多分この話と次の話くらいが、アニメで言うところの第1話ですね。
あと機械万歳は今回端役です。
今回は、存在しない原作の主人公とかいうどこにも存在しない存在の視点です。
第1話(上)
デュエルモンスターズ。
それは、世界中で言語よりも通用するコミュニケーション。
それは、老若男女全ての人々が繋がることの出来る対話。
これは、そんなカードゲームが世界中で力と影響力を持った、そんな世界の物語――――――
「「「うわああああ遅刻だああああああ!!!!」」」
「だから言ったじゃないか遊笑(ゆうしょう)!今日は大事な日なんだから、早めに寝ようって!」
「だ、だってデッキ調整がさぁ!」
「2人とも喧嘩しないでよ!それどころじゃないでしょ、急がないと本当に間に合わないわよ!?」
平穏で平和な日常に、少年少女の叫びが響く。慌ててどこかへと急ぐ彼らが通り過ぎた商店街には、「やれやれまたか」と言わんばかりに微笑ましいものを見る目の住民達が走り去る彼らへと声をかけた。
「遊笑ー、まぁた遅刻かぁ!?いい加減にしねぇと、今度の学校じゃ留年しちまうぞー!」
「うるせぇよおっちゃん!おっちゃんこそ、よそ見してたらまたギックリ腰しちゃうぞー!」
「遊鮮(ゆうせん)くーん、また活きのいい魚入ったよー!」
「ありがとうございます!また後でよらせていただきますのでー!」
「遊香ちゃん、お母さんに送るお花用意出来たよー」
「おばちゃんありがとー!私も後で寄るねー!」
俺の名前は最希 遊笑(さいき ゆうしょう)!今日から高校生の、どこにでも居る学生だ。今日は高校の入学式......なんだがちょっと、ほーんの少しだけ遅刻しそうである。鞄は手に持つのではなく背中でリュックのように背負い全力疾走、一瞬でも時間を無駄にしないため声をかけてくれる商店街の人達には走りながら挨拶をしていく。
一緒に走っているのは小さい頃からの幼馴染2人。ほぼ隣を走っているのが遊鮮(ゆうせん)、黒縁の丸メガネが特徴的な男子だ。その見た目の通り礼儀正しい奴だが、よく俺に説教じみた小言を言ってくる、ちょっとウルサイ奴。
少し先を駆け抜けていくのは、遊香(ゆうか)。女子ながらにスポーツ万能で俺や遊鮮に勝てる身体能力を持つやべえ女子である。真っ赤な髪をポニーテールにしているのが目を引く特徴で、目の前を走ってるとフリフリと揺れるその様子は小さい頃からよく見る光景だ。昔から足の速さも尋常ではないのだ。
いつも一緒に遊んできた俺たち3人組は、この商店街で育ってきた。3人の遊び場であり、学びの場であり、そして居場所である。
ここの人たちとは、長い付き合いを経てついには全員の息子・娘のような扱いである。小学校、中学校とこの近所を選択し続けてきた理由も、そんな居心地の良いこの商店街から離れる気になれなかったというのも理由の一つかもしれないな!
ほとんど同じ制服に身を包み全速力で走りながら、声をかけてくれる人々へと手を振って去っていく。俺と遊鮮は青い制服、少しだけ前を走る遊香は赤い制服。何でも、俺たちが今日から通う学校での伝統ある制服を、多少デザインを変えつつほぼそのまま使っているらしい。
ここは、童三乃坂市(どみのざかし)。世界でも有数のデュエルシティ。
最強のプロデュエリスト、『デュエル・キング』が生まれた都市でもあり......そして、日本で数箇所のみ存在するデュエルモンスターズ至上主義導入都市でもある。
この街ならではの特徴として、店舗・道端・大会......何処であろうと、デュエルをすることでデュエル・ポイント、通称DPを貯めることが出来る。
デュエルの内容―――如何に大量の召喚を行ったか、如何に多くのライフを削ったかなど―――によって得られるポイントは変わり、そして得たDPはこの都市限定ではあるが金銭の代わりの通貨として使用できるのだ。
「間に合ったー!」
「もう、遊笑!少しは反省しなさいよ、今日は大事な入学式なんだから早く起きなってあれっほど言ったじゃない!」
「わ、悪かったって......でも、こうして間に合ったじゃんか」
「よ、く、な、い!!」
「やれやれ、これじゃあ入学後も先が思いやられるな」
「なーにすかした事言ってんだよ遊鮮!......おぉーっ、ここが『アカデミア』かー!」
校門を3人同時に走り抜け、肩で息をしながら見上げれば目に飛び込んでくるのはチョーでっかい校舎。
この学園の名は『デュエル・アカデミア』。建てられている場所に応じて〇〇校とか、〇〇分校とか付けられていることが多いが、俺たちが今日から通うことになるこのデッカイ学園は違う。
なんと、初代デュエル・アカデミア。絶海の孤島に建てられていたらしいその校舎を完全再現し、移転してきた『新本校』なのだ。
施設の老朽化とか、アクセスの不便さとかが関係してるらしいが詳しいことも難しいことも俺は知らない。
だが、ここデュエル・アカデミア新本校を卒業した生徒のうち、最も成績が良かった上位10名。
その人たちは現在の日本のプロデュエリストのランキングで上位9名を総ナメしてるくらい強いらしい。
そんな彼らの活躍は留まることを知らず、9人を除いた残りの1人に至ってはなんと世界のプロランキングに名前が乗っているのだ。
そうして活躍が知られたことで、アカデミアとプロの関係者の間では、こう言われているらしい。
「プロデュエリストになる最短の道とは、アカデミアでトップの実力を得ることだ」
「〜〜〜!よぉーっし!今日ここから、俺は絶対親父みてぇなプロデュエリストになってみせる!」
「はいはい、うるさいし迷惑だからよそ行ってやろうねー」
「相変わらず声だけは大きいよねぇ遊笑」
「っだー!お前らなぁ!」
色々と込み上げてきた感情を吐き出すため目標を大きく掲げていると、幼馴染達からアホを見る目で見られてしまった。くっそぉ、こんな事には負けねぇぞ!!
