本当は先週でミクトランクリアするつもりだったのですが、気付けば狭間の地でガイウスやメスメルと戦ってました。(シロガネ人を許すな)
まぁ昨日の発表を見る限り後二週間くらいは猶予があるみたいですが、なんとか今日一日で終わらせたい……
『何かしら改善した方がいいのではないか?』
クラシック登録制度について、そんなことが囁かれるようになったのは、別段最近のことではない。
ウマ娘レースの門戸が広く開かれ、嘗てはURAの創設に関わった名家の令嬢しかいなかったトレセン学園に、市井からの出身者が続々増え始めた頃からそれは言われ続けてきた。
と言うのも、このクラシック登録に必要な登録料、はっきり言ってかなり高いのである。
具体的な数字を出すと、ジュニアの十月にある仮登録の時点で先ず一万円――流石にこれを払えないと宣う家庭は存在しないが、しかしクラシック一月の第一次登録では3万円飛び、何より最終登録では20〜30万円が、出走料として更に30〜40万円が飛んでいく。
つまり三冠レースに出場しようと思えば、その結果如何に関わらず50万円以上が確実に必要になってくるわけだが、しかし実際は50万円でもまだまだ足りないのが実情である。
なんせ、50万円というその費用は『1レース毎に』掛かるものであり、つまり仮に三冠競走の全てに出走しようと思えば掛かる費用はおよそ150万円――ただ出走するだけで三桁万円かかるともなれば、はっきり高いと評すことに差し支えないだろう。
とは言え、である。
三冠レースの最終登録まで行うようなウマ娘は大概…と言うか全員が新バ戦を勝ち、オープンで進んできたような娘達であり、そして(中央の)新バ戦の賞金額はおよそ700万円。
無論税金で取られたりトレーナーの取り分があるので全てを丸々懐に入れられるわけではないものの、それでも新バ戦さえ勝てばクラシック登録の必要料金で悩むことはまず無い。
――故に、問題なのは第一次登録料である。
1レースに3万円、3レースで9万円。
どう足掻いても無理、と言う額には程遠いものの、しかし『ジュニア期に一勝も出来なかった自分達の娘』への投資としてはちょっと…いや、家庭によってはかなり考える必要がある額であり、また学生が個人で払うのも――お年玉を加味しても――中々厳しい金額だ。
必然…と言うほど高頻度ではないものの、それでも無視できない数の家庭で話し合いが行われ、場合によっては担当トレーナーが家庭訪問しての家族会議が開かれることもあるらしい。
とは言え話し合いで済むならまだマシな方で、激情を抑えきれなかったウマ娘が親に手をあげるようなこともあると聞けば、決して喜ばしいイベントではないだろう。
――難しいのは、目が無いと判断するには早々な時期だと言うことだろうか。
特に体が弱くてジュニア期は出走を控えていた子達に関して言えば、この一次登録以降の時期からメキメキ頭角を現してくることもザラにある。
例えば何処か遠い世界のメジロアルダンなど、新馬戦に出走したのは三月末とかなり遅めだったものの、それでもダービーには間に合って、あまつさえ二着にくいこんでいる。
同期の皐月賞馬、ヤエノムテキも新馬戦が一次登録の後だったことを考えれば、夢を見過ぎだと一蹴するのも、それはそれで現実を諦めすぎだと言えるだろう。
そう言う有望な子で、しかし家族の理解を得られない場合、結局トレーナーが立て替えてしまうようなこともあるらしいのだが、しかし健全かどうかと聞かれるとかなりグレーなところであり、また仮に、トレーナーがチームを率いていた場合などは、そう言う目に見える形での贔屓は内々で不和を生み出すこともある。
――そう言った"金満で無い"一般家庭出身者でもクラシック競走を目指せるからこその問題も有り、どうもこの世界ではオグリキャップなど関係なくクラシック登録が叶わなかった生徒への救済措置として、クラシック追加登録制度の構想は元々あったらしい。
既にURAの方で施行についての会議が何度か行われているようで、なんなら現場意見の汲み取りとしてトレーナーへのアンケートもつい最近実施されたようではあるのだが――
(――まだ今年は、適用されない)
当然だろう。
なんせもう既に仮登録も第一次登録も終わって、なんなら皐月賞が始まろうとしているのだ。
無駄になるかもしれないと思いながら、それでも登録を決断したウマ娘達に対して、今更登録を諦めたウマ娘を別口で優遇するような真似は、どう考えても不公平で、筋道が通っていない。
(だからオグリキャップがクラシックに出てくることはない…と思うんだけどなぁ……)
『3バ身突き放して!オグリキャップ!ゴールイン!!
