シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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エデン条約編四章です。ストーリーを確認しましたがえらい長いですね。まだ全部見切れていません。




エデン条約編四章
第36話


 トリニティに来たのは補習授業部以来か。折角卒業したのに、また同じメンバーで補習授業部になっていたものだから先生が気を失ってしまって大変だった。

 

 またナギサに呼ばれたので少し警戒をしていたが、いざナギサの元にやってくるとそこにはティーパーティ以外の二人がいた。片方は以前に見たことが有るだろうか、たしかシスターフッドのサクラコだった。もう一人は知らない。見た目的に救護騎士団だと思う。

 

「本日はお二人ともお越しくださりありがとうございます」

『久しぶりだね』

「レイヴンさんも変わりなく……いえ、ロボットの方は随分と様変わりされたようですが」

『いろいろあったんだよ。話すと長くなる』

「先生、レイヴンさん。先日はお世話になりました」

「初めまして救護騎士団の団長をしているミネと申します」

「うん、よろしく。なんだか不思議な組み合わせだね」

 

 先生の言う通りこの場にはティーパーティがナギサしかいない。それに呼ばれた場所も前回のバルコニーではなく屋内だ。おかげで私はわざわざ降りる羽目になった。こういう話の場にはあまり参加したくなかったが、先生がお礼に何か買ってくれるというのだから仕方なく私も付き合うことにした。

 

「不思議というか、ナギサ様を困らせる組み合わせかもしれませんね」とサクラコがほほ笑みながら言うとミネは不服と言った表情でサクラコに反論した。

「私はホストを困らせるつもりは無いのですが。私は信念と誇りを掲げる騎士団の一員として道を誤った者を正すのみです。たとえそれが正義実現委員会やティーパーティの生徒だったとしても」

 

 ミネの発言は本人がいる前でするにはいささか好戦的なものだった。証拠にナギサは何とも言えない微笑みを浮かべている。

 

「そういう発言がすでにナギサ様を困らせていると思うのですが」

「雑談はこのあたりにして本題に入りましょうか」ナギサは不穏になりかけた空気を戻すように半ば無理やりに話を持っていった。「今回先生をお呼び立てしたのはエデン条約以降の顛末と事件の後始末について話すためだったのですが、シスターフッドと救護騎士団のリーダーが出席すると言って聞かず……こういった形になってしまいました」

『つまり元々は先生と二人で話す予定だったと』

「ええ、もともとエデン条約はトリニティでは私が主導して進めていたものですから」

「ですが、以前宣言した通り私たちシスターフッドも方針を変えました。今後こう言った場にも積極的に参加していきます」

「私も騎士団としての責務を果たすべくこの場に出席しました」

 

 二人の言葉にナギサは困ったような顔を見せる。私でもこの二人の出席が望んだものではないという事が表情から見て取れる。

 

「えっと……つまり二人はティーパーティを牽制しようと?」

「いえ、純粋に興味があるだけです」

「私は政治的なことはあまり詳しくありませんので」

 

 二人はそういうが、そも別々の組織のリーダーが出席している時点でそれ相応の圧が加わっている。ミネは分からないがサクラコはそのことを理解しているはずだ。

 

「エデン条約の騒動は何とか収まりましたが、事後処理と状況分析は未だに終わっておりません。今回の事件は私たちも無関係とはいえません。情報分析はシスターフッドの生徒が担当しています。ですのでこの席は事件についての情報を共有するためのものだと理解してください」

「救護騎士団がこの席にいることについては私から説明します。今ティーパーティには外部の助けが必要です。ティーパーティの生徒が同じティーパーティを攻撃するという事態が起こりました。ましてやそれはホスト同士のいがみ合い。そして一種の内戦状態に陥りました。ミカ様はアリウスに利用されていたとはいえその罪が消えることはありません。現ホストであるナギサ様も超法規的組織シャーレを利用して無辜の生徒を退学にまで追い詰めました」

 

 ミネの言葉にナギサは僅かに顔を反らした。ミカが言うにはもともとナギサは優しい人物であるらしいし、あんな手段は本当にとりたくなかったのだろう。未だに負い目を感じているようだ。

 

 無辜と言う言葉を調べてみたが、何の罪もないという事らしい。何の罪もない、か。うーん、どこぞのファウストさんが引っ掛かるが黙っておこう。

 

「被害に遭った生徒たちに謝罪しおよそ丸く収まったとは聞いていますが、それでもナギサ様の行為が消えたわけではありません。セイア様も学園に復帰できたとは言え、体調は以前よりも悪化しています。この状況を鑑みるに現在のティーパーティは不安定です。そのため外部の助けが必要であると私が判断しました」

