シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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後編です
キヴォトスの地理良く分かんない……


第6話

 部室の前ではユウカの言う通り先生が一人立っていた。先生はスマホを弄っているようだったが私たちに気づくとスマホをしまって私たちの元に近づいて来た。

 

「昨日ぶりだね。話は聞いた?」

「ああ、本当に残念な結果になってしまった」

 

 ウタハは落ち込んだ様子を見せているが明らかにわざとらしかった。

 

「う、うん。ごめん。レイヴンたちの面倒はちゃんと見るから」

「ユウカはACの有用性が証明出来たら私たちで整備していいって言ってた。だから早くそれを証明してね」

「お願いします! 私たちももっと詳しく調べたいので」

「ぜ、善処するよ」

 

 早速移動の準備をするため部室の中に移動した。

 

「レイヴンの車椅子も周辺機器もそのままあげるよ。何かあったら……一週間後にまた連絡してくれ」

 

 私は頷いてACに乗り込んだ。ヒビキはリフトを降りコトリと一緒に梱包を始めた。梱包が終わるまでの間、私は機体の中で待機することとなった。

 

『メインシステム起動』

 

 まあ電源だけは入れておこうか。高い目線から皆が作業しているのを眺めていた。ウタハと先生が何か話している。ちらちらとこちらを見ている。するとスマホに通知が飛んだ。チャット——モモトークにウタハからメッセージが来ていた。

 

『レイヴン、今から先生のスマホとヘルメットの同調をするから被ってくれないか。被ったら教えてくれ』

たら教えてくれ』

 

 ヘルメット、ああこれか。思ったことを何でも送信する困ったやつだ。私はヘルメットをかぶってからウタハにメッセージを送った。少ししてHUDに「接続中」の文字が出た。そして何かのアイコン。下には「先生」の文字があった。

 

『接続できた?』

「すごい。文字が送られてきた。これリアルタイムってことだよね」

『困ったことに何でもかんでも送っちゃうけどね』

「よかった。これでやっと君とまともに会話ができるよ」

 

 しばらくの間先生と話した。ついでに先生が顧問だと言うシャーレについても説明を受けた。つまり、法外な権力を持つ部活でシャーレ自身の、この場合は先生の判断で様々な規定規則をすっ飛ばし直接学園に手が出せる超法規的な組織だそうだ。基本的に中立らしくどんな学園でも要請さえあれば手を貸す、傭兵みたいな活動をしているらしい。実際の傭兵と違うのは仕事が自分で選べると言う点だろうか。

 

『私の性に合いそうだね』

「傭兵やってたんだっけ」

『うん。だから色んな勢力に手を出したよ。昨日の友は今日の敵、今日の敵は明日の友なんてことがよくあった。なんなら今からお前の敵、になったこともあるよ』

「裏切りってこと?」

『金を積まれれば、あとは都合が良ければ平気で裏切るからね。傭兵ってそう言うもんだよ。特に私は独立傭兵だからそれが一層激しい』

「裏切られないようにするには?」

『簡単だよ。先生が私にとって都合のいい存在であり続ければいい。もしくは私が先生を裏切りたくないって思わせることかな』

「前者はともかく、後者は頑張ってみせるよ」

「話してるところ邪魔して悪いけど梱包が終わったよ」

 

 先生との会話はヒビキによって中断されてしまった。そこには二つの箱が置いてあった。一つは車椅子だとしてもう一つの箱は何だろう。車椅子よりも大きい。

 

「リフトだよ。これがないと機体に乗り降りできないでしょ? 説明書もつけておいたから先生でも扱えるよ」

 

 そうか。すっかり失念していた。

 

「それじゃ、そろそろ移動しようか」

「あ、そういえばレイヴンはシャーレの位置知らないよね。どうしようか」

『場所を教えてくれれば自分で行くよ』

 

 すると少ししてスマホにマップが送信された。しかし、シャーレは私が思っているより何倍も遠い距離にあった。これぐらいだといつも輸送機で移動している距離だ。

 

『ちょっと遠い。輸送機とかないの?』

「あるにはあるが、人とか物の輸送機で巨大ロボットを積むような輸送機はないなあ」

『じゃあこれ自分で移動しなきゃダメってこと?』

「申し訳ないがそういうことになるな」

 

 しょうがない。思わずため息をついてしまったが、そもACが巨大ロボットなんて言われる世界だ。専用の輸送機はないのだろう。

 

『先生は?』

「僕は輸送ヘリで帰ろうと思うよ。この荷物もそれで運んでもらうことにする」

『それじゃ私もそれについて行く』

「別に先に行っててもいいよ?」

『私だけ先についてもリフトがないと降りれない』

「そうか。考えてみればそうだね」

 

 流れで私が輸送ヘリを護衛する形になった。そういえば昔解放戦線の輸送ヘリも護衛したことが有った。今回は名ばかりの護衛だし考えられる敵もいない。ただヘリの後ろからついて行くだけの、先生から見ればただの帰宅である。

 

 先生と一緒に行くことになったため荷物の運搬を手伝うことになった。まず私が先に出てあとから先生とエンジニア部が荷物を持って出てきた。外に出たところで荷物の運搬が私に移った。

 

「ここでお別れかな。また君に会えることを期待してるよ」

『私もキヴォトスで最初に会えたのがあなたたちでよかった』

「またね」

「次会うときはもっと詳しく調べさせてくださいね!」

 

 それぞれと別れの言葉を交わしながら先生と荷物を持ってエンジニア部を後にした。

 

 

『輸送ヘリってどこにあるの?』

「えっと……学園の入口のそばだったから、あそこかな。ヘリポートがあるところ」

 

 先生の指さす方向をみると確かにヘリポートらしきものが見えた。そこには一機だけヘリが止まっている。

 

