シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございました。

いつまでたっても戦闘描写が難しくて慣れません。


第24話

「レイヴン。私たちは争いの火種でしかあり得ないのでしょうか」

 

 そうだね。でも私は違うじゃないか。火種は君だけだ、エア。コーラルがあるから皆争うんだろう? 私はその火種を炎にまで成長させる薪の一つでしかない。ウォルターは言ってた。コーラルが絡むと死人が増えるって。皆がコーラルを求めなければ争いは起きないんじゃないかな。実際ウォルターもそう思ったはず。多分、きっと、絶対。だからコーラルを焼き尽くしたんだ、私は。それがウォルターの願いだったから。犬は飼い主の幸せを一番に考えるべきだ。

 

 

 私は先生の元に向かいながら武装を確認していた。両手に持っているのは大型のハンドガン。肩にはそれぞれレーザードローンとパルスブレードが載っている。ドローンは使ったことはないが説明を聞いたことがある。多分使い方は分かってるはずだ。

 

 まだ少し体調が悪いのかもしれない。起きたばかりで動き回ってしまったから体が追いついていない。でも、それでも私は向かわねばならない。先生を守るために、敵を殲滅するために。

 

 

 古聖堂に向かう途中で戦闘している人たちを見かけた。

 

『メインシステム。戦闘モードを起動』

 

 私は迷わず下へ降りた。地面へ降りると慣性で道を滑り、丁度戦闘をしている両者を分断するようになった。広域レーダーが真っ赤に染まるほどの敵がいた。メインカメラでも敵が道を埋めるほどにいるのが分かった。

 

 ドローンを展開しながら敵であるユスティナ聖徒会に発砲を開始した。彼女たちはたった一発の弾丸で消えてしまう。倒れずに消えるのはなぜだろう? まあいいや。消えるんだったら倒せるんだ。

 

 撃って撃って撃って……リロード中はパルスブレードで薙ぎ払う。レーダーを真っ赤に染めた聖徒会たちは気づけばほとんどいなくなっている。あれだけいたのになぜこんなに早く殲滅されているのだ? 少し物足りないかな。次を探そう。

 

 

 近くにもう一つ戦闘が発生しているところがあった。私はそこに降り立ち、また発砲を開始した。撃った数だけ敵は消える。歩きながら足元の敵を撃つだけで数が減っていく。一歩踏み出す時、敵は十人減る。もう一歩踏み出すと更に十人減る。三歩四歩歩いた時、既にそこには誰もいない。周りを見ても敵はいない。

 

 カメラが屋上を向いた。そうだね、屋上に行けばよく見える。私は周辺で一番高い建物の屋上に上がった。視界が広くなり多くの状況を確認することが見えた。ところどころ戦闘が起きているのが見えるがいずれも小規模だったり、すでに終わりかけているところばかりだった。物足りない、まだ物足りないのだ。久々に闘争できるチャンスを得たのにこれでは少し燃焼不足ではないか? もっと死線をまたぐようなそんなところは無いだろうか。

 

 ふと右腕が動き、持っていたハンドガンで一つの建物を指した。それはひどく崩れて、周辺よりも古い様式をした建物、古聖堂だった。そうか、あそこには敵の本陣がいるのだったな。ユスティナ聖徒会もあそこから湧きだした。ならばあそこには敵が跋扈しているに違いない。私はすぐに古聖堂を目指した。

 

 古聖堂に近づくと、上空からでも多数の敵がいるのが見えた。それはレーダー上でも真っ赤に染まっているのが分かる。先生やヒフミたちの姿も見えた。しかしなんだか知らない人もいるような気がする。まあいいか。先生は無事そうで安心した。これなら気兼ねなく暴れられるだろう。あの時みたいな、ベイラムを殲滅した時のようなギリギリの戦いを私はもう一度したい。

 

 私が下りようとした時下で銃撃戦が始まったのが見えた。獲物を減らされては面白くない。私もドローンを展開しながら地上へ降りた。地面を滑りながら減速する間に両腕一マガジン分撃った。そしてリロード中にブレードに持ち替え、地面を薙ぎ払う。敵は銃を落としすっと昇りながら消えていく。まるで火が消えるようだ。

