シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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第54話

 迫りくるAMAS達にネル達は、待ち構えるのではなくむしろ自ら立ち向かって行った。カリンのみすぐそばで狙撃を行っている。AMAS相手にネル以外の二人も無双している様子。果たして私が動く必要があるだろうか。

 

『思ってたより量が多くないね。私がいなくても別にいいんじゃないかな』

 

 試しにぼけてみたが、ネルは何も答えてくれなかった。スマホを見てないのだろう。しょうがない、私も動こうか。

 

 敵はある程度のラインに沿って現れている。ネル、アカネ、アスナのラインはすでに対応が出来ている。私が手を出すまででも無い。だとしたらカリンが担当しているラインを手伝おう。狙撃だけでは数に任せて襲ってくる敵をさばききれないだろう。

 

 私は前に踊りだした。敵の数は……十より多い、つまりたくさんいるという事だ。ミサイルで一網打尽にしたいところだが、生憎そんなものはない。かといってハンドガンでちまちま倒すのも弾がもったいない。光の大剣で全て吹き飛ばすか。

 

 光の大剣を展開し、前傾体勢になる。撃ってくださいと言わんばかりに真っすぐな道が続いている。チャージを開始した。青色の光球が形成され、それは次第に大きくなる。バーが最大まで振り切った。発射ボタンと一緒のチャージボタンを離した。

 

『光よ』

 

直後、光球は極太なレーザーとなり、大量のAMASを飲み込んで突き進んでいった。

 

 光の大剣はオーバーヒートし排熱が始まった。私は前傾から直った。レーザーが通った後には何も残っていなかった。

 

「おい、さっきのレーザーはお前か?」

『そうだよ』

「派手にやるじゃねえか! 気に入ったぜ!」

『そりゃどうも。まだまだ暴れるのはこれからだよ』

「おうよ!」

 

 AMASが再び湧いてくる様子はない。もう打ち止めか。想定していたより数が少ないな。そうわらわら出てこられても困るけども。

 

 私は消し炭になったAMAS達の中心に降り立った。周りを見渡しても敵の姿は見えない。あ、いや、レーダーを見るともう何体かいるようだ。そいつらを消そう。終わったらネル達の元へ加勢に行くのもいいかな。

 

 

 残念ながら加勢に来たころにはすでに殲滅した後だった。ネルはまだ暴れまわってるらしいが、私が行ってもかえって邪魔になるだけだろう。ある程度殲滅し終わって、これからどうしようか相談しようとしたが、私と接続したのはネルのスマホだけだ。他の三人とは一度コックピットから顔を出さないといけない。

 

不意にレーダーに赤点が出てきた。私はそちら向き、反射的に引き金を引いた。弾丸はその敵には命中しなかった。

 

 赤点の正体が私の前に現れた。トキだ。

 

「流石ですね。私の存在に気づくとは」

 

 それは私にかけられた言葉だろうか。トキは私たちの前でスカートの裾を広げて一礼した。

 

「C&C所属、コールサインゼロフォー。飛鳥馬トキ、ご挨拶申し上げます」

「思ったより早く現れてくれましたね」

「私たちがここに来ることは予想済みと言う訳か」

「はい。リオ様はすべてを把握しておいでです。C&Cの判断も、その動きも、そしてもちろん、先生の狙いも全て。ですので、僭越ながら申し上げます。これ以上の抵抗は無意味です。大人しく投降をお願いいたします」

「ほう……なるほど」

「それはちょっと難しいかな」

 

 アカネが何かを投げた。トキがそれを避けると、さっきまでいた場所が派手に爆発した。

 

「わっ!? びっくりした!?」

「あら、この程度では相手になりませんか」

「あ、アカネ?」

 

 爆発物を投げたらしい。アカネがこんなことをするとは思っていなかったので驚いた。カリンやアスナも驚いているようだが。

 

「室笠アカネ先輩。戦闘では広範囲の爆破攻撃を得意とする、C&Cの要注意人物」

 

