テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。


第十話『共闘』

10-1

 

茜達とドルカの出会いと戦い、そして、別れ。それらが終わって彼らが帰った港は、先程までの騒がしさが嘘の様に静まり返っていた。そんな場所で一人、居残っている者がいた。それはイーヴィル・ディーン、ただ一人であった。

 

「終わったか…それにしてもあのドルカとかいう奴、色々な奴らに振り回されて哀れな奴だったな…」

 

彼は静かな瞳で海を見ながら、物思いにふけっていた。

 

「改造されていたとはいえ、あんな風に関心だのなんだの、そんな甘い考えの先に待つのは死。それだけだ…」

 

「俺は今そう考えている…」

 

「なのに…何故だ…」

 

「胸の奥で何かが引っかかっている…とても不快だ」

 

「この気持ち、あの時の…テグサー1が子供を守ったのを見た時と同じ感覚だ…」

 

「分からん…何故だ、何故奴らはああやって他人の為に腕を振るう?何故そこまで力を蓄える事が出来る?」

 

「他人への想いだ、なんだと言うが、そんなのを持ってなんとするんだ?自分の事を優先すれば戦いは楽に感じられる筈なのに…あんな悲しい気持ちにならずに済むのに…」

 

「結局、この街探検は無意味どころか、疑問だけが残ってしまったか…」

 

「本当は解決したい所だが、そろそろ帰りの船が来るな…」

 

そう言いながら、ディーンは海に背を向けてコツ、コツと革靴の足音を鳴らしてその場を去る。辺り一面には先程の晴天とは打って変わって霧が広がり、彼はその中に消えてゆくのであった。

 

それから数日後、未来島に帰ったディーン。作戦会議室にてマツナガとその部下コブンロと顔を合わせていた。席に座って目を伏せつつ待つ、その澄ました顔に、マツナガは歯ぎしりしながら睨み、コブンロはまぁまぁと、主の行いに対して引き気味に宥めていた。静かながらも物々しい雰囲気となったその時、ガチャリと扉が開いた。

 

「ごめんなさい、待たせたわね」

 

現れたのはミルメであった。

 

「いえ…それで、俺とこんな人達を集めてどうするのですか?」

 

「こ、こんなだとぉ~っ!?」

 

ディーンの煽りとも聞こえる言葉に、マツナガは腕を震わせて握り拳を構えていた。しかしディーンは気にする事はなかった。それはミルメも同じであった。

 

「えぇ…今後、二人には共同で任務に当たって貰おうと、あなた達を集めたの」

 

「なっ…」

 

「なにィ~!?」

 

ミルメの突然の宣告。ディーンとマツナガは思わず同時に驚愕の声を上げた。

 

「お、おいマジかよミルメ!?よりによってなんでコイツなんかと…」

 

不満を持ち、前に出るマツナガ。表情は怒りと困惑に満ちている。それに臆する事なく、ミルメは淡々と説明を始めた。

 

「力のディーンと策略のマツナガ。あなた達二人が力を合わせれば、ここから一番近い日本、特にあのテグサーマンを倒す事が出来る筈。そう考えたから、あなた達を集結、一致団結させる事にしたの」

 

「あ、そうそう。この作戦の隊長はディーンとなるから、よろしくね」

 

「はぁっ!?俺じゃねーのかよ!?そんなの断固拒否するぞ!!大体、コイツは俺より階級が低い…」

 

「この編成は総統が自ら考案したものよ。ここで拒否するなら、総統に逆らう事になるけど、それでもいい?」

 

「そ、総統の…?そ、それは…その…いやしかし…」

 

総統からの指令は絶対だ。それは理性ではわかっていても口をモゴモゴとさせるマツナガ。その姿を見て、ミルメはディーンの方を向いた。

 

「…決まりね。それじゃディーン?このチームの事、よろしく頼むわよ?」

 

「ハッ、お任せ下さい」

 

静かに了承するディーンを見たミルメは会議室に背を向ける。出入り口の扉を開いた。マツナガは思わず「お、おい、待ってくれ!!もう一度考え直して…」と呼び止めるが、ミルメは聞く耳を持たず、部屋を後にして、扉を固く閉ざすのであった。

 

「あ、あぁ…行っちまった」

 

落胆するマツナガ。その時、彼の肩は背後からの手にポンと叩かれた。思わず振り向くと、それは、ディーンの手であった。

 

「ま、何はともあれ、よろしく頼むよ。マツナガ君?」

 

ディーンは満面の笑みで話しかける。

 

「え、えぇ…よろしくお願いします…ディーン隊長殿ぉ…」

 

対して、マツナガは溢れ出る怒りを抑え、引きつった笑顔で返すのであった。

 

それからは、マツナガとコブンロと共に自室であぐらをかいて夜を過ごしていた。

 

「兄貴~、そんなに刺したら、明日フラフラにになりますぜ~?」

 

「るせぇ~、もっと持って来~い」

 

マツナガは怪人の姿となって、注射器で胸を刺し、そこからドロリとした液体を流し込んでいる。こうする事で顔が赤くなり、酔っぱらいと同じ状態となるのだ。

 

「…それにしても、アイツが、ディーンが俺達の上司になるとは…」

 

「…俺はよぉ~開戦してから十年、ずっと日夜戦い続けて来たんだよなぁ!?」

 

マツナガの投げかけに、コブンロは頷く。

 

「晴れの日も雨の日も、苦しいときも健やかなる時も!!俺は一生懸命国の為、そして俺の地位の為に頑張って来たんだ…」

 

「それなのに、あんなぽっと出の若い奴に立場取られるってどういう事だよぉぉぉぉっ!!」

 

「畜生、納得いかねぇー!!」

 

マツナガは椅子に思い切り深く座り、そのまま腕を後ろに振った。その先にはファイリングされた資料があり、それらはぶつかった衝撃でバサバサッと床に落ちていった。

 

「あーあー、兄貴、そんなに暴れるから…」

 

「うるせぇーなー、拾えばいいんだろ、拾えば…」

 

マツナガは椅子からよっこらしょと立ち上がり、床に乱雑に散らばった資料をかき集めた。

 

「…ん?」

 

最後の資料を拾い上げた瞬間、彼はそこに書かれているある物に注目した。

 

「これって確か、この前諜報部として報告した、人間達が開発している装置か…」

 

「結局これは大して重要度がないって事で調査は打ち切りになったんだっけな…」

 

「いや、待てよ…この装置をアイツにああして、こうすれば…」

 

「…フッフッフッフ…行ける、行けるぞ…」

 

「あのディーンを国に気付かれる事なく、大怪我を負わせる方法を…!!ハーハッハッハッハ!!」

 

先程の落胆とはうってかわってテンションを上げだしたマツナガ。その変わりっぷりを前に、コブンロはただ、ドン引きをするのであった。

 

そして、夜が明けた早朝。マツナガは作戦会議室でディーンと二人、今日の作戦について話し合っていた。

 

「なに、転移装置『ジャンブレス』の奪取?」

 

「そうなんですよ~、どうやら人間達、物とか人を瞬時に転移している装置を開発している様で…」

 

マツナガは自作の資料をディーンに手渡しながら説明を始めた。

 

「もしコレの開発が進み、生産なんかされたら、我が軍は一気に劣勢になってしまいます。そこで!!」

 

「逆に我々がこれを強奪、我が軍の秘密兵器にしちゃいましょう!!これで我々の株急上昇、間違いなしっ!!」

 

「で、作戦なんですがね。まず私の怪人が防衛軍の兵士を引きつけます。その間、ディーン隊長は研究所内部へと向かい、保管しているケースを必殺のディーン・ブレイカーで破壊して欲しいんです」

 

「そしてそれを強奪、後は簡単、帰るだけっ!!」

 

「ということで、今日早速参りましょう!!開発の研究所は突き止めてるし、怪人は用意しているし、天気もいいし!!」

 

