お風呂は好きかな? 作:みいつけ党下っ端
どうも、祖母からもらったカステラを紙ごと食べて、親に爆笑された作者です。感想欄でご指摘いただいたので、活動報告に作らせてもらいました。ガイドライン違反なの初めて知りました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305190&uid=278414
これで、大丈夫だよね?
子供の魔族は、木の陰から目の前に広がる不思議な光景を眺めていた。
「いい加減、引いてくれないか?死ぬぞ、お前」
「黙れ!人間に与する裏切り者が!」
睨み合っているのは、魔族同士。誰が見てもボロボロとなった牛のような見た目の魔族と、余裕そうに相手の魔族の心配をしている人型の魔族。魔族同士が戦うことというのは、よくある光景だ。どちらが強いかの証明であったり、縄張り争いであったり、魔族とは野蛮な生き物だ。しかし、リーニエが不思議に思うのは、余裕そうにしている魔族の後ろには、人間の親子がいるのだ。
「………裏切り者、か」
「何故だ!何故、人間の味方をする!」
牛の魔族は叫ぶ。理解のできないものを否定するように。
「人間などという下等生物の味方なぞして、貴様になんの得があるというのだ!いくら、貴様が人を救ったところで、貴様を受け入れる人間などいない!」
牛の魔族は、向き合う魔族に手を伸ばす。
「我の手を取れ、同胞よ!今ならば、まだ間に合う!共に人間を滅ぼそうではないか!」
「…………」
人型の魔族は、ただ黙って、牛の魔族が自身へと伸ばした手を見る。その後ろで、ただ震えている人間は、人型の魔族を見ることしかできない。ここで、彼が牛の魔族の手を取ってしまったら、自分達は死ぬことになるのだから。
「……………そうだな」
人型の魔族は、牛の魔族へとゆっくりと歩み寄る。子供の魔族は、人間達の方を見る。その顔は、絶望したような顔をしていた。
人型の魔族が、牛の魔族の手を握るためか、手を伸ばした瞬間。
「バカめ!裏切り者の貴様を許す者など、いるはずがないだろうが!」
その瞬間、牛の魔族は、伸ばしていた手を握り、大きく振りかぶる。そして、牛の魔族の腕が肥大化する。
「死ねぇっ!裏切り者がぁ!」
「"
そう叫び、牛の魔族は、腕を振り下ろす。しかし、それより先に人型の魔族が出した手から、水の魔法が飛び出し、牛の魔族の胸を貫く。
「が………は………」
そして、牛の魔族は、放たれた魔法の威力に仰け反りながら、ゆっくりと消滅していく。
それを見届けた人型の魔族は、後ろにいる親子へと顔を向ける。母親らしき人間は、怯えながら子供を抱きかかえ、目を瞑る。
「怪我はあるか?」
「……………え?」
人型の魔族は、親子の前に立つと、そう聞いた。親らしき人間は、そう聞かれ、呆然と人型の魔族を見るのみ。すると、親の腕の隙間から子供が顔を出す。
「ううん!怪我してないよ!」
「そうか、なら良かった」
魔族は、安心したように微笑む。そして、屈んで、子供と目を合わせる。子供は、怖がる様子なく、魔族の事を凄い凄いとはしゃぐ。母親は、どうすればいいのかわからないのか、未だに石のように固まっていた。
「兄ちゃん強いんだな!あの大きな魔族を一発でやっつけちゃうんだもん!」
「あぁ、そうだな。でも、俺も魔族だ」
「でも!兄ちゃんは、いい魔族だよ!」
子供が嬉しそうに魔族へと喋りかける。魔族は、困った顔を浮かべながら少年を見る。少年にいい魔族、というものがいると思われるのは困るからだ。それは将来、少年の身を危険にさらす考えでしかない。
「魔族にいい魔族はいない。みんな、悪い魔族だ」
