シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございます

レイヴンが右肩に背負っている武器なんですけど、私ずっとドローンって書いてましたが最近確認したらあれタレットでした。とはいえもう今更なので今後もドローンって書きます。


第30話

 公園に戻ると四人はすぐにドラム缶に水を注ぎ始めた。私が下りた時にはすでにドラム缶には火がかけられていた。

 

 待つこと数十分、ミヤコがドラム缶の中の湯に手を入れて適温であることを知らせると四人はすぐに服を脱いでドラム缶に入った。

 

「あー……生き返るー。やっぱり疲労回復にはお風呂だな」

「ドラム缶風呂というのも案外悪くないですね。お湯加減もいい感じで」

「これ温度管理難しそう……このままぬるま湯に入ったカエルみたいに私も……」

「そこらへんは心配ご無用。ちゃんとサーモグラフィーで確認してるから。でもちょっとぬるすぎるかな? テルミットの粉でもかけてみる?」

 

 そう言ってモエはどこからかグレネードのようなものを出してきた。サキは慌ててモエを止めた。

 

「バカ! 全部吹き飛ぶだろうが。それにこれぐらいがちょうどいいって。これ以上熱くしたら茹っちまう」

「それにしてもこうやってみんなで入るというのも悪くないですね。いつかSRTに戻ってもいつかまたこうやって……」

「それなら誰かが来ないようにこうやって見張っとかないとね」

 

 先生がそう言った途端にご機嫌な顔をしていた四人の顔は一転して厳しいものになった。

 

「なんで先生はここにいるわけ?」

「誰かが来ないように見張ってるだけだけど?」

「別に隊員同士裸を見せ合うのは今更だし、こんな時間帯に公園に来る奴なんていない」

「もし侵入者が来れば地雷とクレイモアが反応するはずです。先生がここにいる必要はないはずですが?」

「え、あー……流れで?」

「流れで生徒の入浴眺めるとかおかしいだろ! こればっかりは撃たれても文句は言えねえはずだ!」

「うっわー……最低」

「や、やっぱり武装解除の瞬間を狙って!?」

「モエ、ミサイルを」

「わ、わわ! ごめん!」

 

 モエはミサイルとまではいかないものの、手に持っていたグレネードのピンを抜いていた。流石に今回ばかりは擁護できないかった。それよりもグレネードはまずい。私も巻き添えを食らってしまう。

 

 咄嗟のことに車椅子をうまく動かせなかったうえに、石か何かに引っかかって方向転換ができなかった。しかし、先生の姿が見えなくなるとモエはグレネードのピンを差しなおした。

 

「レイヴンも入るか?」とサキが誘ってきた。

「さ、三人はちょっと狭くなる……」

『いいよ。私お風呂入れないから』

「包帯を長時間巻いていると衛生的によくありません。なにかやむを得ない事情が無いのであれば入ったほうがよろしいと思いますよ」

『湯船につかると傷が酷く痛むんだよ。いつも体を拭くだけで済ましてる』

「傷ってその包帯の下の傷? そんなにひどいの?」

『見る?』

「い、いえ。大丈夫です。全身包帯になるほどの傷です。さぞかしひどいんでしょうね」

『治る前に新しい傷が増えてくからね。手術のせいか治りも遅いし』

「手術って一体?」

『脳を焼くんだよ』

「の、脳を……!?」

「シャーレってそんなことするの!? わ、私たちをシャーレに連れて行こうとしてたのってそういう……」

『何言ってんの。前にいたところの話だよ』

「レイヴンはキヴォトス出身じゃないの?」

『違うよ。私は生まれたところは知らないけどルビコンから来たの。ヘイロー無いでしょ』

「あ、本当だ。へえ、キヴォトスの外からって珍しいな」

『そうらしいね』

 

 私がキヴォトスの外から来たという話をすると四人は存外その話に食いついて来た。食いつきすぎてミユがのぼせそうになるまでずっと話していた。先生はのぼせたミユを助けようとして四人の前に姿を現し、また撃たれかけていた。というか何発か撃たれた。幸い命中はしてなかった。

