お風呂は好きかな?   作:みいつけ党下っ端

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ちょっと、投稿が遅れた作者です。

呪術ネタ放り込みすぎて、呪術廻戦のタグがついちゃった。

オフロスキーが主人公なのに主人公が欠片も出てない。これもうオフロスキーじゃなくて良くない?

あと、アウラの勝ちです。


紅茶は好きかしら?

 

「可哀想だな。お前」

 

自身の前で跪いている男が、私の顔を見てそういった。

先程まで憎しみの籠もった目で私を見ていたこの男は、私に“可哀想“と言ったのだ。

 

「面白いことを言うわね。なら、参考までになにが可哀想なのかしら?」

 

「全部。魔族ってのは、悲しい生き物なんだな」

 

その時、私はこの男に強い興味が湧いた。

 

恐怖というのはわかる。人間の中には恐ろしい存在と遭遇すると震えて動かなくなる“習性“を持つ人間がいる。それにはこれが起因している。

 

悲しみというのはわかる。人間の中には同族を殺されるとそれの前で動かなくなる“習性“を持つ人間がいる。それにはこれが起因している。

 

怒りというものはわかる。人間の中には同族を殺されると我を見失う“習性“を持つ人間がいる。それはこれに起因している。

 

殺意というのもわかる。これは怒りの中に複合されていることが多い。兵士といった戦いに出てくる人間に多い“傾向“がある。

 

私は500年生きた大魔族だ。何千何万の人間を殺した。だから人間の“感情“とやらも沢山見てきた。

 

だが、この男が私に抱くこの感情はなんだ?

 

“恐怖“ではない。

この男は私を見て体は欠片も震えていない。

 

“悲しみ“ではない。

この男の前には私と部下しかいない。

 

“怒り“ではない。

この男は我を失っているように見えない。

 

知らないものだ。この男が私に向けている感情が何処か気に入らなかった。

 

「アウラ様、剣を」

 

「いらないわ」

 

「は?」

 

この男を服従させたのを確認させたリュグナーが私に剣を差し出してきたから、受け取らなかった。

 

私の魔法“服従させる魔法“は、相手を“支配“する魔法だ。だけど、あくまで支配するのは“体“だけ、本来の体の所有者の“魂“までは支配できない。だから、私の支配に抗う奴が少なからずいた。

“魂“を支配できるようになってそれは克服した。しかし、“魂“を支配したとしても良くわからない力で“命令“には抗われる。なにがいけないのかは私にはわからない。だから首を落として完全に私の言うことを聞く人形を作る。魂は入れておくだけ。奥の手のために。

 

だが、“命令“を与える機会がないのなら別に首なんて落とす必要はない。“魂“を支配できるようになった私の“支配“からは逃れることはできないのだから。

 

「あなた、名前はなに?」

 

「言うかよ」

 

「“名前を言いなさい“」

 

「…………………ウィリアムだ」

 

“服従させる魔法“に抗ったようだが、意味なんてない。どうやら、この男の名前はウィリアムと言うらしい。

 

「そう。ドラート、もう一人適当に連れてきなさい」

 

「はっ」

 

私は部下のドラートに命令して、もう一人捕まえた兵士を連れてこさせ、ウィリアムを私の横で控えさせる。ドラートが連れてきた兵士は、私の横にいるウィリアムを見て驚いていた。喋りかけもしていたが、黙っているように言ったため、ウィリアムは苦しそうに兵士を見ている。

そして私は、その兵士に“服従させる魔法“をかけて、いつも通り首を落とす為に剣を受け取る。そして、

 

「はい」

 

「は?」

 

ウィリアムに差し出す。

 

「あなたがコイツの首を落としなさい」

 

「なにを、言って………」

 

「“剣で兵士の首を落としなさい“」

 

「ふざ、けんな……!」

 

ウィリアムは剣を受け取って、ゆっくりと兵士の下へと歩いていく。

 

「なん、で………俺に……!」

 

「さぁ、なんでかしら?」

 

ウィリアムの顔は“怒り“に染まっていた。そう、それでいい。お前たち人間はそういう顔がよく似合っている。

 

ウィリアムは、首を差し出す兵士へと剣を振り上げていた。そして、剣を兵士へと振り下ろす。

 

「俺、は…………!」

 

しかし、それは兵士の首の寸前で止まっていた。どうやら抗われたらしい。いつも忌々しく感じるそれに、なぜか“愛おしさ“のようなものを感じる。

 

「“早くソイツの首を落としなさい“」

 

「ぐ………ぐぅ………!」

 

ウィリアムは苦しそうな顔をして、再び剣を振り上げる。

 

「俺、は………!」

 

「………ウィリアム様」

 

未だ抗うウィリアムに兵士が喋りかける。

 

「お先に失礼します」

 

「………ッ!!」

 

ウィリアムが剣を振り下ろした。ウィリアムは血に汚れ、床に金属の転がる音が部屋の中に響く。ウィリアムは剣を手放し、呆然と首を切り落とした兵士を見る。

 

「お疲れ様。汚いから汚れを落として来なさい」

 

「なぁ」

 

「ん?」

 

「なんで、こんなことをした?」

 

ウィリアムの言葉には“怒り“が滲み出ていた。

 

「さぁ?気分よ気分」

 

そういったら、私を見るウィリアムの顔は、またあの顔になった。

 

「……………そうか」

 

ウィリアムは、そう言って部屋を出ていった。

 

 

それからしばらく、ウィリアムには雑用と兵士を捕えた時に毎回一人、首を落とさせていた。彼が私を見ている目は、ずっと気に入らなかったが。

 

