ガラスの小鳥は轍を刻む   作:昭和のパンサラッサ

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書き溜め無くなったので初投稿です。

プロローグ終了、多分五回くらい書き直した。
後シングレでトレーナーの影が無かったことを最大限好き勝手解釈してる




五話

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

 

 パチパチパチパチ――――

 

 ゴール板の先、荒い息を吐くメジロアルダンに向けられたのは万雷の拍手だった。彼女の見事なまでのレースぶりは、この場にいた多くのトレーナー達に確かに認められたのだ。

 

(久しぶり・・・・いえ、初めてでしょうか。ここまで一生懸命に走ったのは)

 

 幾重もの拍手が鳴り響く中、ふと彼女は思い出した。これまで満足に走れなかった数々の記憶を。

 

 姉との並走。体が弱い同士相手を熱くさせまいと手を抜き合った。

 ちびっ子ウマ娘レース。姉も出場しないならと彼女自身も出なかった。

 親戚との模擬レース。一番真剣にやれたかもしれないが、周りに止める大人が多すぎた。そしてその善意を素直に受け取り過ぎた。 

 トレセン学園の入学試験レース。共にレースを走った子達とは持っているモノがあまりに違って勝負にならなかった。

 学友との模擬レース。遠慮させてしまうことを遠慮して参加したことは無かった。

 

「あぁ、本当に気分が良いですね・・・・。

――これで、足の違和感も気のせいだと良いのですが・・・・」

 

 あぁだけど、夢の時間はもう終わったのだ。

 脳内麻薬で誤魔化していた違和感が――否、もはや明確な痛みとなったソレは再び彼女の左足を侵食している。気のせいだなんてことは有り得ない。

 

(トレーナーさん、貴方は『"今"を頑張れば道が開けることもある』そう言ってくれましたね。

さて、私の道は――未来は、本当にまだ続くのでしょうか?) 

 

 続かなかったとしても、彼女に鳥林を責める気は微塵も無かった。

 全ては自分の輝くさまを見てもらいたいが故にやった無茶だから。

 

 故に未来が消える事に対してどうこう言う気はない。無いが――ただ若し今の走りを見て貰えていなければ、或いは明日にも忘れられてしまったら――と、それだけは少し心配だった。

 

 足を若干引きずりながらコースの出口に向かいながら辺りを見渡して"トレーナーさん"を探すメジロアルダン。

 

(い・・・・ない?)

 

 目的の人物を見つけられぬまま、気付けば彼女はスカウトに来た"トレーナーに"囲まれていた。

 

 本来、そこから勧誘合戦が始まる所だが、しかし流石に"びっこを引いて"歩くウマ娘に勧誘を仕掛ける様なトレーナーは中央には居ないし、無論それに気付かないトレーナーも居ない。

 

『大丈夫か?』

 

『なんだ?左足が痛いのか?』

 

 そんな声がメジロアルダンに投げかけられる。 

 

 しかし彼女は先ずは自分の背を押してくれた人に会いたかった。会って、自分の輝きは如何ほどのものだったか聞きたかった。

 

 しかしいつまでたっても現れず、周りのトレーナー達が声も出せない程足が痛いんじゃないかと心配を通り越して危機感をいだき始めたその時――

 

「どいて下さい、救護テントから担架と氷嚢借りて来ました。これでいったん救護テントにまで運びます」

 

 ――そんな声が聞こえてきた。

 

(・・・・そうですか、見てくれ"無かった"んですね――最後までは。

でなければここまで素早く色々持ってくることは有り得ない・・・・――有り難い事の筈なのに、でも少しだけ残念なのはなんででしょうか)

 

 トレーナー達の海を掻き分け掻き分けやって来たのは担架を担いだ鳥林。呼吸荒く汗をかいている所から相当走って来たのは容易に想像がつく筈なのに、しかしメジロアルダンはそれを素直に有難いと思えない気持ちがほんの少し・・・・しかし確かに存在した。

 

 その気持ちが間違っているものだと気付きつつも、それでも彼女は助かるかも分からない未来に賭けるより、今の自分(輝き)を見て貰いたかったのだ。 

 

