シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございます。今さら四話とか五話の誤字報告とか来ると長い間ずっと誤字をさらしてたのか……と肝が冷えますね。


第27話

 公園内に侵入するとすぐに中央付近についた。テントやら木箱やら中継で見たのと同じものが置いてある。そしてあの三人もいる。

 

「な、なんだこいつ!?」

「うわっ、すっごいおっきなロボット!」

「くっ、早く対処を!」

 

 やはり最後の一人が見当たらない。そこでスキャンを行うことにした。この機体ではスキャン範囲は随分と狭いが、この公園全体をスキャンするには十分だろう。スキャンを行うとコックピット内からは黄色い円が広がっていくのが見えた。そして近くにいる三人と、少し遠くの茂みに潜んでいる四人目を発見した。

 

『いた。前の茂みの中だよ』

「オッケー。じゃあ私はそっちに行こう。あとは頼んだよ」

 

 フブキは真っ先に降りると、依然混乱している三人を横目に茂みに消えて行った。私は先生とキリノを降ろしながら周りにたかるドローンを手で払った。叩かれたドローン群は火花を散らしながら全て落ちた。

 

 キリノは降りると少し離れた場所にいた一人を確保しに行った。残りの二人のうち片方が反撃がわりに銃を乱射してきた。しかしそんなものは効かない。警告射撃として彼女のすぐ近くにハンドガンを一発撃った。人のサイズもある弾丸は地面に着弾すると大きく地面を抉ると跳弾してどこかに飛んで行った。一瞬は射撃を止めたがすぐに再開した。先生に当たらないよう右腕の影に隠した。

 

「モエ、支援お願い!」

「支援って言われてももう弾残ってないけど」

「は、弾薬なら後ろに大量にあるだろうが」

「さっき言ったんじゃん。ド派手に全部使って……後先考えずに大量の火薬を爆発させるのは興奮するよね」

「バカ! 本当に全部使うやつがいるか!? こんな状況で支援も無しとか一体どうすれば」

「あのー。お二人さん?」と先生が声をかけた。

 

 口論していた二人はこちらを向くと顔を引きつらせていた。そこには静かにじっとハンドガンを構えているACの姿があったからだ。銃口はまっすぐ彼女たちの方へ向かれていた。

 

『今度は当てる』

「だって」

 

 

 少ししてからキリノとフブキからも生徒を確保したという連絡が来た。そしてそれぞれその生徒を引連れて私と先生の元にやってきた。先生はカンナに制圧完了の報告をした。

 

 数分後にはカンナが何人か部下を引き連れて公園に入って来た。その眼には明らかな驚愕が見えた。

 

「まさか本当にやってしまうとは……流石は先生とレイヴンさんと言ったところですか。ヴァルキューレ警察学校を代表して感謝します。」

「いいよいいよ。この子達はどうするの?」

「一先ずヴァルキューレに送って取り調べですね」

『それじゃあ持ってきて丁度良かったね』

 

 私は肩に乗せていた輸送用ユニットを地面に置いた。

 

「い、いえ。流石にそこまでしていただくわけには……我々の面目も立たなくなってしまいますので」

「うん、そうだね。制圧の件に関しても僕たちが出しゃばった側だから後はカンナに任せよう」

 

 先生がそう言うので渋々ユニットを背負いなおした。新しい装備が試せると思ったのに残念だ。

 

「ふぅ……これはもう二十日ぐらい特別休暇がもらえちゃうかもね」

「警備局への転科もありえます!」

「お前らなあ……そういうのは私じゃなくてもっと上の人が決めることだ。とにかくご苦労だった。報酬については来月の賞罰の発表を待つように」

「なんだ来月か。がっかりだよ」

「でも来月何てすぐです! 警備局への転科も夢じゃないですね」

「私はそれ断るけどね」

 

 RABBIT小隊の四人は先生やカンナたちを冷ややかな目で見ていた。

 

「私たちあんな頭悪そうな人たちに負けたの?」

「お前も頭悪い行動してただろうが。弾薬全部使うとか」

「ロマンは大切なんだよ。感動したでしょ?」

「絶望したわ!」

「あぁ……もうおわりだ。SRTもこれで全滅なんだ」

「初めまして。君たちがSRTの生徒かな?」

 

 先生が彼女たちの一人に声をかけた。途端に彼女は嫌悪感を前面に押し出してきた。

 

「んだよ。お前と話すことなんかない!」

「何の用? 謝罪でも欲しいの? 優越感に浸りに来た?」

「あなたが先生ですか?」

「うん」

「多くの生徒の悩みを解決し、生徒から信頼されている超法規的捜査権をもったシャーレの先生……私たちはそういう大人が嫌いです」

「地獄に落ちろ」

「二度と会わないだろうね」

 

 言いすぎだ。いくら何でも。先生は笑っている。だが私は許せない。ご主人をバカにする者どもを看過できない。私はハンドガンの銃口を向けようとした。なんなら即撃ったって良かった。