「じゃあなんで、兄ちゃんは助けてくれたの?」
「……………機嫌が良かったんだ」
「じゃあ、今はいい魔族だ!」
魔族は、更に困ったような顔をして子供を見る。それを見ている子供の魔族は、困っているのなら、さっさと殺してしまえばいいのに、とどこかもどかしい気持ちになって、魔族を見ていた。
「俺、兄ちゃんみたいに強くなりたい!」
「なら、お前が大事だと思う人を魔族から守れ。そうすれば、強くなれる」
「わかった!俺、村の皆を魔族から守る!」
それを聞いた魔族は、手を伸ばして子供の頭を撫でる。すると、子供は気持ち良さそうに目を細める。なぜ気持ち良さそうにするのか、わからない子供の魔族は、自分で自分の頭を撫でてみる。しかし、なにも気持ち良くなどなかった。
「俺はついていけない。村は近いか?」
「うん!ここからすぐだよ!」
「なら、しっかり母親を守れ」
「分かった!俺、母ちゃん守る!」
その後、開けた山道まで案内された親子は、未だ自分達を見ている魔族に対して、子供は笑顔で大きく手を振りながら、母親は気味悪そうにしながら、魔族に軽く頭を下げて、山道を下りていく。
「それで、さっきから見ているが。俺に用でもあるのか?」
魔族と子供の魔族の目が合う。子供の魔族は、今までにない殺気を感じる。逃げるために足を一歩引くが、逃げられないことを悟ったからか、子供の魔族は木の影から出てくる。
「子供の魔族か」
「なぜ」
「ん?」
「なぜ人を助けるの?」
子供の魔族は異常な行動をする魔族に問う。
「人を助けても意味なんてない。私たちは、魔族だ。人間をいくら助けたところで、魔族が受け入れられるわけじゃない。なぜ?」
子供の魔族は、他の魔族に比べて生まれて間もない。しかし、魔族だ。目の前の魔族が異端なのは理解できる。なぜ、人を助けるなどという生産性皆無の行為をしているのか。気になった。
魔族は、しばらく考えるように顎に手を当てた後、答える。
「さぁ、何故だろうな」
子供の魔族は唖然とする。異常な行動をする魔族に行動する理由を聞いたら、まさかの"わからない"だった。
「お前は、人と魔族の違いはなんだと思う?」
「…………角の有無?」
「わかりやすいな」
子供の魔族は、首をかしげながら答える。それを聞いて、魔族は可笑しそうに笑う。それに子供の魔族は、むっとする。
「なら、魔族と人間の違いはなに?」
「"心"の有無だと、俺は思っている」
「…………"心"?」
子供の魔族は再び首をかしげる。聞いたことのない言葉だったからだ。もしかしたら、何処かで聞いたことがあるのかもしれないが、子供の魔族は覚えていなかった。
「"心"は"在り方"だ。なにをするにしても、曲げることのない、"自分で決めた生き方"の事だ」
「………なら、魔族もしている」
「だったら、魔王軍なんてものは存在しないだろうな」
子供の魔族は魔族がなにを言っているのかがわからなかった。子供の魔族は魔族の言った自分の決めた生き方というものがわからない。自分で、これをするあれをする、と決めて行動するのがそれではないのか?と。
「なら、こうしよう。例えば、お前は、"強い者と戦う"ことを"自分の決めた生き方"としよう」
「……………」
子供の魔族は考える。魔族に出されたその生き方で生きていくとして、そうなった場合だ。
「自分よりも強い。が、相手に勝てる確率は五分五分な相手が現れた。お前はどうする?」
子供の魔族は、魔族を見てみる。目の前の魔族は、それに合わせてなのか、今の自分でも勝てるのでは?と思えるような魔力量を放出していた。これを目安にということだろうか?
