一話も少し修正しました。最後に戦ったのラスティってなんだよ……(エアちゃん戦ド忘れしてた人
私たちは現在ミレニアム学園の中を疾走している。目的地は一段と高いビル、ミレニアムタワー。その最上階から先生たちが『鏡』を強奪するまでの間、それを防がんとするメイド部を妨害すること。それが私たちの任務。恐らく私達が相手するのはそのうちの一人、カリン。彼女は狙撃が得意で、外から狙撃によって三人を狙う可能性があるそうだ。彼女をどう妨害するのか、その手順は私が行うべき行動も含めて事前に説明されている。
狙撃と聞くとラスティを思い出す。彼と敵対はしたくなかったはずなのだが。一体どこで道を違えたのだろう。私はそう思ったがまたウタハたちに言及されそうだと、慌ててかき消した。今は作戦に集中しておこう。
セミナーまでの道は乱立するビルの間を抜ける必要があって非常に動きづらい。屋上を渡り歩いて移動したかったが、そうはいかなかったのでそのうちブースト移動をやめて歩いて移動することにした。
「け、結構揺れるな」
『ブースト移動するとぶつかりそうだったから歩くしかない。屋上使うなら多少は改善するだろうけど』
「い、いや、屋上を渡り歩くとバレてしまうからこのまま行こう」
チラッと手を見たがウタハとヒビキは手のひらに捕まって必死に揺れから耐えようとしていた。どうにかしてあげたいがどうにもできないので仕方がなく『頑張って耐えてね』というメッセージを送っておいた。
ビルの迷路を通り抜けているとマーカーまでの距離が三百メートルを切った。そろそろつきそうだ。
セミナーにつくとそのすぐ下で機体を止めた。ウタハを一度地面に下ろした。
「今から準備を少しするから先にヒビキを送ってくれないか」
『分かった』
マップのマーカーを更新した。タワーから建物を一つ挟んだビルの屋上だ。直下までやってくると私は浮き上がり屋上でヒビキを下ろした。
「ありがとう」
『後で迎えに来るから』
ビルから降りるとウタハは部室を出たときからずっと一緒にあった椅子のようなものに座ってなにか弄っていた。
『ずっと気になってたんだけどそれ何』
「ん? どれだ?」
『その座ってるやつ』
「これか? これは雷ちゃん。銃が撃てる椅子だよ」
『銃が撃てる椅子』
何か昔に似たようなものを見たことがある気がする。何だったか……カーラのところで見たことがある気がする。
「似ているものがあったのか?」
『なんか見たことがある気がするんだよね』
「そうか」
彼女はあまり気にしていないようだった。そのうちウタハは雷ちゃんから降りた。すると雷ちゃんの上部が開き中から極小さいものが何個も飛び出した。一瞬光に反射したのが見えただけで機体内からは姿が見えない。
『何出したの?』
「ドローンだよ。これで先生たちが来るだろう方向を監視するんだ。メイド部が見つかるまではドローンに任せて私たちは待機しておこう」
私は再びウタハを乗せて建物の影に隠れた。
モモイたちに準備完了の連絡をしてから長い時間が経った。ミレニアムタワーからかすかにサイレンが聞こえてきたことで作戦が始まったのは分かった。
『メイド部は?』
「まだ見つからない。この辺りにいるとは思うんだがな」
ウタハはずっと画面とにらめっこをしている。ドローンの映像を見ているのは分かるが一体何体のドローンを出したのだろう。
「三十体ぐらいだよ。だから一度に全画面には表示できなくてね。ちょっと確認に手間取ってる」
「え、あ、ろ、ロボット!?」
近くで声がした。私は気づかなかったのでウタハに教えてもらったのだが、振り返ると確かにそこには人が居た。
「しまった。生徒会の役員だ。ここで止められると厄介だ。場所を移そう」
『分かった』
私は直ちに移動を開始した。その役員を飛び越えブロックを二つほど通り過ぎ、そのまま適当にジグザグに動いた。これだけで人相手なら巻けるだろう。場は再び静寂となった。ここからは僅かに響いていたサイレンも聞こえない。ウタハはドローンによる索敵を再開したがその画面の映像はやけにかくついていた。
