体どんな家だろうか。

 

「んで、御三家最後の一つが、才羽家だ」

 

「……」

 

「……んだよ、何見てんだよ」

 

(めっちゃ近くにいたよ、最後の御三家の人)

 

才羽家と聞いて、即座に横に座るリョウさんを見る。まじか、剛三郎さんと知り合いって聞いたから薄々その可能性は考えていたけど、マジか!?

今この空間には、御三家の内二つの家の人間がいる。すごい事なんじゃないのコレ、名家の人間だらけじゃん!

 

「じゃあ、てんちょ、知ってる、よね?」

 

「……」

 

「あー、リョウにその話は、その……」

 

おん?なんかリョウさんすごい無視するし、剛三郎さんもすごい苦虫を嚙み潰したような表情してる。なにこれ、地雷踏んだ?でも、話題として御三家の説明するって言ってくれてたし最低限は教えてくれ……

 

「この家はクソです。次」

 

(情報の霊圧が消えた!?)

 

「あの、家の取り仕切ってるものとかは」

 

「クソです。はい次」

 

嘘だろ、自分の家であろうリョウさんがすごいシャットアウトしてくる。教えてやろうとか言っといてなんだこの状況!?

思わず白灘さんの方へヘルプの意味も込めて視線を送ると、若干のため息をつきつつリョウさんからホワイトボードを取り上げた。

 

「まぁ、お前が話したくないのは痛いほどよくわかるが。言いたくないなら俺が説明するから代われ」

 

「む」

 

「さて、才羽家だが」

 

剛三郎さんがホワイトボードを取って代わると、不貞腐れたようにリョウさんはそっぽを向いてしまう。これは相当根が深い話だな?

 

「ここは主に、デュエルに関係する治安維持……早い話が『セキュリティ』を運営している。流石にセキュリティは分かるよな?」

 

剛三郎さんの問いにとりあえず頷く。名前だけでも聞いたことはあるけど、この世界に来てからは何度もその姿やニュースを見聞きした組織だ。

説明通りのデュエル関連の治安維持組織……この世界ではデュエル至上主義だし、まんま警察だ。一応警察も別であるんだけど、ニュースでの報道とかを見る限り権力的にはセキュリティ>警察になっているっぽい。まぁ遊戯王アニメでは警察は無くてセキュリティが全部役割持ってた気がするけど、この世界じゃ形だけでも二分されているようだ。

 

「んで、そのセキュリティを維持しているのが才羽家……な、わけだが」

 

そこでいったん会話を区切った剛三郎さんがチラッとリョウさんに視線を向ける。つられて俺もリョウさんを見てみると、二人分の視線にさらされたリョウさんは居心地悪そうに舌打ちをして睨み返してくる。

 

「……あークソ、分かった、分かったよ。こっからはアタシが説明する」

 

そう言って少しだけ不快そうにそっぽを向きながら、リョウさんはポツリポツリと解説を始めた。

 

「あの家は、御三家の中じゃ一番古い歴史がある……が、そこ以外がマジでクソだ」

 

「くそ、とは?」

 

「汚職・贈賄・もみ消し。何でもござれだよ、自分たちの権力を脅かす存在にはどれだけ些細なもんでも容赦なし。んなゴミ家の長女だったおかげでアタシも、家を出る時相当数の追手が来たわけだが」

 

「Oh……」

 

えぇ……なんか、この世界結構暗い所は闇が深くね?いや遊戯王は曇らせ・闇深・人死を含んだ完全アニメだけどさぁ。さすがにそんな世界だとは思わなかった、これまでの三年間問題なく生きていけたのって実は運が良い?……いや、この場合はこの才羽家がヤバいだけか。榊家の後ろ暗さが白く見えそうだぜ。

 

「んで、そんな家だからそこの人間もドブを煮詰めたみたいなカスがわんさか。今の当主は随分とまともなヤツで、内部の粛清が進んでいるらしいが、その一つ前の当主の代は殊更に腐りやがってた」

 

「えっと、先代、もしかし、て……」

 

「アタシのクソ親父」

 

滅茶苦茶言うから何となくそうだとは思ってたけどやっぱりぃ?もうなんか話したくなさそうな雰囲気を醸し出すリョウさんだが、イライラを飲み込むようにコーヒーを一気飲みしペンをくるくると回す。

 

「話が逸れた、だから才羽家ってのはまとめると権力欲の強い性格悪いやつが多い家だ。悪いこた言わねぇから、この家にはかかわるなよ。……流石にねぇとは思うが、お前があの家の奴だったってオチは勘弁してほしいがな。アタシにもお前に何するか分かんねぇ」

 

「う、うい……」

 

頼む!才羽家の人間じゃなくあれ、俺!リョウさんに見捨てられたらマジで野垂死ぬから!アキさんが良くてもリョウさんが許してくれそうにないし!?

