シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

59 / 76
戦闘シーンは実質オリジナルの描写なのでうっきうきで書き始めるんですけど、戦闘描写の持ちネタが少ないので内容が薄くなっている気がするのが玉に瑕なんですよね。


第59話

「うぅ……こんな状態で出動してないんだなんて」

「うっわぁ、すっごい面倒な状態になってるじゃん」

 

 キリノとフブキは知らなかった様子だ。私とは違って監禁されてないのだから知っていると思っていたのだが、さっきの情報はカンナだから知っていたのかもしれない。

 

「おい、ドアが開いてるぞ!」

「中を調べろ!」

 

 突然PMCの声が聞こえた。複数人いるのは確実だ。射撃場にはドアがもう一つあった。こちらはけが人が一人と戦えない二人がいる。急いでそこから抜け出すべきだ。

 

「げ、PMCの奴らがこっち近づいてる。急がないと」

「は、早く行きましょう」

 

 キリノとフブキがカンナを起こそうとするが、少し立ち上がると、カンナは呻いてまたもたれかかってしまった。

 

「カンナ……傷が」

 

 カンナは私たちの前に現れた時からすでにボロボロだった。その上、先ほど私たちを庇ってPMCの銃撃を受けた。彼女の傷は重いものであるのに違いない。

 

「先生……どうやら、私はここまでの様です」

 

 痛みに呻いたはずだが、やがて顔をうつむいたままそう言った。皆が目を見開いた。

 

「な、なにを言ってるんですか局長!?」

「そうだよ。どうしたの!?」

 

 カンナが顔を上げた。口の端や、頭から出血しているその姿は非常に痛々しかった。だが、彼女の顔には安らかな笑みが浮かんでいた。カンナは射撃場を見渡した。

 

「ここは……何も変わっていませんね。新入生合宿の時と同じです。あの頃の私は正義の味方であろうと夢を見続けたものですが……どうやら変わってしまったようです。生活安全局には世話になったな」

 

 おいおいカンナよ、この状況でそんな過去を語りだすような、しかも穏やかな顔で言うのは、これから散りますと言っているようなものだぞ。先生と一緒に見たいろいろなアニメで学んだのだ。絶望的な状況で過去を語ったキャラは大体華々しく散るのだ。この状況でそれはシャレにならない。

 

「ちょ、ちょっと、この雰囲気苦手なんだけど? 今から死ぬつもりでもあんの?」

「え、ええ!? ダメですよ局長!?」

 

 二人も騒いでいるがカンナはそれすら愛おしそうだった。

 

「この建物を出て右側に曲がればD.U.外部に出る高速鉄道の駅があります。子ウサギ公園近郊ですから、先生もご存じですよね。その後……っと、うっかり忘れるところでした」

 

 カンナは制服をまさぐり、中から二台のスマートフォンと一台のタブレットを取り出した。

 

「先生のスマートフォンとタブレットPC、それとレイヴンさんのスマートフォンです。申し訳ないのですが、車椅子は取り返すことが出来ませんでした。すみません」

 

 先生がカンナからそれらを受け取って、私に渡してくれた。ようやく会話をする手段を得た私は早速カンナに礼を述べた。

 

『これだけでもうれしいよ。やっと会話ができる』

「シッテムの箱まで……どうやってこれを?」

「ヴァルキューレ内部の極秘情報を収集し……これらの機器と……先生たちの居場所を突き止めました」

 

 カンナは一文の間が長くなっていた。もう話すのも辛いようだった。

 

「現在カイザーコーポレーションは、サンクトゥムタワーを襲撃し行政指揮権を奪取しました。恐らく……この都市は、大混乱に陥るでしょう。全ては今の現実を受け止め、妥協してしまった私のせいです。これが今の私にできる最大限の抵抗でした。あの時、あの先生の言葉が無ければ今でも私は踏み出せずにいたでしょう。先生、ヴァルキューレの全員が私のような者ではありません。今なお、正義のために戦おうとする者がいるでしょう。この二人のように」

