シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございました。

さあさあ、ついに最終章です。一体どうなるでしょうね。果たして私が書きたいと思っているお話が書けるかどうか……不安に思いながら書いていきます。


あまねく奇跡の始発点編一章
第57話


 ある日のこと、先生は険しい顔をしながら出かけて行った。どこへ行くのかと聞くと、サンクトゥムタワーだそうだ。連邦生徒会に用があるらしい。難しい話に巻き込まれたくなかったので、私は同席を断った。

 

 一人留守番をしていると、モモトークから通知が来た。メッセージの送り主はモモイだった。

 

『宇宙戦艦に乗ったことある?』

『急にどうしたの』

『次の新作ゲームなんだけど、主人公たちが宇宙戦艦に乗って宇宙海賊と戦うっていうシナリオなの。それで宇宙戦艦に乗りながら戦うってどんな感じかなって思って、レイヴンなら乗ったことあると思ったから』

『乗ったことないよ、宇宙戦艦なんて』

『嘘!? 乗ったことないの!?』

『ルビコンにも宇宙戦艦なんてものはなかったよ。強襲艦ならあったけど』

『そんな~。レイヴンなら宇宙で戦ったことぐらいあると思ったのに』

『宇宙で戦ったことはあるよ。あと戦艦ではないけど入植船に乗って戦ったことはある』

『ほんと!? じゃあ参考程度に話を聞きたいんだけど、いいかな?』

『構わないけど、主人公人間でしょ? ACの話聞いて参考になる?』

『いいのいいの。何も話を聞かないよりかマシだから』

『分かった。じゃあ今からそっちへ向かうから』

 

 私はエンジニア部へミレニアムに向かう旨を報せ、念のため先生にも一報を入れてからミレニアムに向かった。

 

 

 ミレニアムでザイレムでの戦闘を話してから数日経った。モモトークには感謝の旨が書かれたメッセージがモモイから届いていた。シナリオの参考になれたことを私は嬉しく思っていた。ラスティとの決戦は話せたがエアとの決着は話せなかった。別に忌々しいというわけでは無いのだが、話そうとしてもどうしても気が滅入ってしまう。私はまだエアを裏切ってしまったことを引きずっているのかもしれない。自分で考えて置いて仮定形でしか結論が出せない。だからこの問題の解決には時間がかかるだろう。

 

 先生がアロナと話しているのが聞こえた。私はスマホを弄りながら、先生とアロナの話に耳を傾けていた。連邦生徒会からメールが来たとか、キヴォトスの各地で高濃度のエネルギーが見つかったとか、もうすぐ警備の車両が来るとか、色々話していた。高濃度のエネルギー云々は私には良く分からなかった。

 

「レイヴンも一緒に来てくれるかな?」

 

 先生はいつの間にか私の方を向き、私もいつの間に先生の方を向いていた。

 

『面倒くさそうな話だから断りたいんだけど』

「レイヴンあてのメールも来てるから。僕と一緒に来てほしいって。場合によってはレイヴンの力も借りる可能性があるかも」

『武力で解決させる可能性が? 物騒な話だね』

「迎えにはレイヴンの席も用意されてるみたいだし、他の学園の生徒会も集まるらしい。結構重要な会議みたいだね」

『そんなものに私が呼ばれるわけ? 先生ならともかく、私には不釣り合いだと思うんだけど』

「レイヴンだって立派なシャーレの一員だから。それにレイヴンの今までの活躍を考えればこういう場に呼ばれるのもおかしくないさ」

『私ってそんな活躍してたかな』

 

 私はこれまでの自分の活躍とやらを思い返してみたが、好き勝手暴れまわった記憶しかない。強いて言えば巡航ミサイルから先生を守った。結局二発目のミサイルで会場は破壊されたし、私が気絶している間に先生が撃たれてしまったので、守ったとは言い難い。まあ呼ばれているのは事実のようなので大人しく参加するしかないだろう。

