実家帰って成人式行って、帰って、友達と会って……てしてたら普通に書く時間無くなりました。
「失礼を承知で申し上げますが、ミカ様は前々から問題行動が多く、ティーパーティのホストであるがゆえに様々な問題行動が見逃されていました。これまでの世論もそれらと関係が無いとは言えません」
「ミカさんが嘘をついたという事ですか……どうして」
「ナギサ様はミカさんとは幼馴染なのですよね。どうですか、ナギサ様から見てミカ様がほかに隠しているところはありますか」
なんだかナギサに対する尋問みたいになっている。私たちが完全に蚊帳の外みたいな扱いを受けているうえにナギサに対して圧をかける行為に先生は一度二人を止めようとした。しかしそれよりも先にナギサが口を開いた。
「いえ、私はミカさんを信じます。確かにミカさんは善良な生徒とは言えませんが、それでも私はミカさんを信じます。それが今回私が学んだ教訓ですから。明日の聴聞会に出席し、ミカさんの弁護をいたします。必要ならば学園全体にミカさんが信じてもらえるよう尽力するつもりです。たとえ、それで私が糾弾されることになったとしても」
「いえ、私が言ったことは仮説ですので、誤解させてしまい申し訳ありません」
「失礼しました。非礼をお許しください」
「はぁ……今日はもういい時間ですし、ここでお開きにいたしましょう」
「ええ、そうですね。私も大聖堂に戻るとします」
「はい、今回はお会いできてよかったです。私も今回のミカ様への非難、大変遺憾に思っております」
「今日はお越しくださりありがとうございました」
二人は立ち上がり、ナギサと先生に一礼をして行った。そしてミネは何故か私の車椅子を手に取り、一緒に立ち去ろうとした。あまりにも自然であったため、私と先生は数秒間自分が連れ去られようとしていることに気づかなかった。
『まてまってっまってえあっま』
驚きと困惑、そしていち早く止まってもらおうととにかく文字を打った。しかしミネはモニターを見ようとせずまっすぐ前を向いて私の車椅子を押している。
「ま、待って待って!? レイヴンをどこに連れて行くの!?」
先生の呼びかけにようやくミネは止まり、先生に振り返った。
「救護室ですが?」
「え、どうして」
「先生はレイヴンさんを見てもなんとも思わないのですか? こんな全身に包帯を巻き、車椅子に乗られて……この姿であんなロボットに乗せているだなんて救護騎士団として見逃せません。今すぐにでも救護いたします。ここではレイヴンさんほどの傷は治せませんが、救護室でしたらきっと最善の治療が行えますので」
『待って大丈夫私大丈夫これ以上治らないから』
私は必死にミネに治療が不要であることを知らせようとした。しかし彼女は先生の方を向くばかりで全くモニターを見てくれない。結局先生やナギサが必死に説得してくれたおかげで私は何とか誘拐されずに済んだ。
「大丈夫、レイヴン?」
『恐怖を覚えたよ』
「すみません」
『ナギサが謝る必要はないよ』
「うん。それにナギサも大丈夫だった?」
「ええ、胃が痛いですが……すみません。情けない姿ばかり見せてしまいましたね」
「明日の聴聞会っていうのは?」
「ああ、先生たちにはまだ耳に入っていませんでしたか。明日の午前にミカさんの聴聞会が開かれる予定です。聴聞会、とは言っても実際は審問に近い、査問会と思ってもらった方がいいでしょう。明日の聴聞会で恐らくミカさんは退学になると思います。エデン条約の事件以来トリニティの情勢は複雑になりました。ミカさんはすでに自身が所属していたパテル分派を追放されており、ティーパーティの資格をはく奪されることも決定されています。真相がどうであれ、ミカさんがアリウスと結託しクーデターを引き起こしたのは事実です。加えてミカさんに対する世論も悪化しています。聴聞会が開かれる前に断罪を求める生徒が増えており、中には私刑と称して檻に石を投げ込む生徒も現れました。掲示板にはミカさんやミカさんの所属していたパテル分派を非難する書き込みが増えています。ミカさんの私物もすべて押収され、服やアクセサリーは焼却される始末」
『うーわ、考えうる最悪の状況じゃん』
「ミカ大丈夫、なはずはないか」
先生もミカがやったことは許される行為ではないと理解している。だから素直にミカに対する仕打ちに怒りを覚えることができない。代わりに過剰すぎる仕打ちに悲しみを覚えていた。
「正義実現委員会が取り締まっていますが、今の空気を払拭することは不可能でしょう。ミカさんは公共の敵になっています。それでも私はミカさんを弁護したいのです。ですが、その……ミカさんが自身を弁護する気が無いようで……このままではミカさんが確実に退学へ追いやられてしまいます。セイアさんでしたら何とか出来たのかもしれませんが、私ではどうにも……それで先生にお願いがあるのですが」
