1万字超えるって......おま......
リョウてんちょのデッキは知ってる人は懐かしいアレです。
主人公はマイフェイバリットのデッキです(全力稼働の3割程度の出来)
どうも、絶賛記憶喪失中の名前不明少女です。
何やら全く分からないうちに、バイト先の店長とデュエルすることになりました。
............なんで???
とりあえず受けとってしまったデュエルディスク(借)を横に置き、現在は再度デッキ調整の為机とその上に置かれた段ボール箱に向き合っているところである。
..................なんで????
「いかん、それどころ、じゃない」
惚けている暇は無い。ちらっと後ろを見れば、何故かこちらのことをガン見しているリョウさんがいた。なんでこっち見てるの、しかも何も言わないし。怖い。
(と、とりあえずデッキを完成させよう。目的とかは全くわからんけどせっかくデュエルしても良いってなってるんだからやるならしっかりヤリたい)
段ボール箱を漁り、カードを手に取ってシャカシャカと確認していく。先程のイベントで使ったカードは何故かなくなってるので、趣味全開の方のデッキをより使いやすいよう改造する方針で行く。
「......というか、多分てんちょが持ってるデッキがさっき俺の使っていたデッキだろうな」
箱の中にさっき返したデッキのカード見当たらないし、きっとそういうことだろう。何故リョウさんがそっちのデッキを使うんだろうか......!まさか、ハンデ!?俺のデッキは未完成だから、まだリョウさんの持ちデッキで相手するのは早いと、そういう事か!
(や、優しい!俺に気を使って......使って......いや、無いな。ハンデとか気にする性格じゃなさそうだし)
そうだった、あの人結構ずぼらだった。ハンデなんて何も考えてないだろうな。
そんなこんなで適当なことを考えつつも、どうにかそれなりにデッキの形には成った。枚数を確認......よし、大丈夫。要らないカードも入っちゃ無い。
「よし」
一つ呟き、デュエルディスクを手に取る。前世ではその影も形もなかったソリッドヴィジョンシステム。そして、それを使った動き回るモンスター達。それらを今この瞬間感じることが出来る!
思わずワクワクを取り戻しそうになる中、俺は足取りも軽くリョウさんの待つデュエルフィールドに向かった。
「準備、出来ました」
「おう。早速だが時間もねェ、始めるぞ」
何故かスキップしながらデュエルフィールドに立った少女―――面倒だ、Dネームで呼ぼう―――機械万歳。デュエルディスクの装着に少し手間どっているアイツの様子を見ながら、少しだけ思考の中へ沈む。
このデュエル、実はアタシ的には何もする必要が無い。少女の実力については、まぁ高いのだろうということは既に察している。デッキ構築としてあの闇鍋からそれなりのデッキが組めるのだ、知識・技量共に低いわけが無い。
そして、その事がわかった以上、バイトとして今後も雇う事は確定している。
知識はある。仕事も、教えていけば問題無く覚えていくだろう。では、このデュエルは何を見るためのものか。
......結論、特に何も。
強いて言えば、わがままだ。過去の栄光に縋るくだらない生活を続けていた「元プロデュエリスト」としての、アタシのほんの少し残ってしまった闘争心。
『強い決闘者とデュエルがしたい』、それを満たすためだけの場だ。
(にしても、随分と上機嫌だな。そんなにデュエルしたかったのか?)
