テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。


第一話『変身』

第一話

 

「ヒッ、ヒック…ヒッ…」

 

蝉が鳴く夏の夕暮れ。一人の幼児は声をつまらせて泣いていた。彼の目の前には、乱雑に折り重なる、老若男女数多くの死体。こぼれゆく幼児の涙はもう動く事はないそれに向かって落ち続けていた。

 

「うぅ、うっうっ...うわぁぁぁん!!」

 

今まで声を殺して嗚咽を漏らしたその子は、遂に我慢出来ずに泣き叫んだ。しかし、泣いても泣いても誰も来ない。空しくも、叫び声は夕暮れに染まる入道雲に響くだけであった。

 

1-1

 

かつて、日本の太平洋には、全長数十kmに渡る巨大な鋼鉄の人工島『未来島』が浮かんでいた。住人は単なる一般人ではない。各国の企業に推薦された世界的科学者に研究員、そして作業員と彼らの生活を支える従事者だけであった。彼らはそこで、人類の歴史が破壊し続けた自然環境を甦らせる為、そしてなにより百年先の人類の存続を見通した研究を続け、同僚と切磋琢磨し、新たな住居で仲間として暮らしていた。だが、そんな日々は一瞬の内に崩壊した。

 

ある年の夏。その島の付近の海底から未知の生命体が出現し、そこに住む人々を蹂躙した。食らいつきもした。動向に複雑な思考は見られない。ただ、身体能力が高いだけの野性動物の様な出で立ちをした生き物であった。それも、二足歩行をし、人と同程度の体格をしていた。

 

生命体は一体何者か。現れた原因はなにか。世界中の政府は疑問を持ち始めていたが、今はそれよりも少しでも取り残された島民を救助せんとと各国のエリート軍隊をその島に派遣した。

 

だが、それが良くなかった。

 

陸海空、戦闘機と潜水艦、戦艦に戦車。様々な軍隊の登場で劣勢であったその生命体は相手の知識、感情を瞬く間に取り入れ、そこから僅か一日で言語、複雑な感情を習得、三日で人間の姿に化ける事が出来るようになり、最終的にはたった一週間で文化や文明、最終的には国をその島で造り上げた。

 

こうして彼らは『ジン・ガイア人』と名乗り、ジン・ガイア帝国総統ジン・バイルは人間達の住む世界の支配を宣言した。目的は二つ。知識がなかった頃の我々を蹂躙した人間達への復讐と、これから先、自分達がこの星のヒエラルキーの頂点に立つ為に。

 

『我々は種として優良なる頭脳、戦闘力を有している!!それならば、この星の頂点と立つのは自明の理!!アリの様に群がる事しか能のない人類に我々は負けない!!人間達よ、感じるがいい!!狩る側から、狩られる側に立つ恐怖を!!そして、後悔するがいい!!我々を非道に蹂躙した事を!!』

 

宣戦布告通り、ジン・ガイア人は魔改造し、海底に潜る要塞と化した未来島を拠点に世界中の軍隊と戦った。当初人間側はその数の少なさと無謀とも思える宣言からすぐに事態は収束すると思っていた。

 

しかし、ジン・ガイア人の圧倒的な戦闘能力と、取り入れ、発展させた知力は凄まじい物であった。人間側は数で責める兵士を『戦闘員級』、その上に単体で高い戦闘力を持つ者を『怪人級』と呼び、そして更にその上を行く者を『幹部級』と呼称した。『怪人級』でもたった一人で軍の一個大隊を殲滅させる程の力を持ち、各国の軍隊は壊滅的な被害を受けていた。ある時には岩石の怪人級に戦車を持ち上げられ、またある時には飛行中の戦闘機を鳥型の怪人級に蹴り飛ばされ…

 

この異常事態に焦りを覚えた人間側は急遽国境間を越えた防衛隊『連合防衛軍』を設立、ジン・ガイア人から人々を守る為、日夜兵器の開発、防衛活動を行い続けた。しかしそれでも帝国の戦闘力は計り知れない。

 

「ジン・ガイア人が産まれたのは我々人類の誕生と同じで進化の途中で海底より産まれた生命体だ」

 

世界的な科学者達が言った。

 

「我々人類は絶えず他の生命体を滅ぼしてきた。今ここにその順番が我々にやって来た」

 

自然を過剰に愛する誰かが言った。

 

そして十年。人間とジン・ガイア帝国は未だに睨み合いが続き、争いや激戦が控えられたものの、泥沼の様相を呈していた。そんな中でも、人々はようやく平和を享受しようとしていた。毎週襲い来る脅威に、心の隅で怯える毎日でありながら…

 

この年の秋頃、日本の陽観高校では下校の時間になったので少し急ぎ足で帰ろうとしていた高校生がいた。

 

「ふぁぁぁぁ…さ…てと、帰るとすっか」

 

放課後の教室はクラスメイトがまばらである。遠くから運動部のかけ声が聞こえている。それを耳にしつつ、大あくびをかます高校生の名は富田トウマ。鋭い目付きをし、白色の尖った頭髪が特徴的である。彼は学生カバンを肩に背負い、教室から出ようとした。その時、肩まである暗めの茶髪をなびかせ、くりっとした瞳でトウマの顔を下から覗きこむ女子高生が現れた。彼女の名前は三千院穂乃花。トウマのクラスメイトである。

 

「あれ、トウマもう帰るの?」

 

「まーな。眠いし、家の手伝いもあるしな」

 