「うん。ミカを明日の聴聞会に出るように説得するよ」
先生の言葉にナギサは顔を明るくさせた。先生だけが頼りだったのだろう。
「ありがとうございます。先生のお言葉ならきっと……まだ何も解決していませんが、少しでもいい方向に向かってくれれば幸いです」
「ナギサは大丈夫?」
「私? ああ……心配はいりません。私はいつも通りですよ」
『無理は良くないよ。日帰り旅行程度なら足になってあげる』
「ありがとうございます。私のことを心配してくれるのは先生とレイヴンさんぐらいですね。それでは、後はお願いします」
ナギサのことが心配であったが、私と先生は一先ずミカの元へ向かうことにした。
外に出るといろいろ置きっぱなしなのが見えた。ミカがいる場所は近場らしいのでユニットは使わずに先生を手に乗せて運んでいくことにした。機体に乗り込み、リフトとユニットを納めようとすると、右腕が右肩に収めているものに引っかかった。先日ウタハたちから預かったこれは随分と大きく、ちょっと邪魔だ。
「ずっと気になってたんだけど、その右肩にあるのって何?」
『これ? これはちょっと前にウタハから渡されたんだよ。武器の試供品とか何とか。アリスが持ってる武器を巨大化させたものみたい』
「使うの?」
『アリスが持ってたものでも随分と極太なレーザーが出てたからね。こいつを撃つ場面は相当限られるはずだよ』
「下手に撃ったらいろいろと吹き飛びそうだ」
『ウタハにもどれだけの力を持ってるかわかんないって言われた』
「よく引き受けたね」
『面白そうだったし』
今回は人が多いのでブースターを使うわけにもいかずに仕方なく歩いて移動していたところ、広場にて何かを騒いでいる群衆を見かけた。
「セイア様を害そうとした裏切り者を引きずり出せ!」
「エデン条約を破綻に導いて未だにティーパーティの地位に就いているのは納得できない!」
「罪人には罰を! 断罪を!」
「この線の先に出ないでください!」
考えなくても分かる。あれがミカに不満をぶつけている者たちだと。正義実現委員会がまだ理性的に動いているから暴動に発展していないものの、この時点で随分と異質な空間と化してる。
『相当ヤバいとは思っていたけど、あれは予想以上だね。弁護は難しそうだよ』
「それでもナギサはミカを信じたいって言ったんだ。僕たちもミカを信じないと」
『そうだね。言い出しっぺは先生だもんね』
ミカが幽閉されている建物に入った。怒号が壁を貫いて聞こえている。正義実現委員会の生徒軽く挨拶をしてから檻に近づいた。ところで建物に入った時からかすかに聞こえてくるこの音楽は一体なんだろう。
「ミカ?」
「しーっ」
先生が名を呼ぶと、ミカは口元に指を当てジェスチャーをした。彼女の前には端末が置かれており、そこからはずっと聞こえていた音楽が流れていた。私たちはしばらくミカと一緒にその音楽を聴いていた。
音楽が鳴りやむとミカは端末の電源を切った。
「お待たせ。礼拝の時間だったの。今日は讃美歌を聞く日。こんな時にまで礼拝をしないといけないとか嫌になっちゃうよね。少しぐらい大目に見てくれたっていいのに」
「でもいい音楽だったよ」
「そう? 聞いてて退屈じゃない? ご慈悲を、とか、憐れみたまえ、とか」
『今の状況を見るとまるで皮肉だね』
「あー、うん。そうだね。確かに考えてみればそうかも。キリエなんて名前も気に入らない。どうして見えない存在にすがらなきゃいけないの?」
見えない存在、か。私が考えるそれは見えはせずとも確かに存在しているものだったし、もっと言えば初めての友達だった。ミカが言う見えない存在とはまた違ったはずのものだ。この場でそれについて言及するのは不適切であろう。そう思った私はキーボードに置いた手を直した。
「でも歌は好きだよ。歌詞は微妙だけどね。そういえば二人に私の歌聞かせたことなかったよね。本来ならタダで聞かせるものじゃないけど、先生達なら特別だよ。こうやって会いに来てくれたしね!」
外の惨状を見るにミカは相当落ち込んでたり沈んでいるものだと思っていたがいざ会ってみると、私の予想とは裏腹に随分と元気そうにしていた。
「塔に幽閉されたお姫様が、白馬に乗った王子様にセレナーデを歌うの。どうどう? 物語のワンシーンみたいじゃない?」
「塔じゃなくて檻だけどね」
『白馬じゃなくてACだね。ACに乗った王子様を考えると少し面白いよ』
「なんでそこで現実に戻すかなー。ロボットに乗った王子様ってミスマッチすぎるよ……それで、今日は一体何の用事で来たの?」
「一通りの事情は聴いたよ。聴聞会を欠席するんだって? ナギサが心配してたよ」