 え、アカネって要注意人物だったのか。確かに急に爆弾を投げたが、持ってる武器はハンドガンだし、言動も大人しめで、全く要注意人物には見えない。

 

「ふふ、初対面の後輩にそう言われると少し照れますね。先ほどはただの挨拶のつもりだったのですけど」

 

 なんだろう、途端にアカネのことが少し恐ろしくなってきた。きっと怒らせたら駄目なタイプだ。

 

「初めまして、後輩さん。トキ……でしたね? 部長が大変お世話になったと伺いました。それに投降しろと丁寧なご勧告までいただくなんて……ふふ、あなたがリオ会長のボディーガードと伺っていましたが、全く……C&Cを見くびってもらっては困りますね」

 

 アカネの声のトーンが下がった。私は思わず少し身震いした。生身でアカネと戦いたくないな。いや、生身で戦えば私は絶対に死ぬのだけども。

 

「目には目を、歯には歯を。今日はそのために来ておりますから」アカネの声に合わせ、アスナとカリンも一歩前に出た。「もちろんここで大人しく投降するのであれば、水に流すこともできますが。むしろそちらの方がよろしいのではないですか?」アカネは私をちらりと見た。

「それは出来ません」トキは即答した。「私はリオ様より命令を受けています。指示に背いて行動しているC&Cを制圧せよ、と。そのため、たとえレイヴンさんと対峙しようと、この場から動くことはできません」

「ふーん。まじめちゃんなんだねえ、トキちゃんは」

「想定通りの反応だ」

「C&Cは秘密のエージェント組織……想定では潜入によってこちらをかく乱してくると踏んで、備えておりましたが、まさかレイヴンさんと共に強行突破してくるとは……レイヴンさんの戦闘能力も含めて想定外でした。ですが、私がここにいるのもあなた方の作戦の内なのでは?」

「そう……なのか?」カリンはアカネの方を向いた。

「あはは、そういうことにしておけばいいんじゃないかな」アスナはあっけらかんとしている。

「あら、そうですねえ……私たちとしても想定外ですよ」

 

 まあ、詳しい作戦は何も決めていないから、想定も何も考えていない。

 

「誤魔化そうとしても無駄ですよ」

 

 残念ながらトキには演技だと思われてしまったらしい。どうか信じてくれ、私たちは何も考えていない。

 

「すでに先輩方の思惑は分かっております。ネル先輩と先生がおりませんね。つまり、そういうことなのでしょう。先輩方は私の足止めを任されている。加えてレイヴンさんも。それはある意味正しいです。リオ様の武装を纏った私との正面対決を避け、その間にミレニアム最強の戦力であるネル先輩を自由にさせる。確かにそうすれば勝算はあるでしょう。ふむ……先輩方三人ならともかく、レイヴンさんは骨が折れますね。足止め要員として最適だと思われます」

「――おいおい、あたしを勝手に逃げたように言うなよ」

 

 突然ネルが乱射しながら飛び降りてきた。完璧な奇襲だったのにも関わらず、トキはそれを避けた。だがその顔には驚愕の表情が見える。

 

「ネル……先輩が、どうして……ここに」

「あぁ? んなの決まってるだろ。リベンジマッチだよ」

「リベンジ?」

「あたしが別行動してたら、お前は絶対にあたしを止めに来るだろ? まあ、レイヴンがいるからそっちに注力したかもしれんが、どちらにせよレイヴンと一緒に行動すれば必ずお前はここに来る。あたしは面倒なのは嫌いなんだ。だからあのチビを助けに行くのは、お前を倒してからでも、遅くねえってことだ。おい、後輩。前回はよくもやってくれたな。先輩に盾突いたらどうなるかってのを、じーっくり教えてやるよ」

 

 ヤンキーだ。ここにヤンキーがいる。C&Cはメイドのはずなのに、目の前にいるのはヤンキーだ。

 

 C&Cが戦闘態勢に入った。私も加勢する隙があるなら参戦しよう。

 

 