 

「レイヴン。大丈夫、そんなことしなくていい」

 

 先生に止められてしまったので渋々銃口を下げた。

 

「はっ、従順なこった。まるで犬だな」

『私は犬だからね。先生の猟犬だよ』

 

 先生が私のメッセージを伝えることはなかった。

 

 四人はヴァルキューレの生徒に連行されていった。一人を除いて全員が先生をにらみつけてから行った。一方で私は見向きもされなかったが、一人だけ私のことをじっと見つめていた。スクリーン越しに目が合った。彼女は連行されながらもずっとちらちら見続けていた。

 

「うーん。元気だなあ」

 

 先生は去り行く彼女たちの姿を見届けながらそんなことを呟いた。

 

「気にする必要はありません。負かされてイライラしているだけでしょう」

 

 カンナが先生を気遣うような声をかけた。すると先生は「あの子達どうなるの?」と尋ねた。

 

「だから取り調べを受けると」

「違う違う。そのあとだよ」

「あー……処罰の方は通常ならヴァルキューレが決めるのですが、今回は連邦生徒会も関わりましたので恐らく防衛室長が決めることになるでしょう。ご希望なら取り調べの様子を見ることもできますが?」

「うん。お願いできるかな」

 

 私はこれ以上奴らに関わりたくなかったのだが先生がそう言うなら私もついて行くしかないだろう。結局私たちもヴァルキューレ警察学校へ向かうこととなった。

 

 

 先生は取り調べの様子を見学するだけのはずが、なぜか取り調べを手伝う事態になっていた。私は取調室の外で先生を待つことにした。部屋の外で先生を待っているとカンナがやって来た。片手に紙コップを持っている。

 

「飲みますか?」

 

 私は頷いて紙コップを受け取った。中身はココアだった。一口飲んでいるとカンナも近くのベンチに座り持っていたマグカップに口をつけた。

 

「改めて今回はありがとうございました」

『私は特に何もしてないよ。銃口を向けただけ』

「ですがおかげでこうやって占拠犯を捉えることができました。先生とレイヴンさんのおかげです」

 

 カンナは正面を向きながら話しているが、ちらちらと私を見ていた。

 

『気になる?』

「あ、気分を悪くしたようならすみません」

『気にしてないよ。もう慣れたし、私のこの姿がみんなにとって衝撃的だっていうのも最近自覚した』

「そうですか。まあ、気にならないと言ったら嘘になりますね」

『最初見た時すごい驚いてたよね』

「それはまあ……あんな巨大なロボットから出てきたのがレイヴンさんみたいな少女だったら誰でも驚くと思いますよ。おまけにそんな格好ですし」

『うん。何度も経験したよ。最初は慣れなかったけどいい加減慣れたね』

「全身包帯だけなのはよっぽどの理由があるんですよね。流石にそこまでは聞きませんが」

『別にいいよ。ただ今までの仕事の傷だよ』

「一体どんな仕事をしてきたんですか。私でもそこまで傷つくことはありませんよ」

『キヴォトスの人は丈夫だからね。私もヘイローがあったらここまで傷つくことはなかっただろうね』

 

 カンナが一つため息をついた。

 

『疲れてる?』

「え、あ、いや。すみません。少し仕事が立て込んでるもので」

『大変そうだね。先生もよく仕事が溜まって悲鳴を上げてるよ』

「先生がやっていることに比べれば私の仕事なんてそんなに大変ではないでしょうね」

『さあね。私には何も分からないよ。ごめんね、気の利いたこと言えなくて』

「いえ。気にかけていただいただけでも十分嬉しいです」

 

 カンナと談笑をしていると取調室から先生が出てきた。ドアが閉まるまでの間に一瞬だけ中にいる彼女の姿が見えた。カンナは先生が出てくるとすぐに立った。

 

「お疲れ様です。手伝っていただいてありがとうございました」

「いやいや。全然かまわないよ」

「こちらが他の三人の記録になります」

「それじゃあこっちはミヤコのを」

 

 カンナはずっと脇に挟んでいたファイルを取り出して先生に渡した。先生も持っていたファイルをカンナに手渡した。互いにしばらく記録を読みあい、先生はなぜか私に渡してきた。自分も読めという事だろうか。別に私はいらないのだが、渡されてしまった以上拒否するわけにもいかないので仕方なく中身を読んだ。とはいっても名前ぐらいしか興味はない。

 

「あの子達はこれからどうなるの?」

「本来であればこちらで処罰を決め、ヴァルキューレへの編入を薦めるのですが、連邦生徒会の要望が強かったので処罰は向こうで決めることになりました。事件の規模も相まって最悪どの学園にも編入できない事態になるやもしれません」

「SRT特殊学園の復活は無理かな?」

「あいつらの提案を飲むと? 私は個人的に飲みたくはないですが、そもそもSRT特殊学園の閉鎖は連邦生徒会が決定したことなので私どもではどうすることもできません」

「僕なら何とか——」

「シャーレでも流石にそれは無理かと」

「じゃあやっぱり連邦生徒会の誰かに聞くしかないか」

 