 

「それでは私は引き続きリンさんから届いた情報を解析してみますね。また何か分かれば先生にお知らせします」

「うん、お願い」

 

 そう言って先生は席を立ちあがった。アロナとの話は終わったようだ。そのまま私の向かいのソファーに座り、おっさんみたいな声を上げながら天井を仰いだ。

 

『仕事はいいの?』

「もうすぐ着くらしいし、今きりがいいから中途半端にやって会議に行くのもアレだからね」

『少しでも進めておけばいいのに』

「うぐっ……そ、それはそうなんだけどね」

『私が少しでも手伝えればいいんだけどね』

「大丈夫だよ。気持ちだけでもうれしいし、たまにユウカが手伝いに来てくれるから」

『ああ、怒られてる声が良く聞こえるよ。今月も色々買ったんだって?』

「聞かれてたか……今月はなぜかほしい新作が沢山出るんだよね。だから仕方なくって」

『一か月ぐらい我慢すればいいのに。ゲームは逃げないでしょ』

「何を言う。新作ゲームは発売日に買ってこそ意味があるんだ」

『全く、シャーレの先生というか、大人とは思えない発言だね』

「そういうもんさ。皆が僕のことをどう思っているかは分からないけど、僕はそんな立派な大人じゃないさ。というか、大人になったって自動的に立派になれるわけじゃないから」

『頑張って立派になりましょう?』

「自動的に立派になれたらいいのになあ」

『ああ、そっち』

「僕だって昔は年を取れば勝手に大人っぽくかっこよくなると思ってたんだよ。でもいざなってみたら子供の時となーんにも変わらないんだこれが。困ったもんだよ」

 

 先生は右手を顔のそばまで上げた。顔は困ったように笑っていた。私は鼻で笑った。先生も乾いた笑いをした。

 

 話題が途切れ二人の間に沈黙が広がった。私は何か話した方がいいだろうかと、話題を探した。だが、それからすぐに遠くからヘリの音が聞こえだした。それは次第に大きくなり、シャーレの真上にまでやって来たのが分かった。そのままどこかへ過ぎ去る様子はない。

 

『シャーレの上にヘリが?』

「もしかして迎えってこれかな」

『迎えぐらい私で十分なのに』

「たまにはいいじゃない。迎えられる立場になっても」

 

 やがて部屋の中にはヴァルキューレの生徒が入って来た。

 

「お迎えに上がりました、先生、レイヴンさん」

「ここからは私たちがサンクトゥムタワーまでお二方を警護します」

「ヴァルキューレが?」

「はい。シャーレの非常ヘリポートにヘリを止めていますので、それで」

「でもわざわざサンクトゥムタワーにヘリで行かなくても、車で十分なんじゃ」

「先生だけならそれでも構いませんが、レイヴンさんがいるならヘリの方が車いすに乗ったままの移動が容易ですので」

「そっか、ならそっちの方がいいかもね」

「それでは参りましょう」

 

 先生がヴァルキューレの生徒に従って部屋を出た。生徒の一人が私の車椅子を押そうとしたが『一人で動かせるから大丈夫』と私は断った。

 

 ヴァルキューレの案内に従って屋上に出ると、確かにそこには一台のヘリが止まっていた。ローターが回りっぱなしで轟音が響いている。ヘリは普通の物と違って縦に長かった。ローターも二つ並んでいて、私たちはヘリの後方まで案内された。所謂戦術輸送ヘリと呼ばれるものだろう。そのヘリ以外に機体や車両は見えない。護衛はこれ一機なのか。まあ、たかがサンクトゥムタワーまで行くのにたくさんの護衛は必要ないだろう。

 

「こちらです、先生」

 

 先生がヘリに乗った後に私も乗り込んだ。流石にヴァルキューレの生徒に手伝ってもらった。先生が座った座席の近くで、私は車椅子をしっかり固定してもらった。

 

