何とか書けました。多分今回はうるさいです。いや、私はちゃんとうるさくできたでしょうか?
超巨大なペロロジラに対して僕たちはただ茫然と見ることしかできなかった。ヒフミたちが現場で戦っているが、ペロロジラには全く効いている様子が無いという。僕はヒフミたちにすぐその場を離れるように言った。モモカによるとペロロジラは針路をシャーレに向けているらしい。このままでは僕たちはペロロジラに押しつぶされてしまう。
アユムが僕に逃げるように言った。だが僕は退くわけにはいかない。アユムたちはどうするのかと聞けば、ここに残って最後まで指示を行うというのだ。生徒を置いて僕一人だけ逃げるわけにはいかない。
頼みの綱はレイヴンだけだ。きっともうすぐ来てくれるはず――
「つ、通信です! レイヴンさんからです!」
「え、そっちに!?」
レイヴンとは僕のスマホを通じて話していたはずだ。シャーレに直接つなぐなんて。
「と、とりあえずレイヴンと通信を!」
「はい、通信開きます」
「レイヴン――」
『時は来たれり、大日本帝国海軍はこれより太平洋における最大の戦力と対峙することになる。我々の次なる任務はこれを占領することである』
『いや、状況を理解されていないようですが、我々はすでに遅れています』
『何?』
「れ、レイヴン?」
スクリーンに映し出されるのはレイヴンからの通信。彼女は声が出ないので文字で会話する。しかし、今スクリーンに映し出されているのは本当にレイヴンからの通信だろうか。いつもの彼女と口調が違う。加えてまるで会話しているようなフレーズまである。
「え、これ本当にレイヴンから?」
「は、はい。確かにレイヴンさんからの通信です」
『先生。ヒフミたちを下げて。後は私が……いや私たち六百二十二人でやる』
「レイヴン!? 一体これは、六百二十二人って?」
『今私の後ろには六百二十一人の兵士がいる。力を合わせてあのペロロジラを倒す』
「だ、誰なのその六百二十一人って!?」
『吉田で――』
機体の中で銃声が聞こえた気がした。幻聴かと思ったが、先生が慌てて銃声のことについて聞いて来たので、どうやら幻聴ではなかったらしい。私は『幻聴だよ』と言っておいた。
『おい、今のは海軍が発砲した音だと思うか?』
『いや、嵐の雷鳴だろう』
『衛生兵ー!』
『あー、やっぱり六百二十一人で倒すよ。じゃあ先生行ってくる』
「え、あ、う、うん頑張って」
『行くよ、皆』
『了解!』
『お前ら戦闘配置についてください』
巨大化のために戦線を離れていたが、ようやく戻ることが出来た。巨大化により、速度もそれなりに早くなっている。ペロロジラは私に目もくれず進んでいるが、その先にはシャーレがあった。
『ありゃなんやあ!?』
『敵の潜水艦を発見!』
『駄目だ!』『駄目だ!』 『駄目だ!』『駄目だ』『駄目だ!』『駄目だ!』
『駄目だ!』『駄目だ』 『駄目だ』 『駄目だ』『駄目だ!』『駄目だ!』
『超巨大ドリルレーザー戦艦シュトールアラハバキ接近』
『ちがぁう!』
『ちくしょう、なんて言ってやがるんだ』
『あれはなんやあ!?』
再び誰かが何かを発見した。それを強調するかのようにマーカーも示された。あれは……ヒフミたちだ。先生の指示を受けて退避しているに違いない。だが、ペロロジラはヒフミたちに対してビームを撃とうとしている。
『あれは味方だ!』
『味方を援護せよ!』
『りょーかーい!』
『バイノハヤサデー!』
『わあああああああああああああ!』『いやああああああああああああああああああ!』
『わああああああああああああああ!』『わああああああああああああああああ!』
アサルトブーストを使った途端勇ましい掛け声が四方八方から飛び出し、喇叭の幻聴まで聞こえてきた。鼓膜が破れかねない程の轟音に私は耳を押さえそうになった。
『やかましくてかなわん』
『俺は攻撃を行う!』