マツナガの笑顔は歯をキラリと輝かせた、とびっきりの物であった。こうした話術と表情は共に、彼の特技なのだ。

 

「…分かった。俺も戦闘の準備をしておく。そちらも戦闘の準備を五分で完了しておけ」

 

「りょうーかいっ!!」

 

マツナガは戦闘の準備をしにその場を後にするディーンを敬礼のポーズで見送った。この時の顔はキリリと真面目な様子である。だが、彼がいなくなると、突如肩を震わし始めた。

 

「ダァーハッハッ!!まさか、こんな簡単に事が進むとはなぁ!!」

 

「その装置は実在するよ、なんたって俺が調べたんだからなぁっ!!」

 

「だが、それが入っているケース、そして装置は電撃を加えると、なにかしらの事態が起こる事もあるかもしれない事も判明している…」

 

「それがなんなのか知らないが、恐らくすごい大爆発が起こるからに違いないっ!!」

 

「そんな大爆発ならば、奴も大怪我を負うに違いない…」

 

「そしてこの俺はそんな事になるとは知らぬ、存ぜぬで過ごし、隊長を失った悲劇の戦士として彼の意志を受け継ぎ、新たな隊長となる…って訳だ!!」

 

「フッフッフッフ、我ながら完璧な作戦。全く、自分の才能が恐ろしいぜ…」

 

「待ってろよ、ディーン!!貴様のその爽やかヅラを吹っ飛ばしてやるぜ!!ダァーハッハッハッハ!!」

 

彼の高笑いは作戦会議室に響く。昨日の夜よりも更に激しく、大きく、両手を広げてまで。

 

10-2

 

都市部から西に大きく離れた山中。そこには周りの森林の中に白く、大きな研究所の建物がドンと構えていた。

 

「撃て、撃てっ!!」

 

いつもならば静かな山中。しかし、この日は戦乱の渦が巻き起こり、警備に当たっているメニーが携行するマシンガンを連射していた。怪人の姿になったイーヴィル・ディーンが率いるマツナガ、コブンロ、そして、白くマシュマロの様に弾力のある巨漢の怪人・ジャマーシュと十数人の黒で統一された戦闘員級がかの研究所を襲撃したからだ。

 

「く、くそ~、なんだってこんな僻地に幹部級が来るんだよ…」

 

「ここならジン・ガイアの連中が来ないと思ってたから、この部署を希望したのに…」

 

「貴様ら、文句は後にしろっ!!今は目先の相手に集中しろっ!!ここを守れるのは我々だけなんだぞっ!!」

 

愚痴をこぼす防衛軍の兵士に、隊長が檄を飛ばす。

 

「どけ、お前達に用はない…」

 

と、ディーンは俊足の足で一気に走り、迫る銃弾を物ともせず、隊長の眼前に一瞬で辿り着いた。

 

「邪魔だ」

 

そして、彼の頭を強く掴むと、近くの研究所の壁に思い切り投げつけた。

 

「ぐっ!!うぅ…」

 

衝撃音と共に、ひび割れる壁。そこからずり落ちてから銃を構えるも、気を失い、手をぶらりと下げる隊長。肩の動きからして、意識はあるようだ。

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

だが、たった一撃で隊長が倒された事実を前に、兵士達の士気は一気に乱れ始めた。逃げる物もいれば、狼狽えながらも銃を乱射する者もいた。

 

「ジャマ~!!」

 

しかし、その銃弾はジャマーシュのマシュマロの様な腹にズブズブと吸収されるだけであった。

 

「あ、あぁ…」

 

どうやっても勝ち目がないと悟った兵士達。絶望し、銃を構えたまま硬直した。そんな彼らに、ジャマーシュは迫る。その時であった。

 

「オラァッ!!」

 

叫びと共に、後頭部を蹴り飛ばす足がジャマーシュを地に伏せさせた。テグサー1の足であった。着地した彼の後ろにはテグサー2、3、4、そして、少し離れた場所に飛田の姿もある。

 

「おい、逃げろ!!」

 

テグサー1は硬直を続ける兵士に呼びかけ、逃がした。その姿を前に、マツナガは後ろからテグサー1に啖呵を切る。

 

「来たな、邪魔者共っ!!今日こそお前達の鼻を明かしてやるぜっ!!ジャマーシュ、さっさと起きて奴らの邪魔をしろっ!!ささ、ディーン隊長、今こそ作戦通り研究所へ!!」

 

「あぁ、任せろ」

 

「ジャマ~!!」

 

マツナガの指示にディーンは研究所の方へ歩みを進め、ジャマーシュはテグサーマン達の前に立ち塞がった。

 

「このぉっ!!邪魔しないでっ!!」

 

テグサー2は手に持つ風竜剣でジャマーシュの腹を連続して切り裂く。しかし、その傷はすぐに塞がり、ジャマーシュは平気な顔をしていた。

 

「そんな、斬撃が効かないのっ!?」

 

予想外の出来事に、驚愕して動きを止めるテグサー2。その隙を見て、ジャマーシュは拳を固め、テグサー2の横っ面を殴り飛ばした。

 

「きゃっ!!」

 

「穂乃花!!」

 

吹き飛ぶテグサー2に思わず彼女の名前を呼ぶテグサー1。その横を、テグサー4と彼女が乗るバイク、フォーチェイサーがジャマーシュを目掛けて通り過ぎる。

 

「私がディーンを追う!!」

 

「よせ、弾かれるだけだっ!!」

 

「見ててねドルカ…私、アンタが信じようとした皆を守るから…」

 

テグサー1の忠告を無視して、テグサー4は一直線に突っ込んだ。と、ジャマーシュの眼前で、巧みなテクニックで大きく右に曲がり、彼の隙をついて突破しようとした。しかし…

 

「ジャマ~!!」

 

ジャマーシュは突破させまいと左腕から左足にかけて、自身の側面をマシュマロのように横に伸ばした。つまり、白く大きな壁がテグサー4の前に出来た事になる。

 

「な、なに!?うわぁっ!!」

 

テグサー4は突然出来た壁に激突、大きくバウンドし、バイクと共に地面に叩きつけられた。

 

「茜!!この野郎っ!!」

 

「トウマ!!」

 

二人を倒され、怒り心頭に駆け出すテグサー1であったが、テグサー3に呼び止められ、思わず足を止めて彼女の方を見た。そこにはジャマーシュに背を向けて、肘を少しだけ曲げ、腕を前に突き出して、両手を合わせる彼女の姿があった。

 

「そうか…よし!!」

 

理解したテグサー1は彼女に向けて駆け出した。

 

「なんだアイツら?なにしてんだ?」

 

マツナガが疑問を持った瞬間、テグサー1はテグサー3の眼前で飛び、組み続ける彼女の腕に乗った。

 

「はぁっ!!」

 

テグサー1はその腕を足場にして、思い切り飛んだ。その跳躍力はジャマーシュの頭上を遥かに飛び越え、彼の背後にY字のポーズとなって見事着地した。

 

「やりました、10.0!!待ってろディーン!!今行くぞっ!!」

 

「げぇっ、しまった!!ジャマーシュ、戦闘員、テグサー1を追え!!」

 

マツナガは駆けるテグサー1を止めようと指示を放った。その指示に従おうとジャマーシュは後ろを鈍重な足で振り向いた。

 

「追わせるか!!」

 

と、その背後をテグサー3が切り裂いた。その間、テグサー2と4もその後に続いて戦闘員と戦いを始めている。

 

「ジャマァ~!!」

 

背後からの襲撃に激怒したジャマーシュは肘打ちでテグサー3を攻撃した。

 

「うわっ!!」

 

「涼!!」

 

「トウマ!!私に構わず早く行け…!!ぐわぁっ!!」

 