 

 

 数日後のこと、先生は買い物に出かけていた。私は先生が帰ってくるまで一人、留守番をしていた。以前なら買い物にも付き合っていたがACだと商店街に入れないし、かといって車椅子では先生以上に何もできない。それに最近は滅多に先生を襲おうとするチンピラもいなくなった。だから別にいっかとここ数か月ぐらいはついて行ってない。

 

 先生がシャーレを出てからどれくらい経っただろうか。時計を見るとすでに一時間は経っている。結構長く買い物をしているようだ。量が多いのかそれとも遠くまで買い物に行ったのか。そんなことを考えながらゲームをしていると、突然通知が画面の上部を埋めた。サキからだった。先日ドラム缶風呂での一件で少しだけ仲良くなったのでモモトークを交換した。通知には『さっき先生から』とまでしか表示されていなかった。通知をタップしてモモトークを開く。そこでようやくメッセージの全文が読めた。

 

『さっき先生から電話がかかって来たんだけど、なんか捕らえられてるんだって』

『は、何それ。詳しく説明してください。私は今冷静さを欠こうとしています』

『だからなんか変な奴が先生を捕らえて人質にしてるって』

『どこ? 先生何処にいるの』

『知らねえよ』

『分かるでしょ。モエあたりなら何とかなるでしょ』

『面倒』

『しばらく弁当全部買い占めるよ』

『そんな金あるわけねえだろ』

『シャーレに金がないと思う?』

『分かったすぐに調べさせる』

 

 数分後サキから一枚のマップが送られてきた。中央にピンが刺されている。先生はここにいるようだ。

 

 私は急いで外から出るとACに飛び乗りリフトも何も背負わずに飛び出した。サキから送られたマップの写真には端っこに商店街の名前が書かれていた。私はスマホでその商店街を検索し、詳しい位置を取得した。

 

 ピンの場所にはすぐに到着した。商店街の外れにある廃墟だった。ただ、かすかに土煙のようなものが見えた。私がそこへ降りると、収まりかけていた土煙が再び立つがすぐに収まり、その中から先生と変なロボットたち、そしてRABBIT小隊の三人がいた。

 

「こ、今度はなんだ! で、でかいロボット!? まさかシャーレの巨大ロボットか!」

「レイヴン! レイヴンまで来てくれたのか」

『なんでRABBIT小隊までいるの?』

「えっと、それは——」

「おい、で、和牛ステーキ弁当は一体どこにあるんだ」

「隠してるなら早く言った方がいいですよ」

「最高級の和牛なんてSRTにいたころでも食べられなかったです」

『なるほどね』

「ふ、ふふふ。まんまと作戦に引っかかりましたね。その欲望の果てにあるのは破滅のほかにないのです」

「何言ってんのか分からないが、つまり和牛ステーキ弁当は無いってことか?」

「当たり前でしょう。なんでそんなものが廃棄されていると思ったのですか。どうでしょう、これを機にそこのロボットの方も無所有のすばらしさに気づいてはみませんか?」

 

 自分もロボットのくせに何言ってんだと思ったが、彼? 多分彼がそういうと周りには仲間であろう者たちがぞろぞろと集まって来た。

 

「包囲されちゃった」

「うわ、何だこいつら服はボロボロのくせに武器だけ最新鋭じゃねえか」

 

 そうなのだろうか。ここからじゃあよく見えないし、よくわからない。でも今から戦闘がおこるのは理解できた。不意にサキからメッセージが来た。

 

『盾になってくれるか。ミヤコが閃光弾を投げたら外に出る』

『分かった』

 

 私が返信をした数秒後に、彼女たちがいた場所はまばゆい光に包まれた。普通に私も閃光を食らった。とても眩しい。少しずつ視界が戻ってくる。足元で銃弾が飛び交っていた。

 

