先ずはアンケートに協力してくれた方、有難うございました。
今後の展開の参考にさせていただきます。
またそれとは関係なく今回の話はかなり独自解釈マシマシになっています。
多少今更感はありますが、合わないと感じた場合は素直にブラバしてください。
それと本来は昨日更新するつもりでしたが、一日遅れてすいません。
ddos仕掛けた屑は速やかに出頭、若しくは逮捕されて欲しいですね……嘘です、〇んで欲しいです。
「逃げろーーー!マァーチィィーーー!!」
その声が聞こえて来たのは、一周目のコーナーを抜け、正面スタンド前を走っている時だった。
事前の作戦通りオグリキャップの背後に陣取っていたフジマサマーチは、聞き覚えのあるその声に思わず顔を横に向け、観客席の方を確認する。
(逃げろ?どういうことだ?
というか今からか?)
観客席の内、声の聞こえた一角には必死の形相で此方に作戦を伝える柴崎トレーナーの姿があり、喉を枯らさんばかりに叫んでいるあたり、どうやら本気で逃げろと言っているらしい。
そもそも見た目通りの堅物であり、冗談など滅多に言わない以上伊達や酔狂、冗談の類でない事は明らかなのだが、とは言え事前の作戦を捨て、ポジションを多少上下させるだけなら兎も角、ハナをきって逃げろ言うのは尋常の指示ではない。
ましてや今走っているレースはそこらのフリーレースなどでは無く――˝地方の˝と言う前書きが付くものの――重賞である。
(理由は……オグリか?)
目の前に居る芦毛のウマ娘は正に˝ちんたら˝という形容詞が似合う様な走りをしており、確かに˝これ˝をマークし続けても、逆に後々不利を被る事になるかもしれない。
そう思えば、事前の作戦を破棄しろと言う柴崎の言は正しいようにも思えた。
(だが、だからと言って逃げろというのは……)
もう直線も終わり、間も無く第一コーナーへ入ろうかという所。
ここで位置取りを上げて行こうと思えば必然コーナーでバ群の外を捲り上げて行かなければならず、当然スタミナの消耗は激しいものに成るだろう。
フジマサマーチとてトレーナーが何か相応の理由があって逃げろと言っていることは理解していたが、とは言えその˝理由˝が˝スタミナの(過度な)消耗˝と釣り合うかどうか、˝理由˝の中身を知らなければ判断の下しようがない、が――
もう一度、前を走る芦毛のウマ娘に目を向けるフジマサマーチ。
――見ただけで分かる腑抜けた背中。新バ戦や、ジュニアクラウンの時の闘志や気迫は見る影もない。
(……バカにしやがって!)
それは、パドックに出て来たオグリキャップを見た時に抱いた思いと同じだった――
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『オグリキャップ、ゴールドジュニアを最後に中央行き!?』
そう書かれた新聞の一面を見た時、フジマサマーチは寧ろ燃えた。
ライバルだと思っていた筈の相手の突然の路線変更。
加えて行先は手が届かない程の高みであり、一度行ってしまえば今後はもう易々と会う事さえ出来ないとあればもう少しマイナスの感情が優先されても良さそうなものだというのに、しかし現実は何処か納得さえ覚えていて――。
何となく、脳裏にオグリキャップとの記憶が過る。
たまたま朝のジョギングが被った時、戯れに並走して見れば、後半以降は余裕のない、ギリギリの状態だった己に対して、彼女は終わった後も軽く汗をかいていた程度だった。
或いは時折見せる体の柔らかさや、他にも普段の人並外れた食欲等。
――端々から見える才能の片鱗に、気のせいだと思い続けられる程フジマサマーチは鈍感では無かった。
とは言えそれは、勝負を諦めたことを意味しない。
相手が中央にスカウトされるほどの才能を持っているなら、それを喰らって、己はより一層の高みへ至れば良い。
無論、東海ダービーを共に走ろうという約束を反故にされたという思いはあったが、しかし記事に曰く、中央行きの可否は今回のレースの結果如何で決まるという。
つまり己が勝てばなんの問題も無く約束は守られるのだ。
加えて記事を読み進める限りオグリキャップのコメントが一つも無い事も気になった。
あの北原とか言うトレーナーがダイヤモンドを手にして逸ってしまったのか、或いはマスコミの悪い所が出たのか。
それならそうで自分のトレーナーを巻き込んで対応して貰えば良い。
だから宣戦布告の一つでもしてやろうという気持ちでパドックに出て――
――そこで、信じられ無い光景を目にした。
ハリの無いトモ、褪せた銀色の髪。
凡そ好調とは言い辛い、寧ろ不調とすら言って良いオグリキャップのその姿。
――その様で、お前は私を、私達を踏み台にしようというのか?