「メジロアルダン、君はこの担架の上に寝転がってくれ。

すいません誰か片方持つの手伝って下さい」

 

「・・・・えぇ、分かりました」

 

 とはいえ彼女も態々助かる可能性を投げ捨てたい訳でもない。

 怪我の治療なんて早期であればある程良いのは十分に知っていたため、そこからの流れは非常にスムーズだった。

 

 痛かろうと特段暴れたりすることも無いメジロアルダンの足に氷嚢をテーピングテープで固定し、鳥林ともう一人のトレーナーで救護テント迄搬送。

 

 テントで待機していた保険医は、彼女の足を管骨骨膜炎と診断した。

 その後彼女の実家――つまりメジロ家に連絡を取った所直ぐに迎えが来るという。なんでも家付きの主治医に詳しく診断して貰うべく、その人物の勤める病院に連れて行くらしい。

 また、迎えを待つまでの間、外では体が冷えると事だとメジロアルダンは保健室で待つ運びとなった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「改めてになるが選抜レース一着おめでとう。

怪我こそ残念だったが、まぁソエであれば復帰も可能だろう――疲労骨折の併発だけが怖いけどな」

 

 担架に続き保健室まで車椅子でメジロアルダンを運んで来た鳥林は開口一番そう言った。対するメジロアルダンは――何というか複雑な顔をしている。

 感謝と不満に僅かに諦観を混ぜたような、そんな顔。

 

「・・・・有難うございます。――よく、私の足が割れたとお分かりになりましたね。

あそこ迄迅速な対応、恐らくは4コーナーで私が加速し始める前にはもう気付いていたのでしょう。フォームはそこまで崩れてなかったと思いますが?」

 

 因みに保健室には二人の他に誰も居ない。

 先程迄は救護テントに居たのとは別の保険医が待機していたのだが、又何処ぞのトレーニング施設で怪我が有ったと聞いて飛び出していった。 

 

「"割れた"とはまた物騒な表現を使うんだな。

まぁ置いといて、フォームは崩れてなかったと言うが、流石に一週間も走る姿を見続けていた側からすれば左足を気にして右に重心が・・・・いや、うん、ただの偶然だ。なんかこう第六感の類が働いたんだ」

 

(危ねぇ。

女学生をチラチラ見てましたとかセクハラ疑惑かけられて一発で懲戒処分ものだぞ)

 

 途中で自分の発言の危うさに気付き適当な理由をでっち上げた鳥林であったが、しかし流石にそれで誤魔化しきるには最後まで喋り過ぎている。

 

「・・・・?何故言い直されるのですか?

日頃の私の走りを見て下さっていたから気が付いたんですよね?」

 

「突いてほしく無いから言い直したんだが・・・・ハァ・・・・。

いや、気持ち悪いだろう?勝手に練習見られて走るフォームの微差まで覚えられていました、なんていうのは」

 

「それは目的と手段によるのではないでしょうか?

流石に盗撮のような真似をされたら気味が悪いと思いますし、この場合法的手段も辞しませんが、合同練習の教官として堂々と見に来るというなら言うことは有りません。目的も、この時期であれば知れていますから。

・・・・とは言っても『チラチラ』なんて擬音では済んでいなかったような?とは思いますね」

 

「若しかしなくても気付いていたのか?見ていることに」

 

 バツの悪そうな顔で頭をかく鳥林を、メジロアルダンは『あそこ迄熱心に見られると(期待されると)そう悪い気もしませんでしたよ』とフォローする。

 

「まぁそう言ってくれるのであれば多少は気が楽だが・・・・」

 

「――それで、どうでしたか?