「ふーん」

 

「それにしても、トウマが眠いなんて言うなんて珍しいね、朝になにかあったの?」

 

「あぁ…久しぶりにまた変な夢見て、目覚めが悪かったんだ」

 

「夢?」

 

「そう、なんていうか聞いた事のある声が響いている夢だ。『目覚めの時がもうすぐやってくる。それまで待て』ってな」

 

「その声の人が久し振りに現れたって事?」

 

「あぁ、今まではまだ目覚めの時ではないって言ってた声なんだけどな」

 

「へー、なんか成績優秀、運動神経抜群のトウマもたまには変な所あるのね~」

 

「まぁ、お前とは頭の出来が違うからな」

 

「そうそう、赤点ギリギリの私とは偉い違い…って、なに言わせんてんのさーっ!!」

 

事実を述べられ、腕をぐるぐると振り回す穂乃花をトウマはひょいひょいと華麗に躱す。

 

「はっはっはっ、自分から言ってんじゃねーかよ…うわっ!!」

 

すると、背中合わせで誰かにぶつかってしまう。振り返ると、男子クラスメイトの一人が床に散乱した資料を必死にかき集めていた。

 

「やべ、悪い!!前見てなかったんだ!!あぁ、拾うひろ…」

 

自分との衝突で散らばってしまった。罪悪感を感じてトウマもばつが悪そうに資料拾いを手伝う。彼は慌ててトウマの持つ資料も奪ってさっさとその場を走り去ってしまった。

 

「なんだ、あいつ…誰だっけ?」

 

視線も合わせず、乱れたショートヘア、おしゃれであろうはなかけ眼鏡。トウマは彼を思い出そうとしたが、どうしても思い出せない。見かねた穂乃花が助け船を出す。

 

「彼は私達と同じクラスの飛田慶喜君だよ。っていうか、トウマ、クラスメイトの名前と顔位、把握したら?」

 

「うるせーな、一々覚えてらんねーよ。…で、穂乃花、アイツ、どういう奴なんだ?友達多いから知ってるんだろ?」

 

「うーん、いつも自分の机で難しい資料とか本を読んでいるのは見た事あるんだけど、正直それ以外はどんな子なのか知らないんだ」

 

「なんだ、お前もあんま知らねーんじゃん。それしてもアイツが持ってた資料の設計図の絵、どっかで見た事が...って、そんな事言ってる場合じゃねぇ!!早く帰って家の手伝いしねーと!!」

 

トウマは左手の腕時計を見ると、一目散に教室を飛び出す。自分にやらねばならぬ使命があったのだ。そう、それは下校後、長年居候している叔父経営の電器店『富田電気』の店先での呼び込みであった。

 

「いらっしゃーせー。安いよ、安いよー」

 

商店街に行き交う人を前に、彼の呼び込みの声は掻き消される。いかにやる気がないかが見て取れる。そんな姿に、叔父の闘牙は鍛えられた腕力でトウマの頭をはたき、発破をかける。

 

「オラッ、トウマしっかり呼び込みせんかい!!ノルマは三百人だぞっ」

 

「いってーな。平日の夕方からそんなに呼び込める訳ねーだろ!!チェーン店でも無理だわ!!」

 

「そんなの、やってみなきゃわからんだろう?全くこれだから最近の若い者は、最初から諦めるんだから…」

 

「やってみなくてもわかる位にアンタら目上の人がやってるから、わかるんだっつーの…」

 

二人は人目もはばからずに言い争いを始めた。しかし、テレビコーナーに置かれているテレビから流れる夕方のニュースの一報、ニュースキャスターの一言に、喧嘩を止めて注目した。

 

『次に、ジン・ガイア帝国の襲撃に関するニュースです』

 

『今日午後三時過ぎ、団鋼町の工場地帯に、戦闘員級数十名による工場の襲撃がありました』

 

『街は多くの建物が半壊、軽傷者が複数出ましたが、団扇町の工場地帯が共同で開発した大型マシーン『扇子丸』の防衛活動により、死傷者は出ませんでした』

 

『次に、連合防衛軍は今日未明…』

 

「また、個人企業による防衛か…」

 

闘牙はニュースが切り替わったと同時に、ため息をついた。

 

「なんだよ、おっちゃん?死者が出なかったからいいじゃん」

 

「アホか、今じゃ当たり前に個人企業が防衛したどうこうのニュースを連日やってるが、それはつまり、防衛軍みたいな国が設立したモンの手が回ってないから、企業が自己防衛の為に仕方なく動いているってことだろうが。そんなのがいい訳ねーだろ?」

 

「あぁ、そうか…」

 

トウマは感心した様に手を叩いた。

 

「やれやれ、ここまでジン・ガイア帝国との争いが大きいとはな…」

 

「奴らが全人類の総支配を宣言してから十年、戦いは予想を遙かに超える長期戦化。住民の防衛にまで手が回らないんで、自己防衛を理由に家庭、企業に武器の携行が許可されるなんてな…」

 

闘牙は店のカウンターの裏にある散弾銃を指差して呟く。

 

「最近じゃ、大学生が強化スーツ作って戦って怪我したなんていうじゃねーか…全く、国のお偉いさんはなにやってんだか…はぁ…こんな時、兄貴の作ったアレがあればなぁ…」

 

「父さんの?」

 

その中に気になるワードを聞き、トウマは疑問を投げかける。

 