 私も援護と称してハンドガンとドローンで応戦した。ただ、先生の近くに撃つと先生が巻き添えを食らってしまうのでハンドガンを撃つのは先生から離れた場所にいる敵、例えば二階から狙っているような奴に向けて撃つ。着弾した場所は向こう側まで貫通し、崩れてしまった。二階から落ちるロボットたちがかすかに見えた。

 

 たとえ敵の武器が最新鋭だろうが扱っているのはただの素人だし、私の前では無力だ。着々と数を減らし、リーダーらしきロボットだけが残るのにそれほど時間はかからなかった。

 

「くそ、こんな奴ら相手に勝てるか! 俺は逃げるぞ!」

「あ、おい待て! 俺も逃げる!」

 

 不利を悟ってなのか、ロボットたちは次々と逃げていく。三人は逃げている相手にも容赦なく追撃する。

 

「あ、ちょっと! 逃げないでください!」

「そもそも何もしたくないのに戦闘なんかできるか!」

「こんなことになるんだったら入るんじゃなかった!」

「ああ! 待って!」

 

 リーダー格のロボットは逃げていく彼の仲間とボロボロになった廃墟を見てうなだれた。

 

「ああ、私のアジトが……せっかく集めた高級な調度品が」

「何度も聞くようで悪いけど無所有なんだよね?」

「あなたたちさえ、あなたたちさえいなければ!」

 

 そう言ってロボットは私たちを指さすが私が銃口を向けるとすぐにおびえて物陰に隠れた。

 

「二階の狙撃手は全員制圧した。レイヴンが大方片付けたしもういないはず」

「こっちも制圧完了だ。何人か逃げられたがほとんど無力化した」

「お疲れさまでした。得る物はありませんでしたが怪我がないようで何よりです」

 

 三人が廃墟に入るとすぐにサキが何か見つけた。見たところ缶詰の様だ。

 

「ん? これ缶詰じゃないか? サーモンとベーコンの燻製……オイル漬けのホタテまである。賞味期限は切れてるが、十分食える!」

「こ、こっちには撥水シートもある。これで雨が降った時も何とか出来るかも」

「おい! それに触るな! それは私が後でゆっくり食べようと思ったものだぞ!」

「なんだお前、ずっと無所有無所有って言ってるくせに持ってるものたくさんあるじゃねえか」

「う、うるさいうるさい! お前たちだってそんなに強いなら傭兵でもなんにでもなればいいじゃないか!」

「私たちは傭兵じゃなくてSRTなので」

『私は傭兵だよ』というメッセージは当然ながら誰にも届かなかった。

「そんなの詭弁だ!」

「詭弁なのはどっちだよ」

 

 ミヤコが通信機に手をかけた。相手はどうやらモエの様だ。トラックを手配している。

 

「お、おい。何戦利品みたいな扱い方しているんだ。これは全部私のものだぞ!?」

「一応損失分の埋め合わせが欲しいので、いくつかもらっていきます」

「部下に逃げられたんだからこんな量食べきれねえだろ。どうせ喰いきれなくなるんなら私たちが貰って行った方がいいに決まってる」

「あ、寝袋もある」

「うっくう……こ、この穀潰し! 社会の膿! そんなに物が欲しいなら真っ当に働けばいいだろう!?」

「お前が言うか! 無所有だの求道者だの変な言い訳ばっかしやがって。求道者なら求道者らしくもやし弁当でも食ってろ!」

「求道者だって焼肉弁当が食べたいんだ!」

「お前こそ穀潰しじゃねえか!」

「まあまあ、どうどう。私が不用心に捕まったのも悪いし、シートとか必要なものは私が買ってあげるからこの人からは何も取らないであげて」

「いいんですか? 一応この人は先生を拉致したわけですよ」

「うん。生徒に恐喝とか強奪まがいのことをしてほしくないからね」

 

 先生はそう言うがつい先日窃盗を行ったばかりである。それに先生もしれっと参加していた。先生なら止めるべきだったんじゃなかろうか。それともあれは実は犯罪行為ではなかったのだろうか。ミヤコも確かそんなことを言っていた。廃棄予定の物だったから窃盗には当たらない……のか? 私には分からない。

