遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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遅くなりました。次話投稿はそこまで遅くならないつもりです。
風邪とか仕事とかを理由にグダってました......。あと禁足地にちょっと用が。


A.すみません、今召喚5回目ですよね?

―機械万歳―

 

デュエルが終了したことを告げるブザーが鳴り、展開されていたソリッド・ヴィジョンが消える。

全てのヴィジョンが消えた所でデュエルディスクを下ろすと、巻き上げられていた粉塵のエフェクトが消え、珍妙な格好で立ち尽くしている男が現れた。

 

「ま、負けた……?お、俺が……?」

 

「対戦ありがとうございました」

 

アイサツは大事()、これは欠かさない。頭を下げ、丁寧に行うことで対戦相手への誠意を見せるのだ。......ま、相手には強要しないけどね。やるかどうかはその人の自由だし。

前回の黒フードの人はちゃんと挨拶を返してくれてたのでちょっと嬉しかったりする。

 

「ぁ……ああああああああ!!」

 

「ウェ!?」

 

不意にうめき声を上げて、男が苦しみだしたんだが?尋常ではない慌て様、頭を抱えてフラフラと揺れながら後ずさっていく姿はどう見ても不調を抱えているものだった。

 

「え、と、だい、じょうぶで、すか?」

 

「あ、あぁ……!来る、来る……!『ペナルティ』が来るぅ!」

 

「ペナルティ……?」

 

「おい!危ねぇぞ、離れろ!」

 

男は恐怖に染まったうつろな瞳で、頭を抱えながらうわ言のようにブツブツと命乞いを続けている。

その姿に不可思議な感覚を覚え手を伸ばしていると、背後からリョウさんが肩を掴み後ろへと引っ張ってきた。

 

「て、てんちょ」

 

「どう見ても様子がおかしいだろ、下手に近づくな!」

 

「あ、あぁ、あぁあオボェア」

 

「「……は?」」

 

それは、絶対にあり得ない現象だった。目の前で苦しみの声をあげていた男が、突如立ち止まり上を見上げた。その次の瞬間―――

男の口から、青い炎が噴き出した。

 

炎が噴き出したのは、口からだけではなかった。目・鼻・耳、頭部の穴という穴から勢いよく炎が噴き出し、男が苦悶のうめき声をあげながら苦しみ悶えている。

……ごめん、ろうそくみたいで綺麗だねって脳内のエリクトが。

 

「なんだよ、これ……!?」

 

「あ゛ぁ゛ぁ、だず、げ―――」

 

まさかの事態に呆然とするリョウさんと俺の目の前で、燃え盛る男はバタリと倒れ、動かなくなった。後に残ったのは、何が起きたのか全く理解できていない俺たちと黒くなった死体となったさっきまで男だったものだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……わかった、ライウン達はお前の方で持って行ってくれるんだな。……わかった、それで頼む」

 

少し時間が過ぎ、廃工場内に乗り付けてきた救急車のランプが目に優しくない赤い光を点滅させている。

あの後リョウさんが依頼主だという人物へと連絡をし、あっという間に救急車と警察、ついでにセキュリティが事後処理の為集まってきた。

廃工場を占拠していたカードプロフェッサーのラ……ライ……ライジン?はセキュリティが手錠をかけ、護送車に乗せられて行った。行き先についてリョウさんに軽く聞いてみたけど、良く分からない話だった。

 

まぁろくでもない所に連れて行かれるのだという事は分かったケド。

カードプロフェッサーのいざこざにはあまり関与しないという話だったはずのセキュリティが当たり前のように出張ってくるあたり、依頼主だという相手はそういうことが出来る、相当この街での地位が高い存在なのかもしれない。

 

「おい、帰るぞ……って、何やってんだテメ―」

 

「…………」

 

そんなことよりもさっきの男だ。今丁度救急車に載せられていく担架を見送っているが、隊員の人は顔をしかめているしあまり急ぐ気配もない。まぁ無理もないか、だって明らかに死んでる黒焦げ死体だ。

