お風呂は好きかな? 作:みいつけ党下っ端
「わかりあえるかどうかは兎も角、話のできる魔族はいるよ。一人」
火を囲み、雑談に花を咲かせながら、夕食を食べる勇者一行の四人。
そんな中、魔族を見たなら即殺すを実行するエルフ、フリーレンからは考えられない言葉が飛び出すことにより、勇者パーティの面々は、その魔族というのに興味が湧き出る。戦士のアイゼンが先程話していた僧侶のハイターからフリーレンへと視線を映す。
「お前がそういうとは珍しいな。普段なら魔族の言葉は鳴き声だ〜と言っているではないか」
「うん。それを取り消すつもりはないし、今でもそう思ってる。ただ、その魔族が特殊なだけ。そいつが普通の魔族なら私はここにいないだろうし」
フリーレンはそう言い、スープを飲む。しばらくして、火のパチパチとする音だけが耳に届いているのを不思議に思い顔を上げると、驚いたような顔で三人がフリーレンを見ていた。
「た、戦ったのかい?」
勇者ヒンメルは、恐る恐るとフリーレンに聞く。
三人は、勇者パーティとして、共に旅をしているフリーレンの強さを知っている。そんな彼女が、ここにいなかったと言った。彼女が魔族に負けたのだ。ヒンメルとしては、魔族の強さどうこうよりも、密かに思いを寄せている彼女がそんなことになったことに気が気でなかった。
「戦った、って言えるのかな。あれは」
フリーレンは、少し考えてそう答える。
「というと?」
「確かに私はアイツに攻撃した。でも、アイツには効かなかったし」
「"効かなかった"?」
「うん。アイツは、自分の領域の中だったら無敵、みたいな魔法を使ってた。正確には、食らった箇所の体を融解させて、再生させてるってだけだけど」
なんともないように言うが、彼女も言うようにそれは、無敵の能力と言っていいだろう。攻撃が当たらないのだから、倒しようがない。
「まぁ、融解と再生が間に合わない程に連続的に攻撃を食らわせるか、そもそも再生できないくらい大きな攻撃を打てば問題ないんだけどね」
「ならば、問題ないのではないか?お前ならば、その程度の火力出せるだろう」
「私が戦ったのは、アイツの領域の中。その領域内だと、アイツの攻撃は"必中"になるんだよ。溜めがいらない乱雑に打った強力な攻撃が全部当たるんだから恐怖以外のなにものでもないとおもうよ」
三人は、フリーレンの語るその魔族に戦慄する。そんなのが、この戦いの先にいるのかとなれば、この中の誰かの生命を代償にして勝つような戦いになりそうだからだ。
「まぁ、アイツ自身は、今はハイスで温泉宿経営してるような人間好きだし」
「なんて?」
思わず聞き返してしまった。
永久魔族アンチことフリーレンが、魔族の知り合いが、人の街で温泉宿を経営しているんだ、と平然と語っているのだ。聞き返したくもなる。
「"みぃつけた"って温泉宿なんだけど」
「予約が取れないで有名な高級宿じゃないですか!」
そして、その温泉宿の名前が城塞都市ハイスに於いて、もっとも有名であり、誰しもが、一度は泊まってみたいと夢見る高級宿だった。
「旅に出る前は、定期的に体を"洗って"もらってたからね。付き合いの時間で言えば、一番長いんじゃないかな」
「…………洗った?」
ヒンメルが、フリーレンの言葉を小さく復唱する。
これは、まずい。
ハイターとアイゼンは、ゆっくりと皿を置く。
「うん。体の隅々まで。あれは、気持ち良い。心の洗濯と言って過言ではない」
「…………………その魔族って男?」
「え?うん」
瞬間、ヒンメルは立ち上がる。急に立ち上がったヒンメルを見て、首をかしげるフリーレンと、予想していた状況に抑えかかるハイターとアイゼン。
「………ろしてやる」
「ヒンメル?」
「ソイツ、ぶっ殺してやる!」
鬼の形相で今にでも剣を持って、駆け出そうとするヒンメルを必死に押さえ込むハイターとアイゼン。
「落ち着きなさい。ヒンメル。ハイスは、ここから相当の距離です。今からでは無理ですよ。それに行ったとして、街中で暴れる気ですか」
「そんなことはしない。ただ、その宿を粉々にするだけだ。一欠片も残さずに魔族ごと潰すだけだ」