テグサー3を心配し、テグサー1は足を止めた。しかし、殴られながらも強気に振る舞うテグサー3を見て、彼は研究所に一気に駆け出した。

 

「これか、目標は…」

 

一方でディーンは目標のジャンブレスの前のケースに来ていた。周りには研究員が複数いるが、誰も彼も尻込みをして、吹き飛ばされた机の影に隠れながら目の前の怪人をただ見るしか出来なかった。

 

「よし、一気に決めるか…」

 

そう言いながらディーンは両腕を広げ、全身に力を込めた。額に輝く角に、力が集う。

 

「行くぞ、ディーン・ブレイ…」

 

ディーンは必殺技を放とうとした。その時であった。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

彼の後頭部にテグサー1の両足による飛び蹴りが炸裂したのは。

 

「な、なにぃっ!!」

 

その攻撃にディーンは大きくバランスを崩し、目の前のケースにもたれかかる。その瞬間、ディーンの角に溜まっている超音波が放出し、辺り一面に激しい轟音を立てて炸裂した。

 

「うわぁっ!!」

 

突然の音波に研究員は悲鳴を上げた。そしてテグサー1も同じく驚愕し、空中でバランスを崩して背中で着地した。

 

「う、うぅ…」

 

技を繰り出したディーンにとってもこの放出はたまった物ではない。もたれかかったケースからズルリとずり落ちた。

 

『ジャンブレス、起動シマス…ジャンブレス、起動シマス…』

 

その瞬間、ケースは女性の機械音声と同時に自動で開いた。微量の煙と共に開かれたケースの中身。それは二つの星形の腕輪であった。その腕輪はランプが点灯すると、腕輪は空を優雅に飛んで近くにいた二人、ディーンとテグサー1の右腕に装着された。

 

「ん…ん?」

 

「んん…ん?」

 

「な…」

 

「なん…」

 

「「なんだこりゃっ!?」」

 

音波が収まり、目が覚めたテグサー1とディーンはいつの間にか右腕に装着された腕輪に驚愕した。

 

「いきなりなんなんだコレは!?腕輪が勝手にくっ付いて…クソッ、外れねぇ!!そんで、デザインがダセェ!!」

 

自身の右腕に突如装着されたそれをテグサー1は慌てて外そうとしたが全くビクともしない。一方でディーンは冷静にもその腕輪を撫でていた。

 

「ほう…勝手に装着してくれるのか。中々面白いし、有り難いな」

 

「なにしろ、このまま持ち帰る事が出来るんだからな…」

 

「なにっ!?そうはさせるかっ!!」

 

ディーンの言葉を察したテグサー1は取り外しを止め、背後のディーンに鉄拳を振り下ろした。しかしそれは、宙にひらりと舞って避けられる羽目ととなった。

 

「それじゃ、これは頂いていくよ。はぁっ!!」

 

「お、おい待て!!待ちやがれ!!」

 

ディーンは天井を破って飛び上がる。その姿にテグサー1は手を伸ばして止めようとした。しかし、その時であった。突如、ディーンが一瞬でパッと姿を消し、気が付けばテグサー1の真上、それも距離約十cmに現れたのは。

 

「な、なにっ!!」

 

突然の瞬間移動にディーンは空中で大きくバランスを崩し、そのまま下のテグサー1へ向けて真っ逆さまに落下した。

 

「ぐぇっ!!」

 

「あぐぅっ!!」

 

テグサー1はディーンの下敷きに、ディーンはテグサー1の角が背中や腰に刺さって、二人同時に悶絶の声を上げた。

 

「一体なにが起こったんだ…」

 

「そ、そんな事考えるより、さっさとどけ…重いんだよ、お前!!」

 

「うーむ、どういう仕組みなんだ?」

 

「コラ、聞いてんのか細目の銀ぴか角!!」

 

「なんだと!?人の事を角呼ばわりとはどういう了見だ!?」

 

「どこにキレてんだよお前は!?どうせなら細目にキレろ!!」

 

言い争う二人。すると、その様子を離れて見ていた若い男性研究員が恐る恐る彼らに近付いた。

 

「あ、あのう…」

 

「「なんだ、この野郎!!」」

 

「ひ、ひぃぃぃ!!」

 

テグサー1とディーン。変身した二人にほぼ同時に凄まれて研究員は怯えて引き下がった。その姿に慌てたテグサー1は「あ、失礼!!ど、どうぞ!!」と、踏まれたままの姿勢で手を差し伸べて謝罪した。

 

「あ、え~とですね…」

 

テグサー1の謝罪を受け取った研究員は気を取り直して説明を始める。

 

「その腕輪、ジャンブレスはですね、物質・質量の転移の研究をして出来た試作品なんです」

 

「で、今起こったのは物質移動のオートメーション化の一つで、腕輪の装着者同士がのどちらかがある程度の距離を離れると自動的にもう一人の方に転移して戻るんです」

 

「なので、今のはそれが発動したのではないかと…」

 

研究員の言葉に、二人は同時に頷き、テグサー1が質問した。

 

「そうか、そんなヤバい奴が腕に…それじゃ早速コイツを取り外して貰ってもいいですか?」

 

「それが、その…試作品なんで、鍵もなく、取り外しようがないんです…しかも、研究の関係で腕輪は非常に頑丈に出来ていて、取り外しはほぼ不可能かと…」

 

「はぁっ!?なんでそんなモン作りっぱなしにしてんだよっ!!」

 

研究員の報告に怒り、テグサー1はディーンを押しのける程のパワーで立ち上がった。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!だ、だから勝手に使われない様にケースに入れて保管していたんですよぉ~」

 

その剣幕を前に研究員は一歩下がった。凄まれて恐怖に引きつった顔で。するとその時、テグサー3が部屋に勢いよく飛び込んで来た。

 

「トウマ、大丈夫か!?」

 

「涼!!こっちは大丈夫…じゃないけど、そっちは?」

 

「こっちはもう大丈夫だ、ジャマーシュをエネルギー系の技で攻撃したら、奴らすぐに撤退していったぞ」

 

「なにっ!?あいつら、俺になにも言わずに撤退したのか…?」

 

彼女の報告に、それまで腕輪を眺めていたディーンが思わず二度見した。

 

「で、トウマ、大丈夫じゃないってなにがあったんだ?」

 

「あぁ、実は…」

 

その一方で、テグサー1はテグサー3にこれまでのいきさつを話した。

 

「…そうか、さっきからそのお洒落な腕輪が気になっていたが、まさかそんな事に…」

 

「涼、お前の刀でこの腕輪ぶった切れないか?」

 

「任せろ。はぁっ!!」

 

テグサー3は居合い抜きで刀を鞘から抜き、テグサー1の腕輪を目にも留まらぬ早業で斬った。しかし、全く歯が立たない。

 

「な、なんて硬さだ…ならば同じ所を何度も斬れば…!!」

 

最初に斬った箇所を寸分の狂いもなく、テグサー3は何度も斬りつける。しかし、腕輪の傷跡が重なるだけで、終いには彼女の自慢の刀身が欠け始めた。

 

「だ、ダメだ斬れない…刀で物が斬れない私に、どんな価値があると言うんだ…」

 

テグサー3は地面に手を着き、心の底から落ち込んだ。

 

「これくらいでヘコむなっ!!…お前には他に良い所がいっぱいあると思うよ」

 

テグサー1が慰めたその時、テグサー3が入って来た入り口からメニーの軍団が足音を立てて入り込んで来た。その先頭には、先程ディーンに投げ飛ばされた隊長の姿もあった。

 

「ふっふっふっふ、話は聞いたぞ。どうやらイーヴィル・ディーンは逃げられん様だな」

 

「空を飛べないんであれば、翼をもがれた鳥も同然!!全員、構えぇい!!」

 

隊長の号令に、部下のメニー達が構える。

 

「撃てぇ!!」

 