 三人の取り調べの記録をぺらぺらめくっていると、ふと前方から誰かが近づいていた。白衣みたいな服を着たピンク髪の誰かだ。

 

「その件については私がお話ししましょう」

「ぼ、防衛室長」

「はじめまして、ですね。先生。キヴォトス連邦生徒会所属、防衛室のカヤと申します。行政委員会における安全周りを担当しています」

「は、はじめまして。それで行政委員会っていうのは?」

「あら、リン行政官から話は聞きませんでしたか?」

「いや特に」

「まあ、リン行政官は口数が少ないですからね。ではあいさつ代わりに説明させていただきますね」

 

 すぐにカヤは難しそうな話をし始めた。私はそうそうに話半分で聞き始めた。要は連邦生徒会がいくつかの組織に分かれていてカヤが所属する防衛室はその一つだという。

 

 SRT特殊学園は各学園の管轄外で起こった、主にヴァルキューレが管轄するエリアで犯罪を起こした生徒が別の管轄エリアに逃げたとしても連邦生徒会長の命により活動ができる名前の通り特殊な組織だったようだ。なんだかシャーレと似ている。違いはれっきとした武装集団だという事か。

 

 SRT特殊学園は案外功績を挙げていたようで、ワカモという犯罪者を捕らえたらしい。私には聞いたことない人名だ。だが、連邦生徒会長が失踪したせいで彼女たちを指揮する者がいなくなり、結果手に負えなくなって閉鎖を決定したという。その際に暴動も起きたそうだ。それがエデン条約の調停式ぐらいの時期だったというから驚きだ。サンクトゥムタワーの一部が全焼するほどの被害だったのになぜ気づかなかったと言えば、丁度そのころ私たちがずっとトリニティに居たせいだった。

 

「今回RABBIT小隊までもが連邦生徒会に銃口を向けようとしました。こうなってはSRT特殊学園の閉鎖を延期させようとしていたメンバーたちも閉鎖に賛成するでしょう。先生の活躍はよく聞いております。RABBIT小隊は紛れもなくSRT特殊学園の生徒。あの四人の力を無下にしてしまうのは私としても望ましくはありません。どうかあの四人を説得してヴァルキューレへの編入を勧めてはくれませんか」

「別に説得するのは構わないけど、僕は生徒たちが望まない進路を強制することはできないよ」

「なるほど。それはそれは……確かに彼女たちも夢を見てSRT特殊学園に入学したのでしょうからね。彼女たちの夢を無下にするわけにもいきませんし、連邦生徒会長が戻ってきた時に何て言えばいいのか分かりません。本来なら原則にのっとって重い処罰をと言う話があったのですが……まあ原則なんて知ったことではありませんね!」

 

 カヤが急に叫んだので私はひどく驚いた。丁度持っていたココアをこぼしそうになり片手で持っていたファイルからは何枚か紙が落ちてしまった。

 

「ぼ、防衛室長?」

 

 カンナは私が落とした紙を拾いながらそう言った。

 

「流石に今のは忘れてください。先生。私たち行政委員会・防衛室はシャーレに積極的に協力します。ですからどうか彼女たちを助けあげてください。SRT特殊学園を復活させるのは流石に難しいですが」

「ありがとう。でもいろいろと大丈夫? 他の委員会からにらまれるんじゃ」

「安心してください。これでも私、そこそこ信頼があるんですよ? まあ他のメンバーに借りを作ったという事にしましょう。将来のエリートのためならこれぐらい安いものです。処分についてはシャーレにすべて任せます。先生の元に置いておくのもいいでしょう。小回りの利く部隊も必要なのでは?」

 

 カヤはそう言って私を見た。

 

『あいつらと一緒にいるの嫌なんだけど』

 

 私はそう言ってココアを飲み干した。

 

「あら、なにか不和でもあったのですか?」

「ちょっとね。まあそれに彼女たちも多分僕の下に就くのは嫌がるだろうし……おいおい決めるよ。一先ず四人は僕預かるね」

「分かりました。では彼女たちを引き渡す手続きを行いますので少々お待ちくださいね」

 

 

 私たちは引き続き取調室の前で待った。カンナにココアのお代わりを尋ねられたのでほしい、と答えた。途中で先生が手続きのためにカンナと一緒に離れた。私はすぐに終わるからと先に戻っているように言われた。

 

 入り口に止めてあるACに乗ろうとロビーに向かうとRABBIT小隊の四人がいた。私は何か言われるだろうかと思ったが、私を見てくることはあれど何か話しかけることはなかった。そういえばこの姿を四人に見られてないので彼女たちは私がACのパイロットであることを知らないのだった。ゴミ箱に空になった紙コップを捨てると、私は外に出てACの中で先生たちを待った。




私は罵られると普通にしょげるタイプです。
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