 機内は静かであった。ローターの回る音はすれど、ヴァルキューレの生徒は何も話さない。

 

「移動に戦術輸送ヘリを使うなんて豪華だね」

 

 先生は近くにいたヴァルキューレにそう尋ねた。話しかけられた生徒は少し反応が遅れ、生返事をしながら答えた。

 

「え、あ、まあ、ヴァルキューレですから。財政には余裕があるので」

 

 私は、おや、と思った。確か、先生の話によればヴァルキューレは財政難に陥っているはずだ。銃弾の補充も難しいほどに。だから先日のヴァルキューレのリベート行為に気づけた。この数か月の間に状況が好転したのだろうか。私はそういう結論に至ったが、先生は違った。

 

「君たちは誰? ヴァルキューレの生徒じゃ、ないよね」

 

 私は思わず先生の顔を見た。先生は訝し気な顔をしつつ、ヴァルキューレの一人をじっと睨んでいた。一方で先生に怪しまれたヴァルキューレの生徒たちはと言うと、先生の目には全く臆している様子はなく、真顔で先生を見つめ返し、他の生徒と見つめ合った。

 

 ヴァルキューレの生徒はヘリの操縦席に向かって何かの合図をした。すると、見たことも無い恰好をした武装兵たちがぞろぞろとやってきて、先生と私を取り囲んだ。そしてその中央にはヴァルキューレの生徒がいた。

 

「カイザーPMC!?」先生は大声で言った。

「勘がいいじゃないか、先生。だが気づくのが遅すぎた」

 

 そう言ったのはヴァルキューレの一人だった。しかし、声は先ほどまでとは違って野太い。その生徒は服と、顔に手をかけて引っ張った。服も顔も破け、その下からは他の兵士と同じ格好をした者が現れた。

 

「シャーレの先生とレイヴンを確保しました」

 

 ほかのカイザーPMCが誰かに報告をした。返事の声は私には聞こえなかった。そのPMCは報告先からの指示でも聞いているのか、しばらく手を耳に当てたままだった。やがて、PMCが耳から腕を下すと、別のPMCが誰かに報告を、否、指示を請うた。

 

「ジェネラル、先生とレイヴンはいかがしますか…………イェッサー!」

 

 彼は何かしらの指示を受け取り、それを他のPMCにも共有した。小声のために私には良く聞こえなかったが、勇逸聞こえたのは「足を打ち抜く」という言葉だった。

 

 PMCの一人が銃口を向けた。銃口の先は私ではなく先生の足元だった。私は咄嗟に腕を伸ばしたが、その腕は別のPMCによって抑えられた。間もなく、ヘリ内に一発の銃声が響いた。

 

 銃口から伸びる硝煙。放たれた銃弾は先生の足を貫通、することはなかった。先生のすぐそばの床に小さな穴が開いた。

 

「何をもたもたしているんだ。その距離すら当てられないのか」

「いや、違っ、銃身が曲がった?」

「全く、こうやって銃口を当てれば外し様が――」

 

 PMCは引き金を引いたが、弾は発射されない。二回三回、何度も引き金を引いたが、弾は出なかった。

 

「な、なぜだ!? 動作不良!?」

「何をしているんだ! もういい俺がやる!」

 

 更に別の兵士が先生に銃口を向けた。銃口の先は足ではない、体だ。

 

「お、おい! ジェネラルから殺すのはダメだと――」

 

 そのPMCは制止を聞かずにフルオートで発射した。しかし、銃弾はなぜか全てヘリの外壁に当たり、先生には一発も当たらなかった。一瞬の轟音のあと、先生に一発も当たっていない様子に、PMC達は唖然としていた。先生は息の詰まった様子でPMC達を見ていた。

 

「私がいる限り、先生には傷一つ付けさせません! 先生の安全はこの私、シッテムの箱のOSであるスーパーアロナが護ってますから!」

 

