イケメンに弱い宿儺様   作:エレメント

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前世

 真人と順平は逃してしまったし、盗まれるものは盗まれてしまったが。

 驚きの、被害者0! 

 

『ふふふふふ、褒めよ! 讃えよ!! 俺は結構頑張ったのではないか!?』

「宿儺流石だ」

「素直にすごかったわよ」

「しゃけしゃけ」

「助かったぜ。けど狗巻に話しかけられる度顔そらすのは感じ悪いからやめような?」

「すげーな、棘と似てる術式。【警告】っていうんだっけ?」

「やー。さすが両面宿儺だね。でも襲撃の可能性に後から気づいたのはマイナスかなー」

『ふははははは、そうであろうそうであろう。今日はご褒美の甘味パーティだな』

「もちろん、奢らせてもらうよ」

 

「くっ 楽しそう……!」

「宿儺、完全に受け入れられてんじゃない」

「助かったけどナ」

「くっ しかし助けられたのは事実……!」

 

「いやでも、指を悪用するってはっきり言われたし、それよりは宿儺に取り込ませたほうが良いんじゃない?」

「ふん。呪霊など信用できるか。お前はたぶらかされているとしか思えんな。五条 悟」「さて、それはどうかな? で、甘味パーティ、京都校の皆は来る?」

 

 

 

 

 そして、五条 悟の奢りで、甘味パーティーを開く事となった。

 東京校、京都校が勢揃いで、カラフルでふわふわな甘味をいただく事とする。

 

 

 

 

 

『甘いな! 美味いな! 酷使した喉に染み渡るな!』

「じゃあ、最低でも【警告】使った数は食べないとね。どんどん食べてね」

 

 甘味は正義だ! 前もその「前」も、なかなか手に入るものではなかった。

 

「そういえば、宿儺、【警告】の時に不思議な言葉使ってたけど、あれなに?」

「私も知りたい! すごく不思議な言葉」

『嘘をつけぬ特殊な言語だ。謝罪の手紙など心を込めたい時に効果は抜群だぞ。選ばれしものしか読めないが。魔法を扱う時に使う……のだったか?』

「魔法!? すげぇ!」

『いいものではないぞ。使いすぎると骨と皮になって死ぬし、嘘をつけぬし、言葉にも気を使わねばならぬ。むしろこっちで出来たのが不思議だ。呪力のほうが余程良い』

「そんなもの? 宿儺も魔法使う?」

『そんなものだ。俺は嘘を付くから魔法は使わんし、使っても弱いだろう。嘘つきの言葉などぺらっぺらよ。……ん? 何故俺は精霊の言葉を使えた? ……?』

 

 あくまでも物語の知識だけだったはずだ。それなら、言葉などわかるはずもない……。

 まあ、転生などという事、精霊の縛りということ自体がもう異常なのだが。

 

「まあ、その辺は一年生だけのときにね」

 

 俺が考え込んでいると、緩やかに五条が止める。

 

「ええ! 興味あります! 魔法!!」

「宿儺お酒飲む?」

「こーら、虎杖はまだ未成年でしょ!」

「とても呪いとは思えんな」

 

 つんつんと口を突っつく加茂。

 ガルルルル。それをしていいのは釘崎と恵だけだ!

 

「宿儺ってギャルっぽい所あるよね」

「ギャルとして産まれたことぐらいあるわ」

「はい、嘘ー!」

 

 いや、俺とてお友達とキャッキャしていた頃を……俺は、俺は男の転生体ではなかったのか?

 

「本当本当。最近、宿儺の過去を夢見るんだよな。死後の世界がどうなってるかわからないけど、タイムスリップしてる? 不思議ー。現代で生活してたのに、転生したら異世界人で、もっかい転生したら平安時代の人だもんな」

 

 ジュースを飲みながら、虎杖が言う。

 

「悠仁。それ報告受けてない」

『夢……を、見て、いたか?』

「宿儺忘れちゃってたみたいだし」

『どんな夢だった?』

「あれ、言って良いものじゃないと思う。多分宿儺の大切な思い出だし、後で二人の時に話すよ」

「悠仁~? 尚更報告してほしいんですけど」

 

 五条は虎杖のほおをつねる。

 

「いででででっ 俺、宿儺と親友だから!」

『夢を見ている事自体言わねばもっとありがたかったのだが』

「そうよ、虎杖。それもう言ってるも同然じゃない。乙女の秘密を言うなんて最低よ、虎杖!」

「宿儺ごめん! あ、それで、なんだけど……例えば、宿儺への転生を防いだら、どうなるのかな」

『歴史が変わる。こう見えても、悪いことも良いこともたらふくやっていたのでな。特に呪術師なんぞは1000年前の先祖が殺されたり救われたり殺されたりで、消えたり現れたり、大変なこととなるだろうな。……救われたくないかと言えば嘘になるが、やってきたことを無にされたくない。救った命の中には、あの日あの時殺されて、生まれ変われてよかったと思うものもある』