「なるほど」

「丁寧な説明ありがとうございます」

 

 ミネは一礼した。しかしそのあとに言葉を繋ぐ者が誰もいない。ナギサもサクラコも何もしゃべろうとしない。次第に気まずくなり、先生が助けを求めるかのように私に視線を送って来た。

 

『私に何かできると思わないでよ。私も何も話すことないんだから』

 

 モニターを動かし、先生だけに見せた。先生はモニターの文字を読むと大人しく正面を向いた。メンバーがメンバーな分、だれもこの沈黙を苦に思っていなさそうだったためこの気まずい空気はどんどん濃くなっていく。

 

 数分に感じる十秒程度の沈黙の後、サクラコがふと話し出した。

 

「ミネ団長はトリニティの中でも最古の歴史を持つ部活のリーダー、そしてヨハネ分派の首長です。本来ならティーパーティのホストになれる権利を有していますす。救護を理由に今まで拒否し続けていましたが」サクラコはミネを顔を見ながら言った。

「過去の話です」

 

 やっと気まずい空気から脱したと思ったサクラコの発言はまるでホストの交代を示すようなものだった。ミネの発言の直後に、さらにナギサ本人がいる前でのその発言は不穏極まりないものである。内容が内容だけに先生もあまり口出しができない。

 

 再び気まずい空気になりかけたが、またナギサが無理やり話題を変えた。

 

「今回の事件を集約すると全てアリウスにつながります。エデン条約会談襲撃の実行犯であり黒幕がアリウス分校でした。マコト議長やミカさんもアリウスの掌で踊らされていただけと言えます。マコト議長はトリニティの分派であるアリウスが攻撃してきたのだからすべての責任はトリニティにあると主張しています。そのため焼け焦げた髪を切るための美容代までこちらに請求しているのですが……これはまあ置いておくとして」

「アリウスが裏で手を引いていたとしたらいくつか疑問が残ります。一つはなぜアリウスはエデン条約を襲撃したのか」

「アリウスはトリニティとゲヘナ両方を憎んでいたと聞きました。両学園を一度に始末できる絶好の機会だったからではないでしょうか」

「さらにエデン条約を利用して契約を行い不可解な戦力を手に入れたと、セイアさんからそう説明されました」

「ユスティナ聖徒会の姿をした幽霊のことです。彼女たちがトリニティとゲヘナに突入していたら間違いなく両学園は崩壊していたでしょう」

『あれ弱かったけど。すぐに倒せたし』

「彼女たちの最もの強みはその数です。倒しても倒しても蘇ってきますから、レイヴンさんのように一度に多くの聖徒会を倒せなければやがて数で上回るでしょう。あれは一体何だったのですか」

「それについてはいくつか仮説が出ていますが、それを裏付ける証拠が挙がっていない状況です」

「ユスティナ聖徒会はシスターフッドの前身、この件に関して何か隠していることはありませんかサクラコさん」

「いいえ、残念ながら」

「シスターフッドは元来謎多き集団。情報の歪曲にもたけています。シスターフッドに不信感を抱いている生徒がいることをご存じですか」

「例えば、あなたのように」

 

 両者は互いを睨み続けた。沈黙が広がり、ナギサは困った顔で私たちを見た。助けを求めているのだろう。だが残念ながら私たちにもどうすることもできないのだ。

 

「私がシスターフッドの秘密を全て知っていると思っているなら大間違いですよ。シスターフッドには私にすら秘匿にしている秘密があります。詳しく申し上げることはできませんが」

「そうですか、失礼しました」

 

 ミネは一応納得したようだが、その声色はまだ納得できていないように感じた。なんとか衝突が避けられたことにナギサは安堵と疲労のため息をついた。今後、この二人と活動を共にしなければならないと考えると、将来が不安になるのも当然だろう。

 

「トリニティの防護機能とレイヴンさんを無力化させたあのミサイルについて分析は進んでいますか?」

「今のところ出所も構造も不明。ただ一つキヴォトスの技術ではないという事が分かっています」

 

 キヴォトス外のミサイルという事か。ならありえないとは思うが、あれがRaDのミサイルだという可能性もあるわけだ。なぜアリウスが持っているのかという疑問はあるが、そも私だって流れ着いた存在。ミサイルの一発や二発流れていてもおかしくないのかもしれない。

 

「それでは、アリウスは最低二つの未知の力を有しているという事になりますね」

「はい。そしてそれは二つ目の疑問につながります。二つ目の疑問……アリウスは何を計画しているのか」

「これについては私たちは何も理解できていません。そも、アリウス自治区が何処にあるのかすら把握できていません」

「今まではそうでした。しかし今回の事件でいくつか糸口が見つかりました。アリウスは古聖堂の地下にあるカタコンベからトリニティに進入したことが分かっています。また巡航ミサイルの発射位置もトリニティ内の遺跡からでした」

