テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。


第十一話『帰郷』

11-1

 

「一体、俺達はどこに向かってるんだ…?」

 

網に包まれ、空輸中のテグサー1は直射日光を浴び、真下の海を見ながら呟いた。横にいるディーンは知ってか知らずか、それとも戦闘機の飛行音で聞こえないのか、その呟きになんの反応もない。

 

「畜生、テグサー1のバッテリーが残っていればこんな網ぶっ壊してやるってのに…」

 

テグサー1は手に持つテグサロイドを覗いた。そのモニターには残りが僅かしかない事を示す『!』のマークがバッテリーの表示の上に現れていた。

 

「取り敢えず、この戦闘機がどこかに辿り着いたら、そこで充電しないとな…でも、そんな都合のいい場所あるかな…少なくともコンセントがあればいいけど…!?」

 

テグサー1がアレコレ考え始めた瞬間、戦闘機がスピードを緩め、その場で滞空し徐々に高度を下げ始めた。その衝撃で網の中は大きく揺れ、二人はまた激しく転がった。

 

「いてて、なんだぁ?」

 

一体どこへと降りるのか。それを確認する為、テグサー1は倒れるディーンを押しのけ、身を乗り出して下の光景を覗く。そしてすぐさま息を吞む。

 

「マジかよ…」

 

戦闘機が高度を下げる事でどんどん近づく、その下に広がる島と見紛う程の広大な金属の塊。思わず、テグサー1は呟く。

 

「…まさか、こんな形で帰省するとは思わなかったぜ」

 

「十年振り、か…」

 

「未来島に帰るのは…」

 

ルルル…

 

戦闘機はエンジン音を鳴らしながら、高度を下げた先に開いた大型のハッチに吸い込まれる様に入った。久々に帰る故郷に、テグサー1は生唾を飲み込む。

 

「ここが未来島の内部…見覚えあるなぁ」

 

一瞬の暗転から視界が開かれた、ハッチを進んだ先にある基地内部。内部の同色の硬質な壁、その壁に沿って這う大小様々なパイプ、外からの陽が回り続けるファンの隙間を縫って漏れる換気扇。住む生命体が変わっても変わらないそれらを目の当たりにしたテグサー1は呟く。

 

「…せめて、コイツらと戦わなくて済む時に帰りたかったもんだぜ、全く…」

 

テグサー1がコイツらと言う視線の先にある物。自身を運んだ物と同型の戦闘機数十機、その横にある戦闘車両数十体。更にはその間を忙しく働くジン・ガイア帝国の兵士達。彼らは人間と同程度の身長ではあるが、全身を覆う戦闘服を纏う物を除けば、骨格が太い者、異様に細い者もいる。更にはその特徴的な骨格に加えて角や触手、多脚に一つ目、各々が十人十色の特殊な特徴を持ち合わせていた。テグサー1が故郷の風景に新たなる要素が加わったのを見渡した瞬間、網が戦闘機から切り離され、二人は高度から地面に向けて一直線に落下した。

 

「うわっ!!」

 

ドスン!!という衝撃音と共に、二人は地面に激しく叩きつけられた。二人は起き上がろうと必死でもがくが、網が絡まり、膝立ちすらままならなかった。

 

「おい、ディーン!腕が邪魔だっ!!」

 

「何言ってんだ、君のその無駄な肩パーツが起き上がれない要因だろう。第一、俺も君の脚が邪魔で動けない…」

 

「いーや、違うっ!!お前の腕がどけば俺達二人が立ち上がれるんだ!!」

 

「違うな、君の脚がどけば立ち上がれるんだ」

 

「違う、腕だ!!」

 

「脚だよ」

 

「腕!!」

 

「脚!!」

 

協調性がまるでなく、意地を張り合う二人。すると、その二人の元に、一人の男が歩み寄った。

 

「よぉ、ご両人?まるで網に捕まった猿みたいだな、えぇ?」

 

網に向かって腰を曲げ、顔を近付けてまで二人を煽る男は怪人態となったマツナガであった。ディーンはその挑発的な顔を見るなり、テグサー1を顔面を押しのけ、網越しにも関わらず彼に詰め寄った。

 

「貴様、ふざけるな!!戦場から逃げた挙句、俺ごと殺そうとして!!貴様の事は絶対に上に報告させてもらう!!覚悟しておくんだな!!」

 

「へッ、なんの事か全く身に覚えがありませんなぁ?そんな事、俺言いましたっけ?」

 

「なっ!?貴様、あの時言っただろう!?まさか、すっとぼける気か!?」

 

「さぁー、言った、言わないなんて一々覚えてられませんからねぇ?そ、れ、よ、り!」

 

「アンタは身内を殺した上に人間と共闘した大罪人。その件についてこの帝国の審問官であるバトリード様が聞きたい事がありますって事なんで、ちょっと来て下さい。その網、外しますんで」

 

そう言うと、マツナガは右手の指をパチンと鳴らした。それと同時に網の結び目が解け、二人は自由の身となった。ディーンはゆっくりと立ち上がった。その一方で、テグサー1は両腕を使って素早く立ち上がる。しかし、立ち上がって身構えるよりも早く、周りを取り囲んだ帝国の兵士達が彼に機関銃の銃口を向けた。

