実は最終編のストーリーを確認していたんですが、一章の真ん中あたりで確定で落ちるようになってしまって実機でのストーリー確認ができなくなってしまったんですよね。確認自体はYouTube上で行えるのでたいした問題ではないのですが、どうせなら初回は実機で確認したかったですね。
さて、いよいよ今回でエデン条約編四章も最終回です。
私はACが消えた後もしばらく放心していた。先生が話しかけてくれなければずっと放心していただろう。私は我に返って、すぐにさっきのACが何だったのか聞いた。
「み、ミカを助けようとして大人のカードを取り出したんだけど、使おうと思った瞬間に赤い霧、というか粒子? みたいなものが集まって来たんだ。そうしたら次の瞬間にはさっきのACが立ってて、レイヴンが来たのはその直後だよ」
『彼女が言ってた先生の力ってその、大人のカードってやつ? そのカード一体何』
「これは……なんだろうね。説明が難しいんだ。特別な力を持ってて、いざって時に皆を守るためのカードだよ」
正直自分の疑問を晴らせるような回答ではなかった。しかし、先生がそれしか言わない以上、私はその回答で納得するしかなかった。
私はミカと先生を乗せてアリウス自治区を歩いていた。ミカは一人でずっと聖徒会を食い止めていたがために、怪我がひどかった。すっかり忘れていたがミカはこの後、聴聞会がある。先生も出席しないといけないので急いで戻ろうとしたのだが、飛び上がってすぐに自治区内での騒ぎに気付いた。その騒ぎの中にいる人物に見覚えがあったので、私は下りてそれを確認しようとした。
「きえええええええ!」
「ツルギ先輩、それドアじゃなくて壁……あ、終わった」
そこにいたのは奇声を上げながら乱射をするツルギと、後は初めて見る生徒がいた。ツルギを先輩と言っていたので、学年は下の様だ。その生徒はすぐに私の姿に気づいた。
「あ、ツルギ先輩、あれレイヴンさんじゃないですか?」
「そうだ」
私はツルギの前に立ち、ユニットを下した。中から先生とミカが顔をのぞかせた。
「ツルギ」
先生に気づいたツルギは途端に背筋を伸ばし、顔を赤面させた。
「どうして正義実現委員会が?」
「あ、ああ。先生、こんにちわっす。正義実現委員会のイチカっす。前に美食研究会の逮捕で一応お会いしたっすけど……もしかしたら覚えてないかもしれませんね。あ、レイヴンさんとは初対面っすね。初めましてイチカっす。見ての通り先生を助けに来たっす」
「うん、イチカに会えて嬉しいよ」
「えへへ、先生とあいさつ出来て嬉しいっす」
先生は無意識なのか意図的なのかそういう発言をする。イチカは素直に嬉しいという辺り、コミュ力が高そうだなと私は思った。イチカは通信機を取り出し、誰かに通信しだした。相手はハスミの様だ。
「ハスミ先輩、先生とミカ様を確保したっす……はいはーい。それじゃあ行きましょうか。皆さんを待っている人が居るっすよ」
イチカは私たちを案内しだした。ツルギは一緒ではないのかと先生が聞くと、ツルギはこのまま自治区内の聖徒会を掃討するそうだ。
「ねえ、レイヴンに乗って移動した方が早くなーい?」
イチカが案内を始めてすぐにミカがそう言った。それはそうなのだが、イチカが案内する先を私は知らないし、先導してもらわないと進めないのは事実だ。先生も同じことを言った。
「それなら、その子もレイヴンに乗せて道案内してもらえばいいじゃん。というか私結構ボロボロなんですけど、ちょっとは休ませてほしいんですけど」
全く我儘なお姫様だ。だが一応言ってることは事実なので、ミカと先生はユニットで休んでもらうことにした。私はイチカを掌に乗せて、道を教えてもらうことにした。
道を教えてもらいながら進むため、あまり速度は出せなかった。せいぜい小走り程度だが、人が歩くよりかはよっぽど早い。
「うっひょー。めっちゃ早いっすね。あ、あそこ右に曲がってくださいっす」
私はイチカの指示通りに道を進んだ。道中でたまに戦闘を行っていたが、いずれも正義実現委員会と聖徒会の戦闘だった。いつの間にかあのカタコンベを突破したらしい。その方法が気になったが、今の私にはイチカにそれを聞く手段が無かった。
最終的にイチカが案内したのは、私たちが最初にアリウス自治区に出たあの遺跡だった。そこには多くの正義実現委員会と一緒にナギサとセイアの姿もあった。ユニットから降りて、彼女たちと顔を合わせたミカは驚愕の表情を見せた。
「ああ、ミカさん! ご無事だったのですね!」
「ナギちゃん!? どうしてこんなところに」
「ここがアリウス修復作戦の指揮本部です」
「どうやってここに?」
「私が教えたのだよ」
「セイア!?」
柱の物陰からセイアが出てきた。私はこの場に到着した時から気づいていたのだが、先生は気づいていなかったようだ。それはミカも一緒で、一瞬驚いた後、すぐに表情を曇らせ、顔を下に向けた。
