ザビ家の次男   作:ヴィヴィオ

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初戦闘

 

 

 

 

 マリナ達と共にサダラーンでジュピトリスの進路へ先回りを行い、サダラーンからザクで接近する。その為、カタパルトに移動する。

 

『ハッチオープン、発進どうぞ』

「サスロ・ザビ、出るっ!」

 

 カタパルトにより打ち出され、身体に心地よいGが掛かってくる。この体は子供の頃、いや、赤ん坊の時から筋トレとか行なっていたので大きく頑丈に作られている。パイロットスーツと合わせて生半可なGでは心地よく感じる。

 

『マリナ・ジャガーノート、コマンダー及びシスターズ1番から6番、ニュータイプ専用高機動試験用ザク、出る』

 

 マリナを先頭に7機のザクが出てくる。どれも整列してマリナの後ろに並び、指示を待っている。

 

『マスター、準備完了』

「目標はアステロイドベルトの先だ。ここを抜けるから、マリナ達は出来る限り付いてこい。サダラーンは離れてからミノフスキー粒子を散布し、迂回して来い」

『了解。これより追従する』

『了解。ご武運を』

 

 その言葉を聞いた後、少し進んだ先にあるアステロイドベルトに向かってアクセルを踏み込んでスラスター全開で突入する。小惑星群が視界一面に広がってくる。小惑星の大きさや配置を感覚で理解して航路を設定し、精密操作で駆け抜けていく。マリナ達に見せるようにしてだ。

 

『地形データ、軌道データ解析完了。速度50%で突入開始』

 

 マリナは1機ずつ順番に付いてこさせる。モビルスーツも、自身も高価な精密機械だという事を理解しているのか、速度を半分にした状態で俺の動きを模倣してたどたどしく機体を動かしている。

 

『誤差、修正完了。行動開始……クリア。次のステップに入る。75%……クリア。100%……誤差、確認。修正……完了』

 

 何度か小惑星にぶつかりそうになったり、蹴る事で免れたりしながらアステロイドベルトを進んでいくマリナ達はその軌道をどんどん精錬させていく。人間と生体コンピュータの融合に加えて外部の量子コンピューターが接続されている為、人間の学習能力を強化するプログラムを独自に組み上げたのかも知れない。成長する生体兵器……多大な犠牲を払って作ったが、本当に危険だな。

 

『マスター、これよりバイオセンサーの起動テストに入る。許可を』

「ああ、やってくれ」

『了解。バイオセンサー、起動。エラー、原因究明。究明終了。出力不足と断定。並列接続による増幅、開始。バイオセンサー、起動完了。運動性、出力、増大を確認。反応速度、向上確認。これよりテストを開始する』

 

 ニュータイプ高機動試験用ザクが縦横無尽にアステロイドベルト内を駆け抜けていく。だいたい30%くらいの性能アップか。

 

「そろそろ目標地点だ。速度を落とせ」

『了解』

 

 アステロイドベルトの出口が見えてきた。出口付近の小惑星に隠れながらミノフスキー粒子散布装置をセットして起動する。マリナ達にも手伝わせて通信をできなくしてやる。

 

『ミノフスキー粒子の散布、確認。量子コンピューター、接続切断』

「問題は?」

『戦闘行動、支障なし』

 

 量子コンピューターはあくまでアクシズに設置されている。ミノフスキー粒子が散布されれば長距離接続はできない。まあ、それまでに更新したプログラムや学習した技術はそのままだし、戻れば蓄積された経験を元に更新されるだろう。

 

「敵が来るまで待つとするか」

『了解。マスター、お腹すいた』

「そういえばご飯食べてないな。コクピットに非常用の携帯食があるからそれでも食べるといい」

『わかった』

 

 ポリポリと携帯食を齧りながら待つこと数十分。目的の巨大な戦艦を旗艦とした船団が近づいてきた。木星船団。地球連邦が独自に採掘を開始したジオンに利権を侵害されて焦り、作成した巨大戦艦とその護衛としてのマゼラン級戦艦。

 

『マスター、アレを落として問題無い?』

「ああ、大丈夫だ。だが、拿捕するつもりだ。地球連邦に“宇宙海賊”として膨大な身代金を要求する。もちろん、払えない額をな。そして、期日後処刑する。当然、ジオンは知らぬ存ぜぬで、むしろこちらも被害を被っていると廃艦を使ったデモンストレーションを流す。同時に人命優先で身代金を払って解放してもらったとな」

『私達、宇宙海賊?』

「今はな」

 

 これは簡単に言ってしまえば地球連邦は辺境まで行って仕事をしているのに助けてくれず、ジオンは助けてくれると思わせる事が出来る。政府に不信が募り、資源採取の為に志願する人が減るだろう。無理矢理に行かせても士気は下がるし、時間稼ぎにもなるからありがたい。

 

「誰一人として逃がすなよ。ザクを見られる訳にはいかないからな」

『了解。航行不能にする』

「デカ物以外は破壊してもいい。行くぞ!!」

『戦闘、開始』

 

 ザクのスラスター全開でジュピトリスと護衛船団に近づいて行く。武装はザクバズーカとザクマシンガン。

 相手側もこちらに気付いたようだが、遅い。メガ粒子砲やミサイルを撃ってくるが、それらを上下左右、立体機動で回避して接近する。セイバーフィッシュが出てくる時には既にある程度接近できている。セイバーフィッシュの機銃が発射されるが、機体を横にずらしてザクマシンガンを数発だけお見舞いする。これだけで簡単に穴が空いて爆殺する。

