最近ちょっと忙しかったので書く時間と気力がありませんでした。
今回は次回の展開の調整用にちょっと長くなってます。
第71話
気の迷いを振り払い第四エリアを突き進む。箱舟の中は静かで、誰とも会いはしなかった。
地図によればこの先がナムラ・シンの玉座だ。しかし目の前にある扉は明らかに人間用であり、ACは通れない。やむを得ない、破壊する。
急停止し、扉めがけてショットガンを撃った。扉を含め、壁に亀裂が走った。壊れはしなかったが、体当たりで壊れるはずだ。先生とシロコを下し、私は扉から少し遠ざかった。そしてアサルトブーストで加速し、亀裂の入った壁を蹴った。壁は吹き飛び、中の様子が丸見えになった。
私が入るよりも先にシロコが入っていった。それを追いかけて先生も玉座に入っていった。最後に私が玉座に足を踏み入れた。
中は暗かった。床は真っ白で、壁には幾本か紫の線が入っていた。
玉座の中心に一人、立っていた。シロコはそいつに銃口を向けていた。
「敵、発見。私を拉致したあいつ! 止まれ! 少しでも動いたら撃つ。こっちにはシャーレの先生とレイヴンがいる。あなたには何もできない。大人しく降参して――」
シロコは奴に対して警告、降伏勧告を行うが奴は無視して懐から何かを取り出そうとしている。
「う、動くな!」
しかし奴は止まらない。やがて奴は懐から一枚のタブレットを取り出した。それは三つの弾痕があったが、私の見間違いでなければあれは先生が持っているシッテムの箱と同じではないのか。
シロコは警告を無視した奴に対して発砲した。フルオートで一マガジン分撃ち切った。発砲により発生した煙が視界を遮った。
私は一瞬奴が発した声を聞いたような気がした。その言葉は私の聞き間違いでなければ先生がシッテムの箱を起動させたのと同じようなフレーズであった。
「先生の認証を承認」煙の中から声が聞こえる。それはこの場にいる誰でもない声だった。煙が晴れていき、傷一つ負っていない奴の姿と、奴の前に立ついるはずのない少女の姿が見えてきた。「このシッテムの箱に常駐するメインOS、A.R.O.N.A命令待機中」
「ア……ロ、ナ?」
先生は驚きのあまりぎこちない声で名前を復唱した。かくいう私も驚愕している。驚きを消化できないうちに相手はどんどん情報を吐き出してくる。
「アトラ・ハシースの箱舟、復旧システムを起動。シッテムの箱の権限により破壊されたアトラ・ハシースの箱舟を多次元の同一存在と同一化・修復します」
彼女が宣言すると、私が壊した壁は瞬時に修復された。
「約三十分後、修復百パーセント修復完了予定。箱舟に侵入したウトナピシュティムの本船は八百秒後、最終自爆シーケンスを発動」
彼女は淡々と告げるが、つまり我々の船を自爆させたうえで箱舟を修復させることが出来るという事だ。まずい、非常にまずい。彼女を止めなくては。
「だから言ったでしょう。定められた運命から逃れることはできないと」私が行動を開始しようとした直前、牽制するかのようにあのシロコが虚空より現れた。「予定通りキヴォトスは終焉を迎える」
「あれは、私?」
シロコがもう一人の自分を見て驚いている。シロコはまだ自分と同じ存在がいることを知らなかったようだ。
「肯定。砂狼シロコ。別時間軸の同一存在」
アロナと同じ名を持つ少女が答えた。そして先生はそんな彼女に「じゃあ、君はアロナ?」と質問した。
「一部肯定。このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOSであるA.R.O.N.Aです。私はあくまでシッテムの箱の所有者である先生を助け、サポートするための存在です。先生、ご命令を」
「そんな、ありえません! シッテムの箱の管理者は私で、でも私が二人いて、それならあのシッテムの箱は、あそこにいる私は、あ、ありえません! 彼女がシッテムの箱のシステム管理者ならなぜあんなところにいるのでしょうか。何かずるでもしない限り――」
アロナが叫んだ。しかし同じ名を持つ少女はアロナに対しても回答を行った。