 先生の懐からアロナの声がした。まさか、これがアロナの仕業だというのか。ただのおしゃべりAIだと思っていたが、とんでもない性能を持っているらしい。ならば以前先生が撃たれたのはアロナがそばについていたからという事か……なんだそりゃ。アロナがいる限り、先生に弾丸は当たらないという訳か。弾くのではなく、まるで幸運がごとく弾が当たらないだと? 欲しいのだが、私にもアロナが。

 

「さあ先生、この隙に早く――」

 

 その時、ヘリの中が一瞬激しく揺れた。そして幻覚のように刹那の時間だけ赤い光が見えたような気がした。コーラル、いやCパルスか? でもあの時のような一瞬で脳全体にコーラルが絡みつく感覚はしなかった。

 

 PMC達も先ほどの揺れを感じたようで、あたりを見回しながら「地震か?」と呟いている。彼らには赤い光が見えなかっただろうか。

 

 先生を見ると、先生は胸ポケットをまさぐっていた。どうかしたのだろうか、と、先生の頭上に銃床が叩きつけられた。PMCの一人が先生を殴ったのだ。先生は勢いそのまま、機体の床に倒れ伏した。

 

「ちっ、とにかく逃げられないようにすればいいんだろ。このままそこらへんに転がせておけ」

「こいつはどうする」PMCは私を指した。

「車椅子だろ? 何もしなくたって逃げられやしねえよ。猿轡と目隠しでもしておけ」

「急いで目標地点に移送するぞ」

 

 私は先生に寄り添うこともできず、車椅子に押し付けられると、猿轡と目隠しをされた。暗闇の中で、誰かが私の体に何かを縛り付けた。

 

「念のため体も縛っとくか。暴れられても困る」

 

 

 暗闇の中、ずっとローターの回る音が聞こえていた。PMCが何か話しているのが聞こえていたが、何を話しているのかは全く分からなかった。

 

 どれくらい乗っていたのか分からないが、あまり時間は長くなかっただろう。地面に着陸したらしい、振動を感じた。私は目隠しをされたままロープをほどかれ、担がれた。暴れることはしなかった。足が全然動かないのに、手だけで暴れたって何にもならないし、暴れたせいで撃たれたくなかった。

 

 しばらく担がれたままだったが、階段を下りているのが分かった。そして金属製の物を擦ったような音が聞こえた。更に進み、私は持つ体勢を変えられ、床に寝転がされた。目隠しと、猿轡を離された。猿轡には唾液が染みつき、私の口から糸を引いた。猿轡を持ったPMCは人差し指と親指だけで猿轡に使ったタオルを摘まんだ。汚物でも持つかのような持ち方だ。

 

 辺りを見ると、材質はよく分からないがとにかく建物の中であることが分かった。そして金属音の正体が、柵の扉であることも分かった。どうやらここは牢屋らしい。私が担ぎ込まれてからすぐに先生も同じ牢屋に担ぎ込まれた。PMCは先生を私と同様に地面に置くと「ここで大人しくしておけ」と言い残し、牢に鍵をかけると見張り役の一人を残して去ってしまった。

 

 残された私はとりあえず先生に向き合った。地面を這い、先生の顔を見た。幸い出血はしてないようだった。

 

 牢屋には椅子が壁に設置されていたが、地面から少し離れており、椅子に手をかけて状態を起こすことは出来るものの、そのまま腰かけることはできなかった。私の貧弱な腕では、自分の体を持ち上げることが出来なかった。仕方なく椅子に座ることは諦め、椅子をつたってすぐ横の壁までくると、背中を預けた。私はそのまま気絶している先生を横目に、牢屋の外と監視役のPMCの背中を眺めだした。




どこかで見て同じことを思ったのですがカイザーPMCの変装能力高すぎでは?

うちのレイヴンは貧乳美少女ですよ!? そんな子の唾液を汚物だなんてもったいなっゲフンゲフン……あ、どうか今の発言は忘れてください。
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