シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

2 / 76
書きためていた一万字を間違えて消しちゃったのでまた書き直す羽目になりました(半ギレ
でも書き直すと少し体裁を整えることができるので悪いことばかりではないですけどね。まあショックで頭抱えましたが。


第2話

 ゴリアテがたくさんいる。他にもドローンやロボットもたくさんいる。一目見て絶望的な状況であるのは分かった。こっちには私たち含めてエンジニア部が三人、計七人。果たしてこの人数であの大量の敵を相手することができるだろうか。いや、難しいだろう。先生がいるとはいえ数が多すぎる。では逃げるか? 無理だ。ロボットはともかくドローンやゴリアテには追い付かれてしまう。ならば戦うしかない。銃を構え覚悟を決めていると、後ろで何か音が聞こえた。振り返るとあのロボットが立ち上がっている。もしかして戦ってくれるのだろうか。

 

「おお、もしかして戦ってくれる感じ!?」

「このロボットならあの数でもなんとかなる!」

 

 私は期待のまなざしを向けた。そしてその期待にこたえるかのようにロボットが右手のライフルの引き金を引いた……が、何も出ない。

 

「あれ?」

「何も出てない……ね」

 

 次にロボットは左手の銃の引き金を引いた。こっちも何も出てこない。肩に着いたミサイルポッドも蓋が開閉するだけで何も出てこない。

 

「弾切れ……なのかな」

「弾切れ……でしょうね」

「だめだー! 終わったー!」

 

 無理だ、もう無理だ。このロボットが戦えないんじゃ私たちには何の勝ち筋もない。私は銃から手を離し膝から崩れ落ちた。

 

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん! 早く銃持って! ロボットが戦えないんなら私たちが戦うしかないんだから!」

「むりだよー! あんな数相手にどうしろっていうのさ!」

「先生がいるから大丈夫だよ。それにエンジニア部の人もいるから」

「そうです! それに、もしもの時は私がこの光の剣で全てを薙ぎ払ってあげます!」

「僕も頑張るからモモイも頑張って、ね?」

「後方支援は任せて」

「本業はもの作りだが戦いも十分こなせるぞ」

「はい! 私も前線は張れませんが弾幕は張れます!」

 

 存外、絶望しているのは私だけだった。他のみんなは意気揚々と戦う意識を見せている。エンジニア部も手伝ってくれるみたいだし

私だけが一人諦めるわけにはいかない。

 

「う、うん。分かった。私も頑張る!」

 

 私はもう一度銃を握り直した。そして再び敵を待ち構えていると、突然後ろのロボットが横の瓦礫をどかし始めた。突拍子もない行動に私たちは呆然とロボットの行動を見つめていた。

 

 ロボットがどかした瓦礫の山からは何やら白い建造物が出てきた。ロボットはそれが何なのか分かっているようで手際よく操作していた。

 

 どうやらその建造物は倉庫だったようだ。表面部分が開き、中にはロボットが左手に持っていた銃と同じものが見えた。ロボットは両手に持っていた武器を外した。衝撃で大きな音とともに砂塵が舞った。ロボットは掛けられていた銃を手に取ると敵に振り向き飛んでいった。とんでもないスピードに大量の塵が舞った。私は思わず目を覆い、外した時には既に戦闘を始めていた。

 

「まさかあの巨体をあんなスピードで動かせるだなんて」

「どんな技術を使ってるのでしょうか?」

「推進力も速度に耐える機体の技術力も私達より上みたいだね」

 

 どんな状況でも姿勢を崩さないエンジニア部には一種の尊敬すら覚えてしまう。

 

 戦闘はロボットの独壇場だった。一発撃てばゴリアテは吹き飛び、手で払うだけでドローンは落ちる。さらには撃つばかりではなく殴る蹴るも行っている。それだけでもゴリアテはただの瓦礫と化してしまうのだ。

 

 数分間の蹂躙が終わったのちに、ロボットは私たちの前に戻って来た。頭を私たちの方に向けてじっと立っている。

 

