シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございます。

今回調整用に少し長くしております。


第63話

 支援要請も無いので、ぼーっと空を眺めていた。先生たちはとても忙しそうだ。スマホから流れる音声は絶えない。ずっと何かしらの報告や先生の指示が流れている。シャーレの中は忙しそうなのに、一歩外に出て見れば静かなまま何も仕事していない自分がいた。

 

 暇だなあ、と思った。でもすぐに先生たちのことを考えて、暇だとか思ったらいけないかな、と考えを改めた。

 

「お? シャーレのレイヴン様が一人こんなところでぼけっとしてやがるぞ?」

 

 突然誰かが話しかけてきた。知らない声だ。なまじ有名になってしまったせいで、相手が一方的に私を知ってることが増えて困る。ルビコンでもそんな感じだったな。

 

 空から視線を下すと、スケバンたちが私の前で仁王立ちしていた。知らない声じゃなかったな。何回も聞いた声だ。街の治安維持の際に何度も衝突してる。何度会っても態度を崩さない困ったやつらだ。

 

『一体何の用。今日はしばく余裕ないんだけど』

「シャーレが大変だって小耳にはさんで来てみれば、なんだ、レイヴンが暇するぐらいかよ。来て損したぜ」

『混乱に乗じてシャーレを乗っ取りにでも来たの?』

「あ? いや別に」

『じゃあなんでここに』

「シャーレが大変っていう噂を聞いて来てみればそうでもないじゃない」

 

 また誰か同じようなセリフを吐いて近づいて来た。そちらを向けば今度こそ知らない奴らが、大勢を引き連れてやって来た。全員ヘルメットを着けていて、スケバンよりも組織的なものを感じる。見た目からしてスケバンと同じ不良軍団だろうが。

 

「おうおうおう、一体誰の許可取って私たちの敷地に入ってきてんだ!?」

『いやここシャーレの敷地』

「ここがてめえらの敷地? そんなわけないでしょ。お前らの許可なんか取る必要ないわ」

『まあ、そう。まあそうね』

「ああ?」

「おお?」

 

 スケバンの一人とヘルメット集団のリーダーらしき奴らが眼を飛ばしあう。それに習って後ろにいた奴らも互いに眼を飛ばしあう。一触即発の状況だ。関係ないところでどうでもいい争いが起きようとしている。しかもシャーレの敷地内で。やむを得ないのでACに乗り全て処理しようと思った時、スマホから危機迫った声が聞こえてきた。

 

「うえぇぇっ!?」

「ど、どうしたんですかモモカちゃん!?」

「しゅ、襲撃! シャーレ周辺に襲撃! い、いつの間にこんな!」

 

 その声と同時に襲撃の合図と言わんばかりにどこからともなく甲高い鳴き声が聞こえた。スケバンとヘルメット集団もスマホから聞こえた声に、眼の飛ばしあいを中断してスマホの声に集中している。

 

「レイヴン!」

『分かってる。すぐに対処する』

 

 そうこうしているうちに襲撃に来たロボットたちがどんどん姿を見せている。

 

「後門の防衛は私たちに任せな! 丁度暇してたんだ!」

「こわーいお姉さんたちの実力見せてやるぜ!」

「だてに突っ張ってねえんだよ、こっちはよお!」

 

 スケバンの一人が、叫んだ。それに続いて他のスケバン達もロボットの前に立った。

 

「ヘルメット団、全員集合!」

 

 ヘルメット集団、改めてヘルメット団のリーダーらしき奴が号令をかけた。彼女の号令に他のヘルメット団は素早く集まった。

 

「ま、そういうこと。ヘルメット団幹部河駒風ラブ、助太刀しようじゃないの! お前ら武器を持て! ほら、シャーレを救うんだよ! 全員突撃!」

 

 ラブの合図に合わせてヘルメット団全員がロボットに向かって突撃していった。あいつら結局シャーレを助けに来たのか。まあ、シャーレが大変そうだから来たって言っていたし。シャーレ、というか私は良くスケバンやら不良たちをしばいていたのに、私が所属するシャーレをわざわざ助けに来るとは先生も愛されているな。

 

 不良集団に遅れを取るわけにはいかない。私も急いでACに乗り込んだ。

 

『メインシステム戦闘モードを起動』

 

 レーダーには無数の赤い点が現れる。現状視界内に見える敵よりもずっと多い。手早く処理しよう。シャーレに一歩たりとも踏み込ませるわけにはいかない。

 

 前線は不良共に任せておいても大丈夫だろうか。少し心配だが、あれだけ数がいればそうそう崩れることは無いだろう。私は奥に行って後方から叩くことにする。

 