毎日杯に続いて重賞2勝目を挙げました!
地方から来た怪物が!中央で大暴れです!!』
思い出すのは、今日の皐月賞に向け、府中の芝を確認がてらクリスタルカップを観戦していた昨日のこと。
勝つだろうなと思っていたオグリキャップが勝ったのは兎も角として、想定外だったのは周囲の反応だ。
『なんであんな強いのに明日の皐月賞出ないんだ?毎日杯勝ってるから距離合わんって事もないだろうに』
『なんか制度で出れないらしいよ』
『はぁなんで!?地方出身だから?』
『いや、ハイセイコー出走できたしそこは関係ないだろ――』
(一応こういう雑音を想定してペガサスステークスでは叩いてやったんだが…まぁ差をつけたとは言え二着だしなぁ……或いは単に持って生まれたスター性か…)
とは言え、あくまで今聞こえてくるのは何故皐月に出れないのか、というただの疑問。
オグリキャップが大舞台で走っているのを見たいといったような、そう言う夢や願望の類では決してなかった。
(恐らくは土日が終われば忘れてるような、その程度の疑問…だけどもし、皐月賞で毎日杯組が優勝したら?
例えばそう、ヤエノムテキとか――)
月曜の朝刊一面ではきっとヤエノムテキの優勝が大きく取り上げられることだろう――同様に、オグリキャップがクリスタルカップを制覇したことも。
そうして波紋が広がっていくのだろう世論に対して、URAが毅然とした対応を取れるかどうかを予想するには、あまりに勤めた期間が短か過ぎる。
(……いや、流石に妄想が過ぎるか。
そも最初の前提があり得ない。だって今日勝つのは――)
「トレーナーさん、もう入っていただいても大丈夫ですよ」
下らない妄想を遮るように、寄りかかっていたドアの向こうから声が聞こえてくる。
ドアを開けると、そこには嘗ても見た黒いドレスに身を包んだメジロアルダンが立っていた。
――どうでしょう、似合っていますか?
表情こそ庇護欲を掻き立てる、何処か不安の見え隠れするものであるものの、しかしアメジスト色の瞳は明らかに自信に満ち溢れている。
それがわかっていながら、しかし鳥林は苦笑もできなかった。
だってあまりにも――
「――あぁ、似合ってるよ」
努めて平常を保ちながらそう褒める。
――"ガチ"感は出ていなかっただろうか?
「それにしても、態々外で待っていただかなくても良かったんですよ?
仕切りカーテンもありますし」
「ハハハ、そうはいっても着替えてるすぐ隣に居るのは気が休まらんだろ」
誰が主語に来るかは、敢えて口にはしなかった。
「まぁ気を遣ってもらえるのは悪い気はしませんから今はそれでよしとしましょうか」
手玉に取られてる感にゴリゴリ精神を削られつつも、しかし笑顔を見せるメジロアルダンの姿に、鳥林はおや?と眉根を上げる。
(いつもならそろそろ集中力が高まってくる頃合いなんだが…とは言えレースに意識が向いていないわけでも無し……
寧ろ余計な気負いが抜けて勝負を楽しむ余裕があるように見える……調子はまちがいなく良い、か?)