 

 私は敵の中心に降り立った。三百六十度全方位に敵がいる。両腕をT字に伸ばし、回りながら撃った。ドローンも展開しなおした。撃って撃ってリロード、切り払って、撃って撃ってリロード。それの繰り返し。首を右へ左へ動かし、敵を見つけて撃って消えてはまた敵を見つけて……首を動かすたびに敵の数は減っていく。敵の攻撃は一切効かない。豆鉄砲でACに立ち向かえると思うな。虚しいね、全力で反撃しても私にはダメージがない。でもこっちは引き金を引けばそれだけで勝ってしまう。戦闘と言うには虚しくないだろうか。

 

 vanitas vanitatum。思わず思い出してしまった。こういうことではないだろうに。

 

「全ては消えゆく余燼に過ぎないのだ」

 

 これは誰の言葉だ? 聞いたことがない。私が知っている言葉ではない。それじゃあこれはあなたが知っている言葉なのか? 機体は何も答えてくれない。今聞いても機体には答える手段がない。彼女にまた会えたならその時に聞けば答えてくれるだろう。

 

 虚しくやりがいがない、作業にも近い戦闘が行われていた。しかし、瓦礫の陰から一風変わったものが現れた。それは一見人の様であるが、人と言うには大きく、また醜い姿をしていた。ロックオンが働いた。つまりあれは敵という事か? そうか、敵なのか。ああ……お前はきっとそこらの有象無象とは違うだろう。少しは私を楽しませてくれるかな?

 

 その人ならざる何かがこれまた異様な手から青白い炎のようなものを浮かび上がらせると、私に向けて投げてきた。警告音は鳴らなかった。弾速も遅い。見てから十分に回避できる。まさかこの程度か? 今度は逆の手から複数撃ってきた。速度は変わらないので飛んで避ければいい。これだけか。そんな大きな図体をして醜い恰好までしておいてその程度か。残念だ。

 

 アサルトブーストで接近して、一発蹴った。相手は大きくのけ反った。私は両腕のハンドガンを撃った。一発ずつ打つと相手は一歩後退した。私は一歩踏み出してまた撃った。相手が後退して、私が撃って、後退して、撃って、下がって、撃って、下がった、撃った。

 

 七発目を撃った私はすぐにブレードに持ち替えて、袈裟切りにした。相手は一度空を仰ぐと俯いてそのまま消えた。何もしてこなかった。何もさせなかった。お前は何もできなかったな。もう周りにはユスティナ聖徒会すらいない。全てドローンが始末してしまった。

 

 振り返ると、皆が私を見ていた。サオリたちや、先生、ヒフミたち、知らない生徒も全員が呆然と私を見ている。しかしサオリだけはすぐに我に返り、後ろの仲間に何かを言うと古聖堂へ向かった。逃さない。咄嗟に撃ったが撃つのが早すぎて照準が定まっていなかった。もう一発撃とうとしたが何故かリロード状態に入っている。さっき一度撃ち尽くしたはずだがどうやら一発だけ残していたことに気づかなかったらしい。それを理解するまでにサオリたちは入ってしまった。アズサがそれを追い、先生までも彼女の後ろについて行ってしまった。

 

 私はヒフミたちの側に寄った。中に私がいるのにヒフミたちは私を見て怯えた表情をしている。知らない生徒たちに至っては銃を向けられている。私は片膝をつくとコックピットを開けた。

 

「レイヴンさん!」

「ご無事だったのですか」

「良かった! 無事だったのね!」

 

 ヒフミたちは私の姿を確認してようやく笑顔になってくれた。私の近くにまでやってきて無事を喜んでくれている。私はヒフミたちにほほ笑んでからその後ろに立っている五人を見た。ヒフミはその視線に気づいて彼女たちを紹介しようとしてくれた。

 