決意を新たに、俺は遊鮮と遊香を追いかける。ここが、ここからが俺のデュエリストとしての最強への第1歩だ......!
「終わったー!」
「もう遊笑!!また大きな声出して!」
「はは、もう遊笑のコレは治らない癖になってそうだね」
今日は入学式だけという事であっという間にやることも終わり、下校時刻である。行きと同じく3人で帰るが、帰りはゆっくり歩いて帰るため行きよりのんびりとした時間が流れる。
ふと、少し前へ出てきた遊香が笑いながら商店街を指さす。
「ね、折角早く帰れたんだからさ!いつものカドショ、寄っていこうよ!」
「あー?あー......いやぁ、今日はやめね?ほら、遊香も稽古あるだろ?」
「えー、今日はまだ時間あるし全然良いじゃんか」
「しょうがないよ遊香、遊笑はお菓子や買い食いのし過ぎで金欠だからさ」
「はぁ?また?相変わらず金銭感覚おかしいよねぇ遊笑」
「ちょっ、おま、なんでそれ知ってんだよ!?」
「遊笑のお母さんによく愚痴られるんだよ、店番中はしょっちゅうさ。おかげで遊笑の要らない情報大体知ってるよ」
「お、お母さん〜!」
他愛もない事を話しつつ歩みは止めない。そうして歩いていけば朝駆け抜けた商店街へとやってくる。朝と同じように商店街の人たちに挨拶しつつ歩いていけば、商店街で唯一のカードショップ―――カードショップ『RYO』が見えてくる。
「くっそぉ、しゃーねーぇ!新弾パックとか出てないかだけ見に行くぞ!」
「そんなこと言って、また前借りでDPくれって言われてもあげないからね?」
「言わない!ほら2人とも、早く行こうぜ!」
「あっ、ちょ......行くって決めたらすぐこれなんだから......」
「あはは、さて僕らも行こうか」
なんか後ろの方で言ってるが関係ねぇ!うおおお新しいカード出てねぇかなー!
「こんちはー!てんちょー!新弾パック出てないー!?」
「らっしゃーせー。......なんだ、遊笑か。帰れ帰れ、金ねぇの分かりきってるからなお前。あと新弾は出てねぇよ」
店内に入り、レジで頬杖ついてぼーっとしていた店長のリョウさんに声をかける。相変わらず適当な人だな、接客向いてないんじゃないかこの人。
「こんにちは、リョウさん。またそんな格好して、繁盛しないのそういう態度のせいじゃないですか?」
「こんにちはー!相変わらずさっぱりしてて静かですねこの店!」
「おうおう、随分言いたい放題だなガキども。涙が出てくるよ」
後から自動ドアが開き遊鮮と遊香が入ってくる。
俺以上に容赦ない2人の言葉に何処から出したのかハンカチで目元を拭うリョウさん......いやでも泣いてねぇなこの人。
「おん?その格好、お前ら今日入学式だったか」
「へへへっ、そうだぜ!」
「だから今日は早めに来れたんですよ。それで、折角だし寄っていこうって話になって」
「あー、これ可愛い!リョウさん、この『ハネワタクッション』っていくらー?」
「ほー、その制服ってことはお前ら無事アカデミア新本校に入学できたってことか。いやぁ、あのチビ共が良くぞここまで......それと遊香、それ売りもんじゃねぇよ、アタシの仮眠用枕」
リョウさんとここのカードショップとは、俺たちが小学生の頃からの付き合いだ。3人で初めてカードを買ったのがこの店で、それ以来常連としてここに入り浸っている。
リョウさんはこんな適当な人だけど、昔は凄かったって聞く。実際デュエルについて俺たちに教えてくれたのはこの人だ、大まかな所だけだけど。
......それはともかく。
「てんちょーてんちょー、今日は来てないの、バイトのねーちゃん!」
「あー?......アイツだったら、今は決闘卓の方でイベントの運営してっぞ」
「あんがと!2人とも行こうぜ、俺らも参加しよう!」
「あ、ちょっと!?」
「ああ全く、考え無しだなぁ......店長、それじゃまた!」
「はいはい」
店長への挨拶もそこそこに、3人で決闘卓へと向かう。今日は時間が早いこともあってか、知らない人達ばかりで常連の人らは見えない。確か今日のイベントは交流会、勝ち負け関係無く色んな人とデュエルする会だったな......。
そんなことを思いつつ、このカドショの店員の制服であるクソダサパーカーを着た人を探す......いた!