デュエルディスクへとデッキを挿入しつつ、「おぉ......」と何故か感動している機械万歳を見ていると、自分のワガママに付き合わせたというほんの少しの申し訳なさが一気に霧散しそうになる。
しかしまぁ、こいつが真面目にデッキを組むとどうなるのか、っていうのはかなり気になる。次に給料渡した時は自前のデッキを組ませてやるのも面白いかもしれん。
「おい、準備は出来たな?」
「あ、はい。大丈夫、です」
「よし」
っと、機械万歳の準備が出来た。んじゃ、お手並み拝見といくか。
「「デュエル!」」
リョウ
vs
機械万歳
「先攻はアンタからでいい」
「了解。ターンをもらいます」
先攻はカードドローが無い。機械万歳が手札を確認している間に、そっとその様子を伺う。
対面で行う卓上デュエルと違い、スタンディングで行われるSVデュエル(ソリッド・ヴィジョン・デュエル)では相手の表情や仕草から次の一手を予測することが求められる。
やってることは賭け事のポーカーのような物だ、相手が表情に出せば手札の善し悪しに気づけるし、相手がソワソワしていれば手札事故の可能性を検討したり。
中にはそれを逆手にとってわざと堂々とした佇まいを見せたり、逆に良い手札でも事故っているかのように表情をゆがめたりする事だってある。
の、だが。
(あいつさっきからずっとにやけてんじゃねぇか!どっちだ、アレはどっちの表情だ!?)
あんの野郎、いや野郎じゃねぇけど!全然表情が動かねぇ!仄かにニヤニヤした表情で手札眺めてるだけだからどっちなのか全く検討つかん!!
「スタンバイ、メインフェイズまで」
「おう」
ただ、デュエルの進行自体はかなり丁寧だ。
フェイズの開始や終了宣言なんて、デュエル塾やどころかプロにもやってるやつはほぼ居ない。
全くそのつもりも無かったんだが、そういう特徴で言えばプロではこいつのような奴はいなかった。こいつが行き倒れる前までプロだった線はこれでほぼ消えた。
「私は手札から......『グリーン・ガジェット』を通常召喚!」
『ウィーン!!』
現れたのは、緑の体と手足が生えた人を象った歯車のモンスター。召喚エフェクトとともに地面から飛び出したそいつは、握った右拳をこちらへパンチするように突き出しながら決めポーズを行う。鳴き声は無く、聞こえるのは歯車の起動音だ。
「来たな、ガジェットモンスター」
「っはああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
「うわビックリした」
現れたモンスターに警戒しつつ様子を見ていると、何故か急に機械万歳が喘ぎ出した。うっわ何アイツこんな声出せんの?ってか今のどこに喘ぐ要素あった???
「ああぁ可愛いいい大した攻撃力じゃないのに必死で相手にバトルアピールで拳突き出しとるぅぅ!!しかも背面、背面こんなふうになってんのね!?っあああああ機械仕掛け歯車仕掛け、動くたんびにガッションガッションしてるのもイイ!すっごくイイ!」
「......」
「はぁぁ〜〜......グリーン・ガジェットの召喚時効果発動します」
「うわぁ!?急に冷静になるな!?」
情緒の安定しない機械万歳にちょっと引いt......驚いているうちに、デュエルは進んでいく。
「デッキから対応するガジェットをサーチ、手札へ加えます。加えるのは『レッド・ガジェット』」
デュエルディスクのオートサーチ機能が発動し、自動的にデッキトップへサーチしたカードがやってくる。その様子をこれまた目を輝かせながら喜ぶ機械万歳。そのテンションのままスっとカードをドローし手札へと加えた。
......あいつ、あんな性格だったっけ?