 屋上をつたいながら襲撃の規模を計っていたが、とてつもない数だ。本気でシャーレを落とそうとしているのか。狙いは何だ。先生か、それともシャーレが虚妄のサンクトゥム攻略作戦の指揮所だと知ってのことか。どちらにせよ案外こいつらに知性があるというこった。

 

 恐らく最後方だと思われるところで、背の高い敵影を確認した。どこかで見たことあるやつだ。あれがこの襲撃のボスだろうか。

 

 ボスの前に下りると、当然取り巻きも一緒にいた。ゲームと同じように、接敵してから雰囲気を醸し出す間はない。敵を確認したら即刻戦闘に入る。

 

 周りの敵を掃討してからボスを倒そう。取り巻きの攻撃は全く痛くないが、ボスの攻撃が少々厄介だろうか。腕を振ると不気味な色合いの弾が飛んでくる。ビル街のために横に避けるには狭い。だがビルの屋上を使って簡単に後ろを取ることもできる。

 

 戦っている間に思い出した。どこかで見たことあると思っていたが、こいつ古聖堂の前で戦った奴だ。雑魚かったな。あの時のようにハイな状態で戦って周りのビルを壊すのもあまり良くないので今回は少し落ちいついて戦おう。

 

 そこの小道に取り巻きが入ったな。右側はもう壊滅だし、左側に注力するか。ボスが攻撃してきそうだ、飛んで避けよう。いや、もうボスを直接叩くか。そんなに強くないし、周りの攻撃も痛くない。むしろ道路の真ん中に居座られて邪魔だ。

 

 三発撃った。左の脇腹と右肩、そして頭に当たった。ボスは大きくのけ反ったが、すぐに体勢を戻した。これぐらいじゃ死なないのか。前回はもうちょっと楽に倒せた気がするが、流石にこれほどじゃなかったか? 私は急接近してブレードを差し込んだ。多少抵抗があったが、力強く押し続けると刃が貫通した。そのまま引き上げると、ボスは胸から上が真っ二つに裂けた。そのままうなだれるようにして消えた。

 

 よし。敵の一番の戦力は消した。ここからは殲滅戦だ。さっき路地裏に逃げた敵を全て倒してから前線に向かいながら殲滅しよう。

 

 殲滅戦は楽、いやそれ以上かもしれない。適切な表現な表現が思いつかないが、とにかく楽なのだ。レーダーで敵を見つけて、銃弾を撃ち込むだけ。楽な仕事だ。金はもらえないが。

 

 敵は一体どんな心情だろう。突然ACが現れ殺される。恐怖だろう。敵に心情があるかどうかは置いておいて、私は怖いと思う。圧倒的力を持って、それを自分たちを殺すために使うのだから。ホラーゲームのプレイヤーってこんな気持ちなのだろう。

 

 

 レーダーから一塊ずつ赤い点が消えていく。大きな塊だった点もシャーレに近づくにつれまばらになっていった。ヘルメット団とスケバンが共闘している音が聞こえるころには点がまばらに存在するだけだった。一個ずつ探し当てては銃弾を撃ち込んだ。

 

 最後の一つを探していた。多分このビルの向こうだ。そう思って屋上に飛び上がる。それと同時に点が消えた。自滅した? ありえない。私はのぞき込んだ。人が一人いた。ヘイローが浮かんでいるのでキヴォトスの生徒らしい。だが見たことが無い。制服も見覚えが無い。彼女は私を見上げると、すぐに消えてしまった。

 

 ようやく点がすべて消えた。改めて確認してもレーダーには何も映っていない。私は早速先生に報告した。

 

『裏手の敵を全て倒したよ』

「ありがとう。助かったよ」

『まさか他の自治区よりも本拠地の方が支援が必要になるとはね』

「レイヴンがいてくれて良かったよ」

『他の自治区の支援が不要そうなら、私はこのままシャーレの防衛に注力しようと思うけど』

「そう……そうだね。うん、そうしてもらおうかな」

『ん、じゃあ定位置で待機してる』

 

 シャーレへの襲撃はその後も不定期に行われた。そのたびに私は迎撃に向かい、そのたびに不良共は私を手伝った。

 

 

 攻略準備が終わった。結局あれからまた日にちが経った。空は赤く染まったきり、何も変わらない。朝か夜かさえも分からない。スマホを見ればいつの間にか日をまたいでいるのだ。

 