 

「もう一度言いますが、私たちは先生の助けなどいりません」

「はぁ……もういい。疲れた。食欲も失せた。帰ってもやし弁当でも食べて寝よう」

「あ、わ、私も」

「そうですね。急に脂っぽいものを入れても胃もたれしそうです」

 

 ミヤコは再び通信をかけた。モエに戦利品が何もないことを告げていた。

 

「あー……できればこれほどいてほしいんだけど」

 

 先生がもぞもぞと動いた。三人は顔を見合わせた。ミヤコは見るからに手が離せそうにないし、ミユはミヤコの背中に隠れてしまった。

 

「なんだよ。私がやるのかよ」

 

 サキはぶつぶつと文句を言いながらも先生の縄をほどいた。

 

「ふ、ふふ。その欲望に満ちた目……やはり所有は人の目を見えなくし、心を凶暴にする」

「今のあなたも同じ目をしてると思うけど」

「まさか! そんなことありません! 私はこの眼で全ての価値を見極めることができるんです! その結果多くの同士が……そういえばみんな逃げてしまったんでした……どうですか、先生。この際所確幸に入りませんか? 今ならナンバー二になれますよ」

「い、いや遠慮しておきます」

 

 私は先生を手に乗せるとその場を立ち去った。ミヤコ達ともその場で別れた。

 

 残念ながら先生がさらわれる前に持っていた買い物袋は見つからなかった。仕方がないので買い物をし直す羽目になった。どうせなら私も一緒に行かないかと先生が誘うのでそうすることにした。今回の一件でまたいつ先生に危害が降りかかるのか分からなくなってしまった。さっきの団体はもう解散しそうだが。

 

「そういえばよく僕がいる場所が分かったね」

『サキに教えてもらったんだよ』

「サキに? 僕が言うのもなんだけどよく協力してくれたね」

『弁当買い占めるって言ったらすぐに見つけてくれたよ』

「ああ、なるほど、そういう」

『先生も似たような方法で呼んだんでしょ?』

「ま、まあそうだね」

『RABBIT小隊の扱い方が良く分かったよ』

「悪用しちゃだめだよ。あの子達の生活を利用したような使い方だから」

『先生は本当にやさしいね。見境が無い』

「それが先生だからね」

 

 私はさっきのロボットに対する態度のことも言ったつもりだったが先生にはよく伝わらなかったようだ。その後、先生が商店街で買い物をしている間、私はその近くでずっと先生を待っていた。お礼にといろいろと買ってもらった。

 

 

 数日後のこと、キヴォトスには大雨が降っていた。窓から見える風景もいつもよりずっと狭い。それほどに強い雨が降っていた。私はふと外に置きっぱなしにしているACやリフトのことを思い出した。今日だけはACに乗りたくない。できれば雨がやんでからも数日は外に出たくない。

 

「すごい雨ですね」

 

 アロナの声が聞こえた。今は先生がいるからアロナも声をかけてくるのだ。

 

「それぞれの自治区に被害が出てないといいのですが……それぞれの各委員会に任せれば大丈夫でしょうか」

「そうだね。他の所はここより雨が強くないといいんだけど」

「あ、でも公園にいるSRTの皆さんは……こんな大雨だとテントだけでは」

 

 嫌な予感がした。そしてその予感はすぐに的中することになる。

 

「レイヴン、ちょっと公園の様子を見に行こう」

『え、絶対びしょびしょになるじゃん。 機体とか全部外に置いてるんだけど』

「そうか、そうだね。それにその格好じゃ雨に打たれて風邪ひいちゃうかもしれないし……分かった。ちょっと一人で行ってくる」

『いいよ、いくよ。また先生がさらわれても困るし』

 

 私は渋々先生と一緒に大雨の降る外に出ていった。




こんな時期に雨の描写を書くと余計寒くなってきます。
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