 戦闘が始まると、意外にもネル達の方が優勢であった。そもそもトキが武装をつけてない時点ではネルだけで十分圧倒していた。そして武装をつけたとしても他の三人によるサポートでやはり優勢に持ち込むのだ。正直四人の連携が完璧すぎる。私が介入する余地が無い。よって私は、ハンドガンを構えたまま傍観する羽目になった。

 

 気づけば、少しずつ空が暗くなり、それに合わせて都市は青く発光しだした。すでにそれほどの時間が経っているという事だ。戦闘は終わらない。ネル達が優勢であるとはいえ、トキに中々有効打を与えられていない。

 

「レイヴン。ここはあたしたちだけで十分だ! そろそろ先生たちも来るだろうからそっちの援護をしておけ!」

『うん、了解』

「くっ、そんなことは」

 

 私が飛び立とうとすると、トキは私に銃口を向けた。しかしネルによって射撃は叶わなかった。

 

「おいおい、よそ見すんなよ! お前の相手はあたしたちだろうが!」

 

 私は手ごろな高い建物の屋上に立った。さて、先生の元に行くと言っても、先生が何処にいるのか分からない。壁の上からでも見て取れたが、エリドゥは広い。おまけに高い建物が乱立していて視界も通らない。いくら先生が集団でいるとしてもこの都市の中から人を見つけるのは難しいだろう。

 

 ふと遠くで煙が見えた。さらに何かが弧を描いて飛んでいるのが見える。起こっているのは爆発だろうか。誰かがあそこで戦闘を行っているのだろうか。だとすればあそこに先生がいるわけだ。

 

 私は屋上から飛び上がった。アサルトブーストで先生の元に向かった。戦闘は未だ続いているらしく、一瞬だが先生たちのいる方向へ向かっているのだろうAMASも見えた。

 

 到着した時にはきっと先生たちの後方から現れるようになるだろう。一度スピードを緩め、回復してからまた向かおうと手前の屋上に降り立った時、先生たちが何と戦っているのかが見えた。何やらロボットと戦っている。サイズは私と同じくらいか? 足はタンク、右肩と右腕にはライフルとガトリングを積み、左肩にグレネードキャノン、左腕には盾を持っている。少し変わったアセンだ。だがしかし、おそらく相手にとって不足なし。見た所先生たちは苦戦しているようだ。あのロボット、顔は少し変だが、強いらしい。

 

 私は思わず笑みをこぼした。しかし同時に心配もした。私が強いと思って挑んだ相手は大抵弱い。ロボットならなおさらに。バルバラは強かったがあれはロボットじゃない。あいつは本当に強いだろうか。

 

 私は屋上から降りた。最高速度で以てあのロボットに近づく。

 

『とつげきいいいぃぃぃいい!』

「レイヴン!」

 

 先生の声が聞こえた。しかし私は掛け声に夢中で先生の声に耳を傾けなかった。

 

 ロボットが私に気が付いた。左肩のグレネードキャノンを私に向けた。警告音が鳴る。私は右に避けた。直後、砲弾が私の横を通り過ぎた。

 

『っらあ!』

 

 私はロボットを蹴った。ロボットは盾で防いだようだが、その盾は大きくへこんでいる。私は続いてブレードで二回薙ぎ払った。歪んだ盾は歪に裂け使い物ならなくなった。クイックブーストで一歩前進し、ロボットと密着した。そして私はあるボタンを押した。すると機体の排熱機構が開き、そこから真っ赤なエネルギー球体が現れた。

 

『ばんざあああああああああいいいぃぃいい!』

 

 掛け声とともにエネルギー球体は、巨大な稲妻の半球となり私とロボットを飲み込んだ。

 

 美しい光景だ。コーラルによってアサルトアーマーは赤く変色するが、その色は鮮明な赤であり、見事な大和魂を表現していると言えよう。コックピット中に掛け声が響き渡った。まるで六二一人で掛け声をしたかのようだ。

 

 私は上を向いて酔いしれてた。完璧だ完璧な流れだ。芸術的だ。

 