メジロアルダンは仮に気負っていてもそれを力に変えられるようなメンタル強者ではあるものの、しかしクラシック三冠を走れるのは一生に一度だけ。
鳥林は楽しんでほしかった。
――だってそうで無いと彼自身が心から楽しめないから。
無論鳥林がそのエゴを押し付けたり、なんなら真面目にトレーニングをこなしているメジロアルダンの横ではその素振りすら見せたことはないものの、それでも時折カレンダーを見ながらニヤつく彼の姿を見て、メジロアルダンは今更ながらに気付いたのだ。
自分の中にもある、レースを楽しみにする、楽しもうとするその気持ちに。
勝って、蹄跡を刻むことが第一なことに変わりはない。
負けども楽しかったから満足、なんて今後も先ず出て来ることはないだろうし、眼前の困難にも退かず、必要があれば変わらず無理を重ねるだろう。
それでも――
(レースに勝った時は勿論、作戦が上手く行った時、他のウマ娘を置き去りにした時、ずっと私はレースを楽しんでいました)
――無理が祟ったその先で、ふと過去を振り返ったとき、少しでも笑えるようになるのなら勝負を楽しむことにもきっと意味はあるはずなのだ。
「――さて、そろそろパドックに行く時間だが…なにか確認しておくことはあるか?」
対戦相手の情報、コース形態、作戦、etc…全て僅かな逡巡すらなく思い出せた。
「大丈夫です。問題ありません」
「ならばあとは勝つだけだ――行ってこい!」
軽く叩かれた背中が、やけに熱いような気がした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『スタートしました!
注目の先行争い、まずは内からサクラチヨノオーとヤエノムテキ。
1枠の二人が行きますが、外からシンキョウナヨコが交わしていってハナを取ります。
間からユービートウゲイも出ていって、トウショウマリオ、メジロアルダンも続きます。
人気バがおよそ前に固まって形ではありますが、しかし3、4番人気のマカミエイト、マカミユーモラスの二人は中段以降に控える形。
早くもバ群が縦長になって来ました――』
本来控えるのが良しとされる東京2000M芝で、それでもメジロアルダンが前に付けて行ったのは、やはり枠順が良かった故だろう。
1枠1番ヤエノムテキ、1枠2番サクラチヨノオーに続く2枠3番。
労無く先行出来る絶好の枠番であり、しかし反面、序盤から激しい位置取り争いが繰り広げられる今回の東京2000Mでは先行しないとバ群に呑まれるデメリットがあるともなれば、態々下がってやる意味もないだろう。
加えて、真横には弥生賞でスロー逃げをかまし、ディクタストライカを完封したサクラチヨノオーが居る。
彼女の動向を確認する意味でも少なくとも序盤は前に付けていたいというのは、鳥林、メジロアルダンの双方が合意するところであった。
(ですが…サクラチヨノオーさんのマークは程々でも良いかもしれませんね……)
チラリと視線を横に向けると、そこにはかの天マ、トウショウボーイの姪っ子、トウショウマリオが走っており、どうも彼女の様子を見る限りサクラチヨノオーをマークしているらしい。
過日の弥生賞では彼女もディクタストライカと同様、サクラチヨノオーに完封されたことを思えば、そのマークもなんら不思議ではない訳だが、彼女が見張りになってくれるならメジロアルダンとしては必要以上に前に付ける意味も薄くなってくる。
(先団後方に付けて、マリオさんを通してチヨノオーさんを確認する、くらいの作戦で行きましょうか)
――もっともそれは、この序盤でサクラチヨノオーが"終わらなければ"の話だが。
1コーナー奥のポケットからスタートし、2コーナーまでの距離はおよそ130m。
スタート直後に訪れるコーナーまでサクラチヨノオーに追従したメジロアルダンは、しかしそこで、同室の親友にピタリと張り付き、一切膨らむことを許さなかった。
サクラチヨノオーの内々から付いてきたヤエノムテキ毎、なんならバ群に沈めてしまうくらいの気持ちで外からプレッシャーをかけていく。
(貴女が沈めば労せず番手が取れます。
マリオさんの判断次第では貴女をマークし続けて一緒に沈んでくれる目もあるでしょう。
ですからどうぞ、ここで終わってください)
「……っ!」
迫り来るプレッシャー。
前に逃れたくても加速できないその状況で――
――しかし、サクラチヨノオーは沈まなかった。
別段何か特別な技術を持っていたわけではない。
メジロアルダンがコーナリングが上手かったのと同様、ただ彼女もコーナリングが上手かっただけである。
ここはクラシック三冠、その初戦、皐月賞。同世代最強が集う場所。
――走るのが下手な者など、誰1人として存在しない。
次はまた再来週とかになるかも
ただエルデンリングももうそろそろdlcクリアできそうですし、以降はもうちょっと高頻度で投稿出来…たら良いなぁ……
オグリにクラシック走らせるのは?
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あり
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なし
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原作なぞるだけなら二次創作なんて書くな