「そもそも、そこに奴がいるとは限らんだろう。経営は、他の者に任せているかもしれんだろう」
「そんなに会いたいなら、呼ぼうか?」
三人の動きが止まる。
「皆も一回、アイツに洗ってもらうといいよ。病みつきになるから」
ヒンメルから色素が失せていく。
「"みぃつけた"に行くのもいいかも。私なら顔パスで泊まれるよ」
それに反応を示してたのは、ハイターだった。
フリーレンの言葉は、それすなわち、お互い直ぐに連絡の取り合える仲、という事となる。原理はわからないが、きっとそういう魔法でもあるのだろう。そして、定期的に洗ってもらってた発言から肌を見せ合う仲というのも確実。ヒンメルは、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。
“哀れヒンメル“
二人は静かに真っ白に燃え尽きた男に十字を切る。
「呼ぶとしてもどうやって?」
「簡単だよ。出てくる場所を用意して、名前を呼べばいい」
フリーレンは、そういうと、バックの中から白い小さな桶のようなものを取り出すと、地面へと置く。すると、桶の大きさが人一人を入れるようなサイズへと変え、中に水が溜まっていく。水が溜まりきったのを確認したフリーレンは、静かに名を告げる。
「オフロスキー」
瞬間、桶の中の水がぶくぶくと泡を立て始める。それを見て、なにが出てきてもいいように身構えるハイターとアイゼン。ハイターは、ふとヒンメルに目を向けるが、未だに真っ白のままだった為、無視した。
その時、ザバンッ!と桶の中からなにかが出てくる。
「呼んだ?」
「うん。呼んだ」
そこには、雲のような模様のピンク色の服を着ている、緑色の角をはやした魔族がそこにいた。
魔族、オフロスキーは周りを見渡し、そこが森の中だと言うことを理解すると、大きくため息をつくと、桶から出てくる。水から出てきた筈なのにオフロスキーには、濡れている様子がなかった。
「まったく。最近呼ばれないから遂に身でも固めたのかと思えば、数年、街にでも住んでいたのか、フリーレン?」
「いや、今回は皆が会いたいって言ったから呼んだ」
「皆?」
そこで、オフロスキーはフリーレンの後ろに三人の男がいることに気付く。自身を警戒している男に二人と何故か真っ白になっている男が一人。
「旅の仲間ができたのか」
「うん。魔王討伐の旅」
「ほう、あの魔王をか。長生きなだけの偏屈な奴だが、中々に強いぞ」
「問題ないよ。ヒンメルもハイターもアイゼンも強い」
オフロスキーは、微笑ましそうにフリーレンを見る。その目はまるで、成長した子供を見る父親や兄のような目だった。
二人の会話に置き去りにされているハイターとアイゼンの背中には、宇宙が広がっていた。それもそのはず、魔族絶対殺すウーマンと書いてフリーレンと読む彼女が、その魔族と談笑しているのだ。
その時、二人の間から影が飛び出す。
「死ネ」
「おっと」
オフロスキーの目の前には、修羅となったヒンメルがいた。オフロスキーは、立ち尽くしているハイターとアイゼンを見て、襲いかかってきたのが、何故か燃え尽きていた男だと判断する。
「“
衝撃波が吹き荒れ、木々が悲鳴を上げるように揺れる。
オフロスキーの手には、細い木の棒の先に木でできた土台と先に緑色のブラシのついた、所謂デッキブラシが握られていた。
明らかに掃除用品にしか見えないそれで、剣を防がれたヒンメルは、その掃除用品からとてつもない悪寒を感じ、飛び退いてオフロスキーから距離をとる。
「やぁ、お風呂は好きかい?」
デッキブラシを肩に担ぎ、オフロスキーは不敵に笑う。
オフロスキー(偽)
結構長生きしてるオフロスキーになった転生者。
スペックは、狂育番組の方のオフロスキーなため、普通に強い。
前世は、祖母が銭湯経営していただけの一般人。ちなみに銭湯は時代の波に飲まれて、主人公が成人する頃には、畳んでいた。
フリーレン懐柔という偉業をなした最高にイカれた魔族。
ちなみに"洗う"は魔法によるもののため、裸を見たわけではない。決して
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