「なぁ、おっちゃん、父さんは確か惑星開発用のスーツを造ってたそうだけど、どんなの造っていたんだ?」

 

闘牙はしまったと言わんばかりの焦りの表情を見せた。

 

「い、いや何でもない!!さ、ホレ、呼び込みをしっかりとやれよっ!!ノルマは五百人だからなっ!!」

 

「さっきより増やして誤魔化すなよ!!なぁ、それってどういう…」

 

無視して店に引っ込む闘牙に、トウマは思わず駆け寄ろうとした。その時であった。何者かが彼の前を横切り、肩をぶつけて通り過ぎた。突然の衝撃で驚いたが、すぐに通り過ぎた相手を見た。それは飛田であった。彼は振り向くことは一切なく、商店街の中を駆け抜け続け、最後には人混みに消えていくのであった。

 

「あいてて、なにすんだ...って、ん?なんだこりゃ?アイツの落とし物か?」

 

道ばたに学校で見かけたのと同じ資料が数枚散らばっている。トウマが拾おうとした時、今度は黒い帽子とトレンチコートと羽織った二人組が商店街の前を走り抜け、飛田と同じ道を駆け抜けていった。そんな様子に、トウマは怪訝な表情をした。胸騒ぎがしたからだ。

 

「おっちゃん、悪い。ちょっと行ってくる」

 

「え?おい、仕事どうすんだ、おいトウマ!!...いっちまいやがった」

 

飛田は二人組を撒いたと思い、息を整える真っ最中であった。

 

「はぁ...はぁ...」

 

辿り着いたのは住宅街の片隅にある小さな公園。人気はない。

 

「ここまでくれば大丈夫かな。よし、やっと学校の合間に完成させたんだ、絶対に帝国なんかには渡さないぞ...!!はぁ…」

 

整え終わるのを待つ前に、彼は手に持った封筒を大事そうにじっと見つめる。と、首筋に強烈な負荷が加わる。身体も宙に浮いていた。苦し紛れに息をしつつ視線を上げると、例の二人組が前に立ち、一方が飛田の首を絞めて持ち上げた。視線を上げた事で彼らは帽子を落とす。現れた二人組の顔は明らかに人間ではない。掴んでいる方はカメレオン頭、そしてもう一人はイノシシの顔。追い掛けていた二人はジン・ガイア人だったのだ。

 

「このエリート諜報部員、マツナガ様から逃げられると思ったら大間違いだぜ兄ちゃん。...死にたくなきゃ、『テグサーマン』の設計図を渡しな。相当ヤベー奴らしいからなぁ」

 

カメレオンの男、マツナガは掴む手を揺らしながら、飛田を脅す。

 

「さ、ホラどうだ!?どっちにしても資料は貰っていくんだからな。大人しく渡した方が身のためじゃねーかっ!?」

 

締め上げる力がだんだんと強まる。本気のようだ。

 

「だ、誰がお前達に渡すか...!!」

 

「あーあ、折角一つしかない命を無駄にしやがって...じゃあ、お望み通りにしてやるよ!!」

 

「ぐぅっ!!」

 

飛田の無意味な抵抗を前に、マツナガは掴んだ首に更に力を込めようとした。緑色の指が肌に更に深く食い込む。

 

「じゃあ、しぃ…ネッ!!」

 

ドッ。

 

その時、彼の後頭部に5cm程の石と鈍い音がする程に勢いよく直撃した。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!あぁぁぁぁっ!!ぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

その衝撃に、マツナガは掴む手を離して、地面にのたうち回り、激しく悶絶した。横にいたイノシシ男、コブンロは飛び掛かるように駆け寄った。

 

「あ、兄貴、大丈夫ですかい!?」

 

「超いってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!誰だ、こんな真似しやがるのは!!」

 

「あ、あそこだ、あそこにいるっ!!」

 

コブンロが指差した先にいたのはトウマであった。それに気付いたマツナガはガバッと起き上がり、勢いよく怒鳴り散らした。

 

「てめえ、この白髪頭!!俺達を誰だと思ってやがる!!俺達は人間から恐れられているジン・ガイア人の軍人だぞ!!」

 

「怖くねぇよ、それよりてめえらがここら辺をうろつくお陰でなぁ...」

 

そう言いながらトウマはゆっくりとマツナガに近付く。

 

「わっ、わっ、なに…?」

 

その威圧感にマツナガがたじろいだ瞬間、トウマは彼のYシャツの胸ぐらを強く掴んだ。

 

「家の電器店の来店者が近寄らなくなって売り上げが激減しておっちゃんから無茶苦茶なノルマを押し付けられるんだ!!もし達成出来なかったらプロレス技かけてくんだぞ!!そっちの方がヤベーんだよぉぉぉぉぉ!!」

 

「えっ、そっちの方が怖いの!?」

 

「当たり前だ、馬鹿野郎っ!!外の鬼より、家の鬼が怖いに決まってんだろぉ!?四六時中いるんだからなぁっ!!」

 

「な、なんだコイツ!?どういう認識だっ!?」

 

相手が異形の物でも物怖じせず、掴んだ胸ぐらを思い切り振り回す恐るべき人間。怯える異形の二人。この時、飛田は思った。

 

(この強さと恐れのなさ、この人なら変えられる…!!)