「そう。ナギちゃんは元気、だよね。うん、良かった。多分ナギちゃんの側にシスターフッドと救護騎士団がいたんじゃない?」
先生は何も言わなかった。ミカはそれを肯定と受け取った。
「やっぱり。ティーパーティの立場が危うくなるほど、他の勢力が幅を利かせるようになる。まさかここまで直接的にティーパーティを牽制するとは思わなかったけどね」
ミカはあの二人の出席をティーパーティの牽制だと思っているようだ。本人たちはそうとは言わなかったが、まあ自分からそんなことをしゃべるはずはない。それにしてもミカは自分のことを政治には疎いと言っていたが個人的に見れば十分考えられていると思う。もしかしてトリニティ基準だとミカでも疎い扱いなのだろうか。だとしたら私は世間知らずもいいところだ。
「ナギちゃんのストレスすごかったでしょ」
『そうだね。胃が痛いって言ってた。ミカが聴聞会に出席してくれたらもうちょっと和らぐと思うよ』
「あはは、痛いところ突くね。でも、先生たちも広場にいる集団見たでしょ。今の私の立場は見ての通り。ナギちゃんは私が聴聞会に出席すればすべて丸く収まると思ってるけど、トリニティはそんなに甘くない。あの事件以降ティーパーティの権威は地に落ちた。学園内の立場も、政治的な立場もそう。私があんなことをしちゃったせい。そんな状態で私を庇えば庇うほどナギちゃんの立場は、ティーパーティのナギちゃんの立場はもちろんセイアちゃんの立場だって危うくなっちゃう。これはすべて私が背負うべきことだから」
「退学になるかもしれないんだよ。こんな仕打ちまで受けて」
「でも、それでも私の責任なの」
「ミカはもう十分に償いをしたと思うよ」
「ナギちゃんとの思い出の品は全て燃やされてしまったけど、私はまだ許されない」ミカの顔に陰りが見えた。「セイアちゃんにもまだ恨まれたままで」
「そんなことは無い。セイアは恨んでないよ」
「でも前に会った時に——」
そうしてミカは先日セイアと会った時の話をしてくれた。ミカの話の中で、セイアはミカとの話を体調を理由に断ったらしい。
「でもセイアはミカのこと許すって言ってたよ」
「私はまだセイアちゃんにちゃんとごめんねって言えてないの。セイアちゃんがまた無理をしたら、私は今度こそ自分を許せなくなっちゃう」
「じゃあ僕たちでセイアに会ってみるよ。ミカがちゃんとごめんねを言えるように説得する」
『任せて』
「本当? 分かった、それが運命なら。二度とチャンスなんてないと思っていたけど、これが運命だというなら……私はやっぱり塔に閉じ込められたお姫様だったのかな?」と言った直後にミカの顔は赤面しだし、さっき言ったことを撤回した。「ご、ごめん。何でもない……それじゃあセイアちゃんのことお願い」
私たちは一転してセイアの部屋まで足を運んだ。ミカの所とは違って、部屋も雰囲気も明るく、静かな場所だった。セイアは窓の外をぼんやり見ていたが、先生が扉を開けるとこちらへ体を向けた。
「ああ、先生、とレイヴンか。二人とも無事だったのか。いやこれもまた都合のいい夢かもしれない。幻か虚構か、あるいはいずれも同じことかもしれないが」
『様子のおかしいセイアだね』
「ど、どうしたの?」
出会い頭に良く分からないことを呟くセイアに、先生は心配する声をかけた。
「そうか……今日は君たちがトリニティに来る日だったか。済まない、最近いつにも増して夢と現実の境目が曖昧なんだ。現在、過去、未来……そう言ったものが私の周りに渦を巻いていて、今自分が何処に立っているのかすら不明瞭で、まあつまるところ君たちには関係のない話だからそんなに気にしないでくれ」
「みんな心配してるよ。何かあったの?」
「ふむ……先生の質問に答えるのにはなかなか難しいんだが、強いて言えばそうだね……私は今誰にも告げられない未来を見てしまった。でも先生とレイヴンになら……いやむしろ二人に話しておくべきことかもしれない。今から話すことはこれまで先生たちが経験してきた事件とは全く別物の、異彩を極める話だ。正直自分でも荒唐無稽な話だと思う。だとしてもどうか最後まで聞いて、これを信じてほしい。私は先日予知夢を見たんだ。つまりはいつか起こる未来のこと。そこで私はキヴォトスが終焉を迎える夢を視たんだ」
セイアの話す内容は正に荒唐無稽な話であった。だがしかし、その話は私にとってとても興味深い話であった。巨大な塔の出現と、世界が緋色に染まる現象。まさかではあるが、私はその可能性を否定することができなかった。コーラルによる汚染を。
塔、バスキュラープラント、コーラル集積地……うっ、頭が
アイビスシリーズ、俺はお前を許さない。後アーキバス、あいつらは絶対に許さない。