シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございます。

学校が忙しくなってきて今の更新スピードを維持できるか心配になってきました。一月を過ぎれば多少落ち着いてくるはずなのですが。
今月中は二日に一本のペースだと厳しいかもしれません。でもなるべく頑張ってみます。


第40話

「確かこのあたりのはずです」

 

 飛びだってからしばらくしてヒヨリが声を上げた。ここ、と言われても辺りは変わらず寂れた建物群があるだけだ。しかし、代わりに分かりやすい目印があった。

 

『あの人がたくさん集まってるところかな』

「なに?」

「そりゃ、まあ。敵さんも思いつかないはずがないよね」

「レイヴン、任せろ。私たちで何とかする」

『いや、私がやった方が早い』

 

 私は敵の真上から奇襲するように落ちた。突然の出現にアリウスは為す術がない。

 

「なんだ!?」

「ロボットだ! シャーレのロボットが攻めてきたぞ!」

 

 数が多いな。どうやら正解みたいだ。時間が無いみたいなので早々に終わらせる。

 

 建物で視界が悪いので、まずは周りの建物を吹き飛ばした。それだけでも何割かを制圧できる。道に広がるやつらにも何発か打ち込めば大きな穴となる。

 

 夢中で撃っていたらハンドガンがリロードに入った。私は代わりに左腕を構えた。当時はあまり使わなかったブレードだが、弾薬節約には結構役に立つ。ハンドガンの直撃でも死なないんだから、別にパルスブレードでも真っ二つにはならんだろう。多分。

 

『着☆剣!』

 

 緑色の刃が現れ、私はそれを振った。刃が触れた地面には大きな溝が出来上がる。予想通り、刃が触れたアリウスは真っ二つにならず、刃に押されたまま飛んでいった。

 

「れ、レイヴン? さっきの掛け声は一体?」

『気にしないで。ルビコンで流行ってたんだよ』

「へ、へえ、変わった流行りだね」

『それより制圧が終わったよ』

 

 私はユニットを下した。中から先生たち四人が出てくる。サオリは降りてから周りを見て感嘆の声を漏らした。

 

「これだけの数をこんな短時間で」

『まあ、人相手ならこんなもんだよ』

「ひ、ひえぇ……私たち相手なら瞬殺なんでしょうね……」

「ほんと、今敵対してなくてよかったし、あんとき戦ってなくてよかった」

「よし、とにかく敵は居なくなった。今のうちに中に入ろう」

「待って」先生はサオリたちに声をかけた。「僕たちはともかく、レイヴンはどうする? この巨体じゃ地下には入れないよ」

「とはいっても、カタコンベを通る以外に方法は無いぞ」

『問題は無いよ。先生たちがアリウス自治区に着いたら現在地を教えてくれればいい。そこまで飛んでいくから』

「そっか……そういう手があるか」

「どちらにせよ急がなくてはいけないし、この中にまだ敵が潜んでいる可能性もある。今度はレイヴンの支援は無い。気を引き締めろ」

「は、はい」

「うん」

「それじゃレイヴン。また後で」

『先生も気を付けてね』

 

 サオリは先生を引き連れて、まだ原型を保っていた建物へと入っていった。

 

 静かな時間が訪れた。私一人だけ待機し、仲間の報せを待つ。通常なら私は誰の援護も受けられない孤立無援な状態。きっといつ敵がやってくるかひやひやしながら待つのだろう。しかし現実は逆だ。四人もいる先生たちは狭い地下通路の中、私の支援を得る事ができずにいつ敵が襲ってくるか分からない恐怖に襲われている。なおかつ日付が変わる前にアリウス自治区にまでたどり着かなければならない。

 

 私は操縦桿から手を離し、スマホを開いた。日付が変わるのにあと一時間程度余裕がある。アリウス自治区までどれぐらい距離があるのか知らないが、残り九十分であの程度の慌て様なら、そこまで遠くは無いのだろう。

 

 

 四十分以上経過したころ、私は不意に時間を確認した。残り二十分も無いのに未だ連絡は来ない。私は少しずつ焦燥を感じてきた。本当に先生たちはアリウス自治区に到着できるのか、途中で敵に制圧されてないか、そんな心配ばかりこみ上げてくる。いや、もし何かあれば先生は何か伝えるだろうから、何も連絡が来ないのであれば順調に進んでいる証拠か。

 

 ふとスクリーン上にマーカーが設置された。先生たちが進んだ方向とは微妙に違う、しかしほとんど誤差の約十キロ先の地点だ。このタイミングで一体何事なのかと思った。彼女が再び私に接触してきた。今までとは違う積極性がある。先生たちの連絡がまだだが、どっちみち進む方向が一緒なのだから向かってみてもいいだろう。

 

 私はスマホを納め、操縦桿を握った。

 

『メインシステム、戦闘モードを再起動』

 

 上空へ飛びあがるとマーカーの場所まで一直線に向かった。

 

 

 マーカーに近づくにつれ、ただでさえ寂れていた町の風景はより寂れていった。まるで時代が逆行しているかのようだった。そして、人工物よりも自然が多くなってきたころ、ふとトンネルとトンネルの間の短い通路が目に入った。そこで誰かが戦闘していた。一瞬しか見えなかったが、この短時間で飽きるほど見たアリウスの姿だと分かった。そのアリウスと戦っていた人物も一瞬だけ見えた。しかし私はそれを一度疑った。自分の見間違いだと思った。だがしかし、もし見間違いで無ければあれはまさか……聖園ミカ?