 

『4番から6番、戦闘機、撃破。1番から3番、マゼラン』

 

 マリナ達も統制の取れた行動でセイバーフィッシュをどんどん撃墜していく。その間に別の者達がマゼランのブリッジにザクバズーカを叩き込んで無力化する。

 護衛艦のマゼランはマリナに任せてジュピトリスへと向かう。放たれるミサイルランチャーはミノフスキー粒子で誘導が聞かずにほぼ外れる。命中しそうなのだけバルカンで打ち落とし、機銃とメガ粒子砲は回避する。艦橋に到着し、優先で通信を送る。

 

「降伏しろ」

『断る!!』

「では死ね」

 

 ブリッジにバズーカを構える。どうせ処刑するのだから、多少生き残りが入ればそれでいい。

 

『わ、わかった、降伏する!』

「では、停戦命令を出せ」

『あ、ああ……』

 

 直ぐに信号弾が上げられて戦闘が中断された。マリナ達は警戒したままで、こちらは指示を出して移動させる。

 

「ん? 一部のマゼランが離れていくようだが、どういう事だ?」

『わ、わからん!? 通信にも答えん!』

「そうか、マリナ。破壊しろ」

『まっ――』

『了解』

 

 命令を忠実に実行したマリナによって逃亡を測ったマゼランは撃沈される。シャア達、原作組のアクシズは見逃したが、俺はそんな甘い事をするつもりはない。

 

「こちらの指示に従わなければこうなる。理解したか?」

『わ、わかった……』

「では、来てもらおうか」

 

 近付いて来るサダラーンの姿を確認して、廃艦から使える物をを回収させる。もちろん、ミノフスキー粒子は散布したままでだ。作業の途中、追加でサダラーンの部隊がやって来た。

 

『提督、陸戦隊と運ぶ人員を用意しました』

「ご苦労。後は任せる」

『はっ!』

 

 ハインツ達が乗ってきたサダラーンがジュピトリスに接舷されて陸戦隊が乗り込んで行く。

 

「マリナ、何体か送り込んで性能を証明しておけ」

『了解』

 

 マリナを除いて6体がジュピトリスなどに乗り込んでいく。それを確認した後、俺達はサダラーンに帰投する。持って帰ったジュピトリスは即座に解析班に回して捕虜は調べるが、残念ながらシロッコは居なかった。それに殆どが精神に異常をきたしたりしていたので、実験体になってもらった。その他軍人は予定通りの行動に出る。民間人や子供などはアクシズで生活してもらう。逃げ出す事はさせないし、彼らは地球連邦が見捨てた事実を知ればこちらに入る可能性があるからだ。それと後ほど洗浄も行わなければならない。残留思念を排除してハマーン達を迎え入れねば。

 

 数ヶ月後、ジュピトリスのノウハウをドロスなどに転用し、生産ラインを増加させた。そして、ギニアス達がブラウ・ブロなどノイエ・ジールに必要な技術を完成させてノイエ・ジールの作成に入った。俺はシスターズの量産と小惑星を量子コンピューター化する作業に追われていた。ニュータイプ研究は他人に任せて、シスターズを数人を貸出してビットとファンネルの開発を行わせて置いた。

 

「それで、これはなんだ?」

 

 目の前に浮かぶ5メートル前後の巨大なプロトフィンファンネルにごつい機械が取り付けられたような物がふよふよと小型スラスターで浮いている。

 

「バスタービット。ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉を搭載。収束されたメガ粒子砲を放つ、サイコミュ兵器」

「メガ粒子砲を撃つのか!?」

「そう。ビームよりメガ粒子砲でいいじゃん。との事。火力、大きい」

「ビーム兵器はまだ掛かりそうか。しかし、これは……高価な代物だな」

「モビルスーツ、一機の動力炉、丸々使用」

「というか、Ⅰフィールドジェネレーターにすれば……いや、小型化は無理か」

「そちらも開発中。ジェミニは?」

「もうすぐ完成だな。ジュピトリスが採取していた資源は有効だった」

 

 生産ラインを量子コンピューターの部品作成に出来る限りあてたし、次々にロールアウトしてきたシスターズ達も量子コンピューターの組み立てに回した。お陰でジェミニと呼ばれる並列式超巨大量子コンピューターは完成した。問題は使いこなす為にはインターフェースとしてシスターズが大量に必要で、アクシズから動かせない事だ。むろん、膨大なエネルギーを消費するが、こちらはもう一つの小惑星をエネルギープラントとする事で解決している。この二つを合わせてジェミニと呼ぶ事が決定している。まあ、あれだ。簡単に言ってしまえば作ったのはいいが、演算領域や演算能力は莫大でもちまちま手動で入力してられないし、生体コンピュータ搭載のシスターズなら思考入力が可能だ。つまり、端末として各部署や開発部門にシスターズは求められる。特に開発部門は10体単位で寄越せと言ってきている。戦闘に出すなんてとんでもないという意見まで出てきている。実際に運用仕出したらこの意見は確実に出るだろうな。

 

 

 

 

 


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