『援軍が到着しました』
間一髪ビームを撃つ寸前のペロロジラに蹴りを入れることが出来た。アサルトブーストで加速した分、ペロロジラは近くの高層ビルを突き抜けてさらに奥のビルに激突した。
『一撃必殺だ、見たか!』
『一丁あがり!』
『よく見ろ!』
ペロロジラは依然として立っており、早くも体勢を立て直そうとしていた。
『こちら小隊長から大隊へ、砲撃支援を要請します。座標は、東経一〇五・北緯二〇・地点ロの二、繰り返す地点ロの二』
『砲兵隊、目標の座標はここだ』
『こちら大隊から小隊長へ、今後の砲撃支援は出来ません☆』
『ばかもの! 貴様ら何一つまともにできんのかあ!?』
『いや、そもそも砲撃支援してくれるところが無いよ。戦ってるの私たちだけなんだから』
『あ、失礼』
『砲手、準備完了』
『キツツキでなぎ倒せー!』
私はハンドガンを構えた。ペロロジラは避ける様子が無い。寧ろこちらに突撃しようとしている。私はひるまず引き金を引いた。当然避ける気が無いのだから弾は全弾命中した。
『奴さん射撃の的になりたいようです!』
『撃ち続けろ! 足止めするんだ!』
日本兵たちも私を鼓舞してくれている。私は引き続き撃ち続けた。しかし、ペロロジラは何発被弾しようともひるむ気配がない。
『あれ?』
『射撃、無効』
『目標はダメージを受けませんでした』
『危なーい!』
もう避けるには引き付けすぎた。防御するしかなかったので、腕をクロスさせて、ペロロジラの体当たりに耐えることにした。ペロロジラと衝突すると、強い反動を感じた。コックピットも大きく揺れた。衝突した後もペロロジラは強く押してくる。片足を後ろにやり、ペロロジラとの押し合いが始まった。
『一歩も引くな!』
『押されているぞ、気合を入れろ!』『反撃しろ!』
『反撃ったって、このままじゃ何もできない!』
『横から突撃しろ!』
『む、無茶言わないで』
押し合いのまま膠着した。互いに引けを一歩も譲らない状況で、数分経ってしまった。すると光の大剣が勝手に動き出した。
『ロケット弾準備完了』
『砲手準備完了』
『は、待って、それはロケット弾じゃ――』
『俺の弾を喰らえ!』
私の制止も聞かず、光の大剣はレーザーを放った。レーザーはペロロジラの右上を焼いたが、それ以上にはみ出た部分が、ビル群を貫いてしまった。幸い位置が高かったので建物を薙ぎ払うような事態にはならなかった。
『ばかもの!』
『あほか!』
『何をしている!』
『これ以上の失態は許されないぞ』
『すまん、悪かった』
しかし怪我の功名か、おかげでペロロジラはたまらずのけ反った。すかさず私は更に押しのけてペロロジラとの距離を取った。
『どうしよう。ハンドガンじゃ効果が薄いし、光の大剣じゃ周りへの被害が大きすぎる』
『突撃せよ!』
『前進あるのみ。いいか。攻撃!』
『突っ込めってこと?』
『着剣せよ!』
『まじかよ~』
『ハンドガンも光の大剣もダメってなったらそうするしかないか。もしくは効果があると信じてハンドガンで攻撃し続けるか』
私はハンドガンの引き金を再び引いた。相変わらずダメージが無いように見える。弾が発射されなくなった。マガジンを一つ撃ち切った。
『装填開始!』
『装填中!』
『装填完了!』
ペロロジラは目を怪しく光らせだした。紫色の光はどんどん集まる。ビームを打ち出すに違いない。機体が攻撃を感知する前に私は回避軌道に移った。そして数秒後に警告音が鳴った。
『危なーい!』
『矢を避けよ!』
前もって回避軌道に移っていたおかげで避けることが出来たが、巨大化の影響で動きが鈍足になっている。
『動きが遅いな。慣れるのが先か、やられるのが先か』
とは言え、慣れるまでの時間があるとも限らない。ヒマリによれば巨大化できるのは三分間のみ。後どれだけ時間が残っているのか分からないが、短期決着をしなければならないのは確実だ。