俺だっていやだよ、人が焦げた匂いが充満する救急車。救急隊員という仕事をしている人でも、そんな状態の......モノを運ぶのは結構苦痛だろうな。

 

「おーい、もしもーし」

 

「……」

 

ってかそうだよ、黒焦げ。あの男の様子は確かにおかしかったけど、流石にこれは妙な事が起きすぎている。デュエルに負けただけで体が黒焦げになるレベルで燃えるとか、何がどう作用すれば起きるんだよって話だ。......普通ならな。

 

「……」

 

「……」

 

だが、この世界の外からこの世界とよく似た世界を見たことのある俺だからわかる事もあった。―――カードの精霊。遊戯王のアニメでもしばしばクローズアップされるその存在は、その名の通り遊戯王のカードに宿る霊的存在だ。

自身と同じ名のカードに宿り、実体は持たずそれを見ることのできる存在も稀。

中には特殊な魔法が使えたり現実に干渉できるほど強力な力を持つ精霊もいる。精霊が見えない俺やリョウさんからすれば謎の発火現象なさっきの事態も、精霊が関与しているのなら十分ありうる。精霊は人に友好的な存在ばかりという訳でもないからなぁ。

 

というかガッツリあの男言ってたよな?「ペナルティ」って。……罰ゲームなら闇のデュエルなんだけど、違いがあるもんかね?ってかさっきのデュエル中に干渉し始めてたあの変なの。あれ、たぶんアレだよなぁ......なんでこんなところに?

ここが遊戯王世界であるなら精霊が明確に人を害している現状って実は相当マズいんじゃ―――

 

「わっ!!」

 

「ヒョッ!?」

 

っっっうっわびっくりした!?何!?何事!?

耳を抑えつつ振り向くと、若干眉がぴくぴくしているリョウさんがスマホ片手にこちらへと微笑んでいた。……あ、この笑みは怒りっすね。

 

「は・な・し。聞いてねぇな?」

 

「えと、その……アィ」

 

「ふん!」

 

「ピッ!?」

 

げ、げんこつ……!いっっってぇぇぇ!?頭に響く激痛に視界が白んでいく。それでよくなるわけじゃないが無意識に拳が振り下ろされた部分を手で押さえ地面を転がる。

 

「聞け」

 

「ぁぃ」

 

「はぁ……とりあえず、もろもろイレギュラーが重なってるんで、依頼主と報酬の件含め話をしに行くぞ」

 

「依頼主、どんな、人?」

 

俺の質問に少しだけ考えるように視線を上に向けたリョウさん。すぐにこちらへと向き直るが、その表情はどこか苦々し気なものであった。

 

「……ま、会えばわかる。お前にも無関係な奴じゃねぇしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―才羽リョウ―

 

依頼主との落ち合い場所まで向かうタクシーの中、先程目にした異様な光景について考える。

不可解かつ煮え切らない最期を迎えた廃工場でのデュエル。謎の男が謎を残したまま燃え尽きたせいで分からないことだらけで話が進んでしまっている、あんな光景は流石に初めてだ。

 

(人が燃える……?デュエルに負けたなんて事で?)

 

あり得ない、と断じるには先程の光景は強烈すぎた。目の前で見せつけられた不可解な現象について一応の報告義務として先方へ伝えたが、そこでも返ってきたのは戸惑いの言葉だった。

 

本来の対戦相手だったライウンは、気絶させられていただけで生きていた。数分前に警察から連絡された話では、既に起き上がり問題なし、事情聴取にも協力的だそうだ。

まぁ、事情聴取と言っても、あの男が廃墟にやってきて、デュエルに負けたあたりから記憶がさっぱりと無くなっているとの話だ。使えない奴らめ。

 

(尚更わからねぇ……じゃああの男はなんで燃えた?あいつが負けた時だけ燃えるって、なんの理由が……っと)

 

考え事をしている間に、目的地へとタクシーが到着した。料金を払い連れの阿呆(機械万歳)を蹴りだしつつ下りれば、目の前に現れるのは街の中でも一際大きく、見上げれば首が痛くなるほどの高さのビル。

とんでもない存在感を放つそのビルは、上への高さだけならこの街で最も大きい建物の一つだ。

出入りする人間の数も多い、ウチのショップがある商店街で一番盛況な時の倍近くいるんじゃないか?