 

(彼とテグサーマンで世界を変えられる..!!.)と。

 

「お、覚えてろ!!」

 

そうこうしているうちに逃げ出すマツナガとコブンロ。彼の捨て台詞を聞き流したトウマは拾った資料を持って飛田に近付いた。

 

「これ、落としてたぞ、じゃあな」

 

「待って下さい!!」

 

「んあ?」

 

用件は終わったと、帰ろうとするトウマに飛田が話し掛ける。

 

「あ、あの、この資料見ましたか?」

 

「あぁ、悪いがチラッとな...といっても難しい数式ばかりで唯一分かったのはテグサーマンっていう文字だけな...」

 

「そのテグサーマンの実験に協力して頂けませんか!?お願いします!!あなたの勇気をお借りしたいんです!!少しだけ、少しだけでいいんですっ!!」

 

「い、いきなりだな...そんな事いきなり言われても困るぜ。なんかヤバそうだしな。断るよ。それじゃ…」

 

「そうですか…まぁ、当然ですよね、こんな事急に言われても…ね。失礼しました、それじゃあ…」

 

二人は反対方向の出入口から公園を後にした…と思いきや何故か距離が開かない。動けず振り向いたトウマは原因を知り、面倒くさそうに呟いた。

 

「…そう言うなら、俺のズボンを掴むこの手、離してくれない?」

 

「いえ、いいんです。いつ追っ手が再度来るかもしれない。僕の事は構わず、早く去った方が身の為ですよ。さぁ、早く、行って下さいっ!!じゃないと追っ手が、追っ手が…」

 

「諦める気ゼロで巻き込む気マンマンじゃねーかっ!!分かった、分かった!!聞いてやるよっ!!」

 

1-2

 

飛田の話を聞くことになったトウマは街外れの一軒家、それもかなり大きい洋風の豪邸に案内された。

 

「はぁ~、外から見て思ってたけど、結構デカい家だなぁ。ここがお前ん家?」

 

玄関から入るや否や、視界に飛び込んてきたのは外観同様豪華絢爛なシャンデリア、自身の身の丈程もある古時計であった。下駄箱にある靴もブランド物ばかりのようだ。飛田は関心するトウマを前に首を横に振った。

 

「いえ、違います。ここは僕の研究を協力してくれる企業の社長宅です。僕が研究をする際はここを使わせて貰ってるんです」

 

「あのテグサーマンって奴か。よくわかんねぇけどあんな細かいのを一人で開発するなんてお前すげぇな」

 

「それも少し違います。実はこの研究の基礎は僕の父さんと仲間の方々が開発したんです....さ、こっちです」

 

飛田は玄関の目の間にある厳重な金属扉の前に立ち、手慣れた手つきでパスワードを入力する。ガチャリと開錠する音が聞こえた。開かれた扉の先にあるのは底が見えない程に暗い階段だけ。電気を点け、トウマを案内する飛田は静かに口を開いた。

 

「トウマさん、知っての通り今この世界では十年前までは考えられなかった圧倒的な戦闘力を持つ生命体と戦っています」

 

「彼らの強みは力と知力もありますが、最も強い点は人間と同じサイズ故に巨大な戦車や戦闘機と違って小回りが効いて、コストが低い事だと考えています」

 

「連合防衛軍もそれに気付いて人が装着するパワードアーミー、メニーを開発しましたが、戦力としてはまだまだ不安定な状況です」

 

「そこで現在、色んな企業が慈善事業としてパワードアーミーやマシーンを開発したり、戦いに参加しています」

 

「そしてこの度、旋風重工もそれに参入しようと思いまして。僕を雇って人間の力量、感情をフィードバック、力にする新型装着戦士を開発しました。」

 

「それがこの...」

 

「Transformation Guardian Suitの頭文字を取った...」

 

「テグサーマンです!!」

 

階段を降りると、自動ドアの奥、研究室には彼の言う装着型戦士が立っていた。その戦士はテレビで見た無骨なカラーリングをした軍のパワードアーミーと違って一目で正義のヒーローである事が解る出で立ちをしていた。白をメインカラーに、赤のラインが入ったその戦士は目の部分には黒いV字型ゴーグル、後頭部には長いアンテナを二本装備。続いて胸には白いアーマーが装備されており、肩には大掛かりな青きパーツが装備。大型の腕と脚に掛けてある黒いアンダースーツの上の手首足首には白く、赤のラインが入った黒い立方体のアーマーが取り付けられていた。

 

「コイツは...まるでテレビから出てきたヒーローみたいだな...」

 

驚くトウマに飛田は自慢するかの様に説明する。

 

「このアーマーは本来宇宙開発用に作られたテグサーマンシリーズ第一号のテグサー1です」

 

「パワードアーミー以上の機動力は勿論、圧倒的な装甲とパワーを持っています。更に圧倒的な砲撃能力で怪人級以上の高い装甲を一気にぶち破る事が可能と考えられます」

 

「因みに装着システムは僕の父が開発し、エネルギーシステムを担当したのは富田...あれ、この名字は...」

 

「富田藤次...俺の親父か?」

 

「...!!その通りです。まさか、父の仕事仲間の息子さんがクラスメイトだったなんて...」

 

「あぁ、俺も驚いてるぜ。まさか、父さんが作った奴がこんな所にあるなんて…」

 

「ところで、コイツの性能に随分と自信がある様だが、その、十年前のデータのスーツが役に立つのか?」

 

「その点は…こちらをご覧下さい」

 

飛田はそばにあったリモコンを捜査して、近くのモニターの電源を付けた。そこには誰かが装着しているテグサー1が山中の荒地で試験運用をしている姿があった。

 

「おぉっ、すげーな…」

 