「回答。それはここが状態の共存を維持しているアトラ・ハシースの箱舟の内部だからです。このナムラ・シンの玉座は、次元、時間、実在の有無が確定されずに混ざり合う混沌の領域。教室を持たない私に先生が空間を歪曲したからここにいるのです。ズルではありません」
「わ、私の質問に答えた!? 私の声は先生にしか聞こえてないはずなのに!」
いや、それは違う。だって私にも聞こえている。本当なら確かに先生にしか聞こえないのだろう。だが、私にも声は聞こえている。会話はできないけども。
シロコが二人いて、アロナも二人いる。そして彼女の発言。つまり彼女の言う先生とは、あの体格の大きい仮面をした奴の正体は――
「プレナパテスが別時間軸の僕ってこと?」
先生は恐る恐るそう答えた。
「一部肯定。対象が連邦捜査部シャーレの先生と同一存在であることを確認……しかし一部差異があります」
彼女はそう言った。差異と言うのは明らかにその姿であろう。私が知る先生よりも体格が大きい。あとその見た目は正直言って趣味が悪い。プレナパテスとかいう変な存在になっているし。
「先生!」アロナが叫んだ。「今私の方でもプレナパテスの生体情報を確認してみましたが、確かに見た目こそ変わりましたが、あれは別時間軸の先生です。で、ですがプレナパテス、いえ、あの時間軸の先生はすでに……生きて、いません」
「プレナパテスは、生きていない?」
先生は思わず復唱した。その言葉にシロコが反応した。
「そう、先生を殺したのは私だから。そうしたら先生は色彩の嚮導者になっちゃった。多分色彩の影響だろうね。そして私をここに連れてきた。世界を終焉に導くという、私の運命を実現するために」
「え?」向こうのシロコの言葉に、こちらのシロコは耳を疑った。「あなたが、私?」
「うん」
「私が、せんせいを、ころした?」
「そう」
「世界を、滅亡?」
「そう」
こちらのシロコは声を震わせながら尋ねるのに、向こうのシロコは酷く冷静に答えた。その態度にこちらのシロコは怒りを現した。
「ふざけ、ないで! 先生を殺して、貴方の存在の道具として利用? 私がそんなことするわけ――」
こちらのシロコは即座に発砲した。しかし向こうのシロコはいとも簡単に近づき、シロコの銃を手で払った。
「あなたがいくら否定したところで、これはすでに定められたこと。あなたはそうなる。この世界に存在する以上、そう定められているの。ところで、あなたはさっきからずっとそこで静観してるけど、いいの?」
シロコは突然私に目線を向けてきた。私はなぜ急に自身に意識が向けられたのか分からず何も答えられなかった。
「何も考えてないの? この場に別の時間軸の私、そして先生がいる。なら、考えなかったの? 彼女は確実ではあるけども仕事が遅い。口うるさくもなって、昔はあまりしゃべらなかったんだけどいつから変わってしまったんだろうね」
何を、言っている……別の時間軸、シロコ、先生、アロナ……まさか、まさか、まさかまさかまさか!?
レーダーの赤点は三つあった。いや、もう一度見る。赤点は一つ、二つ、三つ……四つ? スクリーンで機体が何かをロックした。その瞬間玉座の天井が崩れた。そしてソレはプレナパテスの前に着地した。
「いや、すっかり遅くなった」
「遅かったね。先生に何かあったらどうするの」
「うるさいな。先生にはシッテムの箱があるんだから大丈夫でしょ。大体なんでお前に指示されなきゃいけない。先生を道具扱いしやがって。お前いつか殺してやるからな」
「レイヴン、今は口喧嘩をしている所ではありません。やはりいました」
そのACは私に向いた。初めて見る機体だ。頭も胴も見たことが無い。足は逆関節で両腕両肩にショットガンを持っていた。そして先ほど天井から現れた際にブースターから真っ赤な炎が見えた。あの機体も技研製のジェネレーターを積んでいる。
「ああ、いたんだ。まああれだけ派手に迅速にエンジン壊すんだからそりゃいるよね、ACが。流石私じゃん。仕事が早い」
『あなたは、もう一人の私?』
「ん? メッセージが……あ、へぇ? そっかあ、そっかそっかあ。そっちの私はまだ喋れないんだあ? そうだよ。私はもう一人のあなた。別の時間軸のレイヴンだよ」
『なんで、喋れるの。私は何も話せないはずなのに』