 防衛戦が完了したと聞いた時、そのままサンクトゥムの破壊に行くと思っていたが、攻略準備のための準備が終わったようなものと言われた。守護者を倒すにはそれなりの作戦が別に必要らしい。D.U.に関してはぶっつけ本番みたいな扱いになっているが、まあ私がいるから大丈夫とでも思われているのだろう。

 

 私はシャーレ防衛の傍ら、先生たちの声で戦況を把握していた。そして今から総攻撃のカウントダウンが行われるらしい。

 

「お時間です、リン先輩!」

「分かりました。それではカウントダウンを開始します」

 

 リンはゆっくり数字を読み上げる。緊張感が生み出された。

 

「――三……二……一……総攻撃開始!」

「タイマースタート! 攻略終了まであと二十三時間五十九分五十九秒です!」

 

 ついに攻略が始まった。とはいってもD.U.以外のサンクトゥム攻略のため、ここは静かなものだ。

 

 サンクトゥム破壊までの時間は数時間を予定しているらしい。五つのサンクトゥムを破壊したのちすぐに、最後のサンクトゥムの破壊に着手する。今のうちに乗っておこう。

 

 中継が無いのが残念だ。先生たちもあまり状況を報告してくれないので、どういう状況なのか分からない。だから私は機体の中でひたすら私が呼ばれるのを待つしかない。

 

 不良共の会話を聞きながら、同時に静かすぎる機体の中で耳鳴りも聞こえながら、時折発せられる報告に耳を傾けて数時間。突如守護者撃破の報せが聞こえてきた。

 

「第一サンクトゥム、守護者を撃破しました!」

「第三サンクトゥムも守護者撃破したって」

 

 それから数分間隔で守護者撃破の報せが入ってくる。二十分以内に五つのサンクトゥムの守護者が撃破された。三十分後には破壊完了の報せも入った。

 

「よし、これで五つのサンクトゥムの攻略は完了! 残るはD.U.中心のサンクトゥムだけ!」

「はい。それではシャーレの全戦力を投入します」

「うん、レイヴン。聞いてたよね。レイヴンを中心に戦力を展開させるよ」

『うん。分かった。私が中心っていうのがちょっと嫌だけど』

「そこは頼むよ。レイヴンが一番ふさわしいんだ」

『私がシャーレだから?』

「そう」

「待ってください!」

 

 突然制止を呼ぶ声が聞こえた。私は前進させようとする腕を止めた。

 

「D.U.シラトリ区から巨大なエネルギーを検知しました!」

 

 私は急いでサンクトゥムの方を見たが、これと言って変化は見られなかった。

 

「リン先輩、こっちもやばい。破壊したはずの五つのサンクトゥムが」

「これは……破壊したはずのサンクトゥムタワーが復活している?」

「そんな。今までの攻撃は無意味だったのでしょうか」

 

 スマホから流れる音声を聞きながらサンクトゥムを観察していると、サンクトゥムの近くである点が現れた。それは空中に舞った塵のように見えたが、それは次第にブラックホールのような様相を持ち始めた。そしてそこから何かが現れだした。足の方から出現するそれは出てくるたびにありえない物だと分かる。あれは――

 

「レイヴン、そのまま最後のサンクトゥムを攻略してくれ」

『大丈夫? 何か大変そうだったけど』

「大丈夫、何の問題も無い。現れた守護者を倒して虚妄のサンクトゥムを破壊するんだ」

『分かった』

 

 私は動いた。たった今現れた守護者――ペロロジラ、たしかそんな名前だったあれを倒しに全速力で向かった。

 

 ペロロジラか、そういや最近ヒフミから映画に誘われていたっけ。生返事しただけで行くかどうか決めていなかったな。まあこの状況じゃどっちみち映画なんて見れないだろうけど。

 

 ペロロジラが目からビームを発しているのを見た。それによってミサイルが迎撃されたのも見た。さながら本当の怪獣映画の様だ。ペロロジラと相対したとき、奴は問答同無用で私に襲い掛かって来た。警告音が鳴り、その場から飛び上がれば、直後にビームが通り過ぎる。ハンドガンで牽制しながら距離を取ったが、当たったところで効いているようには見えない。

 

 突然ペロロジラは悶えだした。効いていないと見せかけて実は効いていたのか、そう思ったのも束の間、奴は口から何かを吐き出した。複数のその何かは放物線を描いて落ちた。それはペロロだった。私はその軌跡を追った。すると私の足元に誰かいるではないか。それはヒフミとアズサ、後は知らない三人に何時しかドラッグストアで会った人だ。思いがけない再会となったが、それを嬉しく思う暇はない。ここだと間違ってヒフミたちを踏みつぶしてしまう可能性がある。