映像内のテグサー1にトウマは驚きを隠せない。なぜならそのアーマーは自身より何倍も大きい岩を持ち上げ、投げ飛ばし、次の映像では、走る超重量級の重機と真正面からぶつかっても平気な顔をしていたからだ。

 

「こんなのメニーでも出来ない代物だ…でも、どうしてこんなパワー、耐久性を?」

 

「それには…これが秘訣となります」

 

飛田は懐からスマホに似たガジェットを取り出し、カバーを開いた。中には目まぐるしい数の機械と共に、その中心で小さなチップが鎮座していた。

 

「これはテグサロイド。映像のテグサーマンに変身できる媒体となります。で、この機械の中心にあるのはTEメモリ。これでTE粒子を集め、テグサーマンのパワーを底上げするんです」

 

「TE粒子?」

 

「ああ、すいません。TE粒子ってのは僕の父が発見した粒子で、この大気圏内は勿論、宇宙にもある粒子の事を言います。で、この粒子は人間の感情…もしくは想いによって力を与えてくれるという不思議な粒子なんです」

 

「えぇっ!?そんな物が空気中に!?でも、誰かの感情毎に不思議な事が起こったって話は…」

 

「勿論ありませんよ。だから、この機械…中心のコイツで粒子を集め、テグサーマンの力を上げているんです…最も、それが活かせるのはトウマさんのお父さんが開発したテグサーマンあっての事ですが…」

 

「飛田!!どういうつもりだ?」

 

飛田の熱心な解説を遮るように、後ろから凛々しい成人女性の声が聞こえてきた。二人が振り向くと、二人の女性、正確に言えば成人の女性と小さな少女がこちらに向かって歩いてきた。

 

「あっ、涼さん」

 

「飛田、メールを見たぞ。これを装着するのは私で決めていた筈だ。それなのに何故今さら変更するんだ。大体、部外者をここに入れるなんて不用心じゃないか?」

 

涼さんと呼ばれる成人女性は腰まである、黒く長い髪をなびかせ、左目の真下に傷跡がある瞳で見下ろし睨む。物静かながらも男であるトウマが気圧される程の威圧感溢れる雰囲気だ。少々厚手の膝まであるトレンチコートと、中のフォーマルな恰好がそれを手伝っている気さえする。そんな彼女に物怖じせず、飛田は質問に答える。

 

「理由は二つあります。一つはトウマさんの何にも恐れない強さを見たから。そしてもう一つはこのテグサー1に装備しているバイオ・ユニットは装着者の感情をデータにフィードバックすれば、更にパワーアップします。ですから…」

 

「えぇ~、この人が富田博士の息子~?そうには見えないけどねぇ~?ま、飛田がそこまで言うなら、それ相応の働きはしてくれるんでしょうねぇ~?」

 

飛田の説明に突如割り込んできた、金髪をサイドテールで纏めた赤黒い瞳の少女。彼女はトウマを見下すような目つきをしていた。

 

「...俺はやると言った覚えはないんだが。それより飛田、この子は誰なんだ」

 

見た目同様、生意気な事を少女に言われ、ムッとしたトウマは飛田に質問する。

 

「こちらはレミーさん。僕らより年下ですが、旋風重工の社長令嬢でテグサーマンプロジェクトの責任者です…一応」

 

「あぁ?この子がぁ?そんなデカい事出来る様な奴には見えないけどなぁ~」

 

「フンッ!!」

 

レミーは人から見て左側にまとめている金髪のサイドテールをなびかせながらトウマの弁慶の泣き所を思いっきり蹴り飛ばした。

 

「あいってぇ!!なにしやがんだこのガキ!!」

 

「なによ!!」

 

二人は初対面ながらも、遠慮なく睨みあった。涼はゴホンと強く咳払いをし、話を元に戻した。

 

「とにかく、私達はこの男の能力を知らない。実力を知る為に外で試させて貰うぞ」

 

「...いや待て、俺はやるって一言も...大体俺は飛田に…」

 

トウマはここに来た理由を話そうとした。しかし時既に遅く、他の者達は外への通用口に向かっていった。

 

「ちょっ、話聞いてくれない?」

 

1-3

 

外に出た四人は涼の案内で近所の草原にやって来た。トウマが涼と向き合う中、飛田はデータを取らんとノートパソコンを構え、レミーはその様子を横から見守っていた。

 

「さぁ、ウチの涼に対してどれだけの力を持っているか、見ものね」

 

「期待通りだといいんですけどね」

 

どうしてこうなったのか、いつの間にかテストとしてほぼ初対面の女性と決闘が始まらんとしていた。

 

「いや、待て待て。だから、俺は参加するって、一言も…」

 

トウマは見届け人の二人に向かって手をぶんぶんと横に振って否定する。

 

「さて、トウマと言ったな。もしお前が飛田の言う通りの男なら…」

 

割って、涼が構える。

 

「な、なぁ?オタクらの選択肢に断るって項目はないの?」

 

「この刀、受け止められる筈だ!!」

 

涼はコートに帯刀していた刀を鞘から勢い良く抜き取り、上段の構えから思いっきりトウマの脳天に目掛けて振り下ろす。

 

「うぉっ、あぶねぇ!!殺す気か!!」

 

トウマは間一髪避けるが刀身の追撃は止まらない。

 

「心配いらん、今回は模造刀だ!!」

 

「冗談じゃねぇ!!それでも死ねるっての!!」

 

