遊戯王 存在しないモンスターズ   作:コジマ汚染患者

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あーもうめちゃくちゃだよ(世界観)
まだ本編入らずプロローグしてるってマ?


A.その他全てにおいて調整中

「対戦ありがとうございました」

 

デュエルが終了した合図であろうブザーと共に、ガジェット達モンスターが消える。......ああ、もっと全身をゆっくりねっとり眺めていたかった......。

 

「......負けた、な。言い訳のしようも無い」

 

対面からゆっくりとリョウさんがやってくる。

その表情はどこかスッキリした様子にも見えるが、まぁ多分俺も今すっごいイイ表情してるだろう。何せ、デュエルディスクで、ソリッド・ヴィジョンで、モンスターの戦いを間近で見ながらデュエルしたのだ。超楽しかった、もう何度でもやりたいくらい。

 

「......相変わらず表情筋死んでるなお前。楽しいとか思わなかったのか?」

 

訂正。俺の顔はいつも通り変わらないらしい。

 

「ちょう、楽しかった、です」

 

「ああそう、まぁアタシも......そうだな、久しぶりに楽しめたよ」

 

「わっぷ」

 

あさっての方向を向きながらぶっきらぼうに頭を撫でくりまわしてくるリョウさん。

髪がグチャグチャになるからやめて欲しいんだが......顔を逸らしてても、耳まで赤くなってるのバレバレだな。気にしてそうだし黙っといてやるか。

 

「そうだ、そう言えば。お前、あの時アタシの手札にゴーズがいるの分かってただろ。なんでだ?」

 

「?あぁ、ゴーズケアのことですか」

 

「ああ。あの時、お前は攻撃力が低い順から殴っていただろう」

 

リョウさんの質問に先程のデュエルを思い出す。そうそう、低攻撃力のモンスターから攻撃する行為。あれは明確な名前があったかは覚えてないが、便宜上言うのであれば『ゴーズケア』というものだ。

相手の盤面がガラ空きで、伏せすら無い時に攻撃する場合、攻撃力の低い順に攻撃することを指す。

 

理由は、ゴーズの効果にある。冥府の使者ゴーズは、完全なガラ空き盤面で殴られた時発揮する効果を持つ。

その効果は、モンスターでの攻撃・効果ダメージ、そのどれを受けたかによって変わる。

今回のように戦闘ダメージなら、受けたダメージと同じ攻撃力の冥府の使者カイエントークンを生み出しつつ特殊召喚。

効果ダメージなら、同じダメージを相手に返す反射をしつつ特殊召喚、といった感じだ。前世のOCGでは見る機会のほぼ無くなったゴーズだが、それでもこのケアをしてしまうプレイヤーは多かった。

 

OCGをプレイしているある程度年季の入ったプレイヤーは、このゴーズへのケアを兼ねてプレイングに攻撃の順番が染み付いている人が多い、と思う。

かくいう俺も、別にケアを特別考えてやった訳では無い。......まぁあの状況はわかり易すぎて「ある」とすぐ分かったが。

 

「てんちょ、ガラ空きになっても、全く目が、死んでなかった。だから、手札、警戒、してた」

 

「......なるほど、相手が見えてなかったのはアタシの方か」

 

「うん?」

 

「何でもねぇよ。さて、と。アタシの知りたいことも分かった、って訳で」

 

「?」

 

顔も元に戻っていつもの調子に戻ったリョウさんが、真剣な表情でこちらを見た。

 

「アタシからの給料以外のプレゼントだ。そのデッキはアンタが完全に自分のデッキを組んだ時返してくれればそれでいい、なんならそのまま買い取ってくれてもかなり安上がりだがな」

 

「!てんちょ、太っ腹!痛い!?」

 

「バカ、女性に対して太っ腹はケンカ売ってるだけだろが」

 

「?てんちょ、女?」

 

「今度はグーがお望みか???」

 

「ごめんなさい、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「機械万歳ぃぃぃぃ!!!勝負だっ!!!!」

 

「てんちょ。また来た」

 

「またぁ?アイツも懲りないな......今暇な時間だ、相手してきて良いぞ」

 

「うい」

 

トーナメントの日から、1ヶ月が経った。アイツはデッキを受け取ってから暫くは仕事に身が入らないレベルでデッキにかかりっきりになっていた。流石にバックヤードでニヤニヤしながらカードに頬ずりする姿は見目の良い少女でも気持ちが悪かったし、実際しばき倒して仕事に向かわせた回数は優に十回を超える。