「く、しまった…!!」

 

隊長の命令と同時に、メニーの持つマシンガンから放たれる弾丸。ディーンは思わず防御の姿勢として顔の前で腕を交差させる。その時、偶然にも彼は腕輪の星形のスイッチを押した。その瞬間、ディーンとテグサー1はフッ、と姿を消した。というよりも、消えたと言うべきか。弾丸は彼らがいた場所を通過し、全弾正面の壁に着弾した。

 

「き、消えた!?」

 

「ど、どこだ!?」

 

「まさか、これがイーヴィル・ディーンの新しい能力か!?」

 

目の前で起こった事が信じられず、狼狽えるメニーの兵士達。騒がしい研究室の中、テグサー1達にジャンブレスを教えた研究員は一人呟く。

 

「今のはジャンブレスのメイン能力、空間転移…でもまだどこに飛んでいくか分からないんだよね…」

 

10-3

 

研究員が言った通り、テグサー1とディーンは波の音しか聞こえない、人気のない砂浜に出現した。

 

「な、なんだココ…白海の海岸じゃねーか」

 

「って事はここはまだ県内…西から東へ一瞬で飛んだ訳だな」

 

「全くとんでもない腕輪だぜ…」

 

テグサー1は遠くにある工場から、知っている場所だと考えた。そして、まだ空が青い事から時間も全く経っていない事も考えていた。

 

「そうか、海岸か…ならば、すぐ近くに我がジン・ガイア帝国の本拠地が海底にあるかもしれないな…よし、早速この腕輪を持ち帰って研究班に渡すとするか…」

 

ディーンの宣戦布告とも取れる呟き。テグサー1が睨む。

 

「そんな事は俺がさせねぇ。こんなヤバい物、もしお前らンとこに渡したらなにするか分かったもんじゃねぇからな。今ここで俺がお前を止めてやる」

 

そう言いながら、彼はディーンの前に立ち、拳を構える。

 

「そうだな、俺としてもこんなにも戦いを面白くしてくれたお前といつか決着をつけたいと思っていた。今ココでお前を倒して俺はもう一段階上に昇ってやる」

 

ディーンもまた、テグサー1に向けて構える。波の音以外聞こえない白海の海岸。二人は至近距離で静かに対峙していた。

 

「…つあぁっ!!」

 

雄叫びと共に、先にテグサー1が渾身の右ストレートパンチを放った。しかしそれはディーンがサイドステップで避け、同じく渾身の左ストレートを彼の右頬にお見舞いした。

 

「ぐぅっ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

テグサー1は苦痛と衝撃で後ろに吹き飛んだ。それと同時に、何故かディーンも苦痛が彼の顔面に走り、同じように吹き飛んだ。

 

「ど、どうなっているんだ…?」

 

突然の衝撃。ディーンは誰にも触れられていないにも関わらず、激痛が走った事に起き上がりながら疑問を持った。

 

「ま、まさか…」

 

痛みがあったのはテグサー1の場所と同じ。それに何かを察したディーンは自身の左腕を思い切りつねった。

 

「あ、いでででっ!!なんだぁ!?」

 

すると、倒れたままのテグサー1はディーンがつねったのと同じ箇所である左手を抑えた。

 

「や、やはりそうか…」

 

眼前の様子から、ディーンはつねるのを止めた。それと同時にテグサー1は痛みの患部から手を離す。そして、彼は一人納得しているディーンに向かって駆け寄った。

 

「あ?やはりってなによ?」

 

「あぁ、信じらない話だが…どうやら俺達、腕輪を着けている同士で痛覚も転移される様だ」

 

「ふーん、あっそ…ってなにぃ!?じゃ、もしお前が怪我したり、骨折ったり、最悪死んだら俺も…」

 

「その通り、お前も死ぬ」

 

「ま、マジかよ…畜生、これやっぱり外れねーのかよ!!」

 

衝撃の事実を聞かされたテグサー1は力ずくで腕輪を外そうとした。しかし、相変わらずビクともしない。

 

「まさかこんな事態になるとは思わなかった…驚きだな」

 

ディーンはテグサー1の必死な様子を腕を組んで眺めていた。

 

「他人事みたいに言ってんじゃねぇよ…!!全く、お前があのケースぶっ壊そうとしなきゃ、こんな事にはならなかったんだぞ!!」

 

「何を言うんだ、それを言うならあの時飛び蹴りで俺を後ろから蹴らなければ良かったんだぞ…!!」

 

「あぁ!?なに責任転換してんだ、コラ!?」

 

「なんだ、もう一度やるかい!?」

 

肩を怒らせて、激しく睨み合う二人。しかし、その威勢はすぐに、お互い同時に収まった。

 

「…止めよう。今ココで争っても仕方がない」

 

「そうだな…その内、防衛軍の人達がここに来るかもれない。その時に俺がお前が抵抗しない事を話しておくから、研究している人達呼んで貰って、コレを外して貰おう。それからのお前は適当にどっか行ってろ。いいな?」

 

テグサー1の意見にディーンは頷く。

 

「よし…」

 

それを受け取ったテグサー1は深く深呼吸して、肩の力を緩めた。すると、波の音をかき消す程のエンジン音が二人の耳に聞こえてきた。二人が音の方を振り返ると、物々しい軍用トラックが二人がいる砂浜に入ってくるのが見えた。

 

「行け、行け、ゴー、ゴー、ゴー!!」

 

トラックが砂浜で停車すると、野太い号令と共にトラックの荷台から十人以上はいるであろうメニーが降りてきた。彼らは降りると次々に二人に向けて構え始めた。

 

「来た来た…!!おーい、待ってくれアンタ達!!コイツは今、抵抗の意志ははない。それと…」

 

テグサー1は両手を振って自身の主張をアピールした。

 

と。

 

「ディーン・ブレイカー!!」

 

ディーンが放つ必殺技はそんな呼びかけをかき消し、放たれた音波は前方のメニー達に見事命中させた。

 

「「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」」

 

音波が爆発し、砂と共に吹き飛び、叫ぶメニー達。

 

「……」

 

その光景にテグサー1は唖然とした。

 

「あ゛ーっ!!お前、なにしてんだぁーっ!?」

 

叫ぶ彼の横で、ディーンも唖然としていた。

 

「…スマン。銃を構えられて、つい条件反射で…」

 

「スマン。で済むかぁーっ!!このアホーッ!!なんて事してんだよ!!」

 

「いや、スマン。スマンて…」

 

テグサー1に激しく責め立てられ、タジタジになるディーン。すると、彼の視界の端でメニー達全員がよろよろと立ち上がる様子が見て取れた。

 

「あ、ホラ見ろテグサー1。兵士達は全員無事だぞ…」

 

「無事とかそういう問題じゃねーよ!!だってホラ…」

 

テグサー1が指差す先。そこではメニー達が次々とマシンガンを構える姿が。その雰囲気には殺気が籠もっていた。

 

「全員、狙え…!!」

 

メニーを指揮する人物も先程の野太い声より更に低く、怒気が入った声で命令する。

 

「あぁ、ホラもうお前が攻撃するから…!!おーい!お願い、待ってくれー!!撃たないでー!!」

 

テグサー1が全力の身振り手振りで銃撃を止めようとした。しかし、メニーの兵士達は聞く耳を持たない。それでもテグサー1は必死でアピールするが、彼らの持つマシンガンの引き金が無情にも締まっていく。

 

「わぁーっ!!どうしよ、当たったらヤバい!!おい、ディーン!!コレで俺が死んだらお前のせいだからな!!死んだら化けて出てやる!!」

 

「やれやれ…仕方がないなぁ…」

 

テグサー1の恨み言を聞いたディーンは腕輪のボタンを押した。その瞬間、海岸に来た時と同じ様に、二人はまたフッ、とその場から消え去った。

 

