8年ぶりに合った彼女が病んでいた件について   作:赤い靴

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※タグ変更のお知らせ。
『やや曇らせ』から『曇らせ要素あり』に変更しました。
これからの展開が「やや」では無いと思ったからです。
これからも読んで頂ければ嬉しいです!!!!





4話 はじまりの月曜日

 月曜日──

 

 朝、自身が昨日かけたアラームにより、何とか自分の力で布団から起き上がった。

 携帯を確認する。

 

『昨日から少し忙しくて、一緒に登校したいけど…。学校で会おうね』

 

 結衣(ゆい)からのメッセージだ。なんでも日曜日は用事があり、そのせいで連絡は今の今まで無かった。

 これも10分前に送られたようで、同じような時間に結衣と起床出来たと思うと、心が躍った。

 いつもの調子で顔を洗い、着替え、リビングで食事を摂る。その時、ドタドタドタと大きな音を立て、千蒼(ちひろ)がリビングの戸を勢いよく開けた。

 

「寝過ごした!!」

 

 少し乱れた制服姿の妹がそういった。まだ登校時間には余裕があるのだが…

 

「ご飯、出来ているわよ~?」

「食べるー!」

 

 そう言って洗面台に向かってしまった。ドライヤーの稼働する音が聞こえる。

 相変わらず、忙しい奴だ。

 

「あ、義母さん。親父はもう帰って来たの?」

「ん~、それがね~、編集者さんと議論している内に、面白い物語を思いついちゃって…それに夢中で帰って来てないわ~」

「マジかよ…。あ、じゃあ僕が夕ご飯の用意を…」

「いいのいいの。私を侮っちゃいけないわよ?元学校調理師の腕、魅せちゃうわ~」

「あぁ…すみま

「家族なんだから、そんな事言わないでよ~。もっといっぱい、パパとママを頼ってちょうだい。いい?」

「あり…いや、分かった…。…夕ご飯、楽しみに待ってます」

「ふふふ。腕が鳴るわ」

 

 そこに、五月蠅い妹も食事に加わった。

 僕ら兄妹にとって今日から、正式な登校となる。校内案内も無く、オリエンテーションも無く、各先生からの配慮も無い。

 

「よし…じゃあ行くか」

「お兄ちゃん、ネクタイ曲がってるよ…。……よし」

 

 玄関せ身だしなみを整える僕らに、義母と朱音が送り出す。

 ドアを開け見上げた空は今日も快晴で、清々しい気分にさせた。

 

 今日は色々とやる事が多い。だとしても、やることは変わらない。1つ1つ漏れなく、及第点を叩き上げればいい。

 出来うることなら満点が良いが……相手は心を持つ人間である。ゆっくりいこう。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 教室に着いた。

 金曜日の事があったから、教室のドアを開ける手が重いどか、急に心臓が痛くなったなどの症状は無く、2年3組のドアの前でストレッチをする僕は委員長に促され、教室に入った。

「もう帰りたい」などの気持ちが無い訳でも無かったが、まぁ、委員長がそう言ったからには、従わないといけない。なんせ相手は委員長だからな、怖いし。

 自分の席を目指し、周りの視線など気にせずに一直線に向かった。

 

「ねぇ、アキフミくん」

 

 差前列から3列目。結衣からある程度距離がある僕の席に座り、カバンを整理していた所に声が掛かった。

 

「私と席を交換しましょ?」

「えっと…」

「あ、私は結衣さんの隣の席なんだけど…最近、目が悪くなっちゃって。交換しない?」

 

 黒淵の眼鏡をかける女子は、クイと眼鏡の位置を治し僕にいった。

 今日このごろ、眼鏡を新調したのだろうか。その動作は少しぎこちなかった。

 

「交換って…いいのか?そんな事を勝手にして…。普通1学期の終わりだとか、そういう節目に行うだろう?」

「あぁ、ウチの学校は違うんだよ。生徒が勝手に決めて良いの。学校としての方針は『成績が良ければ生徒に放任』だってさ」

 

 そう言い、足元に置かれるパンパンのバックに視線を移した。分厚い教科書や筆記道具などの一式が入っているのだろうか。

 

「そうか、分かった。ありがとう。えぇっと…名前は……」

「いいのいいの!私、キミのファンだから」

「???」

 