「そりゃ手術したからに決まってるでしょ。歩けるようにもなったし、傷も治した。昔みたいに全身包帯じゃないんだよ」
「やはり別の時間軸では同一人物でも違った姿になるようです」
「そうみたいだね。アセンも私と全然違う。初期機体か……武器はハンドガンにブレード、タレットに……見たことないのが乗ってる。レーザーショットガンみたいだけど。それはそうと、初期機体でよくここまでこれたね。まあキヴォトスにACなんていないし初期機体でもハンドガンでも十分やっていけたか」
『エ、ア? エアがそこにいるの? なんで、どうして』
「うわ、無視された」
「私がいることに驚いているようです」
「だろうね、あんなことしたんだし。あっちは何も知らないし」
「レイヴン、いつまでも無駄話をしていないで早く仕事をして。向こうにもACがいる限り私たちの勝機は薄い」
シロコがACに命令した。するとACは持っていたショットガンを彼女に向けた。
「うっさいな。何度も私に指示をするなって言ってるだろ。今私は彼女と話をしてるんだ。邪魔をするな」
「傭兵なら雇い主の言うことぐらい聞いて」
「私は独立傭兵だ。誰の言うことを聞くのも自由だ。裏切るのも自由だ。ヘイローをぶっ壊されたくなれりゃ黙ってろ……いや、いやいや。ごめんね。目の前で喧嘩しちゃって。キヴォトスに来て初めて同胞と出会ったんだ。もう少し話がしたいんだけどしょうがない。これも仕事だ。あまり引き受けたくなかったけど先生に恩を返さなくちゃいけない。悪いけど死んでくれるかな」
ACは何の前触れもなく動き出した。逆関節による驚異的な跳躍力は一瞬で私との距離を詰めてきた。そして両腕に持った二丁の重ショットガンを撃った。反応が遅れた私は回避も遅れた。私がクイックブーストで避けた時にはすでに二発分の被弾をしていた。
スタッガーがすでに半分近く溜まった。こんなにスタッガーが早く溜まるなんて。私は唐突に焦燥感に駆られた。ACと戦うのが久々で感覚が鈍っている。完全に忘れていた。目の前にいる敵は簡単に私を殺すことが出来る。
すでに肩にかけていたショットガンと交換していた。もう一度避けたが、やはり避けきれない。多分片方が当たった。これで両方を撃ち切ったのでリロードに入るはずだ。その間に体勢を――
目の前に機体の足が映った。私はスクリーンに釘付けになり操作を忘れた。衝撃と共に私は大きく後方へ吹き飛び、壁と激突した。
「んー? おっかしいな。なんか弱くね。私ってこんなに弱かったかな」
「確かに少々動きが悪いですね。レイヴンの動きについていけていません。ですが注意してください。すぐにレイヴンの動きに対応してくるかもしれません。なにせ彼女はもう一人のあなたなのですから」
「まあ、キヴォトスにACいないからね。ちょっと感覚忘れてるだけでしょ。ほら起きて。まだ全然ダメージになってないでしょ。動かないならさっさと殺すよ?」
ここは狭い。距離を取ろうにもすぐに壁と激突する。それに流れ弾が当たる可能性がある。先生はアロナが護ってくれるだろうが、シロコはそうもいかない。
私は天井を見上げた。もう一人の私が入って来た穴はまだ塞がっていない。あそこから外に出よう。
待ちくたびれた彼女にとどめを刺される前に私は穴に向かって飛んだ。
「ちっ、逃げる気か。逃がしはしない!」
彼女もすぐに私を追いかけて来た。外に出ると、空が真っ赤に染まっていた。虚妄のサンクトゥム攻略戦を思い出す空だ。私が着地して数秒後に彼女も穴から飛び出した。
「外で戦おうってわけ? いいよ。こっちの方が広いしね」
『一つ聞いてもいい?』
「手短にね」
『なんでそっちの先生は死んでるの? あなたが守ってたんじゃないの?』
「は?」
『別の時間軸だとしても、あなたは先生を守ってたんでしょ? だって恩を返すって、そう言ってた。じゃあ守るよね。なんで死なせてるの?』
「うるさいな。なんでお前に言われなくちゃいけない」
『私だから言うんだよ。別に責めたいわけじゃない。何があったの?』
「さあね。どこかでずれたんだ。私たちとお前はほぼ同じタイミングでキヴォトスに来た。キヴォトスの状況も一緒だった。ゲーム開発部が廃墟で私たちを見つけたんだ。違うのは私にはエアがいて、お前にはいないこと。ルビコンでの選択が違ったんだ」
