レミリアの血筋がドラルクの一族だったら   作:鳩胸な鴨

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劇物乱入。


新横浜と繋がってしまった幻想郷

「お前の祖父さん、忘年会来なかったな。

いや、平和でよかったけど」

 

新横浜の一角にあるオフィスビルにて。

ここに事務所を構えた人気吸血鬼退治人「ロナルド」が、居候である吸血鬼の男に声をかける。

居候の身とは思えぬ寛ぎっぷりを見せる男…最弱の吸血鬼「ドラルク」は、コントローラをいじりながら口を開いた。

 

「今年はレミリア姉様とフラン姉様が住んでる地域の忘年会に行ったらしい」

「姉様?お前、姉貴居たのか?」

「いや、辺境に住んでる私のいとこだ。

ちょっと前に、姉妹共々お祖父様から逃げるように引っ越してった」

「気の毒だな…」

 

脳裏に某RPGの画面が広がり、『しかし、まわりこまれてしまった!』と書かれたテキストが浮かぶ。

波乱の忘年会だったろうな、とロナルドが思っていると、ドラルクは聞いても居ないのに語り始めた。

 

「特にフラン姉様はメンタルが弱い上、お祖父様に対するトラウマが酷くてな。

500年近く引きこもってて、私も存在を知ったのが100歳になった後だった」

「何やったんだよお前の祖父さん」

「私も知らん」

 

想像もできないが、碌でもないことには違いない。

互いに遠く離れた場所にいるフランに同情を向けつつ、ロナルドは机に置かれたドラルク製のカップケーキへと手を伸ばす。

と、その時だった。

 

「ヌーっ!!」

「スナァッ!?」

 

可愛らしい鳴き声と共に、ドラルクに球体が激突したのは。

無論、足にリモコンを落としただけでも死ぬクソザコであるドラルクがその衝撃に耐え切れるはずもなく、即座に塵と化す。

が。次の瞬間には何事もなかったかのように復活し、その球体を抱え上げた。

 

「ジョン、どうかしたかね?」

「ヌー、ヌーっ!!」

 

球体…アルマジロであり、ドラルクの使い魔でもあるジョンがなにかを訴えかける。

ドラルクはそれに訝しげな表情を見せ、ジョンが先ほどまでいた場所へと視線を向けた。

 

「何?クローゼットの中が変?」

「半田か、巻き込まれた吸対の方か?」

「すぐ決めつけるのはよくないと思うが、それくらいしか思い浮かばんな」

 

前例を想起しながら、2人と一匹が恐る恐るクローゼットへと歩み寄る。

確かに、中から少しばかり風切り音のような音が響いている。

換気口とかあったっけか、と疑問に思いながら、2人はその扉を開けた。

 

「……なに、この…何?」

「これまたヘンテコな空間だな」

 

クローゼットの奥に広がっていたのは、数々の目玉が浮かぶ謎空間。

果ては見えず、どこまでも続くようなそれを前に、2人が困惑していると。

突然、その背中に衝撃が走った。

 

「3名様ご案内」

 

響いたのは御真祖様の声。

ふざけんなこの野郎。

そんな文句を叫ぶ暇もなく、2人と一匹はその空間に吸い込まれた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「疲れた…」

「御真祖様、相変わらずでしたね…」

 

翌日。ぐったりと机にもたれかかるレミリアに、同じくグロッキーになったメイド…十六夜 咲夜が声をかける。

凄まじく疲れた。

特にあのよくわからんベーゴマ大会。

神社が倒壊する音と霊夢の怒鳴り声が響き渡る中で繰り広げられた激闘を想起し、更にげんなりするレミリア。

一応、御真祖様が破壊の痕を直してくれたものの、失った気力までは戻らない。

今日1日は、宴会に参加したほぼ全員が休んでいることだろう。

そんなことを思いつつ、レミリアが紅茶の入ったカップに口をつけたその時だった。

 

「ヌーっ!?」

「スナァッ!?」

「あばっ!?」

 

ずんっ、と、背後に衝撃が走ったのは。

レミリアが紅茶を吹き出し、そちらに視線を向ける。

そこには先日渡されたブロマイドの男と、見覚えのあるマジロが、これまた見覚えのある砂を下敷きに悶絶する姿があった。

 