「カンナだって立派さ。確かに、過去はそうだったのかもしれない。でも今のカンナは立派に警官出来てるよ。それに、これさえあればなんとかなると思う」

「それ、そんなに大事なものなの?」

 

 先生の言葉に、全員にはてなが浮かんでいた。正直私も疑わしく思っている。確かにそのタブレットを起動すれば先生に銃弾が当たることは無くなるが、アロナに今の状況を好転させる力があるのだろうか。

 

「我々は望む、七つの嘆きを。我々は覚えている、ジェリコの古則を」

 

 先生はタブレットにそう呟いた。すると、すぐに電源がついて、画面にアロナの姿が現れた。どういう起動方法なんだ。音声認識なのだろうか。

 

「先生? うわあああん!」

 

 アロナは先生に気づくや否や、大声で叫んだ。うるさい。

 

「ご無事でしたか? 心配したんですよ。突然電源が切れてしまって、本当にびっくりしたんですから。それに、今とても大変な状況になってて」

「ごめん。心配かけたね。今の状況は分かってる。アロナも無事でよかった」

「うぅ、私は大丈夫です」

 

 先生はタブレットから目を離し、カンナたちの方を向いた。

 

「それじゃあ、もう一度指揮を始めようか」

 

 先生はそう言った。その言葉に一瞬の間があり、フブキが先生に物申した。

 

「え、は、いやいや。先生が強いことは知ってるけど、今の状況じゃ流石に」

「負傷者もいますし、それにレイヴンさんだって」

 

 その瞬間、射撃場にPMCがなだれ込んできた。

 

「いたぞ!」

「うわわ、来ちゃった!」

「もうやるしかないです!」

 

 フブキとキリノが武器を抜いた。先生は急いで私を抱き上げる。

 

「とにかく逃げよう。カンナ、動ける?」

「ぐ……何とか」

 

 カンナはかなり辛そうだが、何とか立ち上がることが出来た。フブキとキリノが喰いとめているうちに、私たちは射撃場から脱出した。

 

 私たちの後を、二人が応戦しながら追ってくる。意外にも多数のPMC相手に善戦していた。ヘイローがある分耐久性が違うのだろう。そういえばヴァルキューレに変装していたPMCにもヘイローが浮かんでいた気がするが、あれは一体どういう原理だったのだろう。ホログラムだろうか。

 

 カンナの話では出て右側に行けば高速鉄道があるという話だったが、そちらからはPMCの増援が来ていた。私たちは反対側に逃げることを余儀なくされた。外では四方八方から敵がやってくる。先生はやむなくまた別の建物へ逃げることを提案した。そして本棟らしき高層の建物に逃げた。

 

「と、とりあえず何とかなりましたね」

「はあ、はあ、でも補給も支援も圧倒的に不足してるって! 応援呼ぼうよ!」

「しかし今はD.U.全体の通信網が遮断されているぞ。かくなる上は全員で」

「え、なに、玉砕とか嫌だよ?」

「少し休憩したから私も動ける。必ずここを脱出するぞ!」

「はい!」

「え、しないよね。玉砕しないよね!?」

 

 フブキの疑問に答える前にPMCが建物に入って来た。カンナが二人の前に立ち、最前線で応戦を始めた。

 

「先生、一先ず逃げましょう。この先に階段があるはずです」

「気を付けてね」

 

 先生は私を担いだまま、カンナの言う階段まで走っていった。

 

 

 途中でキリノに先導してもらいながら、どんどん登った。何階かは分からないが、今横の窓から見える後景を見れば相当な高さにいるのが分かる。

 

「アロナ、他の人に連絡取れたりしない?」先生は走りながら尋ねた。

「難しいです。通信遮断はサンクトゥムタワーから発せられた命令なので……ですが、このスーパーつよつよAIである私がサンクトゥムタワーに劣っているはずがありません。それぐらいの権限……ううっ、ぐぐぐ」