『ルビコンでの選択? 選択って一体何が』
「なんだお前、そんなことまで忘れたのか? ルビコンの思い出は全部捨てたのかよこの野郎」
彼女はなぜか私に対して当たりが強くなってきていた。
「お前、エアを裏切っただろ。最後までウォルターの言いなりになってコーラルを焼き払っただろ」
『当たり前でしょ。それがウォルターの願いだった』
「私は違う。私はエアを選んだ。友人なんだ。友人を殺すことなんてできない。お前はウォルターの――」
私は自分で顔がゆがんだことに気づいた。こいつは今当たり前のように言ったが、ウォルターの遺志を無下にしたと宣言した。
『ウォルターを裏切ったの?』
「うるせえ! 今私が話してるんだ! 他人の話を遮るんじゃねえ!」
「レイヴン、落ち着いてください。怒ってばかりでは話し合うことが出来ませんよ」
「ああ、ごめん、つい」
『あなたはご主人を裏切ったの?』
「そうだよ。でも人聞きが悪いな。確かにそうではあるけども、完全に裏切ったわけじゃない。私はエアと協力してコーラルとの共存を目指してたんだ。ウォルターがなんでコーラルを焼こうとしてたか分かる? コーラルが増えすぎると汚染を引き起こすんだ。それがルビコン外にもれるのを防ぎたかった。こういっては何だけども、ウォルターのやり方は手っ取り早く、効果の大きい方法だ。だが如何せん考えが浅はかだ。ルビコニアンのことを何にも考えちゃいない。彼らにとってコーラルは無くてはならないもの。焼き尽くしてしまえばルビコニアンの未来はないんだ。だから私は焼き尽くすんじゃなくて共存を選んだんんだ。そのせいでオーバーシアーとは敵対してしまったけど」
『そんなの屁理屈だ。結局は問題を先延ばしにしただけじゃないか。ご主人が用意した計画を台無しにしたんじゃないか。お前はご主人を裏切った!』
「ご主人ご主人うるせえな! お前は犬か!?」
『犬だ! 猟犬だ! 何のために私は拾われた、ご主人の犬となって命令に従うためだ! 自他ともに認める猟犬になるためだ! ウォルターだってそのために私を拾ってくれたんだ!』
「おい、おいおいおい。お前マジで言ってるの? ウォルターがお前を犬にするために拾ったって? そりゃ酷い。ウォルターも浮かばれないな。そうだな、確かに私はいろんな奴から犬呼ばわりされたさ。猟犬、野良犬、駄犬。だがな、お前。一度でもウォルターがお前を犬と呼んだことが、犬のように扱ったことがあったか?」
『もちろん――』
あれ、ウォルターは言っていただろうか。私を犬のように扱っていたことはあっただろうか。いやだってあるはずだ、そんな、無いなんて――
私はルビコンでの記憶を思い返した。ウォルターが私を何と呼んでいたのか思い出せるだけ思い出した。あれだけ呼んでいるはずだ。私を犬のように扱ったことが……ない。思い返しても出てくるのは私を621と呼ぶウォルターの姿だけだった。
『――ない?』
「そうだ、ない。ウォルターは私を621と呼び続けた。強化人間の番号、そう強化人間、つまり人間だ。ウォルターは私を人間のように扱った。人間として生きてほしかったウォルターに対してお前は犬として生きることを選んだ。その時点でお前はウォルターを裏切ったんだ。今の今までお前はずっとウォルターを裏切ってたんだよ!」
『そんな、そ、そんなこと、そんなことない。そんなわけあるはずない! 私はご主人を裏切ってなんかいない!』
私の目から涙が流れて来た。一番裏切りたくなかった、裏切るはずがない相手を裏切っていたと言われたのだ。自分に対する失望と、彼女に対する怒りが混ざった。
「ウォルターのことをご主人ご主人言ってる時点で裏切ってるってことが分かんねえのかお前よお!? お前はもう覚えてないかもしれんが、初めてルビコンに来た時に大金を得れば私でも人生を買い戻せると言ってくれた。そして最後に彼は私に再手術をするように言ってくれたんだ。私が稼いだ金だからと。私は全てが終わった後に遺言通り再手術した。今の私は人間とほど近いところまで回復したんだ。道は少したがえてしまったけども、これで少しでもウォルターが報われるなら幸いだ」