試金石の筈の今回のレースですらあの様で走るということは、詰まるところ自分達はもう中央と言う本番に向けた叩きとしか認識されていないのではないか?。
なんなら叩きとすら思われておらず、『トレーニングの一環の模擬レース』程度に思われているのかもしれない。
――気付けばオグリキャップの胸倉を掴みかかって、『この記事は何だ!』と、『東海ダービーはどうした!?』と怒鳴りつけていた。
約束を反故にされた、なんて表現では生温い、踏み躙られた様な気さえして。
『バカにしやがって……ッ』
そんな言葉と共に、高ぶった感情が視界を滲ませる。だけど――
――だったら私に勝て、私が負けたら中央へなんていけない。
そう言い放つオグリキャップの瞳に、˝期待˝は欠片も存在していなかった。
頭の何処かで思っていた、トレーナーに中央行きを無理強いされたが故の不調なんじゃないかという心配。
その気持ちは、この瞬間確かに憎悪へと反転した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
(あぁ本当に腹が立つ……バ鹿にしているのか!そんな腑抜けた走りをしやがって)
あんな言葉を吐いた以上、力の差を見せ付ける様な走りをするのかと思えば、現実はその真逆。
後ろを走るフジマサマーチには、オグリキャップの迷いや後悔、不安や悲しみ、そして寂寥が手に取るように感じられた。
(本心じゃ無かった、とでも言うつもりか?
ふざけるな!お前が内心でぐちゃぐちゃなのと同じぐらい、こっちは今むしゃくしゃしてるんだぞ!)
だから――
(良いさ、逃げてやる!
そもこのまま此奴の背中をみてたんじゃ、こっちの気勢まで削がれかねん。
なにより今は――)
――全てを振り切ってしまいたい。
残り1000М、第一コーナーの入り口でグンと速度を上げるフジマサマーチ。
当然オグリキャップは付いて来ず、また他のウマ娘達もコーナーの大外を捲り上げるなんて――消耗の激しい――真似はしたく無いのか、静観を選択する。
一部競り掛けられたことにより掛かりそうな娘も居はしたが、しかし殺気すら籠ったフジマサマーチの睨みを前に、ただすごすごとひき下がるのみだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『――梯子を外すようでなんだが、俺の˝戯言˝を宛にするなんて正気とは思えないな。
なんせ所詮はパドックで一目見ただけ。オグリキャップにしろフジマサマーチにしろ、正確な能力値を把握している訳じゃない。
そりゃあ普段から中央のウマ娘を見ている者としてオグリキャップが『特別』なことや、フジマサマーチが精々『並以上』だってこと位は目算が立つが、だからと言って彼女達が1ハロンを何秒で走破するのか、スタミナや巡航速度がどのくらいか、なんてことは微塵も知らない……』
――その上で言わせてもらうなら、スタミナさえ持つなら、持たなくても根性で粘れるなら、全然勝ちの目は有ると思う。
そんな事を囁かれて、気付けば柴崎は叫んでいた。
大きな声で、逃げろ、と。
笠松の田舎には似合わない、垢抜けた、身綺麗な雰囲気の彼がまさか全力で叫ぶとは思っていなかったのだろう。ノルンエース、ミニーザレディ、ルディレモーノの三人娘が多様驚いた顔を見せる、そんな中。
唆した本人である鳥林の顔は、酷く愉悦に濡れていた。
「悪い顔になってますよ、トレーナーさん。
良いんですか?オグリさんを気にかけているの貴方自身のはずですよね?」
「ハッ…せっかく正月にそれなりの金と時間を掛けてこの田舎下りまで来たんだ。
だったら俺は面白いものが見たい。暗い顔でやる気無く走る一番人気の勝利と、闘志を剝き出しにして無茶やる娘の大番狂わせ、面白いのがどっちかなんて、考える迄も無いだろう?」
――成る程。
言っていることは理解できる。
しかし応援しているウマ娘が不調なら、普通の人間は心配が先に来る。
一応不調の原因が怪我や故障で無く人間関係であり、オグリキャップの体自体は健康体そのものだから~という理由付けも出来なくはないが、しかしなんだかんだ一年も一緒に居たのだ。
鳥林の一面として、勝負の悦楽に浸るのが好きな、ある種変態的な部分があることはもう察している。
普段の自分に尽くしてくれる教育者としての面を投げ捨て、にこやかにレースを観戦する鳥林の横顔を見て、やっぱり癖の強い人だな、と嘗て抱いた感想が蘇って、メジロアルダンは少し笑った。
「――にしても上手いな、彼女。捲り上げが。
あぁやって捲って行く場合、普通は他のウマ娘も闘争心を刺激されて、競り合う内に自然とレースのペースも上がるものなんだが、『睨み』による萎縮で寧ろバ群のペースを落としている。あれなら多少スタミナを温存できるし、なによりオグリキャップとの距離が更に開く」
「つまり?」
