シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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アッアッアッ、レイヴンのせいで展開が少し違うことに……戦闘描写がめんどくさいことになってしまった……


第55話

 私たちがタワーの元にまでやってくると、丁度ネル達も走って来た。

 

「あ、先輩!」

 

 私は着地し、先生たちを下した。先生たちはすぐにネルの元まで駆け寄った。

 

「ネルがここにいるってことは、トキは?」

 

 先生が聞くと、ネルは顔を紅潮させ苦虫を潰したような顔をした。

 

「あはは、実はねえ」

「逃げられてしまいました」

『え、あんなに優勢だったのに?』

「うっせ! あとちょっとでぶちのめせたんだよ!」

 

 先生たちはそのまま、トキとの戦闘について聞いた。どうやら地震があり都市内部を変更するとかいうトンでもギミックがあったようだが、飛んでいた私には全く分からなかった。

 

「さっきの地震はそういう事だったんだね」

『地震なんてあったかな』

「ええ、そのせいで陽動自体意味がなくなってしまったんです」

「まあ、建物自体が動くなんて予想できないよ」

『アニメでしか見たことないね。本当にそんなことできるんだ』

「レイヴンはもっとすごいこと経験してるでしょ。都市が浮くとか言ってなかったっけ?」

『まあ、そうだね……でも建物が動くのは経験ないから』

「そういう問題か?」

「そういえば先生の方は大丈夫だったか? まあレイヴンが向かったのなら問題はなかったと思うが」

「エンジニア部が見えないね。どうしたの?」

「こっちは……そうだね」

「レイヴンさんのおかげで何とか」

「アバンギャルド君強かったけど……強かったはずなんだけど」

『あれそんな名前だったの? ロボットに君をつけるのはちょっと』

「因みにレイヴンの機体にも名前ってついてるの?」

『ああ、確かウォルターが最初に付けてくれた名前があるよ。LOADER4っていう名前が』

「へえ、なんかかっこいい! そのLOADERってどういう意味?」

『さあ』

「えっと……色々意味があるみたいだけど、多分積込機、かな?」

「それってつまり」

『私の機体は作業用機体ってことか』

「何それショベルカーで戦ってるみたいなこと?」

「その例え方はどうかと思うよお姉ちゃん。でも多分意味合い的には一緒、いや一緒なのかな……わかんない」

 

 私たちの間に微妙な空気が漂った。個人的にこの名前は結構気に入っていたのだが、そうかショベルカーと同義が。でも響きがいいからやっぱりこの名前を使い続けよう。

 

「あのさ、いいかな?」チヒロが間に割って入って来た。「その、会長が言ってたんだよね。アリスのヘイローを破壊するって。そのためには相応の施設が必要なんじゃないかな。このタワーには都市中の電力が集中するようになってる。これほどの規模の施設が、会長の手によって作られた理由、そして、会長の動機。答えは明白だろうね」

「じゃあやっぱりこのタワーにアリスが」

「つまりこのバカ高えビルを登ればいいんだろ?」

「そうだね、あとは登るだけ」

『私が送ろうか。そっちの方が早いでしょ』

「ううん。ここまでくればもう登るだけだから」

「いや、先生。任せた方がいいと思うよ。あの会長が門番を用意しないはずが無いからね」

 

 その言葉と同時に、タワーからトキが出てきた。

 

「お待ちしておりました、先輩方、先生」

「あ、トキちゃん。また会ったね」

「さっきは尻尾巻いて逃げたくせに、一体どの面下げてあたしたちの前に来たんだ?」

「作戦を変更したのは貴方たちだけではないのよ」

 

 突然リオの声が聞こえた。これはスピーカーから流しているのか。ネルの発言を知っているかのような口ぶり、どこかにマイクが仕掛けられているらしい。

 