「な、なんだ…!?」

 

眼前の前で起こった事が信じられず、怒気が抜けて研究所のメニーと同じ反応する隊長。周りの部下もキョロキョロと辺りを見渡す。そして、それを終えると、彼らは口々に疑問を話し始めた。

 

「そう言えばあのテグサーマン、何故かディーンを守ろうとしてたよな…?」

 

「確かに…何故だ?」

 

「まさか…テグサーマンが俺達人間を裏切って、ジン・ガイア帝国の軍門に…?」

 

「馬鹿な、そんな訳がない!!俺達の仲間を何度も救ってくれたんだぞっ!?」

 

「でも、現にディーンと行動を共にしているし…」

 

「なんにせよ、あの二人はどこに行ったんだ…?」

 

二人が飛ばされた先。そこは都市部の100mタワーの頂点であった。頂点の細い先端で、タワーの鉄骨に両足片手で掴むディーンは周囲を見渡す。

 

「ど…」

 

「どこだココぉぉぉっ!?」

 

その一方で全身で蝉の様にしがみつくテグサー1はその高さに絶叫した。

 

「なんだテグサー1。高い所苦手か?その装甲ならここから落ちても平気だと思うけど?」

 

「ばばばっ、馬鹿野郎!!お、お前みたいな命知らずと違って、人間は本能でビビるモンなの!!っていうか、片手空いてんならとっとと腕輪のスイッチ押してここから移動しろよ!!」

 

「はいはい…あれ~、スイッチどうやって押すんだっけな~?忘れちゃったな~」

 

ディーンは腕輪のスイッチにわざとらしく触れず、他の部分ばかり弄っていた。

 

「て、テメェ!!ワザとトボケてるな!?さっき普通に押していただろうがーっ!!」

 

「もういい、貸せっ!!お前の腕ごとふんだくってやる!!」

 

テグサー1は両手を伸ばしてディーンの腕を掴もうとした。つまり、タワーの鉄骨から手を離した事になる。

 

「おい、テグサー1。タワーから手、離していいのか?」

 

「へ?」

 

ディーンに指摘されたテグサー1は己の手を眺めた。危険かつ不安定な場所で手を離す。それを理解した瞬間、自身が数秒前に行った事に後悔、戦慄した。

 

「げ、ゲェーッ!!し、しまった!!お、落ち…」

 

焦ったテグサー1手をばたつかせて、落ちまいと必死でもがいた。しかし、無情にも彼の脚は徐々に鉄骨から離れていく。

 

「わ、わぁぁぁっ!!」

 

「やれやれ…」

 

騒ぐテグサー1を尻目にディーンはスイッチを押した。その瞬間、二人はタワーから転移した。次に飛んだ先。そこでディーンは地上から僅かに高い所から落下、その下の熱湯の中で尻餅をつき、腰まで熱湯に浸かった。その横でテグサー1は同じ熱湯に落下した。

 

「今度はどこだ…?」

 

「そんな事知るかよ…!!」

 

テグサー1はディーンの疑問に熱湯から顔を上げて答える。彼らの周囲には濃い霧がたち込めていた。その為、前方が全く見えない。

 

「それなら、ここにいても仕方がない。周囲を散策してここがどこだか把握しなくては…」

 

「お、おい…!!無鉄砲に進むなよ…!!」

 

テグサー1はザブザブと進むディーンを止めようと歩もうとした。その時、掌が固く、ひんやりとしたなにかに触れた。突然の触感に手をそこから引っ込めるテグサー1。

 

「な、なんだぁ?」

 

テグサー1が首を捻ったその時、ディーンが叫ぶ。

 

「おい、テグサー1見てみろっ!!向こうに山があるぞっ!!」

 

「あぁ?」

 

目先のディーンが指差す先。そこには綺麗な富士山があった。

 

「ということは、あの山と逆の方向に行けば、町に行けるな…」

 

ディーンは振り返って再度歩み、テグサー1を横切って進んだ。しかし。

 

「お、おい待てっ!!あの富士山、どう見ても絵じゃねーかっ!!それにさっき俺、手に冷たい人工物に触れた…ってことは…」

 

テグサー1の必死の呼び止め。しかし、ディーンは聞く耳を持たない。そこでテグサー1は彼を追いかける。二人が数歩歩いた先。そこには…

 

「…!!」

 

全面タイル張りの壁と天井、熱湯を出し続ける複数のシャワーとその数とほぼ同じの鏡。そう、ここは銭湯、それも、老婆オンリーの女湯であった。

 

「ギャアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

老婆達と同時に叫んだテグサー1は腕輪のスイッチを押して再度飛んだ。それから二人は日本中を駆け巡った。

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

橋の下から飛び込んだ道頓堀。

 

「に、逃げろぉーっ!!」

 

「イチ、ニ、イチ、ニ!!」

 

線路の上に飛び、後ろから迫るローカル線から二人三脚で逃げたどこかの山中。

 

「あ、あちーっ!!」

 

そして、悶える程に熱い、火災現場の中心。

 

「ん、こうも熱くてはさすがの俺も耐えられない。さっさと別の場所に…」

 

「いや待て、あんな所に人が!!」

 

この時、テグサー1は火中に倒れている子供を見つけた。その子に意識はなく、ぐったりとしているのは少し離れた二人からでも見て取れる。

 

「やべぇ、助けに行くぞっ!!」

 

迫る炎に立ち向かおうとするテグサー1。しかしその足はディーンに肩を掴まれた事で急停止をせざるをえなかった。

 

「な、何しやがる!?早く行かないと…」

 

「何故だ、何故助けようとする?火がこんなに回っているというのに」

 

「なんだと…?放っておけってのか!?」

 

「そうだ、敵である俺がいるんだぞ?そんなか弱い者など放っておけば…」

 

「馬鹿を言うなっ!!」

 

「な…!?」

 

テグサー1の威圧にディーンは気圧された。

 

「父から受け継いだ、俺のこの力はただ戦う為だけに使う物じゃねぇ!!誰かを守る為の力なんだ!!」

 

「兎に角、俺は行くっ!!目の前で救えるかもしれない命を救わずに後悔なんてしたくないからな!!」

 

テグサー1は降りかかる火の粉、火柱をかいくぐって力強く突き進んだ。幸い子供のいる距離は二人が離れていても影響のない範囲であった。

 

「よしっ、まだ生きている!!」

 

テグサー1は子供を持ち上げながら周囲を見渡した。周りは全て火の手によって囲まれ、どこが出口なのかが全く分からない。そうこうしているうちに崩れ行く建物の柱に壁。それらと高温の室内はテグサー1を焦燥感に駆らせるのに十分な条件であった。

 

「くそっ、どこだ、どこに行けばいい…!?」

 

「掴まれ、脱出するぞ」

 

「えっ!?」

 

突然、背後からディーンに話しかけられたテグサー1は振り向き、どう出るのか聞こうとした。しかし、そんな間もなく、ディーンはテグサー1、そして彼が持つ子供を持って一気に飛び上がった。天井、屋根を突き破り、空中で滞空するディーン。見下ろすと、そこは住宅街。飛び出した家の前には人が群がっている。

 

「あれか…」

 

ディーンは小さく呟くと、一気に急降下、人々の前に降り立つ。この時、手に持った子供は所謂『お姫様抱っこ』で丁重に抱え、テグサー1は傍らの道路に乱雑にぶん投げた。

 

「なな、なんだ君は!?」

 

群がる人々はその声を皮切りに騒ぎ立てた。

 

「あれは…テグサー1!?」

 

「じゃあ、誰だコイツ!?」

 

「待って、彼が持っている網、佐藤さんとこの子じゃないか!?」

 

ディーンに対して怪訝に感じていた人々はの関心はすぐさま子供の方に向けられた。そして、ディーンに向かって一目散に駆け寄ったのは中年の女性であった。

 