 

「て、てんちょ。ここ、って」

 

「ああ。ここはこの街のデュエルモンスターズの全てを担う場所―――GCCセンタービルだ」

 

若干興奮気味の機械万歳を抑えながら、嫌な思い出を想起させるその巨大なビルをにらみつける。アイツに会うのは久しぶりだし、やぶさかではないんだが......此処に、もう一度来ることになるとはな……。

 

 

 

―機械万歳―

 

リョウさんに連れられてやって来たクソデカビルの中を歩く。スーツ姿の人ばかりの中ジャージ姿の俺はクッソ目立つ、というかそろそろグラサン外して良いかも。俺別に某赤い彗星じゃないしグラサン常備する必要ないし。

しれっとスーツほどじゃなくともそれっぽい格好のリョウさんは良いよなぁ。胸元が大分開いてるけど......ショップで俺が暑くて胸元扇いでたらだらしないとか言って嗜めるのに。

 

さて、結構歩いた気もするし結構高いところまでエレベーター乗って、やってきました大体20階。窓の外の景色が綺麗だぁ……。あ、下は見ないようにする。何とは言わないが漏れそう。

 

「ようこそ……久しぶりですね。会いたかったですよ、リョウ」

 

エレベーターから降りてすぐの室内に、一人のスーツ姿の女性が立っていた。きっちりとしたスーツの着こなしと後ろでまとめられた髪に、似合いすぎるほどに似合っている眼鏡がデキるOL感を醸し出す美人さんだ。

こちらへと丁寧にお辞儀をしてゆっくりと顔を上げると、お堅い印象だった表情がふわりとほどけてわずかに微笑む。……あらやだ、キレイ系美人さんかと思ったら笑うと可愛い。

 

「おう、面と向かって会うのは……2年ぶりか。久しぶり、レイン」

 

「少しくらい連絡をくれても良かったんですよ?貴方がプロを退職してから、何度もこちらから連絡したのに」

 

「あー、悪かったって。知ってるだろ、アタシが辞めた理由」

 

「えぇ。でも、友人ならそう言う理由は口頭で聞かせてほしかったわ」

 

とりあえずぼーっとしている俺をよそに談笑するリョウさんと美人さん。話の内容的にも、友人とかだろうか……。

 

「それで、そちらの方が例の……?」

 

「ああ、電話で話した奴だ。おい、挨拶」

 

「うぃ。機械万歳、です。カード・プロフェッサー、してます」

 

リョウさんから促され、一歩前に出てお辞儀をする。相手の女性の方も軽く頭を下げた後、眼鏡の位置を整えていた。......流石に俺には微笑みかけたりはしてくれないか。

 

「初めまして。私はレイン、レイン・マイヤーズ。このGCC本社にて、『カード・プロフェッサー部門』の総括をしています。この度は、私が依頼した問題を解決していただきありがとうございます」

 

「あなた、がさっきの、依頼を?」

 

「えぇ。立場上私はカード・プロフェッサーに依頼をするのが認められていない役職となっております。その為今回リョウに頼んだように、少し遠回りな依頼の仕方が必要......立ち話も何ですね。こちらへどうぞ」

 

俺の疑問に無表情のまま答えていたレインさんに促され、応接室らしき場所へと移動する。カード・プロフェッサー部門の統括、と言っていたが......むしろ依頼を出し放題じゃないのか?

それとも社内規則とかでそう決まっているとかか......?