「せ、セイア……ちゃん」
「本当に愚かだね、ミカは。常のように衝動で動いて過ちを犯す、君の悪い癖だよ」
「ど、どうやってここに?」
ミカはすでに涙目になっていた。セイアの顔もまた僅かに曇った。
「言葉を紡ぐには些か時間が足りないかもしれないね。白昼夢の中で、偶然ある人と邂逅できたんだ。話すと長くなるから割愛するが……私は言わば、小さな取引をしたのだよ。そしてシスターフッドや救護騎士団、正義実現委員会を招集してここまで案内したんだ。一つ確かなのは……ナギサはミカを救うためなら、自分の権利を全て手放しても構わないと告げ、周囲を総動員したことかな」
それを聞いて私は周りを見渡したが、正義実現委員会以外の生徒は見当たらなかった。別の場所にいるのかもしれない。ミカはいつの間にか顔を上げていた。
「みんな」
「私たちも先生の力を借り続けてばかりではいられない。彼の人の道先に光を灯せてこそ、理想的な関係たらしめるからね。だからミカ……君を助けに来たよ」
「セイアちゃん、相変わらず何言ってるのか全く分からないよ。本当偉そうだし、心底むかつく」となぜかミカはセイアを挑発した。折角助けに来てくれたのに。ミネが言っていた通り元々素行が悪いからだろう。ミカの言動は想像がついたのかセイアも涼しい顔をしている。「それでも大好き、セイアちゃん」
「え?」
セイアの目が開き、ミカの顔を見た。しかしすでにミカはナギサの方を向いていた。
「ナギちゃんはヒステリーがひどすぎ! っていうか、こんな所でも紅茶が手放せないの、どうかと思うよ?」
ナギサはなぜかきょとんとした顔をしている。まるで挑発されていることに気づいていないようだ。
「カフェイン中毒? 脅迫症? でも、そんなナギちゃんが大好き!」
「い、いえ、これは緊張してしまって」
ナギサは真面目に弁明しようとした。やはり馬鹿にされていることに気づいていないようだ。
「——え?」
「うん、二人とも大好き。二人ともありがとう……ごめんね」ミカの明るかった顔はだんだん泣き顔に変わった。
「ミカさん」
「ふむ、謝るのはこちらの方だ。すまなかった、ミカ。いつも謝ろうとしていたんだ。でも子供みたいな意地が邪魔をして、果たすことができなかった。ミカ……君がアリウスと和解したいと言った時、私は」
「ううん。もういいの、大丈夫だから。ごめんね、私が悪かったの」ミカはまた涙を流した。そんな彼女に二人は名前を呼ぶことしかできなかった。
私の横を通り抜けて、イチカが三人の元に近づいた。一瞬だが何かを持っているのが見えた。
「あ、ええっと、仲良しな雰囲気の所申し訳ないっすけど、ミカさんに渡したいものがあるっす」
「私に?」
「これっす」
「これは」
ミカに渡されても私にはそれが何なのか分からなかった。何か箱のようなものが部分的に見えた。
「——私のアクセサリー!? 全部燃えちゃったはずなのに」
「ええっと……押収品の管理担当の子が……説明しにくいっすね、とにかくその子がミカさんのアクセサリーで燃えてない物を保管してたみたいで」
『コハルだよね』
「そうだね、コハルだろうね」
私はイチカの言う管理担当の子が誰か直ぐに分かったので、たまらず先生に言ってみた。先生も同意してくれた。
「コハルちゃんが?」ミカもすぐに分かったようだ。
「はいコハルが……て、コハルのことご存じだったんすか?」イチカはミカがコハルのことを知っているのが予想外だったようだ。目を見開いて驚いている。
「うん、知ってる。ありがとうコハルちゃん……私、酷いことしたのに」と言って、ミカはアクセサリーが入っているのだろう箱を大事そうに抱えた。
ナギサとセイアはミカを見つめていた。そこに先生がみんなの前に出た。
「お互いにいろいろ話す時間を設けた方がいいね」
「ああ、そのようだね」
「では、そろそろ参りましょうか。ミカさんの聴聞会まで時間がありません」
「えー……私この格好で行かないと駄目?」
ナギサが声をかけると、ミカはさっきまでの泣き顔は何処に行ったのか知らないが、むっとした顔でナギサに文句を言った。
「ちょっと着替えたいんだけど。傷の治療もしたいし……人前に立つんだから髪もセットし直したいし」
今回に限っては、ミカの言い分も正当性があると思った。聴聞会と言うのはそこそこ重厚そうな場であるし、その場にボロボロな格好で行くのは不相応な気がする。というか、要らぬ噂を立てられそうだ。セイアは私と同じことでも思たのか、それともミカのことだからと適当に処理をしたのか「好きにすると言い」とだけ言った。
「そうですね、私たちも徹夜してますし、少しは体裁を整えてから行くべきでしょう」
「僕たちも行くよ」と先生は宣言した。たち、という事はやはり私も出席するのか。
「勿論です先生。全員で聴聞会に出席するのが約束でしたから」