「手札からカードを2枚セット。エンドフェイズへ移行、これでターンを終了します」
機械万歳がエンド宣言をする。アイツの場には、ガジェットが一体、伏せカードが2枚。手札はサーチしたガジェットがいることのみ分かっている。モンスターの召喚による展開、伏せカードによる攻撃への牽制。オーソドックスで、教科書に載るような基本の立ち回りだ。
「アタシのターン、ドロー!」
だからこそ、分かりやすい。
「アンタのフィールドにのみモンスターが存在することで、このモンスターを特殊召喚出来る!」
アタシの場に、モンスターが出現する。機械仕掛けなのは機械万歳のガジェットと同じ。しかしこちらは手足などなく人に似せていない。どちらかと言えば......名前の通り、模しているのは竜。
「来い!『サイバー・ドラゴン』!」
「キュイィィィィン!!」
現れた機械竜、サイバー・ドラゴンが相手の場のガジェットを威嚇するように叫び声をあげ、とぐろを巻いてアタシの前に降り立った。
......正直もう見たくないモンスターだったが、その有用性は使ってみれば確かに頼もしさを感じさせてくれる。
「ふぉぉぉぉぉ!!!サイドラきちゃあああああ!!!」
「ええいうるさい!機械族か!?機械族出る度それやる気かこのバカ!」
自身のモンスターより高いステータスのモンスターが現れたというのに、何ともまぁ呑気な歓声をあげる機械万歳。だが呆れつつも、コッチが手を抜くことはありえない。そう宣言する意味も込めて、新たに後続のモンスターを手札からディスクへとたたきつけた。
「まだアタシは通常召喚してねぇぞ!来い、『死霊騎士デスカリバー・ナイト』!」
アタシの宣言と共に、漆黒の騎馬に乗ったおどろおどろしい騎士が現れる。騎士はサイバー・ドラゴンの横に並び立つと、騎馬の嘶きと同時に手に持った剣を掲げる。
「......」
「......いや、まじで機械族じゃなかったら反応しねぇのかよ」
「そいつには対して興味無いので」
「あっそ......」
だめだ、コイツのペースに巻き込まれると空気が死ぬ。そう判断し、デュエルを続行する。
「バトルフェイズだ!グリーン・ガジェットに、デスカリバー・ナイトで攻撃!」
宣言を受けたデスカリバー・ナイトが、待ってましたとばかりに猛突進をガジェットへと繰り出した。
対するガジェットは、迎え撃とうと両手の拳を握っている。が、どう足掻いても勝てはしない。攻撃力はガジェットが1400、デスカリバー・ナイトは1900だ。
このまま迎え撃つなら、間違いなくガジェットが負ける。そうなれば後続のサイバー・ドラゴンの攻撃を受け大ダメージは必至だ。
(さぁ、どう来る?その伏せは飾りじゃねぇだろう!?)
「その攻撃に対しリバースカードオープン。『和睦の使者』。このターン、こちらのモンスターは戦闘で破壊されずダメージも0となる」
「やっぱり持ってたか。カードを1枚伏せ、ターンエンド」
案の定防御策を持っていた、デスカリバー・ナイトの攻撃は突如現れた使者の展開したバリアによって阻まれ、ガジェットの破壊には至らなかった。エンドの宣言によって使者はバリアと共に消え、ガジェットがそれをGoodサインで見送っていた。
「ターンを受け取ります。ドローフェイズ、カードをドロー」
っと、さて次は機械万歳のターン。前のターンでレッド・ガジェットを手札に加えているが、それだけではアタシのフィールドのモンスターは越えられない。
このターンで現状を打開するには、最低でも攻撃力2100のサイバー・ドラゴンか攻撃力1900のデスカリバー・ナイトのいずれかだけでも突破、もしくはこいつらを超える攻撃力を持ったモンスターを展開しなければならない。
(アイツの手札はドローも含めて現在4枚。割と充実してるし、上級モンスターを出す生贄のガジェットもいる。ここからどうやって乗り越えてくるかな)
アタシが思案している間、手札を険しい表情で眺めていた機械万歳。少しの間そのまま場は膠着していたが、やがて決心した様子で機械万歳が手札の1枚を手に取った。
「スタンバイ、無ければメインフェイズ。手札より『ゴールド・ガジェット』を通常召喚します」
現れたのは、グリーンやレッドよりも豪華な出で立ちのガジェット。全身を金色に光らせたそのガジェットは、グリーンの横に並び立つと勇ましく拳を掲げた。
(ゴールド?あまり見ないガジェットだな......)
「召喚時、何かありますでしょうか」
「......いや、無い」
機械万歳の確認に対して返答する。......このタイミングで確認?何がチェーンした?
一瞬、伏せカードを見てから気を取り直す。保険はある、よく見ればゴールドの方は攻撃力1700でこちらの2体のモンスターより低いステータスしか持ってない。
しかし、そう思って優先権を放棄した瞬間、そのことを後悔してしまった。
「召喚に対してリバースカードオープン、『激流葬』」
「はぁ!?」
「お互いの場の、全てのモンスターを、破壊します」
伏せられていたのは、最悪の盤面リセットカードの激流葬!?なぜさっきのターン発動しな......ああくそ、それどころじゃねぇ!!