「リオ」

「貴方たちが来ることを見越して様々な作戦を立てたのだけど、まさか正面から防衛システムを破壊してくるなんて思わなかったわ。それにレイヴン、貴方の戦闘能力も想定外だった。いえ、正確には違うわね。私は決して貴方の戦闘能力を過小評価していたわけでは無かった。でも、そう考えれば考えるほど貴方に対抗し得る兵器がこちらに無いことが分かったわ。頼みの綱だったアバンギャルド君も、貴方の前では全く歯が立たなかった。でもだからと言ってあきらめるわけにはいかない。切り札はまだあるわ。トキ、現時刻をもってアビ・エシュフの使用を許可します」

「リオ様、それは」

「ええ、本来なら名もなき神々の王女との戦闘用だけど、仕方ないわ。目の前にいるのはそれと同等かもしれない存在だもの。出し惜しみしては私たちが負けるわ」

「イエス・マム。パワードスーツシステム、アビ・エシュフへ移行します」

 

 すると、突然トキは服を脱ぎだした。いきなりみんなの前で脱ぎだして、そういう癖でもあるのかと思ったが、すぐに異音に気づいた。それは上から降って来た。大量の土煙が起こり、一瞬視界がふさがれた。

 

 土煙はすぐに収まり、次にトキの背後に何かが設置されているのが分かった。トキがそれに乗り込むと、それは形を変え、それぞれ手足の様になった。

 

「パワードスーツシステム、アビ・エシュフ、起動。戦闘開始します」

 

 無機質な機械音声が鳴ったかと思うと、トキはすぐに発砲した。発射レートが明らかに高い。撃っているのはガトリングだ。私は先生の前に腕を下した。モモイたちもあわてて私の腕の陰に駆けこんだ。直後、腕には多数の銃弾が被弾した。ダメージはない。

 

 逆に狙われていたらしいネル達の方には多数の銃弾が着弾した。ネル達はステップ等で射線から逃げる。トキが一度射撃を止めると、その横から多くのAMASが通り過ぎた。

 

「くそっ、まだこんだけいやがったか! おい、ここはあたしたちだけで何とかする。レイヴンは早く先生たちをチビのところまで届けろ!」

 

 私はユニットを下し、先生を中へ誘導した。

 

「そうはさせません」

 

 トキがユニットと先生の間へ向かって発砲した。先生の前に多数の銃弾痕ができ、先生はその場で尻餅をついてしまった。

 

『あの野郎』

 

 私は反撃にハンドガンを放った。トキにロックオンが向かなかった。そのためマニュアルで照準したが、この距離ではそうそう外さない。トキは被弾する直前にパワードスーツの腕で防御した。当たった弾はトキを大きくのけ反らせたものの、跳弾し、後ろのタワーに穴をあけた。

 

『防いだ!?』

 

 私は驚いたが、それよりもトキの攻撃が著しく緩んだ。今のうちに先生たちを中に誘導するべきだ。

 

 四人が中に入ったころにはすでにトキが体勢を直していた。ガトリングを放ち、銃弾はユニットに当たるが、アサルトブーストに耐える分、多少の防弾性能があった。

 

「トキ、主砲の使用を許可します」

 

 私がユニットを肩に装着しようとすると、リオの声が聞こえた。直後警告音が鳴り、私は反射的に避けた。すぐ後ろを何か通ったようで、トキのアビ・エシュフの肩にあった砲から煙が上がっていた。呆けている暇は無かった。再び警告音が鳴り、トキはもう片方の砲を撃った。いや、砲だと思ったそれはレーザーであった

 

 悠長に肩に取り付けている暇が無くなった。私は半ば強制的ではあるが、ユニットを持ったまま飛び上がった。トキはそれに追従するように照準する。三回目の警告音が鳴った。クイックブーストで避けるが、残量とタワーの高さを見比べて気付いた。屋上に上がるまでの残量がない。仕方なく近くの屋上に上がったが、すぐにトキが追撃を行う。

 

「くそ! 邪魔すんな!」

 

 ようやく取り巻きのAMASを殲滅したらしいネルが、トキと戦闘を始めた。流石に私とネルの相手を同時に行うことはできないらしく、私への攻撃が収まった。

 