「ですが、トリニティ内の地下遺跡はかなりの数がありますし、それらを全て統制するのは不可能です」

「さらにはカタコンベも未だに全容が分かっていません。今の状態から自力でアリウス自治区を見つけるのは不可能に近いでしょう。セイアさん曰くカタコンベは理解できない不思議な力で守られているとのことです」

「また理解できない力ですか」

 

 ミネは飽き飽きしたような口調で言った。確かにこれまでにアリウスが持っている力は両方とも理解できない力だ。それに加えてカタコンベまで理解できない力とやらに守られているなら、もはや八方塞がりだろう。

 

「アズサさんがアリウスの生徒だったころには毎回地図が渡されていたそうです。地図に書かれている経路は毎回変わり、裏切り者である自分にはすでに地図はもらっていないと」

 

 その時、ミネの眉がピクリと動いた。そして静かに聞いた。

 

「その少女を取り調べたのですか?」

「え? いえ、取り調べたとかではなくアズサさんが自分から言ってくれたことなのですが」

「いいえ! そんなはずはありません! きっとティーパーティの権力を乱用してあの少女に無理矢理取り調べをしたのに違いありません!」

 

 ミネは立ち上がりナギサに向かって堂々と言った。なぜか自分の言葉を否定されてしまったナギサはただ困惑することしかできない。先生も「落ち着いて」となだめるが彼女の耳には入っていないようだ。

 

「落ち着いてくださいミネ団長。確かにナギサ様は血も涙もありませんがそのような事実はありません。第一彼女が属している補習授業部は先生が担任をしています。もしそのような事実があれば先生が黙っていません」

 

 サクラコがなぜかナギサに追い打ちをかけながら弁護してくれた。それで納得が言ったのかミネは目を伏せながら「確かにそれもそうですね。失礼しました」と落ち着いて席に座った。追い打ちをかけられながら弁護されるという良く分からないことをされたナギサはもはや困惑の声すらあげられない。

 

 さっきまでまた変なことを持ちかけられるんじゃないか、と警戒していたが、このような仕打ちを見せられると逆にナギサへ同情してしまった。

 

「な、ナギサ? 大丈夫?」先生も心配な様子だ。

「補習授業部の方たちには本来背負うべき以上のものを背負わせてしまいました。私はこのことに関して非常に後悔しています。だからこそもうこのような場には関与させないように努力しています」

「私もハナコさんには役目を渡したいと思っているのですが、彼女との契約はすでに終わっています。私としてもハナコさんにはこれ以上のことをしてほしくはありません。この件を私たちだけで解決することが最低限の礼儀でしょう。ですが先生は最後まで付き添ってくれると信じています。できればレイヴンさんも」

『先生がついて行くところならどこへでも行くよ』と言うとサクラコは優しく微笑んでくれた。先生は「もちろん」と快諾していた。

 

「カタコンベは未だに全容を把握しきれていません。毎回変わってしまう入り口を見つけるのは難問だと思いますが」

「発想を逆転してみましょう。私たちが探すのではなく、知っている人に聞いてみるのです」

「ですがアズサさんはすでに地図は渡されていません」

「ええ、ですがアリウススクワッドのリーダーである錠前サオリ、彼女であればまだ入り口を知っているはずです」

「ですがスクワッドの足取りは今もつかめていません。彼女に聞くことは無理かと」

「ええ、そうでしょう。ですがスクワッド以外にも一人、入り口を知っている方がいますよね」

 

 サクラコがそういうので私は誰だろうと考えた。しかし私には思いつくことができなかった。一方でナギサはすぐに誰のことか分かったようだ。目を丸くしてサクラコを凝視している。サクラコはナギサが理解したうえで、自分の口からその名前を言った。

 

「聖園ミカ……アリウスと長く接していた彼女であればアリウス自治区までの道を知っているのではありませんか?」

 

 ナギサは分かりやすく動揺した。そしてミカを弁護しようとするが、そこには必死さが見て取れた。

 

「で、ですがミカさんはアリウス自治区までの道だけは知らないと仰っていて……」

「彼女の言葉を信じるというのですか」

 

 ナギサはミカと幼馴染であった。その関係から見ればミカのことを信じたいのは当たり前だろう。だが客観的に見れば、ミカはクーデターを実行した張本人であり、長くアリウスと接していた彼女のことをそう易々と信じることはできないのだ。問い詰められたナギサは押し黙ってしまった。




うーん。どろどろしている。ほんまにここ学校か? ほんまに君たち高校生か?
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