一週間私を見てきて、そして今日私の走りを"途中まで"見て、貴方は私と共にトゥインクルシリーズを駆け抜けて下さる気になったでしょうか?」

 

 緊張が、部屋の中に走った気がした。

 

「・・・・・・・・・・・・気になった、どころでは無いな。

君を育成すればダービーを獲る・・・・"奪る"事すら夢では無いと、本気でそう思ったよ」

 

「フフフ、そこまで言って頂けるのは――

 

「だが、昨日の時点で俺は君のスカウトを諦めていた・・・・君の足を扱うには、今の俺ではあまりに経験も能力も足りていないからだ。

先程ダービーを獲る事すら夢では無いと言ったが、それは君をダービーの舞台に立たせられた場合の話であって、俺の腕ではそれより前に・・・・それこそメイクデビューより前に君の足を壊してしまうかもしれない」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 沈黙が部屋を支配する中、先に声を発したのはメジロアルダンだった。

 

「"いた"、ですか。私の走りを"途中まで"見て、惜しくなったと?」

 

 鋭い視線が、鳥林の体に突き刺さる。

 

「全くないとは言わないが、"違う"。流石にそこまで恥知らずではないつもりだし、仮にそうだとしたらここで昨日諦めてた云々を明かすのは愚か者のやる事だろう」 

 

「・・・・では、今も私をスカウトする気は――私と共にトゥインクルシリーズを駆け抜けて下さる気は無い、と?」

 

「・・・・ウマ娘は感情に正直だ。

さっきから君の耳はずっと絞られている――共に駆け抜けてくれるかを聞いた時もな。

そんな状態の君に対して安易な答えを返すのは不味いと思った。だから先ずは話してくれないか?何が不満なのかを。そのうえで結論を出そうと思う」

 

「少し鳥林トレーナーに都合が良すぎる気もしますが?」

 

「否定はしない。否定はしないが、その場しのぎの肯定や耳障りの良いセリフを並べない事を誓おう」

 

「・・・・・・・・・・・・いえ、そうですね。

昨日も今日も、貴方は私に真摯に対応してくれていた。今私がこうして貴方に辛く当たっているのも、正直なところ私が勝手に裏切られた様な気になっているだけで貴方に非はありません。

そんな貴方が話を聞いて下さるというなら有難くお話ししましょう――ですが、その前に、先ずは迅速に怪我の対応をして下さったことに感謝を。その上ここまで運んでいただきながら失礼な態度をとってしまって申し訳ありませんでした。それを、謝らせてください」

 

 ぺこりと車椅子に座りながらメジロアルダンが頭を下げる。

 

「そこまで感情コントロールが上手い君があそこ迄ピリピリするなんて、要は俺が知らぬ間に地雷を踏んでいたんだろう?謝罪は受け取っておくがあまり気にしなくて良い」

 

「・・・・そういう訳にもいきませんが、先に話を進めましょうか。

先ず初めに、私は貴方が先程のレースを『途中まで』しか見ていないと、そう思っています。其処に間違いはありませんよね?

違うのであれば私の盛大な一人相撲と言うことになってしまうのですが」

 

「いや、有ってる。

4角半ば辺りで君の異変に気付いてからは救護テントに向かっていたからな、正直最後のゴールの瞬間も見ていない」

 

 それを聞いて、彼女の耳は今度は汐らしく垂れ下がってしまう。

 

「そう、ですか・・・・。

私の不満は、端的に言ってしまえばそれ――貴方が私のレースを最後まで見てくれなかったことです。

酷い話ですよね・・・・貴方は私の為を思って動いてくれていたのに」

 

「動きはしたが価値観は人それぞれだ。

君にとって早期の治療よりレースを見ていてくれることの方が重要だった。それだけ――とは流石に言えないが、つまりはそう言うことだろう?

とはいえ何故そんな価値基準が君の中に在るのか教えてくれ。

後俺程度に見て欲しがった理由もな。君とはまだ一週間の出会いだし、それこそ話をしたのなんて昨日だぞ?」

 

「では先ず私の価値観からお話ししますが、私は、私自身がトゥインクルシリーズを走る中で、一度も怪我をしないなんていうのは無理だと思っています。

『背負ってるハンデが重すぎる』『あまりにもレースに向かない体』・・・・そんなことを是迄お医者様や、この学園のトレーナー、父母にだって言われてきましたから」

 

(そんなことは無い、と否定してやりたい所だが、今の彼女の足を前にしては空しいだけか・・・・)

 

 やっぱり儘ならないな、と鳥林は思う

 

「それでも――それでも、です。

そんな、何時砕け散るとも知れぬこの体だからこそ、私は今この瞬間を輝かせることに命を賭し、短くとも儚くとも、ほんの微かな痕跡であろうとも私は私自身の生きた痕跡をほんの一筋残したい。