その人は、白く長い髪を遊香と同じポニーテールにした顔立ちのとても綺麗な女の人だ。笑っている所を滅多に見ない無表情で、少しだけどもりながら喋るその人は今、メモを手にイベント参加者にDネームを聞いて回っているようだ。
「バイトのねーちゃん、俺らも参加!」
「......きょう、はやい、な」
「今日は入学式だけだったからな!」
「そう、か」
「こんにちはおねえさん!」
「......どうも」
「ん、2人も、こんにちは」
この人はこのカドショのバイトをしている人で、俺たちの間では『バイトのねーちゃん』と呼んでいる。本当の名前は分からない。本人に聞いても教えて貰え無いし、てんちょーは「アイツ」「コイツ」って言うだけで全然名前呼ばないからな......今何故か脳内で紙飛行機の上に変な人型が乗った映像が流れ......気のせいだな。うん。
「登録、しといた。デッキ、ある?」
「当然!」
「うう、少し緊張してきた」
「......あり、ます」
「ん」
俺は自信満々に、遊香は不安げに、遊鮮は少しそっぽ向きながら、それぞれデッキを見せる。
......遊鮮の奴またかよ。コイツ、ねーちゃんにだけはいつもみたいに喋れなくなるんだよなー、なんでだろ?遊香は知ってるみたいだけど、「遊鮮の名誉の為にもアンタには教えない!」って言ってたし......うん、わからん!
「そろそろ、はじめ、ます」
!色々考えているうちにイベントの時間がやってきた。Dネームが呼ばれる度参加者が卓について行く。いつ自分の名が呼ばれるか、ワクワクしながらデッキを握りしめ待機するのだった。
「あーくそ!負けたー!!」
イベントも終わり、遊香と遊鮮とも別れ家へと向かう帰り道。悔しさから足元に転がっていた石を蹴り飛ばしながらドカドカと自分でもガラ悪く思いつつ歩く。
イベントの結果......全敗。参加者の大人達どころか、遊香や遊鮮にすら負けてしまった。
せっかく入学式で高まっていたテンションがダダ下がりした中、イベントでのデュエルを思い出す。これまでも決して遊香や遊鮮との戦績が良かった訳では無いが、ここ最近は全然勝利が取れてない。
今回に至っては、他の参加者にすら負けてしまった。小学校の頃くらいまでは、3人の中でいちばん強かったのに......!
原因は、分からない。遊香も遊鮮もデッキが強くなっていることは確かなんだが、それはそれとしても俺だって研鑽は積んできた。なのに、勝てない。
「くそ、俺に何が足りないってんだよ......ん?」
悔しさから少し強めに蹴った石がとんでいく。それをなんとは無しに眺めていると、石が止まった辺りに何かが落ちていることに気づく。
近づいてみれば、それは1枚のカードであった。
思わず周囲を見渡すが、既に住宅街に入っており日も沈んだ時間帯、通行人は誰もいない。
「落し物か?ったく、こっから交番は遠いってのに......」
呟きながら、カードを拾う。めくってみれば、見たことの無いカードだった。
デュエルモンスターズのカードでは良くある秀麗なカードイラストが描かれたそれは、モンスターカードだ。上にレベル・名前・属性、下の効果欄には種族と効果、攻撃力・守備力が記載されている。
「どれどれ......うっわ、なにこれつっよ!だ、誰だよこんな強カード落とした奴......」
レベル・効果・攻守共にびっくりするほど優秀なカードであった事に驚き目を見開く。さらに詳しく見れば、その種族・属性も優秀で非の打ち所のないカードだ。これをわざと落としたのであれば、宝をドブに捨てたと言っても過言では無い程に。
「......俺のデッキにめっちゃあうな......いやいやいや!これ落し物!人のもの!......でも、今誰も見てなiいやいやいや!」
さっきまで自身のデッキについて悩んでいたこともあって、邪な考えが止まらない。ダメだダメだ!人の落し物で強くなったって何も意味ねぇ!......でも少し使いたい、いやいやいや!!