 

 そんな疑問を考えさせないかのように先生から連絡が来た。私のスマホに先生の現在地を共有した。結果、先生の居場所はマーカーの場所とほとんど一緒だった。

 

 先生がいたのは遺跡のような場所だった。トリニティであることを考えればそれほどおかしくない建造物だ。

 

 先生たちの様子がおかしい。誰かを介抱しているようだ。私は先生から少し離れた場所に下りた。近づくと彼らが介抱していたのはサオリだった。彼女は苦しそうに呻いている。息も荒い。どこか怪我でもしたのだろうか。

 

『どうしたの』

「サオリが熱を出したみたいなんだ。一応常備薬を飲ませたんだけど」

「目的地まではまだ距離がある。でもリーダーがこんな状態じゃ先に進めない」

『しょうがない。今ユニットを下すから少しそこで休憩しよう』

 

 私はユニットを下した。先生はサオリを担ぎ中に入っていく。しかしミサキとヒヨリは中に入ろうとしない。先生が中に入ってしまったので私の言葉を伝えてくれる人が居ない。仕方がないのでコックピットを開けた。

 

「うわ、びっくりした。そういや中にいたね」

「へ、へへ。この感じ、なんだか久しぶりですね」

『あなたたちも少し休憩すればいい。どうせしばらく動けないんだ』

「いいよ、私は。そっちこそ少しぐらい寝ておけば?」

「はい。見張りぐらい、私たちにもできますから……レイヴンさんにはずっと助けてもらってばかりですし」

『私もいいよ。第一、機体の中じゃ寝られない。そこまで器用じゃないよ』

「それもそっか。中、狭そうだもんね」

『もしもの時はユニット背負ってそのまま逃げるから、二人も中入って』

「そ、それなら、仕方がないですね……お先に失礼します」

『ほら、ミサキも』

 

 ミサキはヒヨリが入っていくのを眺めていた。私が催促するとミサキは私を一瞥してユニットの中に入っていった。

 

 しばらくして、スマホを通じて先生の声が聞こえてきた。どうやら寝ていたらしい。そして、僅かに他の声も聞こえてきた。

 

「あ、ごめん。起こしたかな」

「いや、大丈夫。夢を見ていたみたいだ」

「夢? まあ、こんな状況じゃ、熟睡も難しいよね。ここもいつ見つかるかわかんない。ロボットがでかいし、すぐ見つかるかもしれない。リーダーは、今は寝ているけどあと三十分したら行こう」

「三十分か」

「うん。何かあるなら三十分以内にね」

「それなら……さっきの話の続きを聞かせてくれないかな?」

「さっきの? あんまりおもしろい話じゃないよ」

『何の話? 私が来る前?』

「あ、レイヴンも起きてたのか。うん、レイヴンが来る前にちょっとだけ」

『私も気になるなそれ。話してみてよ』

「えっと……それは」

「ふう……しょうがないね。それじゃ——」

 

 ミサキとヒヨリが話したのは、アリウスで起こった内戦の話だった。内戦がおこった理由は当時幼い彼女たちには良く分からなかったようだ。醜い内戦が続いたある日、マダムが内戦の終結を宣言した。それから彼女は自身を新しいアリウス自治区の代表、そして生徒会長であると言った。そして大人らしくアリウスの生徒に様々なことを教えたそうだ。常識、戦闘技術、トリニティとゲヘナへの憎しみ、全ては虚しいという教え。そして人殺しはここ以外に居場所がないとも。教えに背けば怒られたそうだ。アズサやアツコなんかはよく背いていたらしい。

 

「ひっ、せ、先生がすごい顔をしています……」

「だから面白くないって言ったじゃん」

「怖いです、大人って怖いです」

『一体どんな顔してるの? 見てみたい』

「あ、ごめん。あんまり人に、生徒に見せる顔じゃないね。そうだな、アツコの話も聞かせてくれるかな? どうして姫って呼ばれているのか」

 

 二人はアツコの話を始めた。彼女は幼いころからお姫様だったようだ。理由は彼女が生徒会長の家系だったから。アリウス自治区の生徒会長は世襲制で、本来なら次の生徒会長はアツコだったそうだ。

 

「リーダーや私にとって姫ちゃんは羨望の的でした……ミサキさんはあまり興味なさそうでしたけど」

「いや、私も気になってはいたよ。あまり表に出さなかっただけ」

「え、そうだったんですか!?」

「アツコは皆に優しくしてくれた。私みたいな奴なんかにも優しくしてくれた。そういえばまだマスクをしてなかった頃はよく笑ってたっけ」

『あの顔だと笑うと可愛いだろうね』

「はい! アツコちゃんは、笑うととっても可愛いんですよ」

「内戦が終わってからアツコが彼女によって生贄に出されるって噂が流れ始めた。なんでアツコが生贄に選ばれたのか幼い私たちには分からなかったけど……リーダーはそれに納得していなかった。一体どうやったか分からないけどリーダーはアツコを自分たちの所に連れてきたんだ。彼女が簡単に姫を手放すとは思えないから、多分彼女とリーダーの間で何か約束でもしたんだと思う。まあ、そういう感じで、リーダーは私たちと顔を隠した姫、それから途中で合流したアズサを自分の手で指導し始めたんだ。その時の記憶は、正直楽しいことは無かったね」