 

ま、そのへん含め移動してからで良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、改めて。この度は依頼の達成、ありがとうございました」

 

「いえ......」

 

通された応接室のソファに座り話を再開する。机を挟んで反対側にレインさん、俺の横にはリョウさん。他に誰かがいるという事も無く、淡々と話は始まった。

 

「報酬は予定通り、CP『機械万歳』様の口座に振り込ませていただきます。迅速な依頼遂行もあって、評価には良い結果が載りそうです」

 

「どうも」

 

「......ンな事よりもだ、レイン。報告した通りだが、ありゃ一体どういうことだ?」

 

目の前でレインさんが端末を操作すると、俺の端末に入金メールが届き口座の残高が目に見えて増えた。

......あれ、もしかしてこれなら『アレ』、買える......?なんてことを考え内心のみニヤニヤしていると、リョウさんがレインさんへと胡乱げな目を向ける。

 

「あれ、と言うと?」

 

「言わんでもわかるだろ。今回のデュエル相手だ。アタシは今まで、デュエルに敗北して燃える奴なんて聞いたことねぇぞ」

 

「......その事ですか」

 

「今回の依頼の対象だったライウンってカード・プロフェッサーも、記憶なかったんだろ?いったい何が起こってるんだ、この街で」

 

「......」

 

リョウさんの質問に、レインさんは無言で端末を数回操作する。するとレインさんの背後の壁がモニターへと変わり、そこに映像が映し出された。

 

「これは......グラフ?一体何のグラフだ」

 

「今回の依頼......実は、対象となっていたライウンは、正確には『保護対象』だったの」

 

「保護......?」

 

「そしてこのグラフは、ここ数年の行方不明者の推移。......見てもらえばわかるでしょうけど、三年前を皮切りに、不自然な数の増加がみられるわ」

 

その言葉にグラフをよく見れば、確かに三年前の辺りから、数が急に右肩上がりとなっている。......三年前と言うと、俺がアキさんに拾われたくらいの頃か。

 

「それと、あのライウンってのが保護される話との関連は?」

 

「このグラフは、行方不明者の中でも―――全員がカード・プロフェッサーという共通点を持つ行方不明者のみのグラフよ。中には目撃証言がある人もいるけど、不思議と目撃者が居ても発見は一切されていない。

そして目撃証言の方にも共通して存在している証言がある。それが......『ペナルティ』という言葉」

 

「......」

 

説明を受け、流石にリョウさんも口をつぐむ。聞いたことがあるどころじゃない。ついさっき聞いた、『ペナルティ』という何か。先程の、人が燃える光景。見つからない行方不明者。

......これってつまり。

 

「さっきの、男。あれと同じ様に、行方不明者は皆燃えてしまっているってことか?」

 

「......確証は得られていなかった。貴方たちの見たという、証言があるまではね」

 

レインさんはそう言って再び端末を操作し、モニターの映像を切り替える。

映し出されたのは、先程見た男と同じ様に、燃え尽きたと思われる黒焦げの遺体の写真。さっきの男よりガタイの良かったであろうものも見えるので、別の被害者の写真だろう。

 

「今回カード・プロフェッサー『ライウン』が保護対象として見当がついていたのは、ただの偶然。現在この謎の焼死事件の対応の為、登録済みのカード・プロフェッサーに保護の通知を続けているの。

 ただ、彼はその求めに応じなかった。それどころか、依頼制度を悪用して廃墟を占領するという暴挙を行っていたので、依頼という形でそれを解放・保護する―――予定だったのだけど」

 

「それをアタシらが受諾し、向かったところでたまたまあの謎の男と出会った、ってわけか......」

 

(はえー、すごい偶然。ライウンって人も後少し遅かったら燃えてた可能性があるんか)

 

怖いなー、とづまりストⅣ。いや実際びっくりだわ、そんな行方不明者が出るレベルで発火現象が起きてるとか。カードゲームに負けたら命が危ういとか、なにここアニメの世界?アニメの世界だったわそういえば。俺は見たことない世界っぽいけどネ!