 

 というか、私がめちゃくちゃ残酷になるぞ。宿儺の存在が消えるわけでもない。他の誰かが宿儺になって、当然【美貌に弱い】の縛りも消えるだろうし。

 

「そっか……」

『まて。貴様、俺の前の前の転生体の夢でも見たのか?』

「う、うん。刺されて死ぬんだろ……。顔も見えなくて、だから呪う事すら出来なくて。すげぇ痛くて怖くて悲しかった。んで、現代だった。タイムスリップ?」

『死後の魂がどんなシステムなのかわからんからな……。なるほど、それは大事な記憶だ。そして、変えてはならぬ未来だ。今際の際に臓物が飛び出るほど叫んで、級友たちに警告した。それは生まれ変わって加護となった。殺された痛みが、恐怖が、憎しみが生きる糧となった。俺はあのとき、来世を生き抜くためには無念に、無様に、もがきながら死なねばならなかったのだ』

「宿儺……」

『まあ、死んだ時期を思い出して時が過ぎたら、墓で線香でもあげてやってくれ』

 

 言っている間に、思い出してくる。なんで? 成り代わりはずっと前からだった?

 俺に何が起こっている? 少し怖くて、ぎゅっと虎杖の中で手を握りしめる。

 ぎゅーっと釘崎が抱きついてくる。その柔らかさとぬくもりに、虎杖が動揺する。

 

「助けるなんて薄っぺらい言葉、口が裂けても言えないけど。私が一緒にいるわよ」

「俺も」

「包容力なら俺に任せろー」

 

 パンダまで抱きついてきた。

 

「え。死ぬのこれからってこと? 凄い爆弾発言なんだけど、それは。え。下手したら呪術界の消滅もあり得るってことかな?」

『それもあるが。両面宿儺が俺の人格ではなくなったら困るだろうなぁ? 中の人が変わるかも知れない。なんとか死期を思い出して教えてもいいが、そうすると絶対情報が漏れて大変なことになるぞ』

 

 悩め悩め。普段誂われているので、ちょっとした復讐である。

 

「君等、口軽い所あるからその件については完全に極秘ね。特に、虎杖は宿儺が心変わりしても絶対助けに行かないこと。これ、僕も命掛かってるし」

「わかってるよ。恵も呪術師の良いところなんだろ。恵や先生や真希先輩や、関わった皆が消えるかもしれないことはしねーよ」

『俺としても既に終わったことだしな。今更1000年以上やり直す、といわれても。なんだ。困る。どうなるか全く予想がつかんしな』

 

 それで、話は終わった。

 終わったと思っていた。

 

 

 

 その晩、夢を見た。俺がかつて女子高生だった頃、殺される夢だ。

 学校で、通り魔に刺された。顔も見ることは出来なかった。

 

『人殺しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い。それはもはや灼熱で。

 それでも、何も知らず登校してくる級友たちを守る為に声を上げた。

 

 

 そう、あれは転生して勇者の妹に生まれ変わったときのこと。

 私は、またもやわからぬ相手に襲われていた。

 殺されることだけは嫌だった。たまらなく相手が憎くて、呪いを吐いた。

 

『《殺してやる!》(溺れて死ね!)!

《殺してやる!》(埋もれて死ね!)!

《殺してやる!》(燃えて死ね!)!

《殺してやる!》(切り刻まれて死ね!)!』

 

 私の叫びに、水に襲われ、土に襲われ、火に襲われ、風に襲われ、それでも殺そうと迫ってくる輩。

 

 

 私は、生まれるはずではなかった子供だという。運命を外れた子供。

 ゆえに、弟の、リールの死の運命を覆せたときのこと。

 

『良かった。私が産まれてくるはずでない子で良かった。リールを助けられてよかった』

 

 泣きながら、飲んだ毒。殺されるのは、絶対に嫌だったから。それでも、私は死なねばならなかったから。

 

 あの時。あの時、殺されなければ。痛かった。痛かったよ。生きたい。生きたいよ。お母さん!!

 その時、背後から抱きしめられた。

 虎杖……。

 

「ごめん。宿儺。助けてやるって言ってやれなくて、ごめん」

 

 馬鹿だな。俺……ううん。私のために泣いてくれるか。

 ……。

 虎杖。

 今更、過去は変えるつもりはない。

 けれど、未来は。俺が居て良かったと思える未来を作るのは、構わんだろう。

 メカ丸、あれはもうすぐ殺されるぞ。

 こっそり二人で、死する運命を覆しに行かないか。

 

「おう!」

 

 そうして、俺達はちょっとした逃避行に出ることにした。

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