それこそが私に許されたただ一つの権利だとすら思っています。

だから――だから助かるかも分からぬ選手生命より、ただその瞬間の私の輝きを優先して欲しい。

それが、私の価値観です」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「・・・・・・・・まぁ、一先ずは理解しておこう。納得は別として。

だがそれなら、あそこにいたトレーナーやウマ娘達に見せるだけで十分では無かったのか?俺が途中から目を離した位で不機嫌になる理由が分からない。――単に、『誰一人私から目を逸らすな』と、そういうことなら何も言えないが?」

 

「フフフ・・・・いいえ、流石にそこまで暴君ではありませんよ。

ただ貴方は、私の出来ることを出来ると認めてくれて、私が無理をしていると思っても先ず私の意見を聞いてくれて、私の背中を押してくれて――そして、私の硝子が砕けた先にも道は広がっているかもしれないと示してくれた。どういう意図かは知りませんがずっと私に期待してくれてもいましたよね。

私はそれが本当に嬉しくて、だからそんな貴方に私の輝くさまを一番近くで見ていて欲しかった。

有るかも分からない私の未来を憂うだけの優秀なトレーナー方より、例え新人であろうと今の私と目を合わせて下さる私の輝きをちゃんと見てくれる貴方とトゥインクルシリーズを歩みたい、その想いで今日はレースを走ったのです。

――実力輝きを示せば、きっとスカウトしてくれるだろう、と」

 

(・・・・なるほど、つまりこれは――俺が始めた物語、ってことか)

 

 皮肉なことだな、と鳥林は思った。

 

(・・・・俺なんて別に、"彼"の未来を知っているから彼女の"今"を見に来ただけの、言ってしまえばただのオタクだ。どう考えても彼女の今を知って未来を憂う他の奴等の方が正しいだろうに)

 

「私の話はこれですべて終わりです。

鳥林トレーナー、貴方は・・・・私とトゥインクルシリーズを歩いてくれる覚悟がお有りになりますか?――この何時砕け散るとも知れぬ私を、ターフに送り出すその覚悟が」

 

 そう聞くメジロアルダンの瞳には、溢れんばかりの覚悟が滾っていて、しかし同時に不安も存在していた。

 彼女は最後の手段として一人きりでトゥインクルシリーズを歩んでいくことも覚悟しており、そして目の前の彼に断られた時は潔くその道を歩こうと決めていた。

 

 無論今日のレースでスカウトの話はそれなりに来るだろう事は理解していたが、しかしその度にこうして本心を打ち明けようとは彼女は思わなかった。

 きっとこんなのは、最初で最後だ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

(・・・・反論出来る所なんて、幾らでも有る話だ)

 

 ――その覚悟とやらで多重巻き込み事故を起こすかもしれないだろう、とか

 

 ――自己満足で走った愚者として扱われるかもしれないぞ、とか

 

 ――そもそもスポーツに生死を持ち込むな、とか

 

 もっともそんなことを言って彼女が意見を変えるとも思えなかったが。

 

(ハッ・・・・全レース追い込みからの大外ブン回しで走りますって言われて終わるだけだな)

 

 彼女の精神力が、仮に彼女の足の弱さの代わりに与えられたモノだと言うのなら、それはどれだけ残酷な事だろう。

 

「・・・・・・・・君の刹那主義に関してだが、きっとそれは君がこの歳まで苦しんで出した結論なんだろう?」

 

「苦しんだ・・・・ですか。そう、かもしれませんね。

物心ついて走る事に興味を持ってからこれまで、素人なりに御医者様の見解を賜ったりメジロ家の主治医に相談したりしながら色々と手を尽くしたつもりですが、しかしどうにもなりませんでした。

楽しいことが無かったとは言いませんが、しかし言われてみれば確かに苦しい日々の方が多かったような気もします」

 

「なら俺はその価値観を否定はしない。出るレース出るレースで全力を尽くせばいいと思う――が、とはいえ君も、可能であればG1のような大舞台で走りたい輝きたいんじゃないか?」

 

「だからG1以外は我慢して走ろう、とか?

