シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございました。

前回のお話ですが、地下一階で待ち伏せをする際にミヤコかサキのどちらかがミユと一緒に銃撃するべきでした。
十字砲火は基本。

今回でカルバノグの兎編第一章は終了です。残りが短かったので今回は普段より短いですがその分昨日からの連投とさせてもらいます。


第35話

「カンナ」

「先生。やはりあなたも」

 

 カンナは先生が出てきたことに全く驚く様子は無かった。私がいるので先生が後ろにいることは想定済みだったのだろう。

 

「自分の信念を貫くことは大変かもしれない。それでも最終的に未来は自分で判断し続けていくものだよ」

「それでも、自分の信念だけを貫いていてはここではやっていけないんです。私のような中途半端な立ち位置ではかえって何もできないのです」

「RABBIT小隊はほぼゼロからのスタートだったよ」

「それがどうかしましたか」

「カンナみたいにほぼすべてを失った状態から再スタートをした。僅かなものでここまでできた。大丈夫、状況は辛いだろうけど、苦しいだろうけど、それでも行先は自分で決められるよ」

「ふーん、結構いいこと言うじゃん。まあそうだな、最後は自分で決めるものだ」

「ずっと不安で怖かったけど」

「自分たちで決めたことだからね」

「公安局長、あなたの言う正義はきっと間違っていないでしょう。私たちが掲げる正義とは違う正義なのでしょう。しかし根幹の部分をずっと誰かのせいにし続けていてはいつか色あせてしまいます。どんな判断をしてきたのか、それが私たちとあなたの違いです」

 

 ミヤコの言葉を聞いたカンナはしばらく傍観していたが次第に目が泳ぎだした。首もいろいろな方向を向き、そして一つのため息をついた。通信機を取り出すと「攻撃は中止。閉じ込められた生徒たちの救援に当たれ」と告げた。

 

「ありがとう、カンナ」

「貸し借りは無しで行きましょう。互いに助けられた。私も少し貫く気力が生まれました。私はこの辺で失礼します。生徒の救出と始末書の準備があるので」

「次はもっといい形で会いましょう」

 

 ミヤコはカンナの去り行く背中に告げた。彼女は背を向けたまま右腕をひらひらと振った。

 

 ミヤコ達がユニットに入ったのを確認すると私は足早にその場を立ち去った。カンナのおかげで追撃してくる者は誰もいなかった。

 

 

 公園に戻るころにはすっかり深夜になっていた。今の時刻は深夜一時を過ぎている。輸送ユニットを下すと中から先生とミヤコが降りてきた。しかし他の三人が降りてこない。

 

『サキ達は?』

「疲れて寝ちゃったみたい」

「今日だけでいろいろありましたからね。あれだけ本格的な作戦を実行するのは初めてでしたから」ミヤコは手にしていた取引記録を先生に渡した。「あとは先生に託します。子供である私たちがやれることはここまでが精いっぱいです。大人の世界は良く分かりませんが、まあ私たちが無理をして分かる必要もないでしょう」

「うん、後は任せて」

 

 その後二人はユニットの中で眠ってしまった三人をテントに運び、私たちはようやく帰路についた。

 

『それどうするの』

「取引記録のこと? そうだね、今のところはどうするか決めてないけどどうにかしないといけないね。一先ず今日はもう帰ったら寝よう。レイヴンもお疲れ様」

 

 

 数日後、私たちはまた子ウサギ公園に来ていた。公園に到着すると見てほしいと言ってミヤコがニュースを見せてくれた。画面にはいつしか見たクロノスのリポーターがヴァルキューレの前にいた。

 

「私は今カイザーグループの癒着が問題になっているヴァルキューレ警察学校の本館の前に来ています! とある匿名の方からの情報によるとヴァルキューレの生徒がカイザーグループから金品を受け取り、その見返りに権力を行使したとか」

「市民の安全を守るはずのヴァルキューレが私企業と結託し、市民を攻撃していたというのはかなり衝撃的な情報です!」

 

 もう一人声が聞こえてきた。画面に今映っている人ではない。カメラの人だろうか。

 

「それに加えて先日とある集団がヴァルキューレに潜入し、施設の一部を破壊したという情報も入っています。また巨大なロボットが目撃されたという情報もありました。果たして真相はいかに!」

「ヴァルキューレの権威を揺るがす事件が立て続けに発生しています」

 

 リポーターが言うロボットとは間違いなく私だろう。まだ数日しか経ってないのにいろいろバレているらしい。

 

「これ私たちだな」

「ロボットって言ってるし、レイヴンに間違いないだろうね」

「も、もう噂になってるんだ」

「大丈夫ですか? 何か苦情とか来てませんでしたか」

「いや、大丈夫、なにも来てないよ」

『バレてまずいことがあれば目撃者を全員消すから問題ないよ』

「駄目だよ!? 絶対にそんなことしちゃ駄目だからね!?」

 