これ以上はマズイ。本当にネコババしてしまう前に交番に届けないと。そう思いカードをデッキケース......じゃない、ポケットにしまい商店街の方へ向かう道へと反転し歩き出す。
すると、先程までは誰もいなかった道の先に、誰かが立っていることに気づく。その人は、真っ黒なフード付きのマントで体と顔を隠しており、男の人なのか女の人なのかは分からない。だが、フラフラとこちらへ歩いてくるその姿は夜の住宅街の静寂も相まって不気味に見える。
......待て、静寂?まだそんな時間じゃないはず、帰ってきたばかりの人とかがテレビを見てたり、家族で団欒しているような時間だ。
なのに、周囲の住宅からは声も音漏れも無い。慌てて見渡す―――明かりすらついて無い!
(何か、よく分からないけど何かがやばい!)
「おい、坊主......」
その問いかけに慌てて正面を見れば、謎のフードは既に目の前まで来ていた。聞こえてきた声は、嗄れているが辛うじて男の声だ。
「な、なんだ、よ?」
「ここらで、カードを、拾ってないか」
「カ、カード......」
思わず、先程拾ったカードが入ったポケットへと手を当てる。
(カードって、さっき拾ったこのカードか?でも、なんかヤベー雰囲気あるんだけど!?渡すか?渡せば何事もなく帰ってくれるかな......)
「あ、ああ。このカードか?」
とりあえず渡してみる事にした。違えば違うで交番に持っていけばいいし、この人のカードならそのまま返せば良い。
そう思ってカードを差し出すと、フードの男は何故か黙って俺の持つカードを凝視していた。
「あの、これ違う......?」
「そうか......貴様が......」
「えっと、あのー?」
なんか呟くだけで受け取らないフードの男に、少しずつ不安が恐怖に変わり始める。
男が動く。しかし、差し出したカードを受け取ることは無く左腕を突き出した。
腕には、少しだけ型落ちっぽいデュエルディスクが装着されて......え、デュエルディスク!?
「デュエル、だ。俺が勝てば、そのカードをいただく」
「え、ちょ、はぁ!?いやいやいや、あんたのカードなら普通に返すから!なんでデュエル!?」
「無駄だ。そのカードは、デュエルでしか譲渡されることは無い。最早貴様は、そのカードを手放すことは出来ん......」
「えっ、嘘......マジ!?」
フードの男の言った通り、カードをその辺に落としたが何故かさっきカードを突っ込んでいたポケットの中に瞬間移動している。何だこのカード!?
「さぁ、デュエルだ......」
「ま、待ってくれよ!あんたが勝てばこれ渡すって言っても、俺にデュエルするメリット無いんだけど!」
「何度も言っているだろう......。無駄だ、と」
そう言ってフードの男が、俺に向けて何かを転がす。......デュエルディスクだ。
「そのカードに巻き込まれた時点で、貴様に参加以外の道は無くなっている。もしこのデュエルから逃げれば、その時は貴様の魂は永遠にこの世界に囚われてしまうだろう」
「マジで!?!?」
なんでだ、なんでこんな事に。俺はただ、落し物を拾っただけなのに!男の言うことが嘘だとして逃げることも考えるが、不気味な相手の雰囲気やさっきから色んな方向へ投げまくっているのに戻ってくるカードが、現実だと叩きつけてきている様に感じる。
「......分かった、やってやる。やってやるよ!」
そう言って、こちらへ投げられたデュエルディスクを装着する。
(何にせよ、デュエルすれば良いだけだ。勝ち負け関係ないならさっさと終わらせて帰るだけだ)
俺がディスクを装着したのを見て、フードの男は数歩下がる。ある程度の距離が出来たところでデュエルディスクが起動し、互いの間にソリッド・ヴィジョンシステムがデュエルフィールドを構築する。
「「デュエル!」」
そうして、俺と謎の男のデュエルが始まった。
遊笑
vs
フードの男
このデュエルが、俺の世界と未来を急激に変える事になるとは、この時の俺には知る由もなかった。
遊戯王アニメ特有、謎の組織の襲撃。それと某蟹主人公から伝わる、「カードは拾った」スタイル。
拾ったヤツについては、また次回。ヒントとしては......今後明らかにOCGで強化が来るであろうヤツです。作者も結構使ってる。
幼馴染2人のデッキは決めてます。名前からなんとなくわかる人はわかるんじゃねぇかなぁ......。的なデッキです。
次回、遊笑くん死す。デュエルスタンバイ!
嘘です、ただのデュエル回です。