 僕らの席替えはものの数分で終わり僕はその席に座った。最後尾、窓から2列目。

 机と机との距離は人一人分空いている。だが、左隣が結衣だと思うととても近く感じた。

 

「キミ、どう?落ち着いた?」

 

 再度声が掛かり振り返った。…委員長であった。

 

「どういう意味で?」

「なに、教室の前でストレッチしていたじゃない?緊張は解けた?、って意味」

「緊張も何も…ただ脹脛(ふくらはぎ)をな…

「あーいいのいいの。みなまで言わなくても。私はただ、もう一度キミに確認をね」

「……。昨日のヤツだろう?6月末の

「昨日?…ふみぃは昨日、榎本(えもと)さんと…会ったの?」

「「!?」」

 

 僕と委員長は、鳩が豆鉄砲を食ったようで、その声の主に顔を向けた。結衣であった…

 顔を左に傾け笑った。髪がそれに沿って流れる。

 

「あ、あぁ結衣!おはよう!!」

「うん、おはよう。で、なにしていたの?」

「あー…な、何から言えば…」

 

 僕が困惑する中、委員長は結衣の前に出て言った。

 

「6月の末に文化祭が有ることは知っているよね?…私一人じゃあ色々大変だから、章文くんと結衣さんを誘おうかな、って。昨日、本屋さんで章文くんと会って、その話をしていたの。どう?やってみない?」

「え、えっと……」

 

 間髪入れた委員長の言葉により、結衣は数歩下がった。きっと僕でも数歩だけ引く。…圧が凄い。

 

「ふ…ふみぃ、は……どうする、の?」

 

 少し涙を浮かべ、結衣は僕に聞いた。

 おい泣いてんじゃないか、謝れよ委員長。…いや、前言撤回。これはこれで良いな…

 

「上手くできるか分からないけど、やってみたい気持ちは有るんだ。結衣はどう?僕と一緒に頑張らないか?」

「……うん、そうする、よ。…少し、頑張ってみる」

「だとよ、委員長」

「ありがとう、結衣さん。また放課後に詳しい話をするわね」

 

 一礼し、委員長は自分の席に向かった。もうホームルームが始まる時間だ。

 1つ、問題が無くなった。良かった。

 予鈴が鳴る。それと共に担当が教室に入る。その数秒後、慌ててドアを開く恭介の姿が。ギリギリセーフ、だが寝ぐせがスゲェ…

 

 先生の軽い叱責を受け流し、クラスじゅうに笑いが起こる。到底僕には出来ない芸当だ。

 まぁなんであれ、1時限目は科学で『実験室』に移動する。ふと結衣の方をみる。髪に隠れて表情はハッキリと見えないが、口元が緩んでいるように見えた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 実験室は別棟の1階にあり、結衣に案内させて入った。

 ここでの席も自由であり、僕、結衣、恭介、委員長の4人で後ろ端の机についた。

 

 何の実験が原因なのかは分からないが、丸い、フラスコの底のような凸凹が数個あった。いかにも、と言う感じでテンションが少し上がった。前の学校でもそうだったが、実験室の椅子は背もたれが無い丸椅子であった。きっと水道も、勢いが強いのだろう…

 科学の担当の先生が、教科書の内容を面白く板書する。「この実験をやって、一度大火事になりかけた」などの体験談を交えて。きっとこの先生は、ユーモアに溢れ生徒に人気なんだろうな、と思った。

 

 そして、今現在の結衣は──

 

「大丈夫か…?具合悪いなら保健室に行こうか…?」

「うぅん…大丈夫……ふみぃが居るから……大丈夫……」

 

 僕の左腕を掴み、僕の方へ体重を預ける結衣は、小さく小さくそういった。顔色が良くない。

 

「ふみぃごめんね……重くない…?…書きにくくない…?」

「まるで羽のようだ。…別に僕は大丈夫さ。よく片手で勉強していたからね」

「か、片手…って……」

「小学校高学年の頃に、左腕を骨折してたんだよね。それが今、役に立って嬉しいよ」

「……。そうなんだ……私たちが別れた後に……ふみぃが骨折……」

 

 腕を掴む力がちょっとだけ強くなった。いや最早、掴むでは無く、抱いているという表現が正しいのかも知れない。

 お胸が当たっております。あの、ご勘弁してください。

 

「ちょっと恭介くん、そこ違うわよ。なんでそうなんのよ?」

「ひぃぃぃぃぃ」

 

 そんな僕の目の前に座る恭介と委員長は、僕らを案じて同じ席に座ったのだが……恭介の解答に委員長が口を出す始末。お前らは何をしに来たんだ?