「マサキーッ!!よかった、あぁ…」

 

涙ぐむ女性は、ディーンの腕の中で気を失い続けるマサキを優しく撫でた。

 

「この子は君の子か。はい、どうぞ」

 

「そうです、私はこの子の母です…あぁ、ありがとうございます…なんとお礼を申し上げたらよいか…」

 

涙ぐんで何度も頭を下げる母親。そんな彼女の後ろで褒め称え、拍手を送る人々。

 

「おぉ、よくやった!!すごいぞアンタ!!」

 

「よっ、無名のヒーロー!!カッコイイよ!!」

 

ディーンはそんな彼らの姿をじっと見つめていた。

 

「へっ、やるじゃねぇかディーン…助かったよ、サンキューな」

 

「テグサー1…」

 

ディーンは後ろから話しかけたテグサー1の方を向いた。

 

「別に、妙な気持ちがあったから助けた訳じゃない。あそこで死なせたら、後でお前がどうキレるか分からないからな。さ、そろそろ飛ぶぞ」

 

「へ、ちょ、お前、いきなり…!!」

 

テグサー1が言い終えるより素早く、ディーンは腕輪のスイッチを押した。当然、二人は人々の前からフッと姿を消した。

 

「おぉ、消えた…!!」

 

「目的が終わればさっそうと消えていく…正に、ヒーローの鑑だ…」

 

人々は消えた事を前向きに捉え、二人がいなくなっても賞賛の言葉を述べるのであった。

 

10-4

 

騒々しい火災現場から一転、二人は静寂に包まれる灰色のクレーターの中心に転移した。

 

「ここは…十年前、隕石が落ちて来た所か…」

 

テグサー1の言う通り、周りの破壊の爪跡が隕石の落下を物語っていた。地面の破片が突き刺さり、半壊しているビル。寸断された高速道路。横に倒れる錆びた電車や乗用車。それらは十年経っても放置されているよぷであった。

 

「そうか…なら、人目を気にせずに済むな…休憩しよっと」

 

ディーンはそう呟きながら、変身を解除し、人の姿となって近くの岩にしゃがみ込んだ。

 

「おい、いいのかよ?俺の前で変身解いてよ?」

 

「いいんだよ、なにしろ今の君は俺を攻撃をする事はないのは分かっているんだから」

 

「それもそうだな…」

 

ディーンの返答を受けて、テグサー1は変身を解除、トウマとなって別の岩にしゃがみ込んだ。いつの間にか太陽は雲に覆われ、天候は曇り空。そんな空の下で二人の青年は楽な姿勢で体を休めていた。

 

「…なぁ、テグサー1」

 

突然のディーンの呼びかけにトウマは「あん?」と返す。

 

「何故、君は戦うんだ?今日は自分の命を敵味方問わず狙われ、この前のはドルカとの戦いで随分と悲しんでいたじゃないか…もし、君が戦いを選んでいなければそんな悲しみや痛みもなかった、そうだろう?」

 

「お前、この前の戦いをそばで見てたのか…そうだな…」

 

トウマは腕を組み、数秒だけ考えると口を開いた。

 

「…正直言って、テグサーマンに誘われる前の俺は戦いを避けていた。というよりも仲間や親しい奴を失うのを恐れて深く関わろうとするのを恐れていた」

 

「ってのも、実は俺、ガキの頃は未来島に住んでたんだ…」

 

未来島というキーワードに、ディーンは思わず眉をひそめた。

 

「俺はその島で数少ない生き残りなんだ。今でも思い出すぜ…目の前で俺を庇って死んだ母さん、逃げた先で身動き一つない近所のおじさん、昼間まで一緒に元気に遊んでいたのにもうそれが出来なくなった友人をな…」

 

「それからなんだ、俺が人と関わるのは止めよう、もう会えなくなった時の悲しみが倍増するからって考えたのは」

 

「でも、そんなある日だ、俺は飛田に出会い、父さんが造ったテグサーマンにも巡り会った。そして、目の前でウチの黒髪ロングのリーダーが傷つき、ちっこい社長が泣いてる姿を見て、改めて思ったんだ」

 

「俺が今戦わなければ、俺と同じ人を増やしちまう、誰かを守れる力が俺にあるなら、その力を使って平和にするべきだってな…」

 

「だから俺は戦う。俺が死なない限り、より多くの人を守り、平和が訪れるまで…」

 

心からの決意を表す様な、静かに燃えるトウマの瞳。それは同じ瞳でも、先程までの疲れ果てた物とは雰囲気が大きく違った。その様子にディーンはため息を漏らす。

 

「ふぅ、大した者だよ、テグサー1。だから俺は、君達に負けたんだな…」

 

「なにしろ、俺には君みたいに守る者も、悲しみもないからな…」

 

「聞いたかもしれないが、俺達の種族は海の植物から生まれた生命体。だから、俺は親の顔も知らないし、仲間も戦いですぐ死ぬから深く関わる事もない…」

 

「今分かったよ、俺になくて、君達にある物が。その守りたい気持ちが人を強くさせるんだな、って…」

 

俯くディーンにトウマは近寄る。

 

「なら、今から作ればいいじゃねーか」

 

「え?」

 

「守りたい者、いや、誰かの為の信念ってやつをさ。今までの人生振り返って、そこからなにか考えればいいんじゃーねーか?」

 

「少なくとも、俺より色んな事に直面してんだし、な?」

 

「そうかな…?うん、そうかもしれないな…なぁ、君の名前、教えてくれないか?どうも、テグサー1じゃ呼びづらいんでね…」

 

「俺の名前はトウマ…富田トウマだ!!」

 

「トウ…マ」

 

ディーンは立ち上がり、トウマに握手の手を差し伸べた。その時であった。彼ら二人の前に、エネルギー弾による激しい火花が炸裂した。

 

「な、なんだ!?」

 

とっさに二人は屈み、腕を顔の前に交差させて防御の姿勢をとった。二人が周囲の安全を確認する為、防御の姿勢を解除すると、そこには複数の人影があった。

 

「ハーハッハッハ!!やっと見つけたぞ、テグサー1、ディーン…隊長!!いまここで引導を渡してやるぜっ!!」

 

その中心に立つのはマツナガ。彼は腕を組んで自分の強さを誇示していた。その背後にはコブンロ、ジャマーシュがいる。

 

「マツナガ…!!待ってくれ、今は訳あってテグサー1を攻撃してはダメだ…だからこれ以上は…!!」

 

味方が現れて安堵するディーンはマツナガに向けて歩み出した。しかし、その歩みをトウマが待てと言わんばかりに、腕を伸ばして止める。

 

「マツナガ、手前ェ…なにがあったが知らねぇが、今の攻撃は俺だけじゃねぇ、ディーンも狙ったな?」

 

この推理にディーンはマツナガを見る。その表情には驚きが隠せていない。そしてマツナガはフン、と鼻を鳴らす。

 

「当然だろう、どっちかを狙えばダメージが転移して、テグサー1を倒せる、なんてチャンスは今この時しかないんだからなぁ~」

 

返答を聞いたディーンは、トウマの腕を押し退けて前に出る。

 

「ふざけるな!!腕輪の事を知っているなら、何故そんな事をする!?」

 

「隊長~まだわからないんですか~?何故アナタが腕輪を装着する至ったか、その経緯をよ~っく、思い出してみて下さい?」

 

「ま、まさか…」

 

震えた声でディーンは冷や汗をかく。マツナガが何を言いたいか察したからだ。そんな彼に、マツナガは指を差す。

 

「そう!!全てはアンタに腕輪を装着させて、テグサー1と同時に始末、隊長の座に座るのが俺の本当の計画だぜっ!全く、こんな上手く行くとは思わなかったよ、ハッハッハッハ!!」

 

「よく言うよ、ホントはケースの爆発に巻き込ませて殺すつもりだったのに…」

 