「距離が遠すぎる。済まないが少しだけ近づいてくれ」
『注文が多いね』
「機械は便利だが時たま融通が利かないのさ」
ウタハの注文通りブロック一つ分だけ近づいた。映像は再び滑らかになり、タワーのとある階を移していた。そこには先生たちが廊下を歩いている姿が目に入った。
「どうやら無事に潜入できたよう——!?」
次の瞬間先生たちの横の窓ガラスが派手に割れた。幸い命中はしなかったようだが着弾した壁には穴が開いているのが分かる。狙撃だ。メイド部のカリンがどこかから狙撃を行ったのだ。ウタハは急ぎドローンの映像を回し見た。そしてついに見つけた。タワーより五百メートル離れたビルの屋上。メイドの格好をした人が狙撃体制に入っている。
「いたぞレイヴン! ここから四ブロック先、西側だ!」
ウタハの報告を受け私は急ぎ移動を開始した。移動している最中にヘルメットのHUDに指定の場所が表記されてた。幸いここからは遠くないが歩きでは遅い、ブースターを使用する。上昇しながら目的のビルを見つけ屋上まで一気に上がると映像で見た女性が見えた。ウタハは私が着地する前に雷ちゃんとともに飛び降りた。
その後二人は何か会話していたが、私は一個離れたビルに着地したので聞き取れるのはウタハの声だけだ。雷ちゃんと私の紹介をしてるのが聞こえた。念のためちょっとだけ身振りしてアピールしてみた。
カリンが何かぶつぶつつぶやいていると突然彼女はその狙撃銃を至近距離で雷ちゃんに発砲した。機体内でも聞こえる重厚な発砲音とともに雷ちゃんは体勢を崩した。
「雷ちゃん!」
ウタハの痛烈な悲鳴が聞こえるが、雷ちゃんの表面は大きくへこんでいるものの貫通はせず足をばたつかせてるだけだった。狙撃銃を近距離から食らって貫通しない椅子とはいったい何だろう?
「丈夫なのさ。そういう作りだ。それよりもヒビキに座標を送ってくれ」
『ヒビキ?』
「聞こえてるよ。レイヴンがいる位置は分かってる。撃つのはそこでいい?」
『いや、私の一個正面のビル』
「了解、調整するよ」
『ウタハ、ヒビキのほうは準備よさそうだよ』
「了解だ」ウタハは小声で言って、カリンとの会話をつづけた。「君の言う通りだ、ここには遮るものは何もない。そう、天井すらもね……撃て」
『撃て』
ウタハからの指示をそのままヒビキに伝達した。数秒の静寂の後、風切り音とともにヒビキの曲射砲が着弾した。
「ふふ、もう一度言ってあげようか? 計算通りだ」
しかしカリンは砲弾が降る中でも狙撃を止めようとはしなかった。無理やりにでも一発撃つつもりだ。私は咄嗟に彼女の前に躍り出た。直後放たれた銃弾は私の機体を跳弾し彼方に飛んでいった。
「くっ! 椅子もそうだが一体この巨大なロボットはなんだ!」
「独立傭兵レイヴンさ。一度紹介しただろう?」
そう言ってウタハは取り出したボタンを押した。直後煌々としていたミレニアムタワーの電気が全て落ち、周辺には似つかわしくないほどの闇を振りまいた。
「レイヴン、ここはもう大丈夫だ! あとは先生たちの回収を!」
『了解』
ウタハの元を離れた。私にはもう一つ重要な任務がある。『鏡』を確保した先生たちの回収だ。回収の合図は貸してもらったスマホというものから連絡があるらしい。以前ウォルターが持っていたものに似ている。これがスマホか。扱い方は……多分分かる。どうせ今回は連絡だけだ。
ウタハと別れた直後、轟音とともにウタハとの連絡が途切れた。何度呼びかけても反応がない。まさかやられたのだろうか。キヴォトスの人は銃弾を食らっても痛いで済むとかいうトンでも性能をしているとは聞いたがそれでも心配になる。しかし戻って作戦を中断させるわけにもいかない。私は振り返ることなく回収までの待機地点に向かった。
先生との連絡を待って三十分ぐらいになるだろうか。未だ連絡はない。ウタハとの通信も回復した。どうやらカリンの狙撃弾を食らったようだ。
『大丈夫なの? それ』
「だいぶ痛いよ。それで先生は?」
『まだ、連絡も何も来ていないよ』