 

っと、内心で祈りを捧げている間にリョウさんはおかわりのコーヒーを貰いゆったりと飲んでおり、剛三郎さんもホワイトボードやらを仕舞っている。

説明はお終いの様だ、ちょうどよい。話を聞いている中でずっと持っていた疑問を聞いておくことにする。

 

「あの、御三家、については、分かり、ました。でも、それ、と俺が、御三家の、関係、者っていう、のはどう、つながる、です?」

 

「……そういや、あの説明だけだとわからねぇな」

 

「っと、そうだった、一番の話はそこだったな」

 

「えぇ……」

 

2人ともぉ!?

 

「悪い悪い、つい俺の実家の鬱陶しさのことを伝えることに夢中で」

 

「アタシもウチのクソさを伝えて満足してたわ」

 

2人ともぉ?何?御三家ってそんなに面倒な連中なの?いやまぁさっきの説明だけ聞けばだいぶヤバい所なのは分かるけどさぁ?

ジト目で二人をにらみつけていると、苦笑しながら剛三郎さんがメロンソーダの入ったグラスを差し出してくる。あ、やったー甘味だー!

 

「話も長くなったしな。これ飲んどけ」

 

「わーい」

 

「説明すんぞー」

 

受け取ったメロンソーダを手に取り、ストローに口をつける。爽快感のある甘い飲料で舌と喉を潤しながら、リョウさんの説明を聞く。……ジュース美味しい!ジュース美味しい!

 

「なんでお前が御三家関係者だと思ったか、だったな。……また話が脱線しそうだが、理由の一番大きいのは、お前がエクストラデッキの使い方を熟知していた、という点だな」

 

「?」

 

エクストラ?なんで?ストローから口は離さず首をかしげる。なんで?カードプロフェッサーは普通に使ってたし、何なら遊ーずの中でも遊鮮くんや遊香ちゃんなんかもつかってるんだしそこまでおかしい事ではないと思っていたんだけど……。

 

「ウチのカドショの連中の実力の話したときも今みたいな顔してたな……」

 

「長くなるから手短に言うか」

 

俺の疑問に、グラスを磨いていた剛三郎さんが話の続きを引き取る。

 

「エクストラデッキのカードについて、詳しいデュエリストってのは全体の3割もいないと言われている。まぁあくまでマスコミがざっくり調べただけの所もあるが、おおむね間違っちゃいないだろう」

 

「……???」

 

なんで?いや、確かにこの三年間デュエルをしている中で相手がエクストラを使ってきたのってこの間のタッグデュエルの時で二回目だし、エクストラデッキを使えるデュエリストが少ないってのは分かる。でも、なんでそんなことになってるの?アカデミアというデュエル専門の教育機関すらあるのにそんなことになるのは理解できない。……え、まさかね?いやいや、んな訳が……

 

「まさか、だけど」

 

「ん」

 

そんな訳が無い、と笑い飛ばしてほしい気分で、自分の憶測を口にする。どうか、間違ってますように、と。そうじゃなければ、エクストラデッキを使える=御三家の関係者という図式が色んな意味で厄ネタを持つことになる。

 

「エクストラデッキ、の使い方、って。教える、土台が、御三家、にしか、無い?」

 

「半分正解、だな。エクストラデッキの召喚法を教えているのは、御三家とアカデミアだけ、が正解だ」

 

「……アカデミアの、運営、している、のは?」

 

「んー……剛、今年の生徒会長どこの家の者だっけ?」

 

「今年は……才羽家の現当主の一人娘だな。優秀で、首席合格した一年生から現在まで、ずっと生徒会長を続けているらしい」

 

それって結局御三家の介入が無いと教える下地が無いって事じゃないですかヤダー!

 

何となくではあるけど、どうして俺がエクストラを使うと御三家だと思われるのか理解出来てきた。……理解したくなかった気がするけど!

つまりあれだろ?エクストラデッキの使い方、御三家以外では体系化されていないってことじゃないの?