「るせぇ、コブンロ!!」

 

マツナガは小声で呟くコブンロを叩いた。

 

「あぁ、安心して下さいよ、隊長殿?帝国には、テグサー1と共に散ったと伝えておきますからねぇ~」

 

「さぁ、やれ、ジャマーシュ!!まともに身動き出来ない二人に止めを刺せ!!」

 

マツナガに指示されたジャマーシュは「ジャマ~!!」と叫びながら、三段腹から白く、熱いドロドロした物質を飛ばした。その物質が飛ぶ先はディーン、ただ一人。

 

「ディーン、避けろっ!!」

 

トウマは叫んだ。しかし、ディーンは避けるそぶりを見せない。そこでトウマは彼に飛びつき、地に押し倒す事で白い物質から避けさせた。トウマの背中を通り過ぎた物質が地面に付着すると、シュー、シューと音を立てて地面の瓦礫を溶かした。

 

「なにやってんだ!!死にたいのか!?」

 

トウマは地に伏せたままのディーンに問う。

 

「奴は、勝利の為に俺ごと倒すと言った。ならばこのまま攻撃を喰らって死に、帝国の礎となるならそれでいい、思ったからさ…」

 

「それに、俺の世界は強い奴がのし上がる世界。だから、この裏切り、効率的な勝利はあって当然だと…」

 

「馬鹿野郎!!」

 

「…!!」

 

トウマの一喝。ディーンは口を噤んだ。

 

「そんな勝利、あってたまるか!!さっき言っただろう、自分の信念、守りたい物を作れって…!!」

 

「こんな裏切りを享受して、勝利に貢献するなんてバカげてるぜ!!」

 

「お前がどう教育されたか知らないが、こういう時、人間なら抵抗するモンだ!!お前も本心ではそう考えている、そうじゃないかっ!?」

 

「イーヴィル・ディーン…!!」

 

トウマの真摯な想い。その言葉に応える様に、ディーンは立ち上がる。

 

「そうだな…確かに、俺は生きたい。生きて、生きて生き続けたい…」

 

「そして、戦い以外の物を色々と知ってみたい、それを守ってみたい…」

 

「トウマ、一時休戦だ。今は目の前のコイツを倒す…」

 

ディーンの確固たる意志を感じ、トウマは彼の肩に手を置いた。そして、その手を離すと、懐からテグサロイドを取り出した。

 

「チェンジ、テグサー1!!」

 

トウマがテグサロイドを操作すると、彼の体を光が包み、それが晴れるとテグサー1へと変身した。

 

「ふっ…!!」

 

テグサー1の横で、ディーンもまた、顔を右手で撫でると同時に、幹部級の戦士、イーヴィル・ディーンへと姿を変えた。今ここに、種族を超えた二人の超戦士が、目の前の敵に勇猛果敢に立ち向かった。

 

「フン、口ではなんとでも言えるさ!!やれ、ジャマーシュ!!」

 

ジャマーシュはマツナガの指示通り、二人に目掛けてドスドスと地面を踏みしめながら突っ込んだ。彼が走る度に、地面が大きく沈み、瓦礫が飛ぶ。

 

「来やがれ!!」

 

「来いっ!!」

 

ジャマーシュの鈍重な走りに、テグサー1、ディーンは二人並んで構える。その時であった。

 

「はぁーっ!!」

 

「うぉーっ!!」

 

突如、ジャマーシュの腹から槍を持った戦闘員が飛び出した。突然の伏兵に驚くテグサー1とディーン。その隙を狙って兵は彼らを目掛けて槍を突いた。

 

「ハッハッハッハ、どうだ、この伏兵は考えてなかっただろう!!だから敢えて俺達三人しかいない様に堂々と出てきたんだよっ!!さ、突き刺さった二人を…!?」

 

マツナガはジャマーシュの後ろからテグサー1達を覗き、驚愕する。そこには、槍を脇に抑え、兵に向けて拳を叩きつけた戦士二人の姿があった。

 

「フン、コレ位の事は予想済みさ、お前みたいな悪辣な奴には特にな…!!」

 

ディーンは得意そうにマツナガに向けて言う。

 

「クソー!!ならばジャマーシュ!!お前がただの邪魔者でない事を見せてやれっ!!」

 

「どうせ奴は禄に動けない、下手に動けば衝突しあう!!そこを狙えっ!!」

 

マツナガの檄に、ジャマーシュは先程撃った白い物質を口から腹までを発射口にして、何発も何発も、拡散して放った。

 

「トウマ、飛べっ!!」

 

「分かった!!」

 

ディーンは空向けて飛び、彼から指示を受けたテグサー1はウィングパーツを装着させて空へと飛んだ。その直後に白い物質は彼らの元いた場所を通過する。

 

「行くぞ、エアロ・シューター!!」

 

空で滞空するテグサー1はウイングパーツの必殺技をお見舞いした。翼から放たれる二つの竜巻。その風圧でジャマーシュの白い体が徐々に削れていく。

 

「ジャマ~!!」

 

この攻撃に堪らないと感じた怪人は大きな掌を振り回す。その攻撃が直撃したテグサー1は衝撃で、滞空能力を一時的に失い、力なく墜落する。

 

「し、しまっ…」

 

ディーンが言うより早く、次の瞬間には二人が激突していた。その衝撃で怯むと、ジャマーシュのパンチが飛ぶ。

 

「ぐわぁぁぁぁっ!!」

 

二人は地面に墜落、その衝撃でクレーターが一つ出来る。そこに向けて、体を元に戻したジャマーシュは鈍足で駆け出した。

 

「くっ、まずい!!おい、トウマ、起きろ!!」

 

ディーンが何度も揺すっても、テグサー1は起きない。中で気を失っているようであった。そんな二人の頭上に、無情にもジャマーシュの足が迫る。

 

「ジャマ~!!」

 

「く、うわぁっ!!」

 

ズシーン!!と、鈍い轟音と地響きが辺りに響く程、ジャマーシュの足が容赦なく二人を踏みつけた。その顛末を少し離れた所から見ていたマツナガはその光景にガッツポーズを取る。

 

「よっしゃ、キタ!!テグサー1とディーンのW撃破!!これで俺の地位の安泰も待ったなし…って、あれー!?」

 

歓喜の声を上げた彼が見た物。それは、ジャマーシの二人を踏みつける足が徐々に上がり始めた光景であった。それも、足の下で持ち上げるボロボロのディーンの姿と共に。

 

「う、うぉぉぉぉ…!!」

 

ディーンは発する雄叫びは声量は小さいものの、その声自体には覇気があった。そして、その足は一気に上がり、ジャマーシュはバランスを崩して後ろへ倒れ込んだ。手が空いたディーンは気を失ったままのテグサー1に肩を貸して叫ぶ。

 

「たった今、彼は…トウマは敵にも関わらず、俺に生きる意味を、守るべき物を教えてくれた…そんな面白い奴を、このまま死なせてたまるか…!!」

 

「く、うぅぅ…!!」

 

ディーンの気迫にたじたじのマツナガ。その時、ディーンの傍らでテグサー1が目覚めた。

 

「ディーン…ちょっとでも避ければそんな怪我しなくて済んだのに…サンキューな…」

 

「フッ、そんな考えは全く思いつかなかったよ…それより、ジャマーシュの倒し方が一つある。耳を貸してくれ…」

 

耳を差し出すテグサー1にディーンは耳打ち。そんな様子をマツナガは苛立ちを覚えた。

 

「えーい、ひそひそとうっとしい奴らだ!!ジャマーシュ、お前の特大マシュマロをお見舞いしろ!!」

 

「ジャマ~!!」

 

マツナガの指示通り、ジャマーシュは今までのとは比較にならない、彼の腹の部位の殆どを消費した、特大の物質を腹から放った。

 