「とりあえず帰ろうか。いつまた襲ってくるとも限らないし」

 

 ウタハ先輩がそう言ったので私たちは学園に戻ることにした。

 

 

 

 彼らが歩き出したので私もついて行くことにした。人とACの一歩は全然違う。彼らの数十歩はACの一歩にしかならない。だから彼らが数十歩歩くたびに私が一歩踏み出すというのを繰り返した。すると突然彼らは立ち止まり顔を見合わせて何か話し出した。ごく短い話の後、先生が私にハンドサインを出した。あれは、近づけと言うことか。彼の要望通り膝をついて体を近づけた。

 

「僕たちの後ろをついてくるより君に乗って帰ったほうが早いと思うんだ。だから良ければ乗せてくれるとありがたいんだけど」

 

 そういうことか。なら別に構わない。人数は……八人か。まあ両手に何とか乗るだろう。私はサムズアップで了承の意を示した。右手のショットガンをパージし、両手を彼らの前に差し出す。彼らは一人ずつ両手に乗って来た。最後の一人が乗り終わるのを確認し、立ち上がった。

 

「学園までの道は覚えてる?」と先生は聞いた。

 

 学園というのはさっき私が目覚めた建物群のことだろうか。目覚めるや否や連れてこられたのと物珍しさで全く道を覚えていなかった。私が首を振ると彼は「そっか」と考え込んでしまった。するとウタハが立ち上がりポケットから何かを出した。

 

「ここに向かってくれ」

 

 そう言って差し出してきたので、私はコックピットを開きウタハからそれを受け取った。それには地図が表示されており、目的地らしき場所と自分の場所にマーカーが設置されていた。これはどうやらデバイスの類らしかった。デバイスを機体と接続するとこちらの方でも目的地にマーカーが設置されたので。私はウタハにデバイスを返しコックピットを閉めた。

 

 目的地まで一キロも無いのか。ならアサルトブーストですぐ着く。そう思ってアサルトブーストを使おうとした時、昔ウォルターに言われたことを思い出した。あれはたしか人を運ぶ任務を請け負った時のことだ。一部輸送機に乗れなかった人員をACで運ぶことになった際、ウォルターからこういわれた。

 

『621。人を持った状態でアサルトブーストを使ってはダメだ。人の体がもたない。クイックブーストも駄目だ。ブースト移動に留めておけ』

 

 危ない。危うく彼らをおぞましい姿に変えるところだった。大人しくブースト移動で戻るとしよう。

 

 ブースターでも歩くよりかは随分と早いものだ。それに彼らも楽しそうにしている。にしてもここのマップは見やすくていい。ルビコンはやたら立体的で上にも下にも建造物が立ち並び、中にはほぼほぼ浮いているようなものもあった。うっかり穴に落ちてエネルギーが足りなくなった時は本当に死ぬかと思った。全く嫌なことを思い出してしまう。

 

 ふと、一度ここの全体像をみたいと思い、近くの一番高い建物に飛び移った。この辺りは全て廃墟みたいだ。高いビル群も目立つ。ただ少し向こう、目的地の方面は壁を挟んで都市が生きている。一方で反対を見れば視界一杯に廃墟が広がっていて不思議な光景だった。そういえばなんの気無しに飛んでしまったがうっかり落としてしまってないだろうか。恐る恐る確認すると幸い八人ちゃんと手のひらの上に乗っていた。彼らも私と同じように周辺を観察しているようだ。

 

「すっごーい。こんなところから廃墟見るの初めて!」

「みんなそうでしょ。ここ立ち入り禁止なんだから」

「あ、あれアリスを見つけた建物じゃない!?」

「多分そうかも」

「はい! アリスはあそこでモモイたちと出会いました!」

「先生大丈夫ですか!?」

「う、うん。大丈夫。ちょっと高いところが苦手なだけだから……うん」

「あまり下見ちゃだめだよ」

「ああ、下を見ると余計怖くなるからな」

 

 目的地も確認したからそろそろ移動しようか。このままビルを渡り歩いたほうがいいかな。

 