 小鳥の様な、ネズミのような…ボールを取り上げられた子犬の様に鳴く恭介に構いなく、委員長はシャーペンの先を間違えている箇所にトントンと当てる。

 苦しそうだな恭介?…ん?僕の方に上目遣いしても答えは降ってこないぞ?悪いが僕は、君を助けない。

 

 時計を見る。そんなこんなで、授業は残り10分だ。先生も授業内容のまとめに入っている。

 

「結衣、もう時期授業がおわるぞ。よく頑張ったな」

「うん…。でも…ノートが……」

「僕のを見ればいいさ。あ、そうそう。昨日さ面白そうな参考書を見つけたんだ。僕と一緒に読もうぜ?」

「ありがとう、ふみぃ」

「ああ」

 

 10分なんてもの、直ぐに経ちチャイムが鳴る。生徒がまばらに立ち上がり、教室に戻っていく。

 その中、科学の先生は僕たちの机に向かって歩いてきた。

 

「うんうん、キミが転校生の…志紀(しのき)クンだね。キミの話は聞いているよ~、危険物の資格をもっているんだって~?いいねぇ、是非とも科学部に入らない~」

 

 若く、陽気な雰囲気を纏った先生がそう言った。

 

「僕はクラスの委員会に入ろうと思ってまして…なのでお断りさせて貰います。資格は、ガソリンスタンドのバイトで興味を持ちまして…受けただけです」

「へぇアルバイト?ウチの学校は禁止させているからな~。乙4取った?監視どかした?」

「取りましたけど…学生なのでそこまではやらせない、って感じで…」

「はぁー、科学部に関しては残念だが、またこうして話が出来れば嬉しいな。それと…」

 

 よいしょ、と白衣を揺らし横に移動して、結衣に視線を合わせた。

 

「今日はよく頑張ったね結衣クン。志紀クンの陰で隠れていたけど、先生は見ていたぞぉ。また、出来る範囲で来てくれたら先生は嬉しいな」

「あっ……はい…。つぎも、頑張り…ます」

 

 そのか細い返事を聞き、上機嫌で準備室に向かってしまった。結衣の反応から見て、あの先生とは少し話し慣れている感じがした。

 高校1年の時にでもお世話になったのだろうか?出席日数、その確保の為の補習どか?

 

「ほら、いつまでイチャイチャしてるのよ?教室に戻るわよ?」

「ッ!?」

 

 委員長に言われて気が付いた。僕の腕は未だに結衣によって奪われていることに。

 あの先生も僕の状況を知りながらスルーしていたのかよ……。恥ずかしい思いをしたじゃないか……

 

「べ、べ、べつに…!イチャイチャなんて…なぁ、そうだよな結衣!?」

「そ…そうだね…!もう戻らないと…!」

 

 そう言って放たれた腕は、未だ彼女の温もり残っていた。

 急いで教科書やノートを片付ける。隣でガチャア、と音を立てて文房具をぶちまけた可愛い娘は「あわわわ」と声を漏らした。下を向いていて表情こそ見えないが、耳が赤くなっている。委員長の一言が効いたのだろう。

 僕を含め3人は手早く手伝い、早々に実験室から抜け出した。教室に着き席に座った瞬間、チャイムが鳴った。ホントに危なかった……

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 昼休み。それは友達同士、他愛も無い話題でお弁当をつつき合うという、僕には縁の無いものだった。

 色々忙しかった金曜日。テストの為、半日だった土曜日を過ぎた麗しき月曜日。僕は遂に、ボッチ飯を卒業した。

 

 机を並べ、結衣とお弁当を食べているのだ。なのだけど……

 

「結衣の母さんってさ、まだお弁当屋さんにいるの?」

「ぁあ…うん、そうだよ」

「そうかー、今度買ってみよー」

 

 と菓子パンを食らう恭介に、僕に文化祭の出し物をまとめた紙を見つめ、箸を動かしている。

 

「聞いてるの?章文くん」

「き、聞いてますが……」

 