「ねぇ、ウィリアム。紅茶を淹れてくれないかしら?」

 

「……………わかった」

 

しばらく雑用をやらせていて、わかったことがある。彼の淹れる紅茶は美味しいということ。少なくともドラートやリュグナーが淹れるより。

 

「ねぇ、どうしてあなたに首を落とされる兵士と私が首を落とす兵士は最期に言うことが違うの?」

 

「別に、そんなもんだよ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ」

 

私は彼に人間について沢山聞いてみた。そうしていれば、彼が私に向ける目がなんなのか知れると思ったから。

 

「お前は、なんで俺を生かしてるんだ?」

 

「あなたの私を見る目が気に入らないから」

 

ウィリアムは私に自分を生かしている理由をよく聞く。理由は簡単。彼の私を見ている目が気に入らないから。だから、彼を生かして仲間の首を斬らせる。そうすれば、彼の見る目も他の人間と一緒になると思うから。

 

「…………そうか」

 

彼の私を見る目は、相変わらず気に入らなかった。

 

 

「……………はぁ、はぁ」

 

「お〜。人間、今日も派手にやったな〜!」

 

今日もウィリアムに捕まえた兵士の一人の首を落とさせた。それを見て、部下の一人がそれを囃し立てる。兵士は、剣を振り下ろすウィリアムに対して恨み言の一つも言うこと無く死んだ。

 

「…………ッ!」

 

「“止まりなさい“」

 

ウィリアムが私に襲い掛かる。彼は今なお私を殺そうとしている。そうできるように少し支配の力も少し弱くしている。しかし、私が一言命令するだけで彼は止まる。彼の“魂“は既に抵抗する気力を無くしていた。こうなるのに一人に対してのあまりにも時間が長すぎる。あまり効率的とは言えない。普段使いはできなさそうだ。

彼を処分しようと、リュグナーが動こうとするのを私が手で制す。

 

「なぁ、アウラ」

 

「なにかしら、ウィリアム」

 

ウィリアムは剣を私に振り上げたまま、私に聞く。

 

「俺と話してて、なにかわかったか?」

 

ウィリアムの私を見る目は、今までとは少し違った。しばらくの沈黙の後で、私は答える。

 

「なにも」

 

彼の私を見る目はいつも通りの気に入らない目だった。

 

「…………そうか」

 

「ッ!“止まりなさい“!!」

 

その時、彼は自分の持つ剣を自身の首へと当てる。私は咄嗟に命令して止める。

 

「“剣を降ろしなさい“」

 

「アウラ。人の、"意志の力"を舐めるなよ。いつかお前の首に、それは届く」

 

「もう一度言うわ。“剣を降ろし―――“」

 

「断る」

 

命令の完全拒絶。

なにが起こったのか、わからなかった。

 

「先に行ってる」

 

彼の私を見る目は、最期まで変わらなかった。

 

「お前は―――」

 

 

 

 

 

 

 

「お前の負けだ。アウラ」

 

私の開いた領域が崩れていく。

膝をついている私にフリーレンは杖を突き出す。

 

「どうして?二回も“賭場“をしたのに、なんであなたは、そんな余裕で。1000年以上生きてたって」

 

二回も“賭場“をした。私の集めた兵士達の魔力を全員使ったのだ。その総数は500年以上生きた私の魔力にも匹敵するほどだ。一回開けば、充分に私が支配できるはずだった。なのにフリーレンは、二回開いても私には支配できる量じゃなかった。

 

もう一度、“服従させる魔法“を使おうとした時、私はフリーレンに撃ち抜かれた。

 

「やっぱりお前、“わからない“んだな」

 

フリーレンの私を見る目は、何処までも冷たい。私の知っている人間が私を見る目だ。

 

「確かに兵士達の魔力の“総量“は大したものだよ。でも、兵士達が“賭けている魔力“は“全部“じゃないんだよ」

 

彼女の言っている意味が理解できなかった。

 

「天秤にどれだけ魔力を乗せられるのか、お前でも外からはわからない。でも、天秤に魔力が乗せられれば、天秤にどれだけの魔力が乗せられているのかわかる。でも、お前は見ようとしなかった。だから、天秤に乗せられている魔力の量がわからなかった」

 

どうやらフリーレンは私の説明しなかった私の領域の弱点を理解していたようだ。

 

「100年」

 

「え?」

 

「お前の天秤に乗せられていた魔力量だ。お前は、“意志の力“を舐めすぎた」

 

「…………ハハッ」

 

思わず、笑いが溢れた。たった100年。減らない訳だ。天秤に乗せた兵士達がまさか、魔力を出し渋っていたなど、思いもよらなかった。

 

「ねぇ、最期に聞かせて。フリーレン」

 

「………なに?」

 

ここでいくら抵抗しようと、意味なんてない。死ぬ時間が数秒延びるだけだ。私の魔法では、もうどうしようもない。だから、最期にまでわからなかった事を彼女に聞くことにした。同じ人間なら、わかるかも知れないから。

 

私は、今でも横に控えているウィリアムを見る。

 

「この子、死ぬ時私に“生きろ“って言ったの。なんでかしら」

 

一瞬、ウィリアムを見たフリーレンは長い沈黙の後、答えた。

 

「自分で聞きなよ」

 

瞬間、私の体が消し飛ぶ。

 

 

死体の筈のウィリアムが私を見る目は、どこか温かかった。

 

 




次回からオフロスキー出演します。

話の半分以上主人公が出てないじゃない。
草生えることじゃないので、草消しました。すいません。
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