 ビルを飛び降り、ブースターで浮きながら移動した。左右に移動すると落としそうなのでなるべくまっすぐ動くようにした。そうやってビルを渡り歩いてあっという間に境界線までやって来た。あとは学園まで戻るだけだ。

 

 

 マーカー地点に降り立つとたちまち人が足元に集まって来た。

 

「あっちだ。あっちに行ってくれ」

 

 ウタハが指さしたところには石レンガと芝生の地面と違ってコンクリートの地面が見えた。人が集まっているせいで歩けないので飛んでいった。そこにはバンカーのようなものが三つ並んでいた。ウタハはその内真ん中のバンカーに入るように言った。

 

「この奥に行けば私たちの部室だ。入ったら適当なところで待っててくれ。下ろす準備をするから」

 

 立ったままだと入れそうになかったので一度ウタハたちを下ろしてから四つん這いになって中に入っていった。

 

 バンカーのさらに奥にまで入ると広々とした空間に出た。機体が立てるぐらいの高さがある。遅れて入って来たウタハたちが直ちに準備をし始めた。多分これで一度落ち着けるだろう。

 

『強化人間C4-621。通常モードに移行』

 

 息を一つ吐き、操縦桿から手を離す。足を折り曲げて腕で抱え込んだ。頭を太ももに押し付けると視界が真っ暗になった。以前はこういう時に話しかけてくれる声があった。だが今はその声はない。私がエアと決別してしまったせいだ。エアと戦う日が来るなんて思ってもみなかった。できれば来ないでほしかった。いつのまにエアはACの動かし方を知ったんだろう。あの動きは素人どころの動きじゃなかった。

 

 ラスティとも戦った。なんであの時ラスティが私を倒しに来たのか、結局分からなかった。ザイレムの突入を止めたかったんだろうけどなんで止めたかったのか分からない。エアと同じようにコーラルとの共存を目指していたのかな。

 

 カーラはどうなったんだろう。ザイレムを手動で操作するって言ってそのまま。

 

 死んだ。みんな死んだ。ヴェスパーもレッドガンもエアもウォルターもみんなみんなみんな死んだ。

 

『コーラルが絡むと死人が増える』

 

 ウォルターが言ったその言葉は正にその通りだった。増えるどころか皆死んでしまった。その中で私だけ生き残ってしまった。私だけ。

 

 何かを叩く音がした。顔を上げるとヒビキがコックピットの辺りをノックしていた。

 

「準備が出来たから開けてくれると嬉しい」

 

 私はすぐにコックピットを開けた。ヒビキは「ありがとう」といって手を差し出した。私がその手を握ると数秒の間互いに沈黙が走った。

 

「そういえば歩けないんだったね」

 

 そう言ってヒビキはさらに体を乗り出し、私の腰に手を当て引っ張り出した。ヒビキが乗っていたリフトには車いすが一台置かれていた。私はその車いすに座らされた。すると私の頭にヘルメットのようなものがかぶせられた。

 

「ちょっと動かないでね」

 

 ヒビキの言葉通り私は頭を動かさず、遠くに見える壁を見つめていた。後ろで何か操作する音が聞こえる。ヘルメットはすぐに外された。振り返るとヒビキが手持ちのデバイスと車いすにつけられたコンソールを交互に弄っていた。そして折りたためられていたらしいモニターを側面部から引っ張り出してきた。モニターは向かい合わせになっており、片方が私を向いていた。この車いすはやけに多機能だ。

 

「じゃあここに手を置いてね」

 

 ヒビキの指さすところにはひじ掛けがあったが同時にスクリーンが設置されており手のマークが描かれていた。指示通りそこに手を置いたが何か変わったことはなかった。

 

「これで考えていることがモニターに表示されるよ」

『つまりこれで会話できるってことか。本当かな』

「うん、ちゃんとできてるよ」

 

 モニターにはさっき私が思ったことが一言一句記されていた。私は目を見開いて驚いた。

 