 本当は結衣だけと食べたかったんだけどな。こればっかりは、しょうがないのか…

 

「委員ち…いや……。なぁ、僕はいままで肩書を言っていたんだけど……名前の方が良いか?」

「なによ気持ち悪い。別になんだっていいでしょ?分かれば」

「委員長だと味気ないだろ?綾k──

 

 不意に冷たく思い重圧に襲われた。虫の知らせ、とでも言い換えようか。

 そんな正体不明なプレッシャーに覆われ僕は、再度口を開けた。

 

「……榎本(えもと)で良いか?そっちの方が色々と…苗字被りは無いから…良さそうだ…」

「そう?私は私で章文って言わせてもらうけど」

「あぁ…よろしく……」

 

 僕はお茶のペットボトル。その封を切った。パキパキと鳴り、キャップがあく。

 この3人と居ると色んな意味で喉が渇く。緊張は無いが、常に口を開けている気がする。ずっと喋ってばっかりだ。

 僕と結衣は自分の机と椅子を使用しているが、恭介と榎本は違う。その辺の、近場の椅子を借りているのだ。すげぇな、どうやって許可とるんだよソレ。

 

 あの筋肉お化け。柔道部の琉生(りゅうき)は5組だ。流石にコチラのクラスには入れまい。

 3人を捌くのにも必死なのに、生が加わればキャパオーバーだ。そこに妹なんて混入すれば最早、地獄と称しても過言でない。

 

 お茶を一口飲み、キャップをしめる。コーヒー好きの僕でも、お米にコーヒーは飲まない。ジュースは余り得意では無い。お茶。お茶が一番似合う。

 3人を軽く見渡す。結衣は持参の魔法瓶に温かいお茶を入れている。榎本は購買で買ったパックの紅茶。恭介はパンに合うイチゴミルクだ。……恭介よ、お前は乙女だな。

 

 あらかた食事も終わり、僕らは文化祭での出し物について意見を交わした。

 

「なぁ榎本。クラスの出し物については、ある程度の金は出るんだよな?」

「金って…。予算って言ってよ」

「はいはいはいはい!俺、バスケのアレ……。よくゲーセンに置いてあるやつ…!!」

「うーん?……。聞かなかった事にするわね」

「なんでさぁ!!」

「お二人はどう?何かないかしら?」

「お化け屋敷で良いんじゃない?前の高校でやったし。現に楽だったし。立っていれば良かったからな」

「ん???う、うん、そうね…。違う意味で…聞かなかった事にするわ」

「なにがさぁ!!」

 

 僕は少し前の事を思い出した。暗い教室。その端で立っていれば良い役だった。

 クラスメイトの一人は、僕がその役が適任だって言っていた。その後の打ち上げ会も、僕の連絡先を知らなかったから忘れられただけだ。

 

「じゃあ、結衣さんはどうかな?何かある?」

「あ…えっと……喫茶店どか…どうかな……。ふみぃのお父さんは、コーヒーに詳しかったから……」

「あー確かに。親父は昔、豆を挽いていた、って言ってたな。よく覚えているよな結衣は」

「優しかったから覚えてるよ」

 

 その喫茶店の案。榎本の手を動かせた。メモ用紙に『喫茶店?』と書かせたのだ。

 

「本格喫茶店…だとしても予算が足りないわね…。コーヒー豆だっていい値段するし、機械も用意しなきゃいかないわね…」

「なら、本格を辞めて一つ捻るのはどうだ?提供する食品に、ホイップクリームを死ぬほど盛るとか?」

「死者を出さないでちょうだい。だいたい章文くんが言う『捻り』ってコスプレどかでしょう?」

「ハッ!?おい榎本、お前ってコスプレに興味があるの…っッグハァ!!」

 

 僕の横腹に結衣の細い指がめり込んだ。痛みのあまり声を上げ、机に突っ伏した。内臓を触れられた感覚だ。

 その指は上に上がり、肋骨をなぞった。突っ伏したまま、僕は結衣に視線を移す。目が合うなりニッコリ笑った。

 

「章文くん、どうしたの?」

「ふみぃ、腹でも壊したか?」

「イヤ……なんでもないんだ…」

 

 双方から声がかかる。どうやら結衣の一刺しは、彼女達には見えなかったらしい。

 

「議論を進めよう……。コスプレ案は…一旦保留にして、もっと出すか」

 

 上体を起こしつつ僕は言う。次なる一撃を恐れ、言葉を選びながら話し始める。

 

「なぜよ?」

「質より量。アイディアは多ければ良い。選択肢が多ければ比較できるからな」

「なんかマトモな提案ね?社会人みたい」

「そういう言い方は辞めてくれ……。苦しくなる…」

 

 キーンコーンカーンコーン──。予鈴が鳴った。

 

 机を戻し、軽い会話を済まし各々が席に戻った。午後の授業が始まった。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 今日何度目のチャイムだろうか?