『仕方がない。やるか』
『準備はいいかあ!?』
『皆殺しにしてやる!』
『お国のために』
『いざ参る!』
ビームが途切れた瞬間、私はペロロジラに接近した。ペロロジラは多少後退したが、その程度で私から逃げられると思うな。私はブレードを引き抜いた。
『着☆剣! 着☆剣!』
二回ブレードで薙ぎ払った。バツ印の傷がペロロジラに刻み込まれる。これは流石に効くだろう、そう思ったのも束の間、異変が起こった。巨大化する前なら大ダメージで悶えていたはずのペロロジラがひるみすらしない。それどころか、またすぐに目が怪しく光りはじめた。
『まずい、ひるまない!?』
このままひるんだところにルビコン神拳やハンドガンを接射しようと思ったが、私の目論見は完全に外れてしまった。そうこうしているうちに警告音が鳴り始めた。私はすぐに避けようとした。しかし、左右がビルで阻まれていることに気づいた。横に避けられないなら、上に逃げるか? いや、もう時間が無い。なんでこんな状況に。
『まさかはめられた!?』
『危なーい!』
『矢を避けよ!』
『やめろ、俺は味方だ!』
『俺を撃つな!』
『お願いだ、撃つな、撃たないでくれ』
日本兵の懇願もむなしく、ビームは放たれた。そしてそれは私の機体に真正面から命中した。コックピットの直撃は防いだものの、甚大な衝撃が伝わった。押されに押されて、何百メートルか後方のビルに直撃した。機体は経ち状態を維持できずに座り込んでしまった。
『いやああああああああああ!』
『艦首に被弾!』『艦尾に被弾!』
『艦首大破!』『艦尾大破!』
「ア゛っ!?」
衝撃で後頭部と前頭部を強くぶつけた。声は出ないと思っていたが似た何かが口から漏れた。ひどい頭痛と共に、視界のほとんどが黒く染まった。体を動かそうにも動けない。腕も垂れ下がれ、前にうなだれたまま、目だけが動いた。ペロロジラがゆっくり近づくのが見えた。
『車長が負傷しました!』
『車長がぼーっとしています!』
『お前ら、準備はいいか。反撃しろ!』
『お前ら死ぬなよ。攻撃だ!』
『かかれ! 目標を押さえろ』
機体の腕が勝手に動きハンドガンを撃っていた。しかし機体自体は動いていない。
『衛生兵―!』
『誰か、医療箱を!』
『衛生兵はいないか!? 助けてくれー!』
私は日本兵たちの幻聴をぼーっと聞いていた。ペロロジラがこちらに迫っているという危機的状況、それは日本兵たちの会話からも分かることだ。しかし頭をぶつけたせいか、何も考えられない。
『直ちに守れ!』
『あかん、ここを死守するんや!』
『ウテウテウテエ』
『中尉殿、次のご指示をお願いします』
『殿、ご指示を』
『敵は右側です』『敵は左側です』
『あれ、敵を見失ってしまいました』
『ばかもの!』
また一際揺れた。ペロロジラがヒレで攻撃したのだ。機体の中が一段と騒がしくなる。
『右舷に被弾!』
『右舷大破!』
『ダメダ、コレイジョウテキヲオサエラレナイ。テッターイ』
『逃げろー!』
『隠れろー!』
『・・・---・・・』
『警告する。貴様は戦いから逃れようとしている。逃亡者は銃殺される』
『それだけはご勘弁を』
少しずつ意識が戻ろうとしている。指先が動かせるようになり、だんだん思考も戻って来た。今は何とかこの状況を変えなければ。
『工兵来てくれー!』
『金田ぁ!』
『ただいま参りまーす!』
ペロロジラがまたビームを撃とうとしている。機体の中は日本兵たちの絶叫で満たされた。逃げようとする者、逃亡者を銃殺しようとする者、徹底抗戦を乞う者、私の指示を乞う者、機体の修理に奔走する者。いずれにしろ、日本兵たちは武装は動かせるが機体の操縦は私でないと無理らしい。どうする、絶体絶命のこの状況、覆す手段は……ある。ただ一つ、だがそれを実行するには時間が足りない。
『砲手準備完了』
『ロケット弾準備完了』