『あれ、先生の輸送ヘリ?』

「そうだよ」

 

 私はそのヘリの近くまで行って先生と荷物を下した。先生はそのまま近くの建物まで行った。数分後、先生は一人の生徒を伴って建物から出てきた。生徒は外に出るや否やACを見て唖然としていたが、先生が事情を話すと納得してくれたようだ。

 

『その人は?』

「ヘリのパイロットだよ。僕はヘリの操縦できないからね」

『専用のパイロットとかヘリとか持ってないの? 権力あるんでしょ?』

「無いわけじゃないけど今回は電車乗り継いで来たから。ヘリで来てないんだ」

 

 話もそこそこに早速積み込みが始まった。車椅子は難なく積み込めたが、リフトがヘリより少し小さいぐらいのサイズがあるため積み込むわけにもいかなかった。吊り下げてみてはどうかと具申したがそもこのヘリには吊り下げようのジョイントは無いらしい。だからリフトは私が手持ちで行くことになった。

 

 パイロットと先生がヘリに入り、すぐにローターが回りだした。一定のリズムを刻みながら回転を速め、ついに離陸する。短時間の旋回を行ってからヘリはシャーレに向かって動き出した。

 

 

 ヘリが上空を飛んでいる間、私は地上を走ることになる。先生が私を気遣ってくれてなのか市街地のような狭い道ではなく比較的広めな、かつ人気のない道を進んでいた。キヴォトスは人気の盛んなところだと思っていたが、今走っているような人の居ない場所もあるらしい。私はまだキヴォトスに多数ある学園の一つしか見ていないのだからそういう所を知らないのは当たり前なのであるが。

 

 この世界の統治は良く分からない。学園ごとに自治区を持っているようだが、つまり学園を中心にして町が出来上がっているということか。生徒があれだけのことをしでかせる世界なら学園が持っている権力も大きそうだ。生徒全員が銃を携帯しているキヴォトス……やっぱりルビコンより治安悪いのでは? それにユウカがしれっと戦争が起こるなんて言い方していたが、彼女が言っていた名前は恐らく学園の名前だろう。学園同士で戦争が起こるってどういうことだ。企業じゃあるまいし。

 

 ここまで言っておいて私は最後にある結論にたどり着いた。ここじゃそういうものなのかもしれない。そもそも戦いしか知らない私だ。そのほかのことはウォルター達から教えてもらった以上のことを知らない。だから私が思っている学園はただの私の妄想で、キヴォトスの学園が本来の学園の姿なのかもしれない。

 

 

 シャーレに着いたのは日も完全に落ちたころだった。町の中にそびえる一際高い建物。あれがシャーレが所有するビルだ。周りの建物との差が激しいだろうか、ミレニアムタワーよりも目立つ印象を受ける。私がビルの前で待っていると上空からヘリが下りてきた。ヘリはビルの裏手に降りた。しばらくして先生が機体の足元までやって来た。

 

「お疲れ。遅くなっちゃったね」

『本当に疲れたよ。すぐにでも休みたいぐらい』

「じゃあ早く中に入ろう。車椅子を準備するから機体の方を……待ってね、どこに止めてもらおう」

 

 先生はまわりをキョロキョロと見渡し始めた。ACを置く場所を探しているようだが正直私は早くおりたかったので『どこでもいい。とりあえず降りられればいいよ』と伝えた。

 

「じゃ、じゃあそこにしよう」

 

 そう言って先生が案内したのはビルの裏手、わずかにあった庭のような場所だ。何とかACが立って収まる程度の広さ。本当にとりあえず降りれる場所だ。先生が梱包を開けるのに苦心している間、私はそれを見守ることしかできない。残念ながらサーチライトの類も装備していないので手元を照らしてあげることすらできなかった。

 

 ぼーっと先生の作業している姿を眺めているといつの間にか作業は終わり、説明書片手にリフトを操縦していた。車椅子とともに先生が上がって来たので私もコックピットを開けて出迎えた。リフトは機体から少し離れたところに上がっていた。

 

「えっと……どうやって伸ばすんだ? これか?」

 

 先生が勘で押したボタンは見事リフトの先端を私の方へ近づけた。

 

「やあ。遅くなってすまんね」

 

 私は静かに両腕を先生に掲げた。

 

「なるほど、そうやって降ろすわけね」

 

 先生が私の腰に手を回して担ぎ上げる。流石大人の男性だ。ヒビキの時より動作がスムーズだ。

 

『ありがとう』

「いやいや。お礼を言われるほどじゃないよ」

 

 先生はまた説明書片手にコンソールを弄っている。少々苦労しながらリフトを下ろし、私を地面に下した。

 

 先生に押してもらいながら入ったシャーレのビルは一言でいうなら、広い、だろうか。一目で様々な部屋があるのだと分かった。

 

「居住区が上の階にあるから今日はもう休んでいいよ」

『先生は?』

「僕はまだこれから仕事があるから」

『そう。頑張ってね』

「うん……がんばる」

 

 さっきまではきはきとしゃべっていた先生の声は途端にしゃがれ、顔も悲壮感がにじみだしていた。相当仕事が嫌なんだろうなと思った。私と先生は二人エレベーターで上階に上がった。部屋はいくつもあるから好きな部屋を使っていいよと言われたので私は適当にエレベーターに一番近い部屋を選んだ。中はミレニアムで見た寮より広く、内装も豪華だった。まるで権力の違いを見せられているようだった。

 

 先生の力を借りてベッドに座らせてもらった。先生は最後に「何かあったらいつでも呼んでね」と言って部屋を出ていった。




実際先生ってどうやって移動してるんでしょうね。ヘリを持ってるとか電車が通ってるとかいろいろ情報はあるんですけどね。

次回から本筋に戻ります。多分
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