シャーレ所属傭兵レイヴン   作:猫又提督

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誤字報告ありがとうございました。

久々に一日で仕上げました。昨日は一日中ジョジョみてサボってたので……


第69話

 戦艦が衝突してできた穴から侵入した。中は思ったより広かった。ACでも立って移動ができるほどに。

 

 アリスは未だ目覚めない。早く先生に預けなければ。艦橋を叩いて私の存在を知らせようとすると、中で先生たちが慌てているのが見えた。艦橋にいたモモイたちが急いで出て行く。

 

「レイヴン、無事だった?」

 

 先生が安否確認をした。スマホからは先生の声に交じってけたたましい警報が流れてくる。

 

『船が突っ込んだ後に、着地したから何ともない。警報は一体?』

 

 そう言いながら、レーダーを目にして警報の意味を理解した。振り返ると、たくさんの敵がこちらへ向かっているのが見えた。

 

「敵が僕たちの所へきている。守ってくれ、レイヴン」

『分かった。こっち側は私で何とかする』

「一人で大丈夫?」

『問題はない。こういう時のために武器を変えてきたんだ。それよりも早くアリスを渡したいんだけど』

「分かった。えっと、ユウカ。モモイたちにレイヴンの所に行くように言ってくれ」

「わ、分かりました」

「すぐにモモイたちがレイヴンの元に来るはずだ。だから、彼女たちにアリスを預けて」

『分かった』

 

 私は艦橋を離れ、振り返った。地上でさんざん戦ったロボットだとか、聖徒会だとかが大量に来ている。私はモモイたちの到着を待たず、船の防衛を開始した。

 

 ショットガンを構えて照準を敵集団の真ん中あたりにする。引き金を引くとハンドガンよりも強い反動と共に複数の銃弾が飛び出した。何百メートル先の集団に着弾すると、そこに着弾した形に穴が開いた。

 

 ショットガンは一度に一つのシェルしか撃てない。数秒のリロードが始まった。

 

「レイヴン!」

 

 足元からモモイの声がした。リロードが終わるよりも先にモモイたちがアリスを預かりに来た。私は跪き、左手の中に抱えていたアリスを差し出した。モモイたちはアリスを受け取り、皆で大事そうに抱えた。私は左手でサムズアップした。モモイもそれを返してくれた。

 

 私は立ちあがり、再び敵と向き合った。さっきよりも近づいており、穴も塞がれている。

 

 私は前に飛び出した。それと同時にタレットポッドも開けた。中から五機のタレットが、いや、ウタハの言う通り私に追従するようになっているのでやはりドローンだ。五機のドローンが展開された。敵集団の先頭から約百メートルほど手前で止まった私は、そこを防衛ラインとし、防衛戦を開始した。

 

 私が集団に一撃いれると、ドローンもレーザーで攻撃を始めた。

 

 撃ってはリロードをし、撃ってはリロードをする。敵の集団には早くも最後尾が見えていた。ショットガンとドローンをかいくぐった敵はブレードで薙ぎ払った。

 

 残る敵が五体となった時、丁度弾切れになったドローンがそれぞれ的に突撃した。敵に衝突したドローンは爆発して、敵もろとも消えた。ドローンにしては派手な爆発だった。

 

 船に戻ろうとすると、十人ぐらいの人がこちらへ向かっていた。ゲーム開発部だとか、アビドスの三人だとか、美食研究会だとか。

 

「あれ、もう終わっちゃったの?」

「反対側の防衛が完了したのでレイヴンさんを援護しに来たのですが」

「はぁ、はぁ……い、いらなかったみたい?」

 

 私はモモイにサムズアップした。その後、他の面々よりも明らかにばてているユズを拾って、私たちは船に戻った。

 

 モモイたちは船の中に戻り、私はまた甲板に上がった。

 

「敵の撃退を確認。防衛完了しました」

 

「先生お疲れさん~。あ、レイヴンも。他に特に変な動きも無いし――」

 

 その時、艦橋は煙に包まれた。それと同時に、スマホからは爆発音が聞こえた。

 

「な、何!? 爆発!?」

「そんな。一体どこから」

 