アタシと機械万歳の場のモンスターが皆、機械万歳の発動した激流葬から溢れ出た水流に押し流され、消えてゆく。......水のないところでこれほどの激流を......!
(だが、これで召喚権も使ったしアイツの場のモンスターも消えた。これじゃあ激流葬を前のターンにサイバー・ドラゴンやデスカリバー・ナイトの召喚時に発動していた方がよかっ、あ???)
アタシの予想を覆すかの如く、激流葬の効果処理が終わった機械万歳のフィールドには―――赤と銀、2体のガジェットが並んでいた。
「な、なんだと!?激流葬でモンスターは全て、いやそもそも通常召喚権はもう!」
「......ゴールド・ガジェットの効果を適用しました。このカードが戦闘・効果で破壊された場合、デッキよりゴールド以外のガジェットを特殊召喚できます。さらに、銀のガジェット―――『シルバー・ガジェット』は、ゴールドと同様の効果を持ちます。更には、召喚・特殊召喚時、手札のレベル4機械族を特殊召喚する効果もあります。その効果で、先のターン手札に加えたレッド・ガジェットを追加で特殊召喚しました。レッドの効果で、今度は『イエロー・ガジェット』を手札に加えます」
「......っ!」
一連の説明を聞き、あまりの事に歯噛みする。
あいつは、初めからこのつもりで激流葬を温存したのか......!サイバー・ドラゴン達をトリガーに使えば、確かにアタシの盤面を更地にできる。できるが、それは自分の盤面も同様だ。更には、ゴールド・ガジェットの召喚。あれも、激流葬のトリガーだけじゃない。こちらにチェーン確認をすることで、アタシの伏せカードが召喚に反応する罠じゃないことを確認しやがった!
仮にあそこでゴールドの召喚に反応する罠を使っていれば、チェーンで激流葬が発動して同様の盤面を構築できる。しかもその時は、こちらの伏せも無くなってより安全に攻撃出来るようになる。
(っていう考えを、あの少しの思考時間でやるかよ!)
最初から無かった手心の考えが完全に選択肢から消える。こいつは、間違いなくこれまでアタシの戦った歴戦の決闘者、そいつらに肩を並べる強者だ。
アタシが相手している存在のヤバさを再確認している事など関係ないかのように、機械万歳はこちらの出方を待っている。......デュエル自体は丁寧なくせに、やってることが豪快でえげつねぇな。
「何もねぇよ、続けな」
「......ターン続行。場のレベル4機械族2体でオーバー......いや、バトルフェイズ」
「?」
一瞬何かをやりかけた機械万歳だったが、心底悔しそうな表情を浮かべてバトルフェイズへ移行する。
銀と赤、2体のガジェットが臨戦態勢に入り、それぞれ両の拳をグッと握りしめた。
「!そうは問屋が卸さないってなぁ!リバースカードオープン!『威嚇する咆哮』!」
アタシの発動したトラップから、馬鹿でかい音と衝撃波が迸り、それを受けたガジェット達が怯えるように1歩、後退りする。
「このターン、アンタのモンスターは攻撃宣言を行えない!......さぁ、どうする?」
「バトルフェイズを終了。.....メインフェイズ2、カードを1枚セット。ターンエンド」
「アタシのターン!ドロー!」
さて、予想以上にデキる奴だった機械万歳の戦術で更地にされてしまった。ここから現状を打破するにしても、まずはあの伏せを考慮しないとな。ドローカードは......よし、やるか
「アタシは手札から、『サイクロン』発動!アンタの伏せカードを破壊する!」
「リバースカードオープン、『強制脱出装置』。レッドガジェットを手札に戻します」
「......効果処理後、その罠カードを破壊」
やはり伏せカードはこちらへの妨害だったか。にしても少々解せないな、今の発動。
「だがこのまま行く!来い、『可変機獣ガンナー・ドラゴン』!」