 画面がまたにわかに騒がしくなった。見れば入り口からカンナが出てきている。カメラとリポーターはカンナの姿を見つけると一直線に走っていった。

 

「おい、一体何の騒ぎだ」

「公安局長! 今回の違法リベートの件について一言お願いできますか!」

「んなっ、それは一体どこからの情報だ。そもそもここは敷地内だ。一体誰の許可を得て撮影している」

「おおっと、やはりマスコミと権力は衝突する運命にあるのでしょうか。しかし我々クロノスは決して権力には——」

「ええい! 騒がしい! 許可を得ていないならさっさと出ていけ!」

 

 クロノスの二人はカンナが呼びつけた部下によって敷地外へと押し出されてしまった。中継はやむなくそこで終了した。

 

『大変そうだね。昨日のことも相まって同情しちゃうよ』

「朝からずっとこんな感じで、どこもかしこもヴァルキューレの特集ばかりです」

「もしこれで公安局がここに襲撃してきたらどうしよう」

「そんなの関係ない。私たちはやるべきことをやっただけだ。それにヴァルキューレもクロノスの対応だったりいろいろで私たちに構ってる暇なんてないだろ」

「うーん、でもなんだか引っかかるところがあるんだよね」

「どういうことだ」とサキが聞いた。

「なんというか対応がめちゃくちゃ早い。マスコミの対応はそうだけど連邦生徒会も早々に調査委員会を立てたし、カイザーグループも相当なお金がかかってたはずなのにあっさり再開発中止を宣言したし……いろいろと不自然じゃない? 先生連邦生徒会に脅迫とかした?」

「そんなことしてないよ。でもいろいろと事情があるみたいだね」

「私たちがこれ以上気にする必要はないでしょう。どちらにせよ再開発が中止しましたし、公安局も動きを止めました。放浪者の人たちが追い出されることも無くなりましたし、私たちもまだここにいられます」

「あのー」

 

 不意にここにいるはずのない声が聞こえた。この展開には既視感がある。振り返るとそこにはデカルトが立っていた。公安局の凶弾に倒れたと思っていたが、生きていた様だ。

 

「うわ侵入者だ」

「サキ、手榴弾頂戴。朝の運動がてら一発」

「待て待て! 侵入じゃない! 挨拶に来たんだ!」

「挨拶?」

「ああ、挨拶と称して火薬と鉛弾をプレゼントするあれだね」

「あーもう全く……ふう。君たちには助けられてしまいましたね。危険を顧みず、ヴァルキューレに潜入し彼女たちの陰謀を暴いたと聞いています」

 

「なんでこいつらにもバレてんだ」とサキが言った。モエは「知らない」と言っていた。

 

「私たちのためではなかったのでしょうがおかげで私たちの聖所である子ウサギタウンは守られ、所確幸のメンバーも戻ってきました。これだけの恩を受けて置いて知らぬ存ぜぬは求道者としてできません。そこで君たちに特別な食べ物を持ってきました」

「特別な食べ物!? 何それ!」

「まさかもやし弁当じゃなかろうな」

「まさか、そんなものではありません。私が持ってきたのはこちらです!」

 

 デカルトが自信満々に差し出したのは鶏のからあげ……の残骸だった。彼はこれを鶏の骨を揚げた唐揚げだと言い張るが、どう見ても唐揚げを食い終わった後の残骸にしか見えない。

 

「唐揚げ、ですか?」

「はい。そのまま食べることはできませんが、匂いは十分です。これだけでビール三缶は行けますし、もちろんご飯にも相性抜群です」

「つまりこれは」

「生ゴミか」

「生ゴミとは失礼な! れっきとした食べ物ですよ」

「確かに生ゴミではないね。この地域の規定じゃ鶏の骨は燃えるゴミだ」

「さ、さっきから生ゴミだの燃えるゴミだの……ええい! やはり我々所確幸はあなたたちとは相容れない!」

「それはこっちのセリフだ! モエ、榴弾をありったけもってこい!」

「よっしゃ、派手に爆発させよう! レイヴンも、あいつメンバーがまた集まってるって言ってたし先生がまたいつ攫われるか分からないよ!」

『そらきた。私も参戦しよう』

「ちょ、ちょっとレイヴン悪乗りは良くないよ!?」

 

 その後、どこからか集まって来た所確幸のメンバーと公園を戦場にして軽い戦争が勃発した。戦いはその日に終結し所確幸が再び半壊したことは言うまでも無かった。




次回からエデン条約編第四章に入ります。

おかげさまで総アクセス数が五万を突破いたしました! まさかこれだけ読んでもらえるとは思ってもいませんでした。これからもどうかよろしくお願いします。
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