 煙はすぐに収まった。艦橋には知らない人が一人、立っていた。大人びた雰囲気の黒いドレスのような服を着た彼女だ。

 

「あ、ああ!? そんな、一体いつの間に中へ?」

「シロコ!」

 

 先生が叫んだ。たった今現れた彼女の名はシロコだという。私の記憶の中にうっすらある彼女像とは少し違うが、目の前にいる彼女はシロコと似ていた。

 

「そっか。うん……結局ここまで来たんだ。どうして。警告したのに。ここには命の終わりしかないのに」

 

 シロコは落ち着いた声色で言った。銃を構え、先生を牽制している。

 

「シロコ先輩!」

 

 アヤネが叫んだ。その声に、まっすぐ先生を見ていたシロコの目線はアヤネへと移る。その隙に、艦橋内へアビドスの三人が入って来た。

 

「止まれ!」

「し、シロコちゃん?」

「シロコ先輩? シロコ先輩なのよね!?」

 

 シロコは一転して逃げようとした。空間に穴をあけたかのような真っ黒いゲートを出して、そこへ片足を入れた。

 

「待って、シロコちゃん!」

 

 ホシノは咄嗟にシロコを呼び止めた。しかし彼女は止まることなく、代わりに去り際に何かを投げた。

 

「しゅ、手りゅう弾!?」

 

 ホシノは持っていた盾を構えて、体ごと手りゅう弾に圧し掛かった。再度爆発が起こり、僅かに煙が立ち上る。

 

「ホシノ!」

 

 先生はすぐに彼女へ声をかけた。しかし、ホシノは何もなかったように涼しい顔をしながら逆に先生に「大丈夫?」と聞いた。

 

「うん」

「シロコ先輩……」

「シロコちゃん、どうして」

 

 騒動が落ち着いたのち、艦橋内では現状報告の話になった。現状戦艦はボロボロ、完全な修理は難しいものの、再起動までなら行ってくれるらしい。つまりは脱出のめどは立つそうだ。そして修復をしている間にも襲撃に来るであろう敵からの防衛の話になった。防衛に名指しされたのはゲーム開発部、対策委員会、美食研究会だった。私の名前は呼ばれなかった。

 

「オペレーターとシャーレには次の作戦をお願いします」

「次の作戦」

「ここからが本番かあ」

「はい。これより私たちは、アトラ・ハシースの箱舟を占領し、奪取します!」

 

 箱舟の奪取についてはヴェリタスが説明してくれた。要約すると、この作戦の目的は箱舟の自爆シーケンスを発動させて、箱舟を自爆させること。そのために箱舟の制御権を少しずつ奪う必要がある。

 

 箱舟は私たちがいる場所を基準として四つのエリアに分かれていた。柱を中心として円状の外郭があるこの箱舟には、外郭に三つ、そして中央に一つのエリアがある。それぞれのエリアには次元エンジンと言うものがあり、これを破壊することでシステムの掌握が可能だそうだ。

 

 残された時間は長くない。今の箱舟はアリスのおかげでとどめているようで、もし限界がくれば、箱舟はまた別次元に逃げてしまう。

 

 話が聞く限り、即行動が必要そうだ。

 

『じゃあ、早速行ってくる』

 

 私はヴェリタスから激励されてる先生に言った。先生は慌てて外に出ようとした。

 

『どうしたの先生、そんなに慌てて』

「僕も行くよ」

『どうやって戦うの。皆防衛するのに。もしかして大人のカード?』

「そうだけど」

『いいよいいよ。私一人でする』

「そんな、レイヴンだけに押し付けるわけには」

『時間が無いんだ。申し訳ないけど今は押し問答する暇ない』

 

 私は先生が外に出るのに時間がかかるのをいいことにさっさと次元エンジンの破壊に向かった。

 

 

 会話は先生と共にヴェリタスも加わった。彼女たちに道案内されながら、道中の敵を倒したり無視したりしながらあっという間に次元エンジンまでやって来た。

 

 ACと比較しても巨大な次元エンジンは不気味で赤い光を放っていた。私がエンジンに近づこうとすると、見覚えのある穴が空間に現れた。中からシロコが現れ、私を見上げた。

 