『決まった』

 

 しかし突然警告音が鳴る。

 

『うぇ?』

 

 私は咄嗟によけ、砲弾が機体を掠めた。ロボットは動きが鈍くなっているもののまだ動けるようだ。

 

『おいおいまじかよ~。貴様なぜ生きている』

 

 四脚MTぐらいの耐久性はあるようだ。よし、久々に真面目に戦闘するとしようか。

 

 基本的に後ろを取るような行動をすればいい。あとは小ジャンプを混ぜる事。こうすると謎に照準がずれてくれる。そして警告音が鳴ったら欲張らずに避ける事。

 

 飛んで後ろを取ると、ロボットは足ごと回ろうとしている。クイックターンができないのか。ポンコツだな。こいつが回る前に、私は二発撃ちこめる。振り向きざまにグレネードキャノンを撃とうとしたらしいがすでに私は射線上にはいない。また三発撃つと、ロボットの機体は穴だらけになっていた。右腕が動かなくなり、動きはぎこちなくなった。

 

『着剣☆』

 

 私はとどめと言わんばかりに勢いよく袈裟切りにした。動かなくなった右腕と、歪に裂けた盾を持つ左腕を切り飛ばし、胴体に大きな亀裂の入ったロボットはうなだれたまま動かなくなった。

 

『うん……うん、よし。我々の勝利である(大本営発表)』

「れ、レイヴン?」

 

 勝利に酔いしれていると、先生の困惑した声が聞こえた。

 

「なんだか、珍しく賑やかだったね?」

『あ、ごめん。興奮しちゃって』

「派手にやったね。折角鏡を用意したのに、これじゃ役に立てないじゃないか」

『ん、誰?』

 

 先生の声に加えて知らない声が混じった。今までに聞いたことのない声だ。

 

「初めまして。私はヴェリタスの副部長チヒロ。先生のサポートをしようとしたんだけど、先に壊されてしまったようだね」

「チヒロ! 助けに来てくれたんだね!」

「うん。まあとはいえ、鏡のおかげでネットワークも奪取できたし、確保しているうちに先生たちを案内するよ」

『ああ、どうせあのタワーでしょ』

「え、まあそうだけど。何か問題がある?」

『私が先生たちを持っていった方が早い。ほら、早く乗って』

 

 私は両手を差し出した。そんなに遠くないし、アサルトブーストを使わなければユニットに収める必要もない。先生とゲーム開発部は私の手に乗りこんだが、エンジニア部の三人が動かない。

 

『ウタハ?』

「ああ、すまない。私たちはここまでの様だ」

「い、インドア派にとってここまでの運動にはきついものがありまして」

「もう一歩も動けない」

『えぇ』

 

 私は困惑の色を浮かべた。ここで動けなくなっても困るだろうに。

 

「安心したまえ。無防備なわけでは無いから。そんなことより早く行くんだ」

『後で迎えに行くよ』

 

 私はそう言い残し、先生たちを持ったまま飛び上がった。屋上に上がりタワーの位置を確認すると、屋上を伝いながら真っすぐタワーを目指した。

 

「はあ、これじゃあ本当に私が助けにきた意味ないじゃん。折角取ってきてもらったのに」

「誰かに手伝ってもらったの?」

「あ、そういえば鏡ってセミナーに押収されてたんじゃなかったっけ?」

「どうやって鏡を取り返したんですか?」

「トレーニング部の人に手伝ってもらったの。あの部活は唯一会長の目が及んでいなかったから」

「なるほど。じゃあ今度スミレにお礼を言いに行かなくちゃ」

「そうだね、それがいいと思うよ」

 

 エリドゥに着いてからAMASを殲滅したおかげか、私たちを追う者は一切いなかった。私たちは楽に中央のタワーに到着することができた。




今回の話が書きたくてこの作品を始めたと言っても過言ではありません。本当は一章の次に二章に行きたかったんですが、時系列上仕方が無かったのでここまで遠回りになってしまいました。
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