 

 なんだかアロナが力みだした。私にはタブレットの画面が見えないので今アロナが何をしているのか分からないが、力む必要があるのだろうか。電子世界にいると電子的なものを物理的な力で解決するのか。あれか、データ地引網漁か……自分で言ってて訳が分からなくなった。

 

「ぬぬぬぬ、物理的に近いところなら何とか……あ、つながった! どうか一人でもいいので誰かに……ああ、切れてしまいました。一番近い人になら何とかつながったと思うのですが。お役に立てずすみません」

「いや、十分だよ。助かった。ありがとう、アロナ」

 

 どうやらうまく行ったようだ。先生はまた走ることに注力した。

 

 引き続き廊下を走っていると、その先から大勢のPMCが現れた。先導していたキリノが慌てて止まった。後ろからついて来ていた三人も足を止めた。

 

「こ、こっちからも」

「ど、どうすんの。すぐに後ろからも追い付いてくるよ」

「流石にこの数では応戦しても……ここまでか」

 

 カンナは構えかけた拳銃を下した。キリノとフブキはカンナが諦めたことに気づいていない。前と後ろを振り向きながら銃を構えている。

 

「速やかに投降しろ。投降しないのであれば掃射する」

 

 PMCは私たちへ銃口を向けながらにじり寄ってくる。キリノとフブキはどうすればいいのか分からないのか、銃口を少し下ろしたまま、先生を見た。先生のことだ。生徒を危険に晒すわけにはいかないと、投降を宣言するだろう。

 

 先生が口を開いたその時、何かがガラスを突き破った。ころころと転がり私たちとPMC達の間で止まった。

 

「なんだこれは……ドローン?」

 

 ドローンは再び動き出し、PMC達の中心へ入った。彼らはドローンを撃とうとしたがそれよりも早く、ドローンから激しい閃光が発せられた。

 

 閃光は廊下一帯を飲み込んだ。カンナたちも先生も、そして私も強く目を瞑った。直後、気勢のいい掛け声とともに、誰かが窓を突き破った。

 

「どりゃああああああ!」

 

 銃声が鳴り、PMCが呻きながら倒れる音がした。爆発音も聞こえた。掛け声に聞き覚えがあったが、まだ目が開けられない。正解を確かめる前に向こうから答え合わせをしてくれた。

 

「どうだ、この煙幕弾は痛いだろう。RABBIT2現場に到着した」

 

 ようやく目が開けられうようになり、少しずつ目を開けると先生のすぐ横にミヤコの姿があった。

 

「RABBIT1先生および要人を確保。RABBIT3残りの敵の位置を把握してください」

 

 煙幕が少しずつ割れた窓から外に逃げて行った。先ほどの爆発と掃射である程度倒せたものの、後方にはまだまだPMCが残っていた。

 

「くそっ! 何だお前らは。全部隊一斉射用意――」

 

 またガラスが割れる音がした。同時に一番後ろで指揮をしていたらしいPMCが号令途中で壁側にのけ反り、倒れた。PMCの間に動揺が広がる。

 

「今のは」カンナが呟いた。

「RABBIT4の狙撃です」ミヤコが残ったPMCを掃討しながら答えた。

「RABBIT小隊! 来てくれたんだ!」

「勘違いするんじゃねえ。丁度先生から連絡が来たから食後の運動がてら寄っただけだ」

 

 サキが目を逸らしながら言った。しかし直後に通信機に向かって「うるせえ!」と怒鳴った。

 

「RABBIT小隊、先生の要請を受け救援に参りました。間に合ったようでよかったです」

「ここで援軍とは……先生もやるねえ」

「SRTの方たちが一緒なら心強いです!」

 

 再びけたたましい警報が鳴り、窓からはヘリが上がってくるのが分かった。

 

「ここから逃げ切れると思うな!」

 

 ヘリからスピーカーを使って脅迫された。

 