呼び出したのは、下半身が改造され戦車のようになっている機械仕掛けのドラゴン。心なしかまた目をキラキラさせ始めた機械万歳は放っておく。もう構ってられるかあの阿呆。
「更に!『愚鈍の斧』をガンナードラゴンに装備!......本来、このガンナードラゴンは自身の効果による妥協召喚で、攻撃力・守備力を半分にされている。だが、愚鈍の斧は装備したモンスターの効果を無効化する!更には攻撃力も1000ポイントアップ出来る!効果が無効化されたガンナードラゴンは、本来の力を取り戻し、さらなるパワーを得た!」
本来は攻撃力2800を誇るガンナードラゴンは、その効果でリリース無しに召喚した結果1400まで攻撃力を落とす。だが、装備された愚鈍の斧を咥えた瞬間、その身を蝕んでいた効果が無効化され2800へと攻撃力を戻す。更には愚鈍の斧の効果で攻撃力は上がり、3800へと大幅に上昇した。
「!」
「さぁ行きなガンナードラゴン!シルバーガジェットを攻撃!」
ガンナードラゴンの砲撃を受けたシルバーガジェットは、無惨にもバラバラになって散っていった。しかし、予想していたことだが機械万歳の盤面には、新たに黄色のガジェットが佇んでいる。
「......シルバーガジェットの効果、破壊されたためデッキから『イエロー・ガジェット』を守備表示で特殊召喚。効果でグリーンガジェットを手札に」
現れたのは、歯車の間に挟まれた黄色の体を持つガジェット。守備表示ということで両手を体の前で交差させ耐える体制を取っているが、そのステータスはガンナードラゴンと比べると心もとない。
機械万歳LP4000→1700
「さて、これで形勢逆転だ。ターンエンド」
ダメージは与えた。盤面でも火力で勝てている現状、アイツの手札とドロー次第と言える。現在アイツの手札は4枚。だが、その内訳は3枚がガジェット。残り1枚が何かにもよるが、ガジェットだけではガンナードラゴンは越えられない。
(それにこの手札......これは中々越えらんねぇぜ?)
「ターンを受け取ります。ドローフェイズ、カードドロー」
機械万歳がカードをドローし、手札に加える。
既に興奮する様子は見られず、普段通りのぼーっとしたような、それでいて無表情にも見える天然のポーカーフェイス。
数十秒、短くもデュエルにおいては長く思える思考時間が入り、機械万歳は動き出した。
「スタンバイ、メインフェイズへ移行。......行きます」
「!ああ、来い」
機械万歳は、その宣言の後も少し考える仕草をし、そして......アタシの手札を見た?
「手札から、グリーン・レッドの2枚を墓地へ送り、このカードは特殊召喚される」
機械万歳の手札から、これまでにサーチされたガジェットのうち2体が墓地へと堕とされていく。そして機械万歳は、手札を1枚引き抜き......キッとアタシを見据えた。
「機械仕掛けの提督よ。歯車を糧にその剛腕を振るい、今ここに発進せよ」
機械万歳の口上を受けて、フィールドへ巨大な機械の腕が現れる。紫の装甲に覆われたその腕がフィールドへとたたきつけられ、その巨体をゆっくりと浮き上がらせる。
ゆっくりと、見せつけるように現れたそのモンスターは、最後にその両の足を地に踏みしめ両手を肘で曲げつつ天へと掲げる。
体の至る所から蒸気を吹き出しながら立つその姿は凄まじい威圧感を感じさせ、まさしく提督という威厳を感じさせる。
「『起動提督デストロイ・リボルバー』。......発進」
「ブシュ-------!!」
「......マジでか?」
いきなりの上級モンスターの特殊召喚。思わず圧倒されてしまったが、気を取り直してデュエルディスクを構えた。
どうやらアイツの切り札のようだが、よく見れば攻撃力は2500。まだステータスでは負けていない。
「随分と気合いの入った登場なところ悪いが、こっちは攻撃力3800。ソイツじゃガンナードラゴンは突破できねぇぞ!」