 

それも数日すれば元に戻り、仕事は問題なく出来るようになっていたのでもう気にしない事にした、面倒くさかったしな。

それと、アイツが異常にデュエルが出来る奴だと判明したわけで、アタシの補助としてイベントの運営に入ってもらうことも増えた。

 

アイツにとっては念願となるだろう、カードの陳列などの仕事もやってもらう事になった。また数日間、気持ち悪くなってたが......必要な時間だったと思おう。そうじゃねぇとやってらんねぇ。

 

そんで、こっちが本題。アイツにはイベントの運営補助をしてもらっているわけだが、毎回では無くともまれに定員割れしたイベントもある訳で。人数が偶数ならそのまま開催するが、奇数だと数合わせが欲しくもなる。

となると、運営するアタシが入る訳にもいかない為アイツに白羽の矢がたつ訳で。

 

結果、人数合わせで参加したアイツは......最初のイベントを除き、現在無敗である。

 

「あの、流石に、営業時間に、勝負は、迷惑、です」

 

「ええいうるさい!我の怒りは貴様を打ち倒すことでしか収まらんのだ!それに、時間など配慮しておる!」

 

「ええと、その。てんちょ?」

 

「ん?ああいいぞ。そいつマジで時間と人は見て閑散としてるタイミング見てるっぽいし」

 

「えぇ、てんちょ......はァ、了解」

 

アイツへと勝負をしかけたバカ、『黒き堕天の翼』―――面倒だ、もう厨二でいこう。―――厨二が鼻息荒くデッキを持って決闘卓へ向かうのを、レジから眺める。

 

(いやぁおもしれぇ。厨二の思いも分からなくはねぇよ?初戦ではぼろ勝ちしたけど明らかに相手の事故で、気持ちよく勝てなかっただろうし。その次は、まさかのワンターンキル食らったんだ、そりゃ納得いかんだろ)

 

アイツの、機械万歳のデビュー戦で勝利しており現在唯一アレに土をつけている厨二だが、本人も周囲もそれを一切認めていない。

 

ワンターンキル。読んで字のごとく、たった1ターンで勝利条件を達成し相手を下す事だ。デュエルモンスターズにおいて、これが起きるのは大体、『対戦者の間に埋めることの出来ない実力差』がある場合だと言うのが通説だ。

明確にデッキとしてワンキルを狙うものもいるらしいが、成功率なんて机上の空論に近いらしい。

アタシも知ってる範囲では、プロにワンキルを本番で成功させたやつなんて3人しか知らない。

逆説的に、機械万歳はデッキはともかくとして、そいつらレベルの技量を持つデュエリストって事になる。

 

「ターンを受け取ります。ドローフェイズ、カードドロー。レッド・ガジェットを召喚し効果発動、サーチをします」

 

「ぐっ、またそいつらか!ええい、しかし今日こそは勝利を掴んでやる!俺のターン!」

 

「毎度ありがとうございましたー。......あーあー、熱くなっちゃってまぁ」

 

「こんにちは......おや、今日も堕天くんは機械万歳さんと勝負ですか」

 

「おお、月月火水木金金さん。今日は早いな」

 

「いえ、休憩時間に顔を出しに来ただけですよ。カード少し見たら職場にトンボ帰りです......はァ」

 

客がはけたタイミングで、2人のデュエルを見ている所へ丁度常連の1人、「月月火水木金金」が来店してきた。相変わらず疲れた表情の彼は、それを誤魔化す様に微笑みながらカードパックを1つ手に取り精算用カウンターへと持ってきた。

 

「見物料です。1パックのみお願いします」

 

「おーし毎度〜♪どう思うよ、アンタから見てあの阿呆は」

 

「彼女のことで合ってますよね......?うーん、私は店長の様に元プロって訳でもないので参考にはならないと思いますが......」

 

そう言いつつも、月月火水木金金さんは苦しそうな表情の厨二といつも通りのポーカーフェイスな機械万歳を眺めながら、少しずつ考えを述べていく。

 

「彼女、多分相当な名家の出か、有名な塾にでも在籍していたんじゃないでしょうか」

 

「ほう?その心は?」

 

「彼女のプレイングやカードへの理解度ですね」

 

アタシと全く同じ結論に至った月月火水木金金、彼はそのまま独り言でもつぶやくかのように続ける。

 