草原を転がりながらギリギリ避けるトウマは飛田に問い掛ける。

 

「おい飛田!!お前さっきコイツになんて連絡したんだ!!」

 

「すいません、少しだけ報告を脚色して、『ジン・ガイア人のナイフを避け、銃弾を掻い潜って通常の三倍高く翔んでからのキックで倒した凄い人材を見つけました。』って書きました」

 

「脚色どころか捏造じゃねーか!!ふざけんなマジで!!」

 

「飛田と喋っている場合かっ!!次はクナイ、行くぞっ!!」

 

そう言いながら、涼は懐から小さな刃物を取り出し、構えると、トウマを目掛けて二つ連続で投げつけた。

 

「うわっ、アブネッ!!」

 

再度転がって避けるトウマ。彼が元いた場所に、クナイが突き刺さる。

 

「ちょ、今度はマジの奴じゃねーかっ!!やめろやめろ、ホントに危ないから…」

 

「今のを避けるとは…よし、次は三本だっ!!」

 

「やめろっつってんだろっ!!!」

 

両者の激しいぶつかり合い。こんなやり取りを、二つの影が物陰の草むらから見ていた。マツナガとコブンロであった。

 

「コブンロ、奴等がテグサーマンを外に持ってきてるのは本当だな?」

 

「間違いないですぜ、兄貴!!奴等がテグサーマンをあのスマホみたいな奴に収納したのを見ました!!」

 

「あんな小さい物にか...よぉし、ここで奪えば俺達の昇進は間違いない!!行くぜ、コブンロォ!!」

 

「アイサー、兄貴!!」

 

彼らは意気込んで出ようとした、その時であった。マツナガの額に、涼が投げたクナイがドスッと命中したのは。

 

「くせ者め!!」

 

「チクショーいってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!てめえら前から後ろからと当てやがって!!」

 

見下している人間から今日だけで二度もどつかれる。怒り心頭のマツナガは草むらから一気に立ち上がった。

 

「だがその生意気な態度ももう終わりだ!!いでよ、役獣イエティマン!!」

 

そう言いながらマツナガは役獣である怪人級・イエティマンを奥の深い森から呼び出す。のしのしと歩くそれは全身が顔がよく見えない程に白く、長い毛に覆われていた。そして二メートル以上はある体格は凄まじい威圧感を放っていた。三人はその怪人を前に身構える中、「あわわ...涼、助けて...」とレミーは完全に怯えていた。マツナガは、その姿に目を光らせた。

 

「フーム、どうやらそのガキがこのチームのリーダーみたいだな。よし、イエティマンよ、そいつを襲え!!」

 

「ウォォォォォ!!」

 

指示されたイエティマンはドスドスと走り出す。

 

「あ、あぶねぇ!!」

 

「社長!!」

 

一番近くにいたトウマと涼はレミーを助けるため駆け出す。イエティマンは鈍重な見た目ながらも人間よりも脚が早い。毛をなびかせ剛体がレミーまで残り五メートル程まで差し掛かったその時、マツナガは新たに指示を出す。

 

「...とガキを襲うと見せかけて、白髪の方のガキを狙えー!!」

 

「な!?」

 

急に方向を変えて襲い掛かるイエティマンに、トウマは驚いて思わずその場に立ちすくんでしまう。

 

「う、うわぁぁぁぁぁ!!」

 

目線より高い所から、頑強な拳が迫る。トウマは恐怖で目をつぶった。しかし、一向に攻撃が迫って来ない。恐る恐る目を開けた時、彼は驚くべき光景を目の当たりにした。それはイエティマンの拳を背で受け止め、庇う涼の姿があったのだ。

 

「あ、り、涼...」

 

「トウマ、逃げ...ろ...ぐふっ!!」

 

トウマの無事を確認してか、涼は攻撃による衝撃で口から血を吹いてその場に倒れ込んでしまった。

 

「涼!!」

 

「涼さん!!」

 

仲間の重傷を目の当たりにし、飛田とレミーが駆け寄る。表情には不安が隠しきれていなかった。すかさずトウマが涼を抱き起こす。やはり彼女は瞳を閉じたままで身動き一つしなかった。レミーは感情が抑えきれず、大きな瞳から大粒の涙を溢した。

 

「涼、涼…!!うそよ、うそだよね?涼がこんなに簡単に…うっ…うっ…うわぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

彼女の泣き声が、草原、遠くの山にまで響く。続けて、マツナガの高笑いも辺りに轟いた。

 

「フワハッハッハッ!!自分の身を犠牲にしてまで他人を庇うなんてバカな奴だぜ!!さてと、それじゃテグサーマンを頂こうじゃないか!!」

 

指示を受け、イエティマンは無情にも迫り続ける。

 

「あ…そ、そんな…」

 

迫る怪人に怯え、涙すら止まるレミー。それを目の当たりにしたトウマの脳裏に、あの光景が蘇る。かつて見た、折り重なるそれまで『生きていた』人の数々、その下で流れるどす黒い流血が。

 

「あ、あぁああ…うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

彼は駆け出した。イエティマンに向かって。あの子を守りたい。ただその一心で。

 

「トウマさん!?ダメだ、勝ち目なんかないですよっ!!逃げてっ!!」

 

警告しようとした飛田であったが、不意に胸が熱くなるのを感じた。心理的ではなく、物理的にだ。見ると、懐に収納していた小型端末『テグサロイド』が画面のみならず、変身用のアプリまでも起動させていた。