「あうう。思い出したくないです……あの時のリーダーはとっても怖かったですから」

「その後、私たちはスクワッドと呼ばれ、様々な任務を請け負うようになった。でも、私たちは今、任務に失敗して、姫も捕まった。元々ターゲットだったシャーレと一緒に裏切り者としてアリウス自治区に戻ってきて……笑えない話だね」

「え、えへへへ」

「笑えない話だって言ったでしょ」

「ご、ごめんなさい」

「面白い話をしているな」

 

 話を聞いていると突然サオリの声が聞こえてきた。どうやら起きてきたらしいが、ミサキたちの驚く声が聞こえた。

 

「リーダー、起きてたんですか!」

「リーダー、体調は大丈夫?」

「ああ、おかげで動く分には問題ない」

「よ、良かったです。もうすべてが終わったと思いましたよ」

「でも、まだ正常なコンディションじゃないことは覚えていてね……さてこれからどうする?」

「今から姫ちゃんを助けるんですよね?」

「ああ、そうだ。アリウス・バシリカに向かい、姫を救出する。目標は最初から一つだ」

「でもどうやってバシリカに進入するの? 私たちがアリウス自治区に入ったことはもうバレているはず」

「ルートはすでに考えている。アリウスの旧校舎に向かう」

「旧校舎ですか!? あそこはもう随分長い間放置された廃墟ですよ!?」

「そこには何があるの?」

「姫から聞いた話だが、かつて聖徒会がアリウス分校を建設する際に、バシリカと校舎を繋ぐ地下回廊を作ったのだとか」

「聖徒会が?」

『あれ、聖徒会って確かアリウスを潰そうとしたんじゃないっけ?」

「うん、トリニティ連合に反対したアリウスのトリニティ自治区脱出を支援したのがユスティナ聖徒会。最も糾弾した彼女たちがアリウスの再建を主導したの」

『案外いい加減なものだね。自分たちが嫌ってたものを助けるだなんて』

「おかげで、私たちは今、バシリカにたどり着く手段を得ている。回廊はかなり昔に作られたものだから彼女が見落としている可能性も高い」

「その回廊の場所は分かるの?」

「いや、まずは回廊を探すところからだ」

「そう」

「でも他に手段も無いですよね、後時間も。どうします? バシリカに強行突破しますか? レイヴンさんもいるので可能だと思うんですけど」

「いや、無理でしょ。バシリカは地下にあるのに、こんなおっきなロボットが通れる通路があるはずないじゃん」

『それを言ったら地下回廊も通れそうにないんだけど、まあそれは着いてからでいっか』

「そうだね、とりあえず行ってみよう」

 

 

 旧校舎までの道はサオリに案内してもらうことにした。場所が場所なので彼女が直接案内してくれた方がいいと思い、一同はユニットから降りて私は、サオリたちの後ろをちびちびとついて行くことにした。

 

『そういえば、ここに来る途中でミカを見かけた気がするんだけど、私の気のせいかな?』

「そっか、レイヴンも見たんだね。うん、僕たちはカタコンベに入る直前にミカと会った。今のミカは話が通じるような状態じゃない。勿論ちゃんと話し合えば分かってくれるだろうけど、今はちょっと」

『なに、また敵対してるの?』

「早い話そうだね」

『また面倒になったね』

 

 ミサキがハンドサインを送った。どうやら敵の姿は無いらしい。私は先生と一緒に気持ち隠れながら向かった。

 

「おかしい……街が静かすぎる。元々人通りが少なかった場所だが、ここまでではなかったはずだ」

「な、なんか変なものも一杯増えています」

「そうだね、違和感は私もある。長い間自治区を離れていたとはいえ、全く別の街になってる」

 

 サオリたちは辺りをキョロキョロ見回しながら言った。私はここが初めてなので特におかしいものは無いように思う。まあ、何本か見える巡航ミサイルは多少おかしく見えるが。

 

「思い返せば、少しずつ変なものが増えて言った気がします。街の至る所に設置された巡航ミサイルに、補給された、謎の武器……今思えばあの複製も変じゃないですか。なのに、なんの疑いもせずに受け入れてた気がします」

 

 その時ミサキが声を上げた。

 

「隠れて、誰か来る」

 

 サオリたちは急いで陰に隠れた。ただでさえ図体がでかい私も慌てて路地に入った。近くに広い道があってよかった。陰からそっと顔を出すと、そこにいたのは、先生がエデン条約を奪い返したがために、確保に失敗したはずのユスティナ聖徒会であった。




万歳エディションもっとだしたい……もっと大和魂を……もっと着剣しなきゃ
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