「案外本当に勝つかもしれない――そういうことだ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
嘗てライバルと定めた者の背中が遠ざかって行く。
置いて行かれた寂しさを感じつつも、しかし付いて行こうとするには余りに足が重かった。
――良いレースがしたい。
――一番にゴールを駆け抜けたい。
そんな想いとは裏腹に、前に出ない足。
そんなオグリキャップの現状は、何も中央行きの件だけが理由ではない。
彼女には分かるのだ――その足が一度地を揺らせば、今前を走る学友たちを置き去りにして、容易に勝利を掴んでしまうことが。
それは、フジマサマーチすらも例外ではない。
――˝置いて行ってしまう゛のだ。彼女の足は。
そのスピード故に、全てを。
ジュニアクラウンでハナ差の勝利を収めて以降、中京杯は元より偶に参加する模擬レースにおいて、オグリキャップはその全てで二~八バ身の差を付けて勝って来た。
接戦どころか影すら踏ませたことは無い。
北原が彼女に中央行きの話を持ち出した時、彼は東海ダービーに出走出来なくなることも明言していたが、しかし彼女はそこで即話を蹴ったりせず、先ず北原が付いて来るかどうかを確認した。
もしそこで北原が付いて来れたとしたら、彼女はどう答えたのだろう?
――˝どうせ˝、自分の足は他のウマ娘達を置いて行ってしまうのだ。
――キタハラ(とベルノ)さえいるのなら、彼女等を置いて中央に行っても、別に何が変わるでも無いんじゃないか?
無論、フジマサマーチとの約束がある以上、そう考えても何処かしらで否の判断を下す結末には至っただろうが、しかし全く興味のない話で無かったことは確かだろう。
だからこそ、フジマサマーチに問い詰められた時は苛ついて、そして思わず言ってしまったのだ。
――だったら私に勝て、と。
本心じゃ無かった、なんてことを言う気はない。
間違いなくあれは、寂しさから漏れた彼女自身の本心だ。
故にこそ、今日オグリキャップに置いて行かれたのは、きっと傲慢な彼女への罰なのだろう。
フジマサマーチはもう既に四コーナーに差し掛かり、後数秒もしない内に直線に入ろうとしている。
流石に速度が怪しくなってきたとはいえ、オグリキャップが直線に入るころにはもうどうしようもないほどのリードが築かれている筈だ。
――あぁ良かった…もう私は、誰も置いていけない……
偽りの安寧の、なんと優しい事か。
『きっと何か大事なものが壊れてしまう』そう分かっていても、その甘美を振り切ることは余りに難しい――
「オグリィイーーー!」
「キタ…ハラ……?」
「走れ!!!走るんだぁァアァァ!!!」
――筈だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――オグリキャップ、お前が時代を作れ
――世の中を変えてやれ
――お前の走りが人を励まし、勇気づけ、生きる力を与えろ
――そして誰からも愛される様な…
――その愛に全力で答えられる様な…
――そんな、唯一無二のウマ娘に――
「行かせるものか、中央になど」
その大きな足音は、フジマサマーチに誰が来たか予感させるに余りあるものだった。
破壊されるダートの音は、一歩ごとに、有り得ない速度で近付いて来る。
築いたリードが、˝怪物˝――レースを見ていたとある三冠ウマ娘はオグリキャップをそう評した――によって喰い散らかされる中、それでも彼女は、己の勝ちを信じてただ駆ける。
彼女に有るのはただ努力する直向きな性質だけ。
才能なんて無い。
危地での覚醒なんて出来ない。
それでも、走るための足があって、そして積み上げてきたこれまでがある。
であるならば――
――薪に焼べろ。足を回せ。
もう前に呼吸をしたのが何時だったか思い出せない。
視界が明滅し始める中、しかし目の前にはゴール板。
この先の世界は、きっといつも通りの――
――ありがとう
白い誰かが、フジマサマーチの横を吹き抜けていった。
怪物の背に、迷いはもう無い。
アンケートってあれ凄いですね。
この一週間ちょくちょく確認していましたが、どのタイミングで見ても三択の比率が変らない。
総投票数が増えても、ずっと5対3対2の比率でした。
あぁ言うのを見るとアンケート調査ってじつはかなり信頼性高いのではと思ったり。
そういえば先週新時代への扉を見て来ました。
滅茶苦茶良かった。主人公のポッケは勿論として、タキオンとオペが死ぬ程カッコよかったです。
オグリにクラシック走らせるのは?
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あり
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なし
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原作なぞるだけなら二次創作なんて書くな