「まず、彼女の見た目的に年齢は中高生、身長という不確定要素を鑑みてもそこは外れていないかと。となれば、不思議なのは幼い事ではなく年齢不相応なあの知識量ですね。彼女、初戦を見た時から思ってましたが対戦相手のカードへの理解度が異次元すぎます」

 

「まぁ、な......でもそれだけならひたすら勉強しただけ、って線もあるぜ?」

 

「確かに学びはしたでしょう。でもそれだけでは無い」

 

即答しつつ、顎に手を当て考えながら推理を進める月月火水木金金さん。その表情はいつの間にか、疲れた笑みでは無く本気でデュエルする時のそれである。

 

「学んだだけなら、秀才で学校で学びを深めただけでも納得がいきます。だが、それだけと言うには明らかに知識が偏っています。デッキ構築やカード知識は目を見張るものがありますが、そこ以外......一般常識的な意味でのデュエル学を学んで無さすぎる」

 

「それ、アタシも真面目に学んだこと無いけどー?」

 

「それでも触りくらいは分かるでしょう?彼女、過去の有名なプロデュエリストの名前すらどれも知らなかったんですよ」

 

「......そりゃまた、凄いな」

 

デュエルモンスターズが就職すら左右するレベルで生活に絡んでいるこの世の中で、その最先端を行っているプロデュエリスト達は、人気職であると同時に非常にアイドル的側面の強い存在だ。

何なら初期も初期の奴らは、今じゃ生ける伝説にもなってるから普通に写真が教科書に載ってるくらいに偉人だ。

それが分からない、見た事がないなんてのは普通聞かない。

 

「記憶喪失ってのは、一般常識すら無くなるもんなのかねぇ?」

 

「ものにもよりますでしょうが、彼女箸の使い方や買い物くらいは問題なかったんですよね?なら常識は持っているかと」

 

「じゃぁ、やっぱり聞いたこと自体が無いってパターンか。そうなると余計わかんねぇな、アイツの正体」

 

話している間にも一方的に厨二をボコボコにしてしまった機械万歳を観察する。おそらく相当自分のデッキを改良してきたのであろう厨二だが、残念ながら真っ白に燃え尽きてしまっている。

一方の機械万歳は、そんな厨二の事など放っておいて仕事に戻っていくようだ。心做しか肌がツヤツヤして見える。

 

「......ああ、アタシ的にはもうひとつ、アイツの正体に関係しそうな気づきはあるな」

 

「?それは一体?」

 

「いやな、アイツとは初のイベント参加した日の閉店後にデュエルしたんだがな?」

 

「......まさか、負けたんですか?店長さんが!?」

 

思わず、と言った感じにこっちを驚愕の目で見てくる月月火水木金金さん。くそ、思い出すと結構悔しいな。

 

「負けた負けた。アイツが作ってたデッキでやったけど、もう見事なまでに完敗だよ」

 

「信じられませんね......店長さん、元プロですよね?」

 

「やめぃ、なけなしのプライドがそろそろ逝くぞ......そんな事じゃねぇ、それでそのデュエルの時な。アイツ、多分エクストラデッキを使おうとしたっぽいんだよな」

 

そう言うと、またしても月月火水木金金さんは驚愕に目を見開いた。普段はメガネの奥で細められている目が見開かれるのは久しぶりに見たな。

 

「......それ、ヤバくないですか」

 

「あー、やっぱり?」

 

「だって、つまり彼女どう考えても『御三家』に関係しているって訳じゃないですか?」

 

「そうなんだよなぁ。全く、お婆もエグい拾い物してくれたぜ」

 

と、話し込んでいるところで月月火水木金金さんのスマホが控えめな音量でアラームを鳴らす。ああ、休憩終わりか。

 

「......今日はこれにて失礼します。......店長さん。彼女が何者であれ、私は早急に関係者の元へ返すべきだと思ってますからね」

 

「あいあい、アタシも分かってるって」

 

心配そうにこちらを見つつ購入したパックのみを持って店を出ていく彼を、軽く手を振りながら見送った。

 

「......ま、それはアタシ達の意見で、アイツがどうするかは知らねーけど、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーし、そろそろ店閉めるぞー」

 

「はい」

 

あー疲れた!棚卸しとかよりバイトらしい仕事するようになってから一日の疲労感が全然違うや。まぁ?カード触れるってだけで相当幸せだけどな!