『本当にできるなんて』

「もし機能を切りたかったら手を離すか、ここをタップしてね」

 

 スクリーンには端っこの部分にONと書かれたところがある。試しにそこをタップしてみるとOFFと書き換わった。するとひざ元にキーボードが出てきた。機能を使わないときはこれで打ち込めということか。もう一度ONにするとキーボードは引っ込んでいった。

 

「左手の方は車いすの操縦用ね。こっちも同じ感じで思った方向に動かせるよ」

『へぇ、え!?』

 

 無意識に試そうと前に進めと思った瞬間車いすはグン、と動いた。思っていたより速い。リフトは狭く足場が短かった。止め方が分からずパニックになり目の前の柵に迫った時車いすは急停止した。私は一度前につんのめった。全身に冷や汗をかいていた。

 

「ご、ごめん。言うのが早かったね。一応センサーがついてるから道が途切れてたり障害物があったら自動的に止まるようにはしてるけど今はOFFにしておくね。また後で試してみて」

「おーい、大丈夫か? 降ろすぞー」

 

 下からウタハの間延びした声が聞こえた。彼女がリフトを操縦していたらしく操縦卓の前に立っているのが見えた。

 

「うん、大丈夫」

 

 ヒビキが合図を出すとウタハが操縦卓のレバーを下げた。連動してリフトもゆっくりと降りて行った。私はリフトが下りる中この部屋を見回してみたがよくわからないものがたくさん並んでいた。大きなものから小さなものまで、明らかに銃器的なものもあった。割合的には銃器が多いように見える。ここは武器工廠か何かだろうか。

 

 リフトが降りきるとたたまれていた階段が展開され、さらにその上から待機していたコトリによってスロープが置かれた。私はヒビキによってゆっくりとリフトから降ろされた。

 

「どうですか、うまくいきました?」

「うん。ちゃんと表示されてる」

「やった! これでやっと会話ができますね」

「それじゃ改めて。君の名前を教えてくれるか?」

『私はC4-621。強化人間だよ、旧型の』

「し、しーよん?」

「そ、それがあなたの名前?」

『うん。まあ私はいろんな呼ばれ方したけどね。レイヴン、G13、戦友、野良犬、ビジター……ああ、あとはご友人。好きな呼び方をしていいよ』

「どうやら君はいろいろと複雑な名前をしているようだね。とりあえず私は君をレイヴンと呼ぶことにするよ」

「私もそうする」

「よろしくお願いしますね。レイヴンさん!」

『うん。よろしく』

「ようやく互いに自己紹介も終わったところだし、質問、よろしいだろうか?」

『いいよ』

 

 私がそういうと三人は矢継ぎ早に質問してきた。その全てがACに関わることで多分データだとかそういう質問をしてきたのだと思う。私はその質問があまり理解できなくて、何とか理解できた質問でも彼女たちが求めるような、いわゆる数値的な回答ができなくて使い心地を伝える、みたいな回答しかできなかった。それでも彼女たちは満足してくれた。私の話す言葉に興奮していた。

 

『カーラならもっと詳しく答えられたかな』

 

 私がふと思ったことがモニターに表示されてしまった。その言葉に三人は一度質問の手を止めた。

 

「そのカーラさんという人はレイヴンさんのお友達ですか?」

 

 あまり他の人を話すつもりはなかったが聞かれてしまった以上答えるしかなかった。私は『そうだよ』と答えた。『カーラはいいドーザーで、私のサポートもしてくれた。兵器づくりをしてたから多分カーラのほうが詳しく教えられたかも』

 

「へえ、じゃあ私もそのカーラさんという方に会ってみたいです!」

『カーラは死んだよ。多分ね』

 

 私がそう答えると再び水を打ったように静まり返った。三人は固まって何も言葉を発さず、ただ空調の音が僅かに響いていた。




最初強化人間って皆621みたいにラップ巻きされてるのかと思ってましたが逆に621がレアパターンだったんですよね。イグアスが強化人間って知った時、強化人間って喋れるのか……って思ってました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。