 私は屋上から飛び上がったが、屋上に避難した際に感じた通り、エネルギーがマックスの状態でも、タワーの屋上まで届かない。

 

『駄目だ。直接屋上まで上がれない。仕方ないから適当な階にユニットを放り投げるよ。後は先生たちに頼んだ』

「レイヴンはこの後どうするの?」

『ネル達に加勢する』

「分かった。気を付けてね」

『先生も。アリスを助けてあげてね』

「任せて」

 

 エネルギー切れの警告音が鳴った。私はすかさずユニットを投げ込んだ。投げ込まれたユニットは外壁を突き破った。先生たちがユニットから出るのを確認する前に、私は落ちていった。

 

 下ではネル達がトキと戦闘を続けていた。一見してどちらが優勢なのかは分からなかった。

 

 着地すると、すぐネルの元に駆け寄ったネルは肩で息をしており、頭から血を流していた。ネルが一番ひどいが他の三人もボロボロだ。

 

『思ったより苦戦してるね?』

「悔しいことにな。どういう訳か、どんだけ撃っても傷一つつきやしねえ」

 

 私とネルの間に多数着弾した。私たちは互いに避けた。話す隙すら与えてくれないらしい。撃っても傷がつかないとはどういうことか。私は試しに一発撃ってみた。トキは一瞬右腕を上げたが、すぐに飛びのいた。避けられた銃弾はトキの後ろにあったタワーの入口に着弾し、瓦礫の山となってしまった。私はそのあとも撃ち続けたが、トキはその全てを避けた。

 

『避けられるなあ。あれじゃ傷もつかないだろうね』

「いや、おかしい。いくら何でもあれは避けすぎだ。あたしでも正直この距離で躱しきるのは難しいぞ」

『じゃあ何、向こうはどこに撃たれるのか分かってるってわけ?』

「まさか、そんなはずが――」

「あるわ」

 

 チヒロが私とネルの間に割って入った。連絡先は教えてないはずだが、当たり前のように私のスマホに話しかけてくる。ネルも同じだろうか。

 

「エリドゥ全体の電力と演算があの機体に集中してる。あれじゃ未来予知も可能な域よ」

「つまりどういう事なんだ?」

「飛んでくる銃弾を全て撃ち落とすことができるし、死角からの攻撃も回避できるってこと」

『じゃあさっき一瞬腕を上げようとしたのは私の銃弾を撃ち落とそうとしてたからか』

「んだよそれ。本当にチートプレイヤーじゃねえか。でも初めに撃った時は避けなかったじゃねえか」

「あれはまだ集中しきってなかったから回避ができなかったんだと思う。それにあれから避けてばかりってことはレイヴンの銃弾は撃ち落とせないし、受けるわけにもいかない」

「じゃあ何とかしてレイヴンの攻撃を当てればいいってわけだな」

『撃ったら避けられる……遠いとそれだけ相手に時間を与えるから……よし、つまり接近戦だね』

 

 私は迷わずハンドガンをパージした。そしてトキの前に出ると、渾身のルビコン神拳を振るった。しかし拳は地面を殴り、トキはその隙にガトリングを撃ち込んでくる。しかしバルバラと違ってダメージは全然入らない。バルバラの持っていたガトリングよりも口径が小さいせいだ。その分数が多い。人やロボット程度ならこれで十分なのかもしれない。だがACには効果が薄い。私は気にせず次々と繰り出した。しかしハンドガンと同じようにひょいひょい避けられる。見た目の割に機動性が高い。

 

 ガトリングが効かないと気づいたトキは、肩のレーザーに攻撃手段を変えた。そちらは流石にACでもダメージになる。トキと違って私は人力だ。こんな近くだと警告音に反応しきれない。よって私は至近距離からレーザーに被弾してしまった。初めてまともにダメージを受けた。幸い、目立つほどAPは減らなかったし、スタッガーゲージも微量だけ溜まった。しかし距離を離すには十分な理由だった。

 