「これほどの戦力にヘリまで動員するだなんて……先生、一体何をやらかしたんですか」

「いや別にやらかしたわけでは」

「どうせまた変なトラブルに巻き込まれたんだろ。先生だし」

「流石にこの数は……でも先生ですし、ありえないことはないですね」

「おう、モエとミユもそう言ってるぞ」

「ちょっと傷つくなあ」

『先生だもんね』

「レイヴンまでぇ」

 

 ミヤコがカンナと向かい合った。

 

「カンナ局長、この間はお世話になりました。またお会いできてうれしいです」

「RABBIT小隊……今は戒厳令が敷かれていて行政の兵は動けないはずだが」

「わ、私たちは、その、公園で野宿してますので」

「そんなこと知らなかったんだよ! 誰からもそんなこと聞いてないし。何か文句あんのか」

「いや、べつに」

「一先ず先生と局長を安全な場所に移動させます。RABBIT小隊戦闘準備」

「ラジャー」サキが銃を構えなおした。

「ヴァルキューレ安全局の方も一旦私たちの指示に従ってくれると助かります」

「分かりました!」

「ま、この状況ならそれが一番だよね」

 

 増援が下から上がって来た。もはや彼らはなりふり構わないだろう。私の姿を確認するや否や銃口を向けた。

 

「RABBIT小隊、交戦開始!」

 

 四人が一斉射を開始した。一番前にいたPMC数名と、後方にいたPMCが一人倒れた。ミユの狙撃によりPMCは見えないところからの攻撃におびえる羽目になった。しかし、ミユは一体どこから狙撃しているのだろう。ここからは全く見えない。アロナが連絡してからそれほど時間が経ってないのでそこまで遠くにはいないはずなのだが。

 

 動揺の隙をつき、ミヤコとサキが突撃した。ワントリガーで確実に敵を倒していく。廊下に展開されたPMC兵はあっという間に全滅した。ミヤコが前進の合図を出し、サキがそれに続いた。その後をフブキとキリノが追った。カンナは自分が殿を務めると言ったので、先に先生が走った。

 

 RABBIT小隊が来たので一行は逃げるのをやめ、攻勢に出た。次々と現れるPMCをなぎ倒し、建物脱出を目指す。

 

 いくらか降りたところで、窓の外にヘリが現れた。二つのミサイルポッドが見えた。すでに廊下で交戦中だったため、ヘリにリソースを割けれない。カンナが近くにあった部屋へ先生を非難させようとすると、突然ヘリはバランスを失い、窓から離れて行った。そしてすぐに爆炎が見えた。

 

「RABBIT4、助かりました」

 

 ミヤコの声が僅かに聞こえた。さっきのはミユの狙撃の仕業だったらしい。ヘリの操縦手を打ち抜いたのか。恐ろしい手腕だ。

 

 

 一階に下りた。出口が見えたのでそこまで一直線に走っていると突然ミヤコが「避けて!」と叫んだ。直後に先生が誰かに引っ張られた。すると、先生のすぐ横を大量の銃弾が飛んでいった。先生はカンナと一緒に柱の陰に隠れていた。ミヤコ達もまたそれぞれ柱の陰に隠れている。

 

「な、なに?」

 

 先生がカンナに尋ねた。カンナはそーっと柱から顔を出した。直後銃弾が飛んできて、カンナは間一髪で顔をひっこめた。

 

「どうやら敵のパワードスーツが出口の前に陣取っているようです」

 

 ミヤコ達が攻撃を仕掛けようとしてもそのパワードスーツは装備が潤沢の様で、それぞれに対し牽制が可能だった。私たちは出口を前に足止めを余儀なくされた。




思ったんですけど、ミユとサキってフロントとスペシャル反対なのでは? ミユの方が狙撃で後方支援っぽいですし、ストーリーではサキの方が前に出ていますし……運営がミユのSDを動かしたかったのでしょうか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。