 

「なんだ、テグサロイドが急に...?もしかして、バイオユニットが彼に装着したいと願っているのか?だとしたら彼の何がそうさせたと言うんだ…?まぁいいや、それは後で分かる事!!」

 

飛田はテグサロイドを投げる。行き先は、トウマの手中であった。

 

「トウマさん、変身するなら今この時です!!叫んでください、『チェンジ、テグサーマン』と!!」

 

飛田の指示にトウマは足を地面に強く着けて構える。目前に拳が迫る。しかし、それでも構わず、彼は叫んだ。

 

「チェンジ、テグサーマン!!」と。

 

テグサロイドは軽快な音を鳴らし、トウマを光に包ませてテグサー1の鎧を装着させる。腕、身体、足、そして最後に頭部へと。彼が『変身』を終えると同時に、ゴーグル部分に黄色の目が光り、イエティマンの拳をすぐさま片腕で止めた。そして、足で彼をいとも簡単に蹴飛ばすと、上げた両腕を胸の前で広げ、構え、呼ぶ。人類の新たなる希望の戦士の名を。

 

「テグサー、1ッ!!」

 

「うおおっ、なんだアレッ…!!カッコイイ」

 

一部始終を見届けたマツナガは見惚れていた。しかし、すぐさま首を振って、再度イエティマンに指示を出す。怪人もまた戦士の登場を前に動きを止めていた。

 

「えーい、こうなったらテグサーマンを破壊するしかない!!やれ、イエティマン!!」

 

指示にハッと我に返り、イエティマンはテグサー1に思い切り右の拳を振り下ろす。しかし、テグサー1の左手にいとも簡単に掴まれ、外側に思い切り捻り上げられた。相手は小柄ながらもかなりのパワーらしく、手を離そうにも離れられない。ついには苦痛の表情を浮かべる程であった。それでもと、イエティマンは気力を振り絞り、今度は左の拳でテグサー1の体を大きく離れた木々へと吹き飛ばした。

 

「はっ!!」

 

しかし、テグサー1は飛ばされた先の木を踏み台にして元来た道へとUターン。勢いを利用してイエティマンの左頬を殴り飛ばした。

 

「グエアッ!!」

 

衝撃音が辺りに響く。草原に激しく転がり、唸りながらダウンするイエティマン。すぐさま起き上がったものの、所詮は獣。完全に頭に血が昇っていた。怒りに満ちた表情で迫り、手を組み合わせてテグサー1にハンマーパンチをお見舞いする。しかし、テグサー1は避ける事もせず、ハイキックで蹴り上げる。その衝撃で腕が頭上まで上がり、イエティマンの胴は防ぐ物がないがら空きとなった。

 

「うおおおおおっ!!」

 

テグサー1は激しい拳のラッシュをイエティマンの胸部にぶつけた。毛と固い皮膚に覆われているとは言え、受けた衝撃は凄まじく、その足は徐々に後ろに下がる。そこで、イエティマンは大きく振りかぶった相手の隙を見計らい、体制を立て直し、迫る右の拳を受け止めた。そして、次の瞬間に飛んできた左の拳も。

 

「グゥゥゥゥ…!!」

 

「ぬぅぅぅぅ…!!」

 

足腰を踏ん張り、腕を押し合う二人。力は拮抗し、両者ともども身体は激しく震えていた。その時、イエティマンは口を開き、口中から冷たく輝く息を吐いた。

 

「う、うおっ…!?」

 

その息に触れたテグサー1の頭部アンテナが凍り付いた。秋とはいえ、まだ暖かい季節にも関わらず。驚愕したテグサー1は一瞬、力を緩めてしまった。その隙を、イエティマンは逃さない。持てる力を振り絞って、テグサー1を押し、膝をつかせた。

 

「し、しまった…!!このままじゃ押しつぶされる!!」

 

「ハハハッ、やれ、イエティマンッ!!」

 

勝利を確信し、マツナガはイエティマンに指示を出す。

 

「ま、まずい…!?」

 

これでは勝てない。テグサー1はそう感じた。しかしその時、彼は見た。涼の傍らで、静かに泣き続けるレミーの姿を。戦士は一気に奮い立った。誰かの為に泣く、彼女の涙の為に。

 

「なめんじゃ…ねぇぇぇぇっ!!」

 

着いた膝を浮かせたテグサー1は一気に立ち上がり頭上に強烈な頭突きをかました。予想外の攻撃に倒れるイエティマン。衝撃で割れる、アンテナの氷。テグサー1は追い討ちを掛けようと一気に迫る。だがその侵攻に、飛田の「待った!!」がかかり、急停止する。確認した飛田は言う。

 

「トウマさん、胸の装甲を開いて下さい!!」

 

言う通りに、テグサー1は胸の青い装甲を開かせた。開いた部分から現れたのは、煌めく発射口。撃つのは今か今かと輝いていた。飛田は説明を続ける。

 

「その装置は必殺光線を撃ちます!!まずは脳波でエネルギーチャージを考えて下さい!!」

 

「よし、わかった!!」

 

言われた通りに考えると、TE粒子を収束、構成させた超火力のエネルギーが胸部発射口へと集中する。煌めきが、強い光へと変わった。その強さは、まだ明るい夕方ながらも、開いた胸部装甲が照り返される程であった、

 

「叫んで下さい、撃竜波と!!」

 

「よ、よし、撃、竜、波ーっ!!」

 