 

「原因は?」

 

「さっぱりね。何もわかっていない、とは言わないけど目撃者もなかなかでないし、基本的に夜間の発生がほとんどだから発見された時には手遅れという状況しかないわ」

 

「......あの、じゃあ、今後、どうすれ、ば?」

 

さりげなく話の区切りっぽいところで俺の方からも話を切り出す。カード・プロフェッサーの行方不明者が増えているってなると、活動を止められたりもするんだろうか。

 

(それは困る、命の危険は確かにアレだからあんまりあって欲しくないけど。カードを買う資金調達の為にも依頼を受けるのはやめたくないし......)

 

俺の質問に、レインさんは首を横に振った。

 

「心配はしなくて良いですよ。カード・プロフェッサーの依頼・受諾システムと仕事については基本止めることは無いの」

 

「そうなん、です?」

 

あれ、ちょっと意外。活動自粛とかあるのかと思っていたんだけど。

 

「カード・プロフェッサーは、デュエルで勝つことが仕事の奴らだ。そりゃ自分の命が第一だろうが、それでもこんくらいで仕事辞める様なのは居ねぇよ。精々副業でやってる奴らがやらなくなる程度だ。

この仕事一本で食ってる奴らはむしろ、事件の主犯を探して回ってるだろうぜ」

 

「え、逆に?」

 

「ええ、既にカード・プロフェッサー登録している中でも100位圏内の方々、通称『ランカー』の方々は漏れなく全員その様に動くという連絡がこちらに入っていますよ」

 

カ、カード・プロフェッサーすげー!自粛どころか犯人狩りかい!どんだけ自信あるのそいつら!?負けたら燃やされる可能性考慮してねぇの!?

 

「ンなこと言ったって、お前だってデュエル・モンスターズへの想いは結構重いだろうが。てっきりアタシはお前も嬉々として参加しに行くと思ってたぞ」

 

「いや......」

 

出来るか!こちとらまだ満足いくデッキすら完成してないって!今の俺に出るんは精々勝てる相手に対してだけの連続デュエル程度だよ!勝てるかどうか、情報も無い負けたら死ぬデュエルとか真面目にお断り!

カード・プロフェッサーの上位陣のバイタリティに戦慄している俺を他所に、レインさんとリョウさんで話が進む。

 

「話は聞いたし、こっちでも店の周囲には気を張っておく。多分カード・プロフェッサー関連の話だしこいつ経由にはなるだろうが、また用があったら連絡くれ」

 

「ええ、そうさせてもらうわ。......貴方にも、今後の働き次第で優先的に良い仕事を回すことになると思います」

 

「あ、ありがと、ございます」

 

お、ありがてぇ。カード・プロフェッサー関係のトップっぽい人に依頼を融通してもらえるとか超良い話じゃないですかヤッター!

でも話の流れ的にその謎の行方不明事件の話も持ってこられるんじゃないですかヤダー!

 

「じゃ、また。次は剛のところで飲もうぜ」

 

「あら、あの人のお店?良いわね、楽しみにしているわ」

 

「っし、行くか。......おい、行くぞ」

 

「うい。では、お邪魔、しまし、た」

 

若干の不安と期待の混じる話を聞きつつも、リョウさんに促され席を立つ。あっという間にビルの入り口に降り、レインさんに見送られながら俺とリョウさんは帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。ただい、ま」

 

帰ってきました、愛しき我が家。いやまぁアキさん家なんだけどね!

リョウさんは何かやることがあるとかでショップに行くことに。俺の方は好きにしていい、というかむしろ来るなという事なので、これ幸いと自室へ帰還したわけだ。

 

(いやー、変なことはあったけど一仕事終えた後だし、少しくらい寝とくか……)

 

来ていたジャージを脱ぎ散らし、タンスから男物の短パンを取り出し着用。部屋着スタイルになりきれいに整えられた(アキさんに感謝)ベッドへとダイブする。

心地よいフカフカ加減のベッドへと顔をうずめうつらうつらしていると、廃墟でのデュエルの時から聞こえていた煩わしい声が残念なことに鮮明になって聞こえてきた。

 

(おい!!!!!!!おかしいだろう!?起きろ!!儂の事を愚弄するにも程があろうが!?)