「ってて…、どこだここ…?」

「ヌ?ヌっ、ヌーっ!」

「若造!早く退きたまえ…、むっ?」

 

砂が集まり、痩せぎすの男を構築する。

間違いない。

疑念を確信に変えたレミリアは顔を歪ませ、声を張り上げた。

 

「なんでここに居んのよ、ドラルク!!」

「あ、やっぱり。

お久しぶりです、レミリア姉様」

 

数十年ぶりに会ったいとこを前に、ドラルクが軽く頭を下げる。

その手に抱かれたジョンも、「ヌーっ」と声をあげ、レミリアたちと挨拶を交わした。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「なるほど。雑な同人誌の導入みたいな経緯でこっち来たのね」

「ええ、まあ。その通りでして」

 

レミリアの自室にて。

膝にジョンを座らせ、顎を指で撫でながら、レミリアが確認を取る。

いとことは思えないほど似てない。

この痩せぎすの男と美少女がセットでいたら、間違いなく通報してる。

そんなことを思いつつ、ロナルドはドラルクに耳打ちした。

 

「んで、ここどこなんだ?

日本じゃなかったりしないよな?」

「いや、日本だ。幻想郷と言って、少し特殊な場所ではあるがね」

「幻想郷…って、あの妖怪とか神様とかが住んでる幻想郷か?」

「おや、知ってるのかね?」

 

ロナルドの確認に、ドラルクは訝しげに首を傾げる。

それに対し、ロナルドは苦々しい顔で答えた。

 

「前にオータム書店の紅葉狩りで来た」

「そんな小旅行的なテンションで来られる場所じゃないが、オータム書店って聞くと納得できるな」

 

「きさらぎ駅みたいな場所なんだが」と、ドラルクが呆れを吐き出す。

オータム書店ということは、十中八九、物騒なイベントだったのだろう。

やたらと戦闘力の高い出版社のことを想起していると、レミリアが問いかけた。

 

「で、肝心のお祖父様はどこに行ったの?」

「そういや見ないな、あのじいさん」

「こっちに居るのは間違い無いと思うんだがね」

 

人里に降りていたら大変だ。

ここは外の世界ほど吸血鬼に慣れていない。

御真祖様が降り立ったが最後、阿鼻叫喚どころの騒ぎでは無い大混乱が巻き起こる。

レミリアがそう危惧していると、咲夜が彼女の肩を突く。

その手にはメモ帳の切れ端が握られており、咲夜はなんとも言えない表情でそれを読み上げた。

 

「『変な裂け目が出てるから、その原因調べてくる』と飛ばれました」

「え?お祖父様にしてはまともな理由…」

「『のはついでで、しばらくこっちで遊んでる』とも」

「じゃなかった」

 

デスゲーム、再開。

再び巻き起こるであろう混沌を前に、レミリアが辟易と絶望を浮かべる。

その時だった。

ドラルクがふと、何かに気づいたように声をあげたのは。

 

「ということは、あのよくわからん気色悪い目玉空間は、お祖父様の仕業では無いと」

「そうなのか?」

「お祖父様は割となんでもできるからな。

そのお祖父様が原因究明も兼ねて練り歩くということは、お祖父様もあの目玉空間が何か理解していないということだ」

「わかってるムーブかましてたのはどう説明すんだよ」

「お祖父様のことだぞ。先に自分で入って行き先を調べたに決まってるだろ」

 

ドラルクは一頻り自分の憶測を語ると、咲夜が淹れた紅茶を啜る。

と。そのタイミングを見計らったかのように、ロナルドが声を張り上げた。

 

「…ってことは、事務所のクローゼットあの謎空間になったまま!?