「来たぞ、トウマ!!」

 

「任せろ!!撃、竜、波!!」

 

テグサー1は撃竜波を胸から放った。一直線に放たれた光線はジャマーシュが飛ばした物体に命中、貫通した。光線はその先に待つ者、ジャマーシュの腹をも貫いた。しかし、効果は薄く、彼は余裕の表情を見せる。その時であった。

 

「ディーン・ブレイカー!!」

 

ディーンが放った一直線の音波は撃竜波の光線を伝い、ジャマーシュの腹まで辿り着くと、一瞬の内に散った。

 

「ジャ…!?」

 

ここで怪人は苦痛の表情を見せる。その体に音波が散らばり、外から見ると彼の体内を巡り巡って光っているのがよく分かる。

 

「ジャマ~!!」

 

ここまで来れば許容外。ジャマーシュは苦悶の雄叫びを上げて爆発した。辺りには彼の破片が散らばる。これで、どちらに軍配が上がったのかは一目瞭然である。

 

「あぁ~、畜生!!覚えてやがれ~!!」

 

察したマツナガは負け惜しみを言いながらその場を去った。その後ろを「待って、兄貴~!!」とコブンロが追う。

 

「ふぅ、終わったか…後はコイツだけか…」

 

戦いは終わった。そこでテグサー1は未だに装着されている腕輪を見た。その時、向こうから別の二人が手を振って現れた。それは飛田とテグサー2の姿であった。

 

「お~い、トウマさ~ん!!はぁ、よかった、無事ですね…一応、ディーンも…」

 

テグサー1の元に駆け寄った飛田は肩で息を整えながら二人の無事に安堵した。

 

「おう!!それにしても、よくここが分かったな」

 

「二人の目撃情報からどう転移するのか推測し、次の場所をある程度予測して涼さん達と二手に別れてその場所に来たんです。よかった、予測が当たって…」

 

「そうか。で、腕輪の外し方は分かったか?」

 

「えぇ、勿論!!その為に来たんですから!!」

 

テグサー1に問われて、飛田はパソコンのモニターを装着者二人に見せ始めた。

 

「いいですか、まず、その腕輪の転移の仕組みですが、まず一方のエネルギー伝導が…」

 

「あぁ、そういうのいいからっ!!結論だけ言ってくれよ!!」

 

「あ、そうですか?」

 

テグサー1に急かされ、パソコンをしまう飛田。しぶしぶといった具合だ。

 

「ま、要するに自分の腕輪に、同時に強力な攻撃を与えれば、エラーを起こして外れるって寸法ですよ」

 

「なる程、で、その同時攻撃で許される誤差は?」

 

ディーンの質問に、飛田は言う。

 

「その誤差は…0.5秒!!しかも、下手に手加減したり、躊躇してはいけません。少なくとも、お二人の全力のパワーが最低ラインなんですから…」

 

「ま、マジかよ…俺達の全力が最低ラインだなんて…しかも、自分に?中々難しいな…」

 

躊躇うテグサー1。すると、彼の肩に手を置く者が。見ると、それはディーンの手であった。

 

「俺は信じるよ。君が覚悟を決めて誰かの為に痛みと苦しみを耐える君を…ね」

 

「ディーン…」

 

ディーンの言葉に、覚悟を決めたテグサー1は自分の左手を腕輪にあてがう。その手には撃竜拳のエネルギーが炎の様に燃えていた。ディーンも同じで、左手には可視化された音波が纏っている。緊張で静まるクレーター。テグサー2はその姿に、胸に手を置いて見つめていた。

 

「いくぞ、ディーン…」

 

「撃竜…拳!!」

 

「ディーン…ブレイカー!!」

 

同時に放たれる、二つの爆発的エネルギー。有り余るエネルギーは辺り一面に飛び散る。

 

「「ぐわぁぁっ!!」」

 

その衝撃に二人は体を大きく仰け反り、倒れる。それと同時に、エネルギーの中でお互いの腕輪が外れた。

 

「ん、ん…お?」

 

「おぉ、やった、やったぞ!!」

 

嬉しさのあまり、跳び起きたテグサー1は倒れるディーンの手を取り、起き上がらせた。変身している為、表情は変わらないが、彼もまた嬉しそうであった。

 

「ふぅ、これで、俺も晴れて自由…か」

 

ディーンは自身の手首を揉みながら、人間達三人を見る。その様子に、テグサー2、飛田は警戒し、構える。そんな二人の前に、テグサー1が立つ。

 

「それで、お前はこれからどうするんだ?身内に自分を裏切って立場を奪おうとする奴がいるなんて、居心地が悪いだろ?」

 

「そうだな…」

 

ディーンは顎に手を当てて考える。

 

「いくら裏切り者がいるとはいえ、帝国は俺が生まれ、育った故郷。そんな故郷に逆らって生きていくなど、俺には出来ない。すぐに帝国に戻って、これからどうするか深く考えてみようと思う」

 

ディーンの出した結論。それにテグサー1は言う。

 

「…こんな事を敵のお前に言っても仕方がないし、内情を知らない奴が言うのもなんだが、あそこで考えても考えがまとまるとは、どうしても思えない。だってそうだろう、あそこには人類征服しか考えていない奴らが幅を利かせているんだからな」

 

「…確かにそうかも知れない。しかし…」

 

ディーンが反論しようとしたその時であった。突如、テグサー1とディーンの頭上に大きな網がバサリ!!と覆い被さった。

 

「な、なんだこれは!?」

 

テグサー1とディーンは急に来た網をどかそうともがいた。しかし、網はもがけばもがく程に絡みつき、気が付けば、二人は完全に網に捕らわれてしまうのであった。

 

「くそっ、どうなってんだよ、この網は!?」

 

「この手口、この網…まさか…」

 

叫ぶテグサー1を尻目に、見覚えがあると考えたディーンは空を見上げた。二人の頭上、空中には人間が造ったとは考えられない、トンボの羽を模した特殊な形状の戦闘機がそこで待機していた。

 

「あれは…ジン・ガイア帝国の戦闘機…何故だ、何故帝国が俺達を…!?」

 

ディーンが疑問に思った事を呟いたその瞬間、二人を捕らえた網は宙に浮き、戦闘機と平行して宙吊りとなって動いた。よく見ると、二つの間には太いワイヤーがあり、お互いをそれで繋いでいたのだ。

 

「ま、待って、待ちなさい!!」

 

あっけにとられていたテグサー2はここで我に返り、戦闘機を追いかける。しかし、もう一機。空輸中の戦闘機とは別の機体がテグサー2の後方の空中に現れ、彼女目掛けてレーザーを放った。

 

「きゃっ!!」

 

手前の地面に攻撃が命中し、テグサー2はおもわず足を止めた。そんな中、空輸の戦闘機はどんどんと彼女と飛田から遠ざかる。

 

「穂乃花、飛田!!」

 

テグサー1は網から手を伸ばした。しかし当然ながら、テグサー1は空中にいて届くはずがない。

 

「トウマーッ!!」

 

地上にいるテグサー2も手を伸ばす。しかし、無情にも戦闘機は高速で飛び続け、遥か彼方の海の地平線へと消えた。取り残されたテグサー2。彼女は後ろから追いかけてきた飛田に慌てて詰めよる。

 

「ど、どうしよう飛田くん!!トウマ、行っちゃったよ!!」

 

「…とりあえず、一旦戻って対策を皆で練りましょう。話はそれからです」

 

「う、うん…」

 

「大丈夫、トウマさんの事です。なんとかなりますよ。きっと…」

 

飛田が励ましても、テグサー2は心配そうに俯いていた。果たしてテグサー1は何処へ?それは、次回に続く。

 




どうも皆さん!!
今回の挿絵は八~十話までのハイライトでお送りいたします。
ここまでご覧頂き誠にありがとうございました!!

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