「いや、問題無し。提督が提督たる証拠を見せる。デストロイリボルバーの効果発動。1ターンに1度、フィールドのカードを1枚破壊できる!」
「!?」
「対象は、ガンナードラゴン!」
「しまっ!?......ッチ」
デストロイリボルバーが動き出し、ガンナードラゴンへと迫る。せめてもの抵抗として、口にくわえた愚鈍の斧を叩きつけたり自身に着いている砲台で攻撃するガンナードラゴンだが、デストロイリボルバーは全く意に介さずガンナードラゴンの長い首を握りしめ、圧壊させてしまった。
(首の骨が折れる音)
(くそっ!......だが、まだだ!アタシにはまだコイツが)
「手札から魔法発動」
「!」
残された最後のカードを一瞬確認していると、機械万歳が正体の分からない手札の最後の1枚を発動した。
「『アイアンドロー』。自分の場のモンスターが機械族2体のみの時使える。デッキから2枚ドローする」
「ここに来て、手札増強カードか!」
「ただし、このターン。この後は1回しか特殊召喚できない」
デッキからカードを引きながらデメリット効果の説明を行う機械万歳。しかし、そんなことは関係ない。アイツのドローしたカード次第では、本気で勝てるかどうか分からなくなる......。
「......バトルフェイズ」
「......ガジェットを出さない?」
「イエロー・ガジェットで攻撃」
(こいつ!そんな、こっちの手札がわかってるのかよ!?)
「っぐ!」
リョウLP4000→2800
「続いて、デストロイ・リボルバーで攻撃。デストロイ・ハンマー」
「っぐぉ」
リョウLP2800→300
っくそ、大分削られた......。だが!
「ここだ!アタシは手札から、『冥府の使者ゴーズ』の効果発動!このカードを特殊召喚し、『冥府の使者カイエントークン』を特殊召喚!カイエントークンはデストロイリボルバーによって受けた戦闘ダメージと同じ攻撃力、すなわち2500となる!」
アタシの場に現れる、黒装束の天使と悪魔。逆境にこそ力を発揮するゴーズ、だがまさかアタシがここまで追い込まれるとはね......!
「ヤッパリ......メインフェイズ2。カードを1枚伏せ、ターンエンド」
「アタシのターン!」
よし、ここだ!ここで巻き返す!もう手札がない以上、ゴーズとカイエントークンを中心に攻めるしかない!
「ドロー!」
......ちっ、ダメか。これじゃない。
「やむを得ないな。バトルフェイズ!」
アタシの宣言を聞き、機械万歳がデュエルディスクを構え直す。
さて、アタシの選択肢としては......アイツのLPを見る限り、ここでイエローガジェットを殴っても良いがそれではいおしまい、とはいかないようだ。
それと、懸念点としてはあの伏せカード。まず間違いなくなにかあると見て良い。
......いや待て。デストロイリボルバー、特殊召喚モンスターであるアレが破壊効果だけとは限らん。
(っ、ビンゴだ。こいつ、擬似的な破壊耐性持ちかよ!)
デストロイ・リボルバー、場に「ガジェット」モンスターがいれば戦闘・効果では破壊されないという効果を持っていた。
つまり、この現状。アタシはイエローガジェットを狙い撃つしか選ぶ道が無くなったわけだ。
「なら、とりあえず削る!カイエントークンでイエローガジェットを攻撃!」
「!」
機械万歳LP1700→400
(これで、デストロイ・リボルバーは破壊できる。ゴースで破壊はできるが、攻撃力は2500と2700。ライフは削りきれなかった、があいつの手札の様子では何も出来んとみた。ここで使わなかった以上、伏せカードも攻撃反応系の罠じゃない!行ける!)
「ゴーズでデストロイ・リボルバーを攻撃!これでそいつは終わりだ!」
アタシの宣言をうけゴーズが飛び上がり、デストロイ・リボルバーへとその腕に着いた刃を振り下ろ――――――
「リバースカードオープン」
!?ここで、リバースだと!?