 

カードパックの封入率もびっくりする闇鍋だったが、なんでそれなのに普通に流通を独占できているのかも疑問だったがこれも分かった。そもそも、エクストラデッキなんぞ皆使い方知らんから狙わないんだ。それよりもちゃんとデッキに入れてりゃ使える可能性のあるメインデッキのカードが強い扱いされる傾向も妥当だ。リリース素材用意出来りゃ出せるもん。

 

カードプロフェッサーにはそれなりに使いこなす人がいる、っていうのもある程度は理解が及ぶ。依頼一回の成功でえぐい金額の報酬が動くんだ、カードを買うための資産は普通の人たちの比じゃないだろう。そうなれば、メインデッキだけに限れば簡単に欲しいデッキが完成する。となれば、次に狙うのはエクストラデッキ。使えるかどうかは別として、欲しいとは思うだろう。

 

欲しい上にエクストラデッキのカードが買えるとなれば使ったことは無くとも興味本位で買うってこともありうる。

そして、仮に興味本位だったとしても、買った以上は使うためにあれこれ学ぶだろう。強さがそのまま収入に直結するだろうカードプロフェッサーが、エクストラデッキに対して何も思わないというのは考え難い。

 

で、俺である。普通の記憶喪失ならわざわざ使わない、どころか使えないエクストラデッキを普通に使うし、拾われた当初はカードプロフェッサーって訳でもなかった。

カードプロフェッサーでもなく、エクストラデッキについて何も教わらずとも理解し、なんなら常用している。……うん、怪しいね!

 

「その質問が出るってことは、少しは自分が異質な奴ってのは理解したか?」

 

「まぁ、はい。御三家の、疑いが、かかるのは」

 

記憶喪失っていうのは事実だけど、こうなると俺自身この身体の元の人格の娘が気になってきた。路地裏にぶっ倒れていたっていう話はアキさんから聞いていたけど、妙な厄ネタに巻き込まれている可能性もありそうだ。……うーむ、真面目に俺自身、自分の身の上を調べる必要あるか?

 

「ま、どれだけ言っても剛が調べて分からねーんじゃ今の所手がかりなんて無ぇ訳だし、気長にお前のことを知ってるやつを探すしかあるめぇよ」

 

「俺は情報屋としては中堅だ。俺より上の専門家を頼った方が良いんじゃないか?」

 

「御三家についてお前よりも詳しい情報屋?何それ居るんならアタシもお目にかかりたいわ……さて、と」

 

「?」

 

自分の身の上について、珍しくあれこれと頭を使って考えを巡らせていると、リョウさんが俺をじっと見つめてくる。その表情は、才羽家の話をしていた時の仏頂面とはうってかわって、何やら企んでいそうな悪辣な笑みである。

 

「……あの、何?」

 

「主目的だったお前の身元についての調査結果は聞いて、御三家についての説明は済んだ。ってことで、次の話に入ろうか」

 

「次の、話?」

 

なんだなんだ?剛三郎さんの方を見るが、そちらも何も聞いていないのか肩をすくめている。と、何が何やらわからず首をかしげているとリョウさんは俺に向かって手をつきだす。

 

「お前の端末よこせ。カードプロフェッサーの登録どうせしてるんだろ、これまでの仕事について見せろ」

 

「うぇ、は、はい」

 

「どれどれ……はぁ?まだ2戦しかしてねぇのかよ」

 

端末を渡すと、何も言ってないのに当たり前のようにパスコードを突破され何故か鼻で笑われる。……なんで知ってるんだろう。

 

「ふむふむ、クレストにイヅモマテリアル……思ったより良い所の依頼受けてんな……でもまだ中堅どころかビギナーじゃねぇか」

 

「活動、開始まで、期間、空けまし、たから」

 

リョウさんの言い分が何とも面白くないと思い口を挟む。良いじゃん、デッキが最低限完成するまで待ってたんだし。口をとがらせながら文句を言ってはみるが、リョウさんはそんな俺のことなど無視して端末を剛三郎さんに見せながらよくわからない話を続ける。

 

「ま、今んとこの活動については問題なし。いけるぜ剛」

 

「うむ……だが、良いのか?本人は同意していないが……」

 

え、本当に何なんだ?話は見えないけどまたものすごい嫌な予感がしてきたんだけど!?

不安になりながら二人が相談しているところを見ていると、笑みが邪悪なリョウさんから端末が投げ返され、慌ててキャッチする。……え、何この画面。『依頼受諾、誠にありがとうございます』?

 

「アタシからの依頼って形にしといた、個人依頼だ。今から行ってもらう」

 

「今!?」

 

カウンターへと頬杖をつきながらにやにやと笑うリョウさんに、思わず普段出ないような声量で叫ぶ。うっそだろ、マジで!?……あマジだこれ!?もう受諾までされちゃってるし!?

 

「な、なんで……!?」

 

「アタシに知り合いがお願いしてきたことだったんだが、十中八九デュエルすることになると思ったから、面倒だなと思ってたところでな。安心しろ、危険な所に行けってわけじゃねぇから」

 

「いや、でも、その……」

 

「ちなみに、依頼として正式に登録したもんだから違約金発生するからな」

 

「鬼です?」

 

「違約金の所は上限いっぱいで設定しといたから、7桁は覚悟しとけよ」

 

「鬼だ……!」

 

7桁は無理!?前回の依頼の報酬ももうデッキの強化に使ってすっからかんなのに、そんなもん払えるかぁ!?