「………戦う」
「それはなんでだ?」
「強い者と、戦うって決めたから」
「そうだな」
魔族は子供の魔族の回答に頷く。
「なら」
瞬間、目の前の魔族の放出される魔力量が膨れ上がる。子供の魔族は血の気が引く感覚がした。勝てない。なんだこの化け物は。殺される。
「これなら、どうする?」
「逃げる」
即答だった。子供の魔族に迷いなど無い。
「それはどうしてだ?」
「死にたくないから」
"強い者と戦う"?そんなことどうでもいい。こんな絶対に勝てない相手に挑んで何になるっていうんだ。子供の魔族は、今をどうやって生き残るかを考えていた。
子供の魔族が震えているのを見て、魔族は魔力の放出を抑える。すると、子供の魔族の震えは徐々に収まっていき、顔色も回復していく。
「お前は今の判断を、間違いだと思うか?」
「思わない」
「だろうな」
魔族はふと後ろを向く。子供の魔族は不思議に思い、横にずれて、魔族がなにを見ているのかを見る。そこにはシャボン玉があり、シャボン玉には先程の親子が写っていた。
「無事に帰ったみたいだな」
「それは、さっきの?」
「あぁ。話を戻すが。人間はその判断を"間違いだった"と後悔するんだ」
「……………イカれてる」
子供の魔族は人間という生き物に対して、一定の恐怖を覚えた。なぜ、生き残ったのに間違いだと言うのか。死んだらそこで終わりじゃないかと。
「それが"心"だ。自分の決めた生き方を自分で否定したことを後悔する。自分の命なんて二の次でな」
「……………」
子供の魔族には、わからなかった。なぜ、そんな生き方をするのか。命あってのそういうものだろう。そこまでしてまで、その生き方というものを優先させる理由がわからない。
「これが"心"だ。"心"があるから、人は強い」
「…………やっぱりわからない」
「そうか」
子供の魔族は俯く。魔族は子供の魔族がそう言うとわかっていたのか、特に困っている様子もなかった。だが、その後に顔を上げた子供の魔族が言う言葉に、魔族は驚くこととなる。
「だから貴方が教えて」
まさか、そんなことを言うとは思っていなかったからか、目を見開いたまま子供の魔族を見続けてしまう。子供の魔族は、それに引くことなく、魔族の目を見続ける。
「代わりに私を守って」
「…………なるほど、考えたな」
しかし、続けた言葉に魔族は思わず笑みを溢す。子供の魔族は、魔族と話して感じとったのだ。その"心"を理解しようとするのならば、この魔族は同族を見捨てたりしないのだと。そして、先程見せた異常な魔力量。この魔族は、今まで見てきた魔族の中で一番強い。ならば、そうしようとしていれば、この魔族の庇護下にいられると。
確かに打算的であり、魔族らしい考え方だった。だがそれが逆に魔族の興味をひいた。
「いいぞ。代わりに"自分から人に危害を加えない"、"襲われたとしても殺さずに無力化"、"俺の言う事には従う"。この三つを最低限は守れ」
「わかった」
「なら、ついてこい」
魔族が歩き出す。すると、その後ろをトコトコと子供の魔族がついていく。
「名前はなんていうんだ?」
「リーニエ」
「オフロスキーだ。なにか食べたい物はあるか?」
「…………リンゴ」
「なら、後で買ってやる」
魔族、オフロスキーは子供の魔族、リーニエの頭を撫でる。先程の子供のように優しくなどではなく、どこか乱雑にワシャワシャと。
「どうした?」
「……………なんでもない」
頭を撫でられたリーニエは立ち止まって、不思議そうに自分の頭に触れる。リーニエが足を止めたのを不審に思ったのか、オフロスキーが足を止めて、リーニエに声をかける。
リーニエは、急いでオフロスキーの下へと行く中、思う。
自分の頭を撫でたオフロスキーの手は、何故かほんの少し温かった。
「ところで、お母さんってなに?」
「自分の事を守ってくれる存在の事だ」
「じゃあ、オフロスキーは私のお母さん?」
「お母さんは女性に使う言葉だな」
「なら、男はなんていうの?」
「お父さんだ」
「じゃあ、オフロスキーは私のお父さんだ」
「なんでそうなる」
「違うの?」
「違うな」
「ふーん。よくわかんない」
これは、勇者ヒンメルが誕生するほんの少し前の話。
【子供の魔族】
将来、ドワーフの弟子にやられる魔族。現在は、生まれて間もない(魔族視点)魔族の子供。勇者一行が旅を始める頃には宿泊宿"みぃつけた"にて時折、手伝いをしているのを見るオーナーの娘という立ち位置を確立している。"模倣する魔法"のおかげで包丁捌きはプロ並み。なぜか、火の前には立たせてもらえない。角はオフロスキーの魔法で隠している。"みぃつけた"の従業員は、彼女が魔族だと知っている。
彼女を登場させたのは作者の趣味です。リーニエちゃん可愛いよね。特にシュタルクくんに致命食らった時。
一番なにがみたい?
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