でへへ、給料入ったらまずアレとアレを探して......。

 

「よし、と。おい、ちょっと来い」

 

「?あい」

 

店の出入り口を施錠し終えたらしいリョウさんが、決闘卓を指さしながら読んでくる。

なんだろう?......ひょっとしてまた相手してくれるのか!?

 

ウキウキで呼ばれた卓へ向かい、席に着く。するとリョウさんが対面に座ったが、その手にはデッキどころか何も持っていない。

......残念、デュエルじゃないか。

 

「さて、今日の仕事もご苦労......と言う所なんだが」

 

「?」

 

「少し、真面目な話をしておこうと思ってな。お前の今後について、ある提案をする上で重要な話だし」

 

そう言ってリョウさんは普段のダウナーな雰囲気を無くしこちらをスゥっと薄目で見つめてくる。

なんだか空気が変わった、そう感じた俺は無意識に背筋を伸ばして続きを聞く姿勢になった。

 

「お前のこれまでの働きやあの日のデュエルを踏まえて、お前に3つほど選択肢を提示しようと思っている」

 

「選択肢?」

 

「そうだ。大まかに分ければ3つだが、それ以外の道だって考えられる」

 

そう言ってリョウさんが三本、人差し指・中指・薬指を立てて見せる。そして最初に、薬指を折った。

 

「まずひとつ。このままここでバイトをしつつ、お前の記憶が戻るのを待つ。要するに現状維持だな。お前の記憶さえ戻れば身元もはっきりするだろうし、そうじゃなくてもここで働く事である程度の生活の目処が立つ」

 

ふむ、その通りだ。始まりはアキさんの鶴の一声で始まったこのバイトだが、俺としては非常に幸せな仕事場と言える。右も左も常識すら難しい俺にとって楽しく、それでいて安定した職というのは得がたいものだと思う。

 

リョウさんが、中指を折って話を続ける。

 

「2つ目。アンタを病院・警察に連れていき、身元を今すぐ明確にする。記憶喪失ってのはインパクトのある経験をしたりとかで荒療治になるけど無理やり記憶を戻せることだってあるらしい。なら、警察とかを頼って全力でアンタの痕跡を辿れば、記憶が自然に戻るより早く身元がはっきりするかもしれない」

 

「......!」

 

「だが、徒労に終わる可能性だってあるし、無理した結果もっと酷い状況に陥ることだって考えられる。今まで以上に記憶―――いや脳にダメージがいく可能性もある」

 

そうだ、記憶喪失なんて言い訳を言ってる訳だから、警察やら病院やらでの検査という考えも出る。いや、そもそも俺自身は女になった、なんて言ってるが実はこの記憶こそなんかこう、前世を思い出したとかそういうフクザツな事がこの少女の体に起こっているだけで、少女自身は今この瞬間もこの状況を把握してたりとか......そういった諸々を無理やりしらべる、というのも手としては十分考えられる。

 

まぁデメリットについてもリョウさんの言う通り、余計な刺激で頭がもっとイカれる可能性がある。それはちょっと俺にとっても怖い。

 

「......3つ目、は?」

 

俺の質問に、リョウさんは少しだけにやりと笑いつつ、人差し指を折ることなく俺に向けてつきつける。

 

「アンタ......アタシと組まないか?」

 

「......へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が完全に沈み、どっぷりと暗くなった夜道を、1人の少女が歩いていた。

住宅街にあるその道は、この時間は滅多に人が通ることは無くその少女以外の通行人は影も形もない。

少女はまるで病人のようにフラフラとした足取りで歩く。表情は虚ろで、明るい茶色のサラサラとした髪を振り乱しながら歩くその様子からは生気を感じず、まるで幽鬼の様であった。

 

「......どこ?どこなの......?」

 

うわ言のようにブツブツと呟きながら、少女は歩く。いつからそうして歩いているのだろうか、足音は歪で片足を引きずるようなズルズルという音が閑静な住宅街に響く。

 

ダランと垂れ下がった手、その片方には泥にまみれたカードの束が握られており、少女の白磁のような綺麗な手を薄く汚している。

 

「お願い......ゆるして......私は......貴女を......」

 

少女は濁った眼を虚ろにゆらめかせながら、そのまま夜の闇の中へと消えてゆくのだった。




次回で世界観説明編は終了。
その次から、遊戯王 存在しないモンスターズが始まります。
......ここまでデュエル1回だけとか遊戯王SS名乗る資格ねぇな?

Q.そもそも真っ先に病院で検査とかしなかったんですか?
A.それしたらこのSS終わっちゃう......!
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