『待って、何それ。私そんな遺言聞いてない。私はコーラルを焼くようにしか――』
「だろうな。お前が最後に聞いたウォルターの声は技研都市から脱出するときだったから。私は違う。私はザイレムを落としたときにウォルターと会ったんだ」
『そんな、でも技研都市でアーキバスに捕まった時にウォルターはもう』
「正直言ってアレは生きていたと言っていいものか分からないね。企業に洗脳された状態で技研都市に眠っていた機体に乗って私の前に現れた。企業の敵となる私を止めるために。その時の機体の頭と胴は今の私のアセンだよ。引き継いだ」
『引き継いだ? 引き継いだってまさか、お前は、お前はウォルターを』
「殺した。私が殺した」
『この裏切り者がぁ!』
「だから最初から裏切り者はお前だといってんだろうが、この駄犬がぁ!」
私はハンドガンを連射し、ドローンを展開しながら彼女に向かって突撃した。彼女もまた私に突撃した。私は光の剣を発射した。しかしそれは易々と彼女に避けられてしまう。
「当たんねえな、そんな大ぶりな攻撃!」
「レイヴン、気を付けてください。あのポットから展開されるタレットはルビコンの物とは違うようです」
「もう片方の武器も違う。キヴォトスで改造したな。多分エンジニア部だな。私の敵じゃない」
彼女が私の攻撃を割け切ったのちに二丁のショットガンを撃った。今度こそ私はそれを避けた。予想通り肩のショットガンを取り出し発砲した。それも避けると蹴りを入れてきた。それも避けた。
「ちっ、全部避けられた」
『お前の攻撃なんかもう受けるか!』
「お前のも当たんねえよ!」
彼女はクイックブーストで巧みに避けると、私の頭上を飛び越えるように移動した。照準が追い付かず、ロックが外れた。急いで後ろを振り向くとすでに彼女はショットガンを構えていた。私は慌てて横に避けると、弾が掠っていった。休む暇なく再びショットガンが発砲された。クイックブーストで避けようとすると、なぜか機体が動かない。
『な、どうして』
機体の中でエネルギー切れの音が鳴っていた。目の前の彼女に集中していてエネルギー管理を怠った。あえなく私はショットガンの攻撃を喰らった。続いて蹴りも喰らった。強い衝撃と共に、私は後ろへ吹き飛んでいった。
彼女は好機と言わんばかりに追撃をかけに来た。私は揺らぐ視界の中でこちらに向かってくる彼女を見て、咄嗟にアサルトアーマーを起動させた。エネルギーも回復しきってない。今ある武器では彼女を止めることが出来ない。残った手段はアサルトアーマーだけだった。
真っ赤なパルスが現れ、数秒のチャージが始まった。彼女はもう私の目の前まで来ている。逃げられない。スタッガー状態にして切り伏せてやる。
しかし、彼女は私がアサルトアーマーを起動させたのを見るとすぐさま自分もアサルトアーマーを起動させた。私のアサルトアーマーがかき消されてしまう。しかしもう取り消せない。決まった未来に何もできず私は自分のアサルトアーマーがかき消されるのを見ていた。代わりに残ったアサルトアーマーで私がスタッガー状態になってしまった。
彼女は重ショットガンと軽ショットガンをそれぞれ私に撃ち込んだ。
『AP残り三十パーセント』
機体のコックピットに穴が開いた。僅かに外が見えた。腹に痛みが走る。恐る恐る見て見ると出血していた。多分飛び散った破片が刺さった。
彼女はパターン通り蹴りを入れた。抵抗できない私はより遠くに吹き飛んだ。終着点は突き破った時に出来た穴だった。私は穴にそのまま落ちて行ってしまった。
暗い室内で先生たちが戦っていた。私はそのど真ん中に落ちて来た。痛みに耐えながら上を見ると彼女が下りてくるのが見えた。ショットガンを構えている。私は恐怖に襲われた。勝てない、何もかも彼女を下回っている。彼女に勝てないと私は確信した。私は最後の抵抗で遠ざかった。逃げたかった。壁に激突してそれ以上下がれなくなった。彼女はわざとらしく歩いて来た。そしてショットガンの銃口を私に向けてきた。
「だめだね。ちょっとこっちにおいで」
誰かが私を後ろに引っ張った。私はそのまま真っ暗な空間に真っ逆さまに落ちた。
次回はなんとか二日で書きたいですね。