絶叫したその瞬間、発射口は開いた装甲をより強力な閃光でキラリと光り輝かせると、直線状の光線を放った。

 

「あ、ア、アギャアアアアアア!!」

 

撃竜波のエネルギーを全身に浴びたイエティマンの剛体は吹き飛び、断末魔をあげてすぐさま派手に爆発。撃竜破を出し消えると、その場に怪人の影も形もなかった。たった一人に自慢の怪人級を潰された事実。マツナガとコブンロは口をあんぐりと開けて唖然としていたが、デグサー1と視線が合うなりハッと我に返った。

 

「お、おのれー!!覚えてろー!!」

 

「ま、待って下さいよ、アニキー!!」

 

帝国の二人が足をもつれさせて逃げ帰る。戦いは終わった。草原に残ったのは、テグサー1と飛田とレミー。そして、流血しながらも目を覚まし、ホッと微笑む涼だけであった。

 

1-4

 

その後怪我を負った涼はトウマ達によって病院に運ばれ、三人は一緒に事務所に向かって帰っていた。周囲は闇に包まれ、彼らが歩く住宅街は先程の激闘が嘘の様に、煌々と灯りを灯していた。そんな中をしばらく歩いていると、不意にレミーはトウマに話し掛けた。

 

「それでトウマ?ウチで戦ってくれるって本当?」

 

「あぁ、父さんが作ったもので、人が作った物なら俺が使うしかないだろ。だからよろしくな...ええと...」

 

「私を呼ぶ時は社長と呼びなさい。これからは私の元でコキ使ってあげるから、そのつもりでよろしくね!!」

 

「コイツ堂々とコキ使うっていいやがった..どんな教育受けてんの?」

 

怪訝な顔をしながら、トウマはレミーを指差した。視線が合った飛田は苦笑する。

 

「まぁまぁ、それはともかく、これからはあの事務所兼自宅で働く訳ですから、仲良くしましょう?それよりトウマさん、さっきの戦い、あんまり覚えてないって本当ですか?」

 

「んあ?ああ、それが、ぼんやりとしか、な…涼が倒れた所はしっかりと覚えていたんだが…それからははっきりとは…その瞬間になにかを思ったような気がするんだが…なんとも、なぁ?」

 

「…答えを聞く限り、なにかの切っ掛けで動いたって感じですね。でもそれが、たった一人であの怪人級を倒したのは事実。それが分かれば…どうしました?」

 

見ると、レミーが前方を指差していた。

 

「ねぇ、誰かがこっちに向かって走って来るよ」

 

「えっ!?」

 

まさか、ジン・ガイアの新たな敵か。先にある闇の中ではよく見えない。思わず構える飛田。すると、そんな彼の前に、トウマが立った。

 

「まぁそう不安になるなよ飛田。今の俺達なら負ける気がしないぜ。さぁ、どんな相手だか知らねぇがかかって来やがれ!!」

 

その『誰か』は段々と近付いて来る。どうやら怪人ではなく、人間のようだ。安堵する飛田。だが、それとは反対に、電灯の真下を通りかかってハッキリと見えた『誰か』を前にして、今度はトウマが冷や汗をかいて青ざめだした。なぜなら、迫りくるその正体は…

 

「ゲッ、おっちゃん…!!」

 

今にも鬼の角でも生えそうな程に激怒する闘牙であったからだ。

 

「このやろぉー!!仕事サボりやがってー!!」

 

「ま、待って…!!これには深い理由があって…!!」

 

トウマが理由を述べようとする。だが、それが語られる前に、闘牙は彼に迫ってコブラツイストを力いっぱい掛けだした。

 

「い、いてぇぇぇぇっ!!」

 

その技は凄まじく、完璧に極まっており、トウマは激痛に悶絶していた。それでも、なんとか言葉を絞り出す。

 

「お、俺はそこにいる飛田を助けて、帝国の怪人相手に戦っていたんだよ!!だから、手伝えなくってよぉっ!!」

 

「嘘つけ、そんなトンでも話信じられるか!!ゴメンなそこの君、コイツの言い訳に付き合わされて!!」

 

「いえ、そんな...」

 

目の前の事態に引きつつも、返事を返す飛田。

 

「飛田ー!!し、証拠だ、このわからず屋にテグサロイドを見せてやってくれー!!」

 

「まだ言うかこのー!!」

 

言い訳を続けるトウマに、闘牙は更に力を強めた。

 

「あ、あいてーーーーっ!!」

 

「くすっ」

 

「な、なに笑ってんだ、おーい!!飛田ー、助けてー!!」

 

さっきまでの活躍ぶりとカッコよさとまるで違うトウマの情けなさ。そのギャップに飛田、そしてレミーもまたはクスリと笑うのであった。




初めまして!!

本作品第一話をご覧頂き誠にありがとうごさいます!!

当作品は個人的趣味として約六年間作り続け、複数あるシリーズ作品の内の第一作品となります。なお、テグサーマンのストーリー自体は約二十五話で完結しておりますのでご安心くださいませ。

もし機会があれば他シリーズ(基本的に未完結)も投稿し、更には文書同様稚拙下記の様なイラスト…ホントに笑われるレベルの奴(あらかじめ言い訳)を投降したいと考えておりますので、その際は是非暖かい目で見ていただけると幸いです。
※下記イラストの一枚目はキャラクター、二枚目は今回の話のハイライトを投稿させて頂きます。こちらでイメージを参考にしていただけると幸いです。

【挿絵表示】


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