 

「......ぅっさいなぁ」

 

(うるさいだと!?馬鹿なことを言うな!貴様、今どのような状況か分かっておるのか!?)

 

キンキンと脳内に響く男っぽい声色の声。謎の男とのデュエル中に(ファミチキください)してきた謎の―――いやまぁ俺には正体分かってるんだけど―――存在の声だ。

寝たくとも寝れないレベルに気になって来たので、仕方なくベッドの上に胡坐をかき、あくびを噛み殺しつつ会話をしてあげることにする。

軽く目を閉じ集中する。声のする方へと意識を向け、ジッとそれに身をゆだねる。感覚的には、海の中に入って空気をそっと吐きながら海底まで沈んでいく感じだ。

 

やがて足が何かを踏みしめた頃、そっと目を開ける。見渡す限り真っ白なその空間は、広さが想像もつかない程大きくそれでいてなにも存在しない。唯一あるのはショップで見慣れた形状の机と、その上に広げられた対戦途中のデッキとカード。

 

一応その盤面をちらっと見てから、周囲を改めて見渡す。盤面には変化なし、周囲に謎の声の存在は見当たらない。

 

「んで、何をそんなに怒ってるの」

 

(怒るに決まっておるだろう!?――――――何をさっきから片手間でデュエルしておる!?)

 

「だぁって、デュエル中に絡んできたのはアンタでしょ?」

 

(ぐぅ......!)

 

言葉に詰まった謎の声に、遠慮なくため息をこぼす。そう、何を隠そう謎の男とのデュエルの途中から今まで、このよく分からない声に脳内でデュエルを挑まれ続けているのだ。

おかげでぼーっとしてたり他の考え事が上手く頭回らなかったりで迷惑している。

 

「もう50回以上勝ってるんだけど、一回止まらない?聞きたいこととかもあるんだけど」

 

(ならぬ!儂はまだ負けて......っぐ、いや、まだ勝っておらぬ!儂が勝ってからだ!)

 

「その言葉ももう何回も聞いたよ……」

 

誰も座っていないが、相手側の盤面のカードがひとりでに動くのを見て、今度は全く遠慮なく大きくため息をつく。この声の主、非常に負けず嫌いであったようで、一戦目で負けてからずっとこの調子だ。

最初は無限にデュエル出来るし脳内でのデュエルであるが故か使えるカードに際限が無くてンホっていたが、ここまでされるといい加減面倒くささが勝つ。

 

「じゃ、この一戦はやろう。でも次は無し、話を優先ね」

 

(ふん!まぁよかろう!儂が勝てばそれで良いのだ!)

 

「逆に凄いなここまで連敗しててその自信......」

 

姿は見えないが声色的に機嫌よさそう。とりあえずの区切りを設けられたことに安堵しつつ、机の上のデッキに手をかざす。イメージするのは、先ほどまで使っていたデッキではなく、自身のもっていたお気に入りのカード達。

メイン・エクストラ、果てはカードスリーブにプレイマット、ライフ計算用の電卓まで、あらゆるサプライを想起する。

 

(......ほう、これは)

 

「ここまでは手を抜いててね。現実の方に意識を割いていたから、適当でも回せるエクシーズ入り除去ガジェだったんだ。でも今は全面的にこっちに意識を割ける」

 

(良い......良いぞ!その気迫、この重圧、どれも素晴らしい!)

 

これまでは片手間だった、と言ったのに今までなめられていたことなど気にしていない。謎の声、面倒な奴だけどデュエルを楽しんでいる感じは伝わってくるし、そんなに悪いやつってわけでもないのかもな。粘着質でしつこくて面倒だけど。

 

「んじゃ、やろうか」

 

(うむ!うむ!しかし興がのった、儂も本腰を入れるとしよう!)