「予定じゃそろそろ……何でもないよ。ただの独り言だ」
『ウタハ?』
「カリンに聞かれただけだ。とりあえず後は頼んだぞ」
そこでウタハとの通信は切った。真っ暗なスマホを前に私はじっと眺めていた。さっきまで騒がしかったのに一転して静寂が訪れている。いや、喧騒はごく一部だったか。それでもずっと続いていたかのような、そんな気がする。またこうして一人になるのが久しぶりなせいかもしれない。
ふと停電しているミレニアムタワーに目を向けた際、最上階の窓でこちらを見ている少女に気が付いた。ズームするとやけにガラの悪そうな眼付と服装をしている。だがその下から見えるメイド服から彼女もまたメイド部であることを示唆していた。少女は私をじっと見つめている。私もまた機体越しに少女の姿を見つめていた。なんというか彼女は直感的に強そうだと思った。それがメイドという言葉とはかけ離れた格好をしていたのか、それとも本能とかいう非科学的な根拠によるものなのかは分からなかったが、とにかくカリンとは違う何かを感じた。
少女はしばらくの間私を見つめていたがやがて窓から離れ、その姿は見えなくなった。それからもうしばらくしてにスマホに着信があった。画面には『先生』と出ている。一瞬どうしようか迷ったが露骨なラインをなぞると通話状態に入った。
「もしもし? 鏡を回収したから僕たちも回収してほしいんだけど」
話せないので返事は出来ないが代わりにすぐに行動に起こした。ビルを離れ、先生たちがいるはずの保管所までやって来た。そこには先生たち五人の姿があった。窓を開け、モモイが手を振った。私はその窓の前に手を広げた。先生たちは窓を乗り越え掌に乗った。全員が乗ったことを確認すると私は部屋から離れてまた待機していたビルに着地した。思ったより高低差があったのでENがぎりぎりだった。
ウタハと通信を再開する。
『先生たちを回収した。今から回収に行くね』
「ああ、なるべく早く頼む。眩しくてかなわない」
どういう状況なのか分からなかったが急いでほしいと言っていたのでなるべく急ぐ努力はした。ウタハの元に戻るとその言葉の意味が分かった。一定間隔で閃光弾が撃ち込まれているらしかった。それでカリンの狙撃を妨害していたらしい。私自身も光に目を細めながら近くに着地した。
カリンはすぐに気づき私に撃とうとしたがそもそも私は狙撃銃程度では傷つかないし、モモイたちが応戦してくれたのでカリンの攻撃は叶わなかった。その内に先生がウタハと雷ちゃんを担ぎこみ、足早に退散した。
『ウタハを回収した。今からヒビキも回収するよ』
「了解。予定通りだね」
ここまでくるともはや何の妨害もない。私は無事ヒビキを回収し部室へと戻った。
部室へ戻ったところで一同は解散となった。先生たちは『鏡』をヴェリタスのところまで持っていくらしい。コトリが戻っていないが、多分生徒会に捕まったということだそうだ。
「明日私たちも呼び出されるだろうな。しかし、一仕事終えたな。私たちも帰るとしようか」
『帰るってどこに?』
車椅子に乗りなおし、リフトで降りた私は支度をしているウタハに聞いた。
「自室にだが……そうかレイヴンはキヴォトス外の人間だったな。部室で寝させるわけにもいかないし」
「あ、それなら私の部屋でいいかな。レイヴンの服をどうにかしてあげたいし」
「そうか? ならレイヴンのことはヒビキに任せるよ。レイヴンもそれでいいかい?」
『いいよ』
私は彼女たちと一緒に部室を出た。空はもうずいぶんと暗くなっている。作戦自体数時
間行っていたのですっかり夜中だった。当然そんな遅い時間にまで学園に残っている人はおらず、学園内は静寂に包まれていた。外に出ると建物からあふれる光でまだ明るかった。
「今日はいろいろと手伝ってくれてありがとう」
『どうしたの突然』
「いや、思えば今日一日は君にとってとても濃い一日だっただろう? キヴォトスに来たばっかりだってのに」