残念ながら、私は自分の足がそんな大舞台まで保つとは思えません

今しか、ただ"今"しかないのです、私には」

 

 急激に一人で走っていく決意を固めるメジロアルダンに、鳥林は大慌てで否定する。

 彼女が一人で歩いていくところまで予見できたわけでは無いが、それでも明らかに碌な事にならない雰囲気であったからだ。

 

「落ち着け落ち着け落ち着け!!そう結論を急くな、出るレース毎で全力を出すのは好きにしろと先に言っただろう!

俺が言いたいのは、まさかメイクデビュー後から引退まで連闘し続けたりしないよなってことだよ!

お前・・・・君の価値観だと『出れるか分からないG1を目指す』より『たくさん出走して人の記憶に残る』ことを優先しかねないからな。

悪いが俺も、そんな"やけくそ"に付き合う気は――覚悟は持ち合わせてないぞ」

 

「それは・・・・・・・・正直に言えばそこまでは考えていませんでした。

レース選択は担当トレーナーと一緒にやるもの、との固定観念がありましたし、やはり夢を見るには私の足は脆すぎます・・・。

メジロのおばあ様も、流石に私や姉さまに天皇賞を取れとは言いませんでしたから」

 

 そう語るメジロアルダンの姿は、少しだけ寂しそうにも見える。

 

「・・・・・・・・よし分かった、こうしよう。

俺は覚悟を決める。君の足を壊しまくった末引退させて批判に晒されることになろうが、或いは君の亡骸を前に泣き叫ぶことになろうが、例えどんな結末に至るとしても、俺は君と最後まで歩くし、君の事を最後まで見届ける。どうせ二度目(の人生)で惜しむほどのモノでも無いからな」

 

「代わりに君もやけくそにはなるな、目標――夢を持て。

君は知らなかったかもしれないが、トゥインクルシリーズ(ここ)は君たちウマ娘が夢を目指す場所で、そして観客に夢を見せる場所だ。

あぁ体が弱いから、を言い訳に使うなよ。体が強かろうと才能が無く、夢破れることを覚悟のうえで、それでもレースに出てる人気薄の娘なんて幾らでもいるんだ。

三冠達成でも凱旋門制覇でも、メイクデビュー勝利でもオープン進出でも、なんでもいいから夢を持て。

でないと今の君では、容易く『全力』と『やけくそ』を混合して、全力"で"やけくそを起こしそうだ」

 

「それはつまり自分も覚悟を持つから、代わりに私も最低限自棄にならないだけの心構えは定めておけ、と。そういうことでしょうか?」

 

「そうだ。不満はあるか?」

 

「――――同情ですか?私と共に歩いて下さる理由は」

 

「違う、そんなものに意味はない。特にウマ――ウマ娘のレースにはな。

だけど俺は判官贔屓な人間で――そうだな、仮にウマ娘のレースで賭けをしたとして、容易く生活費以外全ての有り金を溶かす人間だ。

"だから"君と歩むことに一切の否は無いよ」

 

「・・・・だから?」

 

「だから」

 

 パクパクと。

 何かを言おうとしたり、でも何も言えなかったり。予想外の――予想外過ぎる答えだったのか、メジロアルダンは形容しがたい顔をしていた。

 

「感情で勝つウマ娘を判断するのはトレーナーとして致命的だと思うのですが・・・・」

 

「能力不足だと思うなら今ここで切ればいい。仮にそうなったとて君のレースは逐一観戦しに行くけどな。・・・・まぁ流石に日によっては担当優先になるが」

 

「貴方は・・・・私が思っていたよりもずっと・・・・なんというかこう、癖が強い方だったのですね。"トレーナーさん"」

 

 最早呆れすら滲ませて、それでも上品に笑うメジロアルダン。

 そんな彼女の笑顔には――

 

 ――それでも確かな、信頼と安堵に満ちていた。




うちのアルダン癖ウマ過ぎない?とか書いてて思った。

最後に赤評価有難うございます。
・・・・まぁ今回の話でオレンジになるくらいは"覚悟"していますが。(黄色は死ねる)
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