まさかクールタイムが終わったのか? あれは一度撃つと多大なクールタイムが必要だというのに。これが日本兵、否、大和魂の力だというのか。
私は力を振り絞り、何とか右腕を動かした。ゆっくり、感覚がほぼないが、かすかな感覚を頼りにトリガーに手をかけた。だが、指に力が入らない。トリガーを押すことが出来ない。いくら力を入れようとも、それ以上動きはしない。
『お願い……代わりに動かして』
私は最後の手段をとった。機体の中にいるはずの彼女に助けを求めた。別に私は彼女に動かしてもらうことを嫌がってはいない。だが、彼女はこれだけ私が追い詰められていても手を貸そうとはしていない。彼女が一体どういう思考回路で動いているのか分からないが、別の機体があれば助けてくれるが、私の機体を動かそうとしないのだ。
こうしている間にもペロロジラは機体に攻撃を加え、日本兵たちの絶叫が響き渡る。
『AP残り五十パーセント』
『いいの、動かして』
『今は……無理、だから。お願い』
『そっか、分かった』
トリガーが勝手に動き出した。そして沈みこんだのが分かった。ぼんやりとした視界の中、青い光が見えた。それはすぐにスクリーン一杯に広がった。
『ロケット弾発射!』
『ばーん』
レーザーが放たれた。それはペロロジラの顔面を飲み込み、空高く上った。レーザーを喰らい、ペロロジラは流石に大きく後ろへのけ反った。
『目標に命中!』
『奴さん思い知ったか!』
機体が動き出した。私は勢いで後ろに下がり、背もたれにのしかかった。操縦桿からは手を投げ出しているが、勝手に動いている様が見えた。
『私が代わりに指揮を執る』
『車長が戦闘に復帰しました!』
『我々はかつてこれより惨憺たる事態を乗り越えてきた』
『大和魂を見せてやる!』
『準備はいいか?』
『着剣!』
『着剣せよ!』
『了解!』
『元からそのつもりだよ』
機体が前方に踊りだした。私はただ事の成り行きを見ることしかできない。
ブレードを出現させた。ペロロジラに衝突せんばかりに接近すると、ブレードで大きく薙ぎ払った。
『いくぞ!』
『着☆剣』
ブレードはペロロジラを一刀両断した。さっきとは違い、ペロロジラは大きくのけ反り、悲鳴のようなうめき声をあげた。腹にまで響くような轟音だ。
『まだだ。まだ倒しきっていない、トドメを刺すよ』
機体は更にもう一歩踏み出した。未だうめき声をあげるペロロジラに激突した。
機体の排熱機構が開いた。真っ赤に焼けるジェネレーターよりも更に赤い光が生まれる。
『大和魂を見せてやる!』
『ばんざあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああいいいいいいいいぃぃぃ!!!』
絶叫と共に、真っ赤な光が機体を中心に半径数百メートルを飲み込んだ。とても、とても美しい赤色だった。素晴らしい大和魂だ。大和魂は味方を鼓舞し、敵を打ち砕く。それを今まじかで見ることが出来た。
ペロロジラは大きくのけ反ったまま、主に着剣でつけられた真一文字の傷跡から光が漏れた。そしてそのまま巨大な光の柱となって消えた。
『日本の勝利である(大本営発表)。帝国海軍の輝かしい勝利は歴史に刻まれるであろう。大日本帝国に栄光あれ!』
『ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! ――』
機体の中で日本兵たちの万歳が聞こえる。しかしそれと同時にスクリーンに映し出される視界がどんどん低くなるのが分かった。時間なのだ。視界が低くなるにつれて日本兵たちの声は小さくなっていく。六百二十一人の兵たちが消えようとしている。私は力を振り絞り、彼らが消えてしまう前に一言呟いた。
『万歳』
語録集からセリフを選ぶのは大変でした。時間がかかったのはそのせいです。でも書いてて楽しかったです。セリフを読みながら想像してるのですが、とてもうるさかったですw。