そういえばそうだったか。ミレニアム郊外の廃墟で目覚めそれから先生たちと出会い、エンジニア部と出会い、いつの間にか先生たちの手伝いをすることになっていた。思い返せばとても濃密な一日だったと思う。
『いいよ。楽しかったし。久々に血なまぐさくない日々だった』
「レイヴンが言うと重みが違うね」
ヒビキは苦笑していた。
二人はやがて一つの建物に入る。廊下に並んだ一連の扉からここが寮だと分かった。
「それじゃまた明日」
そう言ってウタハは入り口すぐの階段を上がっていった。
『ヒビキは一階?』
「うん、近くだよ」
ヒビキは入り口から三つ目の部屋に入った。中は整然としていた。机の上には何かのパーツが散乱していた。
「ちょっと散らかってるけどごめんね」
『十分綺麗だと思うよ』
「机の上がね。もしかしたら小さなパーツが落ちてるかもしれないから」
ヒビキは私を部屋の真ん中に置いて机の上を整理し始めた。部屋には黄色い壁紙が張られており、床には木のような、しかし木ではないようなものが張られている。鉄の床しか見たことない私には新鮮味あふれる明るい部屋だった。
部屋に見とれている間にヒビキは机の整理を終えて私の元に戻って来た。そのままクローゼットを開けるとそこには大量の衣服がかけられていた。ヒビキはその中から何着か服を引っ張り出すとそれをベッドに広げた。しばらく吟味してから二種類の衣服を差し出した。
「どっちがいい?」
どっちがいいと言われてもずっと包帯姿で過ごしてきたので服の良し悪しとかは全く分からないので『どっちでもいい』と返した。するとヒビキはもう少し悩んだ挙句、右手の服を選んだ。私はヒビキに手伝ってもらって何とかその服を着せてもらったが……なんだか微妙にサイズが合ってないようだ。
「うーん……ちょっとサイズあってないかな。かわいいんだけど」
そのあとも何着か試したがやっぱりどれもサイズが合ってない。
「私に合わせて手作りしたから合わないのかも」
『これ全部作ったの?』
「うん、趣味でね」
『すごいね。手先が器用なんだ』
「それほどでもないよ……それよりもごめん。探してみてるけどちょっとレイヴンの体に合いそうな服がないかも」
『大丈夫だよ。私元々包帯で過ごしてたし』
「い、いや流石に自分が何とかすると言った手前何もしないわけにはいかないから」
しかし結局その後何着か試してみたが合うものは一つもなかった。
「ごめん」
ヒビキは床の上に座り顔を伏せながら静かに謝った。
『大丈夫だよ気にしないで』
私はモニターにそう書きこんだがヒビキが顔を伏せているのでモニターが見えない。私は彼女の肩を叩いた。ヒビキは顔を上げモニターの文字を読むともう一度「ごめん」と謝った。
『大丈夫だって。ほら、今日はもう遅いから寝よう?』
時刻は十二時を過ぎようとしている。ヒビキはまだ落ち込んでいるのか静かに頷いた。しかしベッドは一つしかない。だがヒビキはもう一つのクローゼットから布団を引っ張り出した。
「私は布団敷くからベッド使っていいよ」
『いいの? そんな気を使わなくても』
「気はまあ多少使ってるけど、ベッドのほうがいろいろ楽でしょ? 車椅子から降りたり乗せたり」
まあそれもそうか。ならお言葉に甘えてベッドを使わせてもらおう。ヒビキが私に手をかけベッドに移そうとした瞬間ヒビキは私に掛けた手をひっこめた。私が首をかしげると、ヒビキはどこからともなく消臭剤を取り出し、ベッドにスプレーしだした。別にそんなことまでしなくていいのだが私は何も言わなかった。
「よし」という言葉が聞こえると再び私に手をかけた。
ベッドで寝るのは二回目だ。背中が柔らかい。私自身疲労がたまっていたのか、ヒビキが「おやすみ」というころには半分寝ていた。
私は何をしているんだ。レイヴンの容姿をはっきり決めてないのに決めるような路線書きやがって……なんとかごまかしました。
雷ちゃんを見て思いましたがAC6にも似たような敵いましたよね。キッカーとか。
レイヴンが主人公である以上オリジナルストーリー部分がどうしても出てきます。次回は多分全編オリジナルになると思います。