 

「!」

 

俺が席に座るのと同時に、そう言った謎の声のデッキが置かれた側の席に異変が起こる。ぐにゃりと空間がねじ曲がったかのように見えた次の瞬間、そこには謎の男とのデュエルの際にも現れた、鋼鉄の巨人が姿を見せていた。

 

いや、違う。俺はこの巨人の、このモンスターを知っている。この世界に来るまえから、見たことも使ったことも使われたこともある、あるカード。そこに描かれていた姿そのものの巨人の姿は、ある一つの事実を示唆していた。

 

「やっぱりな。カードの精霊......しかも、お前だったか」

 

(我が名は『ドヴェルグス』!鉄を司りし王なり!儂と相対せし貴様の名を名乗るがよい!)

 

手に持った槌を地面へと下ろしながら声高に名乗りを上げる謎の声の主―――精霊、『鉄の王 ドヴェルグス』。王の名を冠するその姿は、こちらにただの精霊ではないことを否が応でも思い知らせてくるオーラを放っていた。

 

「機械万歳......カード・プロフェッサーだ」

 

(ふむ、良き名だ!では機械万歳!今こそ尋常に、真剣なる決闘を始めようぞ!)

 

俺の名乗りを受け、精霊―――ドヴェルグスは喜色を孕んだ声で応え指を突き上げる。すると周囲の真っ白なだけだった空間が様変わりし、歯車の軋む音が響き渡る工場めいたフィールドへと変化した。

 

(これより行うは王のデュエル!王に敗北は許されず、挑戦者に逃走は許されぬ!勝者には全てを、敗者には無を!このデュエルにおける勝敗は、貴様と儂の全てが賭けられる!)

 

「......」

 

宣言と共に、ドヴェルグスの巨体の周囲に光の板のようなものが現れる。よく見るとそこにはいくつかの枠組みがあり、デュエルフィールドの様になっていると分かる。

なるほど、あれがアイツのデュエルディスクなのか。まぁ今迄みたいにこの机の上でやるにはあの巨体だときついだろうしな。

 

(しかし、いまの儂には貴様に差し出せる「全て」が無い。王のデュエルでは、互いの賭けるものを釣り合わせなければならない......そこでだ)

 

ドヴェルグスはそこで一度言葉を区切り、自身の胸―――え、そこ顔じゃないの?いやまぁでも胸か......?―――に手を当てる。次の瞬間、ドヴェルグスの手には一枚のカードが握られていた。

あれは......間違いない、アイツ自身。『鉄の王 ドヴェルグス』のカードだ。

 

(儂が賭けるのは、儂の持つとある「権利」だ。逆に儂が勝ったら、貴様には儂の軍門に下ってもらうぞ!)

 

「わかった。命を懸けるんじゃないなら良いよ」

 

準備が整った。デッキを机に置き、カードを五枚引く。ドヴェルグスも同様にカードを引いたところで、互いの意識のギアが一段階上がる。こうして、後に俺の人生へ大きく影響することとなったデュエルが幕を上げたのだった。

 

「(デュエル!!)」

 

 

 

 

 

機械万歳

    vs

     鉄の王ドヴェルグス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、始まりました。......はい、『鉄』でございます」

 

「......は。かしこまりました。では、デュエルが終わった後、説明を行います」

 

「相手ですか?......人間です。はい、間違いなく」

 

「......では、その様に。はい」

 

 

 

 

 

世に平穏のあらんことを




K9VS良い...良くない?イヅナさんのバストミチミチ具合すごい良くない?
性能の方が凄い?そう......(´・ω・`)

自給自足絵でリョウさん置いておきますね。


【挿絵表示】



王のデュエルってなに?:大体次の次辺りで説明予定。普通のデュエルでは無い。
王ってなんなの?:「おう」と書いて「ジェネレイド」と読みます。漢検には出ないよ!普通の精霊では無い。大体次の次の次辺りで説明予定。

次回、鉄の王vs機械万歳(限定的フルパワー)
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