「あなた一人で来たの?」

 

 私は何も答えなかった。答えようとシロコには伝わらない。私が何も答えないのを不思議に思ったのか彼女は首を傾げた。しかし、すぐに納得したように目を伏せた。

 

「そっか。そうだった。悪いけど、エンジンを破壊させはしない」

 

 ACに身一つで抗おうなどと無駄なことだ。相手するまでも無い。このまま強行突破する。

 

 私が構わずショットガンを構えると、シロコは飛び上がり、私の右腕に着地した。そして私の右腕をつたってこちらへ走ってくる。私は驚き、固まり、引き金を引く手が止まった。シロコが銃口を向けた。銃口が正面から見える。スクリーンに映るこの映像はメインカメラからの映像だ。つまりシロコが今狙っているのは――

 

 気づいた時には遅かった。シロコが放った銃弾は機体のメインカメラに着弾した。本来もっと激しい戦場で戦うACのメインカメラはちょっとやそっとの被弾では壊れない。しかし、レンズの部分となると話は別だ。どうしてもレンズは脆くなる。それでも銃弾を一発二発受けたところで問題はない。しかしシロコはフルオートでまんべんなく撃ってきた。結果、レンズのひび割れはほぼ全体に行き渡り、スクリーンに映る映像全てがひび割れた。

 

 シロコが狙っていたのはこれか。見えなければACもただのウドの大木だ。私が油断したとはいえ人でもACに対抗することが出来た。だが照準は最初から固定したままだ。私は引き金を引いた。直後何かが爆発する音が聞こえた。

 

「次元エンジンの破壊を確認!」

『ごめん、油断した。一回そっちに戻る』

「どうしたの、どこか怪我でもした?」

『シロコにメインカメラをやられた。完全に油断してた』

「え、シロコが?」

「やはり止めに来ましたか」

「大丈夫? そこから戻れる?」

『全体的にひび割れた感じだけど、何とか戻れはする』

「気を付けてね」

 

 レーダーからシロコの反応は消えていた。エンジンを破壊されたので撤退したのだろう。とにかく今のままではエンジンの破壊は出来ない。一度戻ろう。

 

 何故シロコはあんな手段を取ったのだろう。その場で思いついたのか。いや、それにしては行動に自信が見えた。まるでこれが最適解だとでも言うみたいに。だとすれば、シロコはあの方法を知っていた? 何故知っている。ACへ対抗する方法を。

 

 映像が不明瞭だ。あまり速度は出せない。やっとの思いで船の部分まで戻ってこれた。

 

 映像が見れないので、コックピットを開けた。足元ではエンジニア部が待機していた。

 

「大丈夫かレイヴン。怪我は?」

『怪我はない。ただカメラがやられた。何とかできる?』

「レンズの取り換えはちょっと難しい。レンズは全損しちゃったの?」

『いや、一応防弾だし人間用の奴ならせいぜいヒビが入るぐらい』

「それなら何とか応急処置できるかもしれません!」

『お願い』

 

 私は三人を手に乗せて、メインカメラの近くまで持っていった。

 

「確かにひび割れがひどいけど、これぐらいなら補修材で何とかなりそうだ」

「多分十分ぐらいで終わるから」

「なるべく早く終わらせますね」

 

 助かった。何とか復帰できそうだ。この程度で戦線離脱とか目も当てられない。

 

 十分後、補修作業が終わった。確認のためにスクリーンに映像を映してみると、多少違和感はあるものの十分活動できる。

 

 私が第二エリアに向かおうとすると、足元には対策委員会の三人がいた。

 

「レイヴン。次のエリアには私たちも連れてってよ」

「あんたに比べたら戦力の足しにもならないけど」

「それでもどうか連れてってください! シロコちゃんに会いたいんです!」

『ホシノたちが連れて行ってほしいって言ってる。防衛は? 人手が足りないんじゃ』

 

 私は先生に聞いた。

 