『ごめん、ダメだった』

「お前割と武闘派な戦い方するんだな」

『あまりしないよ。キヴォトスに来て久しぶりに』

「レイヴンの機体じゃ、トキの動きについて行けない。パワーはあるから何とか機体を止められればそのうちに押し込んで」

「分かった。その役あたしが引き受ける。本当はあたしがとどめを刺してやりてえが、この状況じゃ四の五の言ってられねえ。あたしたちに必要なのは勝利だ。美談じゃねえ。この際使える作戦は使わねえと」

「作戦だなんて……こんな短時間じゃ作戦も何も」

「いいや、大丈夫だ。作戦って言い方が悪かったな。あたしたちはつまりあいつにとにかく攻撃しまくればいいんだな。よし、お前ら! まだ動けるな! 攻撃を止めるな! とにかく撃ちまくれ!」

 

 ネルは後ろの三人に声をかけた。三人はそれぞれネルに返事をし、トキへの攻撃を再開した。

 

「最後は頼むぜ」

 

 ネルもそれだけ言い残して攻撃しに向かって行った。

 

 やれやれ、連携か。一番苦手な動き方だ。味方の動き合わせて動く、味方が有利になるように動く、味方を邪魔しないように動く……なぜ他人を気にしながら動かねばならない。いや、分かる。協力するのは強力な攻撃手段だ。でもその分成功させるのは難しい。味方が長い間一緒にいた人で、その人がどういう動きをするのか分かっているのならともかく、私とネルは知り合って日が浅いし、共闘するのは今日が初めてだ。だから私はネルがどんな戦い方をするのか知らない。だから私はネルに合わせる気はない。自分のタイミングで行かしてもらう。向こうは戦闘のプロだし、どうせ私相手でも勝手に合わせられるだろう、多分。

 

 私はしばらくの間、ネル達の戦闘を見守っていた。やはりネル達だけでは劣勢の様だ。どのタイミングで行こうか。今か……いや、今か? 分からない。トキはがむしゃらに撃っているように見えるがあれはきっと、銃弾を撃ち落としているせいだろう。そうみると、ただ一つだけ回避する攻撃があった。アカネが爆発物を投げた時だ。あれだけは撃ち落とすことができないから、回避するしかないのだ。じゃあ、あれに合わせて攻撃するか。勿論合わせるのは向こうの役目だ。

 

 私はトキに急接近した。一番近くで戦っていたネルが私を察知し、退いた。私は拳を振り上げた。トキはそれを見て回避する。しかしその直前、回避方向にアカネが爆発物を投げた。トキの意識はそちらへ向き、回避が止まった。どれだけ機械が補助しようとも結局動かすのは人間だ。目先の危険を最優先に回避しようとし、一歩先への危険を疎かにする。

 

 トキはすぐに別方向へ回避しようとした。しかしそれよりも先に私の拳が振り下ろされた。トキは両腕の武装で拳を防御した。両腕にあったガトリングは大きくひしゃげたものの、トキへのダメージはない。勢いが殺され、押し合いになったが、すぐにらちが明かないと判断した私はブレードで薙ぎ払った。しかし一瞬の隙にトキは逃げ出してしまった。私はすぐに追撃に移った。ブレードの再使用に数秒。使うのはルビコン神拳。またアカネに合わせてもらおう、そう思って避けられる前提で適当に拳を振るった。トキは勿論避けた。しかし、反応速度が遅かった。

 

「効いてる。さっきの攻撃で機体にダメージが行ったから、少し機能が落ちたんだ」

「よし、じゃあこの方法なら勝てるってことだな! お前ら! 攻撃を続けるぞ! この勝負、勝てる!」




当たらないのなら近づけばいいじゃない(マリーアントワネット感)
最初はどう考えてもトキがレイヴンに勝てる未来が無かったのですが、実は書いてる途中から逆転していました。なんとか途中で勝算があることに気づいてホッとしております。

諸事情により、明日から一週間投稿頻度が著しく低下する可能性があります。ご了承ください。
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