つまり、幻想郷とシンヨコを行き来できるってことか!?」

「レミリア姉様、私たちが出た場所に謎の目玉が浮かんだ空間あります?」

 

ロナルドの大声に吃驚して死んだのだろう。

砂になったドラルクを前に、レミリアは呆れながらも視線を動かす。

ドラルクたちが落ちてきた場所。

ちょうどベランダの屋根にあたる部分に、目玉の浮かぶ空間…「スキマ」が浮かんでいるのがわかった。

 

「あるわね」

「わーい!これで積みゲーの消化気にしなくて済む!」

「帰れるってのはありがてぇな。

出張掲載の原稿全然進んでなくて、締め切りあと四日だし…」

「帰ってさっさと書きたまえ」

 

四日後に担当編集から逃げ惑う姿がありありと目に浮かぶ。

作家ならではの悩みに頭を抱えるロナルドにドラルクが呆れを向けていると。

 

「いやぁあああああっ!?!?」

 

唐突に、館の中から悲鳴が轟いた。

ロナルドからすれば初めて聞く声だが、ドラルクとレミリアはその主人が誰かわかったらしく、驚愕に目を見開く。

 

「この声…、フラン姉様か!?」

「ただ事じゃねぇな…」

「フラン!!」

「あ!?おい、アンタ!!」

 

ロナルドたちが困惑を浮かべるのも束の間、レミリアがその場から駆け出し、館の中へと戻る。

ここで待っているというわけにもいくまい。

残された3人と一匹は顔を合わせると、咲夜を先頭にレミリアを追いかけた。

しばらく進んでいくと、ちらほらと酷く怯えた様子のメイドたちが、壁にもたれかかっているのが見える。

一人一人話を聞いて行きたいところだが、今はレミリアを追うことが先決。

彼らは足を速め、先に曲がり角で足を止めたレミリアの横へと並んだ。

 

「お嬢様!どうしたので…す……」

 

先にレミリアに追いついた咲夜が声をかけようとし、声を窄める。

ロナルドたちがそちらを見ると、そこには。

 

「あ、ロナルドさーん!

この館すごいですね!

幼稚だけど、どことなくエロティシズムを感じさせる服装と童顔の子ばっかりで、さっきから興奮が止まら、あ、アッ、パッ…、パオォオオーーーーーッ!!!」

 

形容し難い謎生物が象のような鼻を天に掲げ、嬌声をあげる。

その側では、尻餅をついたフランドールが半泣きになって謎生物を見上げているのが見えた。

 

「…………なに、この…、何?」

「へんな!?

お前なんでここに居るんだよ!!」

 

彼の名は「フォン・ナ・ドゥーブツ」。

変身能力を得意とする一族に生まれた高等吸血鬼である。

が。年がら年中エッチなことを考えているせいで集中力が乱れまくっており、このイモムシか象かも判別できないクリーチャーの姿で馴染んでいる変態でもある。

しかも、些細な材料で勝手にヒートアップする悪癖もあり、その暴走は見るに耐えず、手に負えない。

現在もまた、可憐なメイドやフランドールの容姿に大興奮しているらしく、小さな子が見たらショック死不可避なクリーチャーと化していた。

そんな彼が、どうしてこの場にいるのか。

ロナルドが問いかけると、フォン…通称「へんな動物」はあっけらかんと答え始めた。

 

「ロナルドさんと下から見上げた乳のエロさについて語り合おうと思って事務所にお邪魔したんですけど…」

「……最低」

「そんなんコイツと話して盛り上がった記憶ねーから!

んで、それでなんでウチのクローゼットに近づいたんだって聞いてんだ!!」

「クローゼットが開きっぱなしだったので、エロ本でも探そうかと思って」

「素揚げにしてぶっ殺すぞ!!」

 

レミリアたちの絶対零度の視線がロナルドとへんなに突き刺さる。

ロナルドは多少なりとも堪えているようだが、へんなは気にせずに咲夜へと目を向けた。

 

「お、おおっ、おおおおっ、パオォオオオーーーーーッ!!!」

「ひっ…!?」

「そこのメイド服のお嬢さん!ぜひ、お名前をお聞かせくださ…」

 

いきりたち、咲夜へと滲み寄るへんな。

恐怖指数で言えば、夜道であった露出魔とそう変わらないだろう。

あまりの恐怖に悲鳴を漏らす咲夜の前に、ロナルドとレミリアが前に出る。

 

「「いい加減にしろやこの変態が!!」」

「パオォオオオーーーーーッ!?!?」

 

見事な二発のストレートが、へんなの顔面に突き刺さった。




新横浜の変態と絡ませたかった。
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