「大丈夫。第一エリアの次元エンジンを壊したおかげで、ヴェリタスが防衛システムを構築してくれたみたい。多少なら抜けても問題ないよ」

『なら、いいか』

「またカメラを割られないように守ってもらうと良い」

『それは言わないでよ。もう油断しないから』

 

 私は三人に片手を差し出した。三人が乗ったのを確認すると、私は足早に第二エリアへと向かった。

 

 

 第二エリアは第一エリアに比べて抵抗が激しかった。恐らく第一エリアは防衛戦の時に戦力を削っていたので楽に攻略できたのだろう。正直言って私だけでは少し手こずっていたかもしれない。

 

 じりじりと前線を上げて行って次元エンジンの前までやって来た。その時、敵集団の最後尾に穴が現れ、シロコが現れた。

 

「シロコちゃん」

「シロコ先輩!」

 

 三人も気づいた様子だ。シロコはもはや何も言わずに私たちへ攻撃してきた。私たちも目の前の敵を蹴散らしながらシロコの元へ向かった。

 

 やがて次元エンジンの目の前までやってきた時、シロコはさっきと同じように私の腕へ飛び乗ろうとした。だが二度も同じ手は喰らわない。ホシノたちも飛び上がるシロコを牽制した。私はショットガンを発砲した。エンジンは無残に壊れた。

 

 シロコはやはりエンジンが壊れるとまた穴を出現させて逃げようとした。

 

「待って!」

「シロコちゃん!」

 

 ホシノとノノミがシロコを呼び止めた。彼女は二人の声に振り向いたが、結局何も言わずに消えてしまった。

 

『消えちゃった』

「このままこれを繰り返すのでしょうか」

「先輩を引き留めることなんてできるの?」

「いや、何か違う」ホシノはシロコが消えた空間を見つめながら言った。「あの子、あのシロコちゃんはなんだか私たちを避けているように見える」

「レイヴンがいるから正面からだと対抗できないから?」

「そうじゃないよ。最初は真正面から対抗してACを一時的に無力化したんだから。あれは、私たちを、私たちと向き合うのを怖がっているように見える」

「な、なんで先輩が私たちを怖がる必要があるのよ!」

「それは分からない」

 

 三人の会話を聞いていると、先生から連絡が来た。どうやら箱舟のシステムを半分奪ったおかげでシロコの追跡ができるようになったらしい。対策委員会の三人にも同様のメッセージが来たようだ。

 

「レイヴン、シロコちゃんを捕まえよう」

「そうよ! シロコ先輩を探して捕まえてやるんだから!」

「シロコちゃん捕獲作戦です!」

 

 捕獲作戦は穏やかな名前では無いな。私は再び三人を乗せて第三エリアへと向かった。

 

 道中、シロコの位置を教えてもらえると思っていたが少し時間がかかるらしい。それと先生も第三エリアに向かっているらしい。シロコに話をしたいそうだ。

 

 第三エリア、次元エンジンの前で先生と合流した。そしてやはり、シロコも現れた。

 

「やっぱり来たね」

「覚悟しなさい、シロコ先輩!」

「大人しく捕まってくださいね」

 

 やっぱりなんだか人に使う言葉ではないような。シロコを野生動物と同じ扱いしているように思う。

 

「シロコ」先生が尋ねた。「一つだけ聞いてもいいかな。どうしてプレナパテスの指示を聞いてるの?」

「違うよ先生、逆」

「逆?」

「私が色彩の嚮導者のいう事を聞いてるんじゃない。色彩の嚮導者が私の言うことを聞いてるの」

「一体どういう――」

「シロコさんの位置が分かりました!」

 

 ヒマリが突然会話に割り込んだ。しかしシロコは目の前にいる。その情報は全く役に立たないだろう。

 

「シロコさんは今、第四エリアにいます!」

 

 まさか、そんな。全員がヒマリの言葉に耳を疑った。第四エリア、確かに彼女はそう言った。しかしここは第三エリアであり、間違いではない。では座標のズレか? 否、それも違う。第三エリアと第四エリアの距離は間違いようのないぐらい離れている。では一体目の前にいる彼女は一体誰だ。彼女はシロコではないのか?




今日は色々あってとても疲れてしまった。
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