聴聞会とか絶対に面白くなさそうなので、正直出席したくないのだが、先生がすでに言ってしまったし、私もそんな約束をしたような気もするし、第一今は出席を辞退できるような雰囲気ではなかった。
ミカたちが準備を終えるまでの間、私は先生と雑談をしていた。
『バシリカでサオリと何話してたの?』
「バシリカで?」
『うん、ほら私が一回離れたじゃん。その時に何の話してたの?』
「ああ、あの時。なんてことはないよ。サオリにしっかり生きなさいって話をね、それで責任はちゃんと果たせるって話をしたんだよ」
『生きるだけで責任を果たすね……まあ、そう簡単に死なれちゃなんだか逃げられた気もするもんね。生きてそいつが苦しんでいると分からないと気が晴れないよね』
「い、いや、別に僕はそういうつもりでサオリに言ったわけじゃないんだけど」
『あれ、そうだったの?』
「レイヴンの考えは怖すぎるよ」
『ごめんね、そういう世界で生きてきたもので』
「ルビコンって怖いところなんだね」
『聞きたい?』
「いや、また機会のある時にでも」
『まあ、血なまぐさい話しか持ってないしね。こんな時に話すことでもないかも。他にはどんな話したの?』
「そうだなあ……サオリが先生になるかもしれないって話かな?」
『サオリが、先生みたいに……確かにサオリもよく体張るもんね』
「違う違う、僕みたいになるんじゃなくて、職業としての先生だよ」
『つまりサオリが人に何かを教えるってこと? いまいち想像できないな』
「でもミサキとヒヨリは賛成してたよ」
『じゃあ、本当はそういう人ってことだ。たった数回、数時間だけでその人のことは分からないね。それはそうと、体張ってることは自覚してるんだね』
「う、うん、まあ、一応」
『じゃあ少しは抑えてくれないかな。私もそうだけど、先生に命かけてまで体張られたくない子はたくさんいるんだから』
「わ、分かったよ……善処する」
『ミカの準備長いかな』
「どうだろうね、まあでも、時間はかかるんじゃないかな。怪我もひどいし、服もボロボロだったし」
『じゃあ、私が送っていかないと駄目かな』
「時間によるね。今の時間だと……まあ、まだ間に合うんじゃないかな。もし難しそうなら頼むよ」
『まあ、構わないよ。乗せようが乗せまいが変わらないしね』
結局ミカの準備が終わったころには、時間に余裕がなくなっていた。ナギサやセイアも乗せて、私たちは急いでトリニティへと戻った。
聴聞会に出席すると異様な重厚感に包まれた。当然だが、その場にいた者たちのミカに対する視線は厳しかった。それと同時に先生に対する興味の視線も向けられた。私に対しては、まあ奇異の目で見られた。名前を知らされると多少マシになった。
聴聞会のことは正直覚えていない。小難しい単語が並べられるし、ミカの罪状が並べられるのはそんなにいい気分ではなかった。何より一番嫌だったのは、ミカがいやに丁寧な姿勢を見せたことだた。敬語やらなんやら、普段のお転婆はすっかり消えて別人のようだった。まさに別人を見ているようで、私は言いようのない嫌悪感を覚えた。つまりは、そんなミカを見たくなかったので、ほとんど目をそらし、話を聞いていなかった。あと単純につまらなかった。
ミカの聴聞会から数日が経った。どうやら今後も聴聞会は行われるらしい。しばらくミカは軟禁生活が続きそうだ。
先生が仕事に追われる横で、私はスマホを弄っていた。何か手伝おうと思ったが、先生に断られてしまったので手持無沙汰だった。正直先生の様子をみて勢いで手伝いを申し出てしまったので、書類仕事なんて一切できなかったから、断られてちょっと助かったのは内緒である。
手持無沙汰でスマホを弄っていたが、ニュース一覧に気になる見出しを見つけた。どうやらブラックマーケットのある会社で爆発が起こったらしい。誰かの仕業らしいが犯人は判明してないそうな。だが、爆発事件という見出しの割には記事の内容が薄かった。関連記事も爆発事件ばかりだしブラックマーケットでは日常茶飯事なのかもしれない。
私は適当に他の関連記事を読んでいたが、あるところで銀行強盗の記事が出てきた。まさかと思いその記事を開いてみると、それは数か月前に起きたことで、更に犯人グループは自らを覆面水着団と名乗ったとか。私は思わず先生を見た。先生は私の視線には全く気付かなかった。まあ、今更だろう。
私はふとサオリのことを思い出した。サオリたちは今頃何をしているだろうか。先生にも連絡は来てないそうだ。無事に過ごせているといいが、私にはそれを知る術が無かった。
次回から時計仕掛けの花のパヴァーヌ編の二章に入ります。
デカクラマトンはメインストーリーに関わってくるんですかね。今作で触れるのはメインストリーだけなんですけど、もし密接にかかわるというか、言及せざるを得ないようなら出そうかと考えているんですが、もしそうだとしてもうまい具合に回避する可能性もあります。