 窓から傾いた太陽の光が差し込み、教室と廊下が忙しく生徒が行き交う。部活であったり、勉強会であったり……そう言った話が耳に届く。

 

「ふみぃ、これから…どうするの…?」

「あー」

 

 さっきから委員長の姿が見えない。「ちょっと待ってて」と言い、僕はスマホを取り出して榎本にメッセージを送る。

 返答は早く『今日は担任の先生との用事があるから帰って貰っても構わない』と。それを確認し、僕は結衣に伝えた。

 

「榎本は用事が有るから、もう帰っていいってさ。帰る?」

「えっ…じゃあうん、帰る」

「そうか。じゃあ、帰るか」

 

 恭介は部活の為、教室から出て行ってしまった。委員長、榎本も居ない。

 予想外の事で多少驚きつつ、結衣と共に昇降口に向かった。靴を変え、校門を出、大通りに出る。

 

「……そういえば、ふみぃってさ……バイトしてたんだよね…。どうしてなの?」

「暇だったから。それと…妹に靴を買ってやりたくてさ。アイツ、勉強はまぁまぁだけど、走るのには才能があるからな。僕としては、頑張ってほしくてね…」

「優しいね、ふみぃは」

「いや…。ただ、親父から距離を置きたかっただけかもしれない。バイトしたての頃は仲が悪かったから…」

「え?どうしてなの?」

「いやぁ…なんと言えばいいのか……。ただの…そう、ただの遅い反抗期だったんだ。今はすこぶる仲が良いぜ。妹が引くくらいだ」

「あははは。ふみぃも、そのお父さんも…お互いの事をリスペクトしているんだね」

「多分、そうだと思うな」

 

 結衣はどうなんだ?と喉まで込み上がったが、辞めた。何となく…言わない方が良いと思った。

 そこから僕らに会話は無く、ただ道を共にした。

 学校に居た時は、アレほど喉が渇く程に喋ったというのに、今や逆である。言葉が浮かばない。

 

 公園の傍の十字路。ここで結衣とはお別れだ。

 

「あ、じゃあまた明日」

「うん……。今日はありがとう。沢山、()()()()()()よ」

「そうか?まぁ、結衣が喜んでくれるのなら、僕は嬉しい」

「……。ねぇふみぃ。もし……もしさ……」

「?」

 

 僕を見て、彼女は言葉を飲み込んだ。数度首を振り「いいの。忘れて」と言った。

 

「そんな勿体ぶらなくてもいいんだぞ?なんか、不安な事があったら──

「ホントに大丈夫。安心して…大丈夫だから……」

 

 なんども『大丈夫』と言う彼女は僕ではなく、自分自身に言い聞かす様に繰り返した。

 

「おい結衣…!もし、なにか辛いことが有ったら、僕に……!!」

「ゴメン、これから用事があるんだ……。もう帰るね……バイバイふみぃ」

 

 そう言って結衣は、帰路に着いた。その後ろ姿を僕は、見えなくなる最後まで追う事が出来なかった。

 

 

 







この日は誰からもメッセージが届かなかった。
もう寝よう。



◇◇



人物紹介



・榎本 綾香。現在16歳。私立能生高校、2年生。委員長。
・身長162。すっきりとした藍色のショートボブ。家ではメガネをしている。
・章文曰く「胸がでかい」

・成績は常にトップクラス。その為、先生たちの評価が高い。
・クラス替えにより、結衣の存在を知る。担当の先生から「どうにか立ち上がれるようにしたい」と言われ奮闘中。
・ジ〇リが大好きで良く見ている。一番は「ハ〇ルの動く城」。
・すっきりした甘いモノが好み。飴を常にポケットに入れている。


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