ア、アカン……!完全に受ける以外の選択肢が無い!俺が一体何をしたっていうんだ!?せっかくの休日なのになんで突発的に仕事をせねばならない!?

 

予想外の事態に頭を抱えていると、そんな俺の姿を肴にコーヒーを飲みながらゲラゲラと笑っていたリョウさんに、剛三郎さんが呆れた様子でチョップを入れていた。

 

「あいて!おい剛、何すんだ」

 

「お前なぁ、詐欺まがいの依頼はマナー違反だろ」

 

「安心しろ、アタシはこいつの雇用主だ」

 

「カドショの方はな」

 

いいぞー!もっと言ってやってください剛三郎さーん!

 

「全く……急にかつ強制で仕事なんて依頼したんだ、お前もちゃんとついていけ」

 

剛三郎さーん!?その言い方だと結局依頼は受けることになってないっすか剛三郎さーん!?

……あ駄目だ!そういえばさっきリョウさんといけるとか何とか言ってた、この人もグルだ!

 

「ったく、仕方ねぇな……おら、アタシがついていってやるんだ、さっさと行くぞ」

 

「や、やめろー、死にたく、なーい、死に、たくなーい」

 

「うるせぇ逝くぞ」

 

「ニュアンス、違う……!」

 

こうして、何故か仕事をすることになってしまった俺はリョウさんに首根っこを掴まれ、引き摺られながら喫茶店を退店することになるのだった。一体、なんでこんなことに……!?

 

「嘘つき、てんちょ、うそつき……!」

 

「嘘はついてないぞ、楽しい所だ。楽しい楽しい、お仕事の時間だ」

 

「労基……!労基に連絡を……!」

 

「……またのご来店を」

 

剛三郎さんの呆れ気味な声を背に、こうして望まぬ仕事が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―アップルボーイ―

 

「あの……なぜ私は呼ばれたのでしょうか」

 

所属する会社、イズモマテリアルの社長室に呼び出された俺は、目の前に座る笑みを崩さない老人―――専属の雇い主であるイズモマテリアルの社長に質問する。

社長はその張り付いたような笑みを崩さないまま、カラカラと笑い手元に置いてあった端末を操作した。

 

「ほっほ、すまんの、休日に。さて、その質問に答える前にこれを見てほしい」

 

そう言った次の瞬間、部屋に備え付けられていたモニターが点灯し一人の人物が映し出される。どうやらカードプロフェッサーの登録情報であるその画面へと目を向け、思わず目を見開く。

 

「ぇ……あの、こいつは……!?」

 

「うむ、君も良く知っておるじゃろうが。『機械万歳』くんじゃな」

 

白の強い灰色の髪、真紅の光が灯っていない瞳、証明写真なのになぜかダブルピースのその証明写真に写っていたのは、間違いなく最近俺の心と依頼をかき乱しまくっている同業者の姿であった。

 

「あいつが、一体どうしたのですか?コネクションという点でしたら、既に連絡先の交換は行っているのですが……」

 

「うむ、それがなぁ。この少女について、とある依頼が、君に名指しで来ておる」

 

「依頼……?」

 

訝しげに尋ね返すと、社長は再び端末を操作し、モニターの画面が切り替わる。

次に映し出されたのはとある企業のロゴ。最初はそれがどこの企業の物なのかすぐに判別できなかったが、やがて記憶を辿り合致する企業に思い至り、機械万歳の情報が映し出されたとき以上の驚愕を覚える。

 

「社長、本当に此処からの依頼が……!?」

 

「うむ。わが社とは全く縁のない企業だったはずじゃがのぅ……一体、どのような意図が含まれているのやら」

 

そう言ってどこか遠くを見るように黄昏る社長は、未だに衝撃から戻ってこられていない俺に、改めて居直す。その後に伝えられた依頼内容は、俺の混乱しきった内心を更にバラバラにするものであった。

 

「榊家のお抱え企業、『レイレナード』からの依頼……先程のカードプロフェッサー、機械万歳へと接触、同社の用意した条件での要請を通達せよ。もし協力が得られない場合はデュエルによる拘束、その後本社へと連行も考慮する……何、だよこれ……!」




簡潔によく分かる御三家
・白灘家:すごく……貴族です……
・榊家:ホセーよおせ
・才羽家:リョウさんみたいなのが長女してた家

この設定を作ってた際にジャンプ読んでたかポケモンしてたな……そういう設定だ。

アーマードコアの企業名が結構今後も出てきますが、知ってるとより楽しめる程度です。
次回、機械万歳withリョウさん
はじめてのおつかいかな?
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