「あ、えっとこの方たちは依然知り合った方で——」

『私も先生のところに行く。話はまた後で』

 

 私はそれだけ言ってコックピットを閉めた。

 

 古聖堂の入口があった場所の側で瓦礫に埋もれたACが見えた。私が元々乗っていた機体だ。掘り出してあげたいが今は先生を追うことが第一だ。古聖堂の入口は完全に崩れ去っており内装が丸見えになっていた。おかげで中に入り込めたが先生の姿が見えなかった。内装をひっくり返してまで探したが見つからない。

 

 古聖堂の最奥に当たる場所も壁や屋根が著しく破壊されていた。そこには目立つように一つの階段があった。ここは地上階だ。ならばこの階段は地下に続いている。しかし当然のことだがこの階段は人間用でACは通ることが出来ない。先生の姿は見えない。だから多分この階段を通って地下に行ってしまった。私はこれ以上先生に近づけない。

 

 私は肩を落としながらヒフミたちの元へ戻った。ヒフミたちは当然ながら、息巻いて向かった私がトボトボと戻って来たので首をかしげていた。さっきと同じようにしてコックピットを開けた。

 

「ど、どうしたんですか? 先生のところに行ったんじゃ?」

『先生が多分地下に行ってて、私じゃ地下に降りれない』

「地下……ああ、トリニティのカタコンベですね。まあ人の往来しか想定していないですからACが通れるような入口は無いでしょうね」

「え、か、カタコンベ? カタコンベって何?」

「地下墓地のことですよ。トリニティの地下には先が見えないほど長い地下墓地があるんです」

「地下に? 何で先生がそんなところに?」

「それは……分かりませんね」

「おっ、戻ってきたんだ。さっきのロボット」

 

 ヒフミの後ろから声がかかった。さっきヒフミが紹介しようとしていた生徒たちだ。彼女たちの制服はミレニアムの制服に似ていた。ただミレニアムで彼女たちの姿を見たことはない。

 

「あ、そうだ。さっきは急いでいたみたいですけど、もしよかったら皆さんを紹介してもいいですか?」

『いいよ』

 

 さっきは食い気味に拒否したのにヒフミはそんなことは全く気にせずに言ってくれた。流石にこれを拒否するほど心は腐ってないので、私はすぐに快諾した。

 

「えっとこの人たちはアビドス高等学校の人たちで——」

 

 ヒフミは一人一人丁寧に説明してくれた。彼女たちの名前と学園……彼女たちの場合は学校だった。学校の事情まで説明してくれた。どうやら相当なお金が必要らしい。どことなく親近感があった。アビドスはトリニティから随分遠いらしい。なんでそんなところの学校の生徒とトリニティのヒフミが知り合っているのだろう。

 

『ヒフミはアビドスとどうやって知り合ったの?』

「え、あ、えーっと。それは……ですね。なんと言いますか……あはは」

「ヒフミちゃんとはねー、ブラックマーケットで知り合ったんだー」

「ほ、ホシノさん!」

「あれ、言っちゃダメだった?」

「ブラックマーケットって立ち入り禁止の所じゃない。そんなところに行ってたの?」

「あらあら、覆面水着団のことと言い、ヒフミちゃんも意外とやることやってるんですね」

「ん、ファウストとは一緒に銀行強盗をした仲」

「ふ、ファウストは恥ずかしいのでやめてください!」

「突っ込むところそこなんだ」

「それで、君は一体誰なのかな?」

 

 ホシノは私を見た。そういえばまだ自己紹介をしていなかった。私はスマホに自己紹介文を打ち込んでホシノに渡した。

 

『私は独立傭兵レイヴン。今はシャーレに所属している。諸事情で喋ることができないのは容赦してほしい。見ての通りヒフミとは仲良くしているからそんなに警戒しなくていいよ』

 

 自己紹介を読んだホシノは一瞬目を見開いてスマホから目線を外すと罰の悪そうな顔をして私を見た。

 

「うへぇ。おじさんそんなに分かりやすい顔してたかな。ごめんね、おじさんの癖なんだ」

 