(しまった、さっき発動する気配を見せなかったのはブラフ!コッチが本命か!)
「『戦線復帰』を発動。墓地よりゴールド・ガジェットを守備表示で特殊召喚」
「!ガジェット......!」
やられた!!ここに来て新たなガジェットを!
モンスターが増えたことにより戦闘が巻き戻され、再度攻撃対象の選択となる。
......が、この現状。デストロイ・リボルバーを狙えば、ガジェットがいることにより戦闘破壊が出来なくなっているため次のターンには、ゴーズを効果で破壊される。ではゴールド・ガジェットを狙うか?いや、カイエントークンは攻撃済みだ。もうデストロイ・リボルバーへ攻撃する手段が無くなる。それに、あいつはまだ手札にガジェットを抱えている。次のターンの攻撃要員には十分だろう。
攻撃せずゴーズとカイエントークンをこのまま壁にするか?......いや、デストロイ・リボルバーの効果でゴーズを破壊され、更にはカイエントークンを自爆特攻でやられれば結局ゴールドガジェットのダイレクトアタックで終わる。
結果を認識し、打つ手が無くなった事を思い知りそっとデュエルディスクを下ろす。
どこからアイツはこの状況を予測していたのだろうか。デュエルディスクが、長時間動きを見せなかった事で自動的にバトルフェイズを終了する。
「......ターン、エンドだ」
「ターンを受け取ります。ドロー、スタンバイフェイズ」
淡々と自分のターンを進める機械万歳。最後の手札......『手札断殺』を睨みつけつつ、粛々とターンが進むのを見つめる。
「デストロイ・リボルバーの効果、ゴーズを破壊。更にゴールドガジェットを攻撃表示に」
戦闘態勢に入ったデストロイリボルバーと、その横で軽快なフットワークを見せるゴールドガジェットに、己の最後を悟りつつカイエントークンが武器を構えた。
「......バトルフェイズ。デストロイ・リボルバーで、カイエントークンを攻撃」
攻撃宣言により、その剛腕を唸らせながらデストロイ・リボルバーがカイエントークンへと襲いかかる。せめて、最期の一太刀を。まるでそう言わんばかりに決死の表情で、カイエントークンはデストロイ・リボルバーを迎え撃った。両者の拳と武器がぶつかり、互いの体がその衝撃を受け散っていく中、提督の残骸を乗り越え黄金の歯車がアタシへと飛び出してきた。
「ゴールドガジェット、攻撃。対戦、ありがとうございました」
アタシは黄金の拳を受け、その場に膝をつく。自分の本来のデッキじゃなかった、そんな事を言い訳にすることも出来ない。そんな、決闘者としての差を感じながら、それでもどこか満足しながらデュエル終了のブザーを聞いていた。
リョウLP300→0
Winner 機械万歳
プレミあるかも。怖いなぁ、どれだけ確認しても不安になる。
リョウさんのデッキ:いわゆるサイカリゴーズ。昔懐かしなデッキなので知ってる人は三十路作者と握手!
主人公のデッキ:真面目に根気と時間を無駄にする覚悟がある人なら2000円以内で簡単に組める、ストレージにあるカードで組めるガジェットデッキ。実際作者はストレージから作った。
デッキ名:ストレージガジェット
グリーンガジェット 3枚
イエローガジェット 3枚
レッドガジェット 3枚
起動提督デストロイ・リボルバー 2枚
ゴールドガジェット 3枚
シルバーガジェット 3枚
機動兵長コマンドリボルバー 2枚
機動指令ギア・チャージ 3枚
貪欲な壺 1枚
アイアンドロー 2枚
強制脱出装置 3枚
激流葬 2枚
奈落の落とし穴 2枚
アイアンコール 3枚
攻撃の無力化 3枚
戦線復帰 2枚
計40枚
みんなもガジェット、使ってみよう!使え(豹変)
機械族はいいぞ。機械万歳!ゲンジバンザイ!