 

 私は早々に飛び上がった。その瞬間を狙ったのか、途端に警告音が発せられる。少々意表を突かれたが、問題はない。私は横に避けた。しかし、次の瞬間視界が急激に動いた。私は混乱し、受け身すら取れなかった。ようやく止まった視界は横になっている。何が起こったのか分からなかったが、それよりもペロロジラの手? ヒレ? が降りかかっている。私は咄嗟に腕で地面を押しのけた。寸でのところでビルは押しつぶされてしまった。少々高さがあったビルの様で、私は尻餅をついてしまった。

 

 多分回避した時に足が引っ掛かってしまったのだろう。何とか理解できた。

 

 ペロロを処理したヒフミたちがペロロジラに攻撃を加えている。私はハンドガンでちまちま体力を削るのは悪手であると感じ、ブレードによる短期決着を望んだ。飛び上がってからアサルトブーストで急加速する。ペロロジラはビームで以て迎撃するが、私はそれを避け、蹴りをかました。勢いで後方に下がるペロロジラに追従し、私はペロロジラを二回袈裟切りにした。

 

 ペロロジラは顔を上げ、大きく悶えた。だがまだ倒れない。数秒のクールタイム。ハンドガンを接射して時間を稼いだ。そしてクールタイムが終わると、今度はチャージして一刀両断するように袈裟切りにした。ペロロジラはもう一度悶えあがり、目を×にして座り込んだ。

 

『ペロロジラを倒したよ』

 

 私は早速先生に報告した。お礼の返事が来るかと思いきや、実際に返ってきたのは全く別の言葉だった。

 

「気を付けてレイヴン! 他のサンクトゥムからエネルギーが集まってるみたい!」

 

 その言葉の意味を理解するよりも先に、目の前でその結果が見えた。活動を停止したはずのペロロジラが再び立ち上がり、なおかつその大きさを増しているのだ。終いにはそこらの高層ビルよりも高く、超高層ビルに並ぶほどの巨大な姿に変貌した。ACでさえも見上げるほどだ。

 

 警告音が鳴った。ペロロジラの両目が怪しく光る。これほどの巨体から発せられるビームがどれほどの大きさになるのか、私はすぐに飛びあがった。直後、足元にビームが流れるが、それは私を追っている。ペロロジラが目線を動かす方がよっぽど早い。寸でのところで射線から外れることが出来た。

 

『ちょいちょい、ちょっとこれ無理だって。でかすぎる。どうすればいい先生』

 

 通常のペロロジラだって、ハンドガンではダメージにならないのに、これほどの大きさだとパルスブレードでも通用するか怪しい。先生に助けを求めたが、返ってきたのは別人の声だった。

 

「突然申し訳ありません。こうして言葉を交わすのは初めてでしたね、レイヴンさん」

『誰?』

「あら、先日の会議にも出席していたのですが、覚えていないですか?」

『ちょっと今そんな余裕ない』

 

 絶えずなり続ける警告音に、飛んでくる極太の二本のビーム。とてもじゃないが避ける以外に脳のリソースを割けれない。

 

「それは失礼しました。私は頂天才病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと申します」

『ああ、あの何言ってるか良く分からない……何の用? 茶化しに来たのなら消えてほしいんだけど』

「単刀直入に言いますと、今からあなたを大きくします。厳密にいえばその機体を、ですが」

『でっかくする? そんなことできるの?』

「ええ、今なら可能です。その巨大怪獣にも対抗可能ですよ」

 

 良く分からない話だ。機体を大きくする? 物理的にか? どういう原理で……駄目だ、考える余裕がない。

 

「先生からも大きくするならぜひレイヴンさんを、という事です」

『分かった。どうすればいい』

「今から送信する座標まで来てください。そこで照射します」

 

 スマホの通知が送られた。だから避ける以外に何もできないのに、スマホを見ている余裕はない。そう思っていると、スクリーン上にマーカーが現れた。ああ、あそこか。と言うか照射とはなんだ。

 

 考えてもなにも分からないので、私は大人しくマーカー地点に向かった。ここから約十キロほど離れた場所だ。

 

 

 マーカー地点にやって来た。私はそのことをヒマリに伝えた。

 

「はい、こちらでも確認しました。いいですか、そこから動かないでくださいね。外れますので」

『は? 一体どういう――』

 

 はるか彼方から青い光が見えた。そう認識したかと思えば、私は青い光に飲み込まれていた。




次回ですが、ちょっとやりたいことがあるので投稿が遅くなると思います。どうか待っていただけると幸いです。
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