 ホシノは自分のことをおじさんと言うがそもそも彼女は女性であるし、まだ学生だし、おじさんと言うにはふさわしくないと思った。しかしそれを聞くにはホシノからスマホを返してもらってもう一度打ち込んでホシノに見せる必要がある。ホシノからスマホを返してもらったがその間に聞く気が失せた。

 

「それじゃあさ、これは警戒とかそういうんじゃなくて単純に好奇心で聞くんだけどさ、そのロボットって何?」

『AC』

「それって何の略称?」

『アーマード・コア』

 

 私は少し考えてから答えた。

 

「聞いたことないなあ。ノノミちゃんは聞いたことある?」

「いえ、私も聞いたことないですね」

「レイヴンさんはキヴォトスの外から来たんです」

「キヴォトスの外から? じゃあ先生と一緒なんだねー。通りでヘイローが無いんだ。そのACと一緒に来たの?」

『私が乗ってた機体はあそこに埋まってる』

 

 私は古聖堂の入口辺り、瓦礫が山のように積み重なっているところを指した。

 

「じゃあそのACは?」

 

 私はどう答えようか迷った。夢で迎えに行くと言われた、どこかからか飛んできた、どちらにしても現実味のない話だ。とりあえず現実で起こったことを話した。

 

『どっかから飛んできたから乗って来た』

「どっかからって……どこ?」

 

 知るわけがない。だからぼかしたのに。ただ、多分ミレニアムの廃墟だ。私が廃墟で目覚めたからとか、夢で見たからだとか、とにかくミレニアムの廃墟から飛んできたんだと思う。

 

「まあいいや。うん、でもおじさんちょっとかわいいと思うよ。肩の部分とかマンボウみたいで」

「え、かわいい? これが?」

「マンボウに見えない? ほら、あの部分が目で、あそこが口で」

「言われてみれば確かに、見える気がしないでもないような?」

 

 可愛い? ACを可愛いという人は初めて見た。可愛いというのはつまり私をマスコットだと思ってるという事か? 私はマスコットじゃない。ウォルターがそう言ってた。それはそれとしてマンボウとは何だろう。聞いたことが無かったのでスマホで検索してみるとどうやら大きく平たい魚の様だ。画像を見て見ると確かにマンボウに見えなくもないだろうか。

 

「あのっ」とヒフミが声を挙げた。「埋まってるレイヴンさんのACはどうするんですか?」

『破壊された機体は基本的にその場に放置だよ』

「でもそれじゃ可哀そうじゃないですか? ずっと一緒にいたのにこんな場所に放っておくなんて」

「それにここに放置すると復旧の邪魔になるかもしれません」

 

 ヒフミとハナコの言うことに一理あった。確かに私でもあの機体に何の情も無いわけでは無い。少しずつ改造して今では原型をとどめてないが、元は今乗っているような機体だった。ずっと一緒にいたから少しは情もある。それに、ルビコンでは破壊された機体はドーザーなんかが勝手にばらして売り払ったり、自身のパーツにしたりなんかで時間が経てば自然に消滅していたがここじゃ誰も持っていかない。エンジニア部あたりなら喜んでもらってくれそうだから掘り出したら丸々あげようか。その方が私もまだ気が晴れる。

 

 私はヒフミの提案に了承し、一同は機体が埋まっている瓦礫の山へと歩を進めた。




既に分かってるかもしれませんけど一応今のレイヴンのアセンを紹介しますね。

頭:HC-2000 FINDER EYE
コア:CC-2000 ORBITER
腕:AC-2000 TOOL ARM
足:2C-2000 CRAWLER


右腕:HG-004 DUCKETT
左腕:HG-004 DUCKETT
右肩:VP-60LT
左肩:HI-32:BU-TT/A

ブースター:AB-J-137 KIKAKU
FCS:IA-CO1F:OCELLUS
ジェネレーター:IB-C03G:NGI 000

エキスパンション:アサルトアーマー

私は今これで七週目を攻略してる途中です。
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