 

「く、くそっ…」

 

バッテリーの残量を気にしつつ、テグサー1は両腕を大人しく上げた。

 

「ん~、いい光景だなぁ~?散々、俺の出世ロードを邪魔してきた奴の惨めな姿を見るってのはなぁ~?」

 

テグサー1の降参の姿を見ながら、マツナガは顎に手を置いてニヤニヤと彼を眺め回した。その間、テグサー1は彼に注視し続ける。右手にテグサロイドを持ち、気付かれないようにタップしながら。

 

「さて、俺はディーン隊長をお連れしてバトリード様の元に連れていく。お前ら、テグサー1に粗相のないように、監獄にぶち込んどきな!!」

 

「「「は!!」」」

 

マツナガに指示された兵士達は銃を構えながら一斉に了解した。

 

「よし、じゃあ頼んだぜ。さ、隊長?ここで言い争ってもしょうがないので、早いとこバトリード様に弁明しに行きましょう?」

 

「…あの方は総統閣下が信頼している者の一人だ。必ず公平な審判を下すに決まっている。その時はマツナガ、貴様に後悔させてやるよ…!!」

 

「はいはい、行きましょ、行きましょ」

 

マツナガはディーンをバトリードの元へ連れていく為に彼の前に立って先導した。一方でテグサー1は残された怪人態のコブンロとその他兵士達を前に手を挙げ続けていた。

 

「さぁ、テグサー1。アンタも大人しく俺達と一緒に来て貰おうか?なにしろ、あの人が出世しないと、俺達も上へ行けないんでねぇ~?」

 

コブンロはテグサー1に近寄り、彼の強固な胸部装甲をコンコンと叩いた。その瞬間であった。テグサー1がテグサロイドのアプリの一つをタップしたのは。

 

ブシュウウウウウ!!

 

『放熱』と書かれたアプリが起動すると、テグサー1は全身の節々から蒸気を勢いよく放出した。

 

「な、なんだぁっ!?あ、熱っ、熱っ!!」

 

辺り一面に広がる蒸気。その蒸気を一番近くで受けたコブンロはその熱さで悶え、堪らずテグサー1から離れた。それは、周囲の兵士たちも同じであった。彼らもまた同じように蒸気に包まれて悶え、銃口を彼から離して一歩一歩下がり始めた。

 

「今だ…!!」

 

テグサー1は目の前の敵が怯んだのを見過ごさなかった。上げた腕を降ろし、腕を振って駆ける。コブンロ、兵士達、戦闘機の間を縫って。一心不乱に一直線に向かう。見つめ続ける場所は数十m先にある、この格納庫の出入口。幸いにも出入口は開かれていた。それに気付いていた彼は駆け続ける。蒸気が晴れ、視界が明けたコブンロは駆けるテグサー1を見て真っ先に叫ぶ。

 

「た、大変だ…!!撃て、撃て!!奴を止めるんだ!!あ、あと扉を閉めろ、早く!!」

 

コブンロの指示を聞いた一人は扉を閉められる、壁の設置されているスイッチを押した。それと同じくして、兵士達は銃の狙いをテグサー1に狙いを定める。そして、逃げ続けて扉に接近したテグサー1の背中に向けて一斉に銃を連射した。

 

「う、うわっ!!…野郎!!」

 

銃弾が脚に命中したテグサー1は大きくよろけた。しかし、よろけながらも後ろを振り向き、ホルスターからハンドシューターを抜くと、追撃しようとする兵士達に向けて連射した。

 

「うわあぁっ!!」

 

一発一発発射するごとに、吹き飛ぶ兵士達。すると、流れ弾の一発が待機中の戦闘機の羽根に命中した。その衝撃で横倒しになり、その一機が隣の戦闘機に激突する。そして、その戦闘機もまた横に倒れ、そしてそのまた隣の戦闘機も…連続して将棋倒しに倒れる数十機の戦闘機。辺りにはオイルや外れた部品が散乱し、兵士達はそれらに足を取られ始めた。

 

「よし…今のうちに…ゲ!!」

 

テグサー1は逃走劇を再開しようと、扉の方へ向き直した。しかし無情にも鋼鉄の扉は完全に閉まり切り、格納庫は他のフロアに繋がっているであろう通路から隔絶されてしまっていた。焦る彼の背後には兵士達がじりじりと迫る。

 

「よ~し、大人しくしろよ、テグサー1…そうすれば…」

 

「つ、おりゃああああああああっ!!」

 

テグサー1は歩み寄る兵士達を完全に無視しながら、鋼鉄の扉に強烈な拳をお見舞いした。その衝撃で扉は勢い良く吹き飛び、向こうの通路の壁に激突する。テグサー1は開いた出入口から通路に向けて顔を覗かせて左右を確認、誰もいない事が分かると通路に向けて一目散に駆け出した。

 

「し、しまったーっ!!テグサー1は怪力の戦士、こんな扉をぶち破るのは朝飯前だったんだ!!追え、追うんだ!!」

 

コブンロに急き立てられ、慌てて通路に飛び出す兵士達。しかし、テグサー1の姿はもうそこにはなかった。

 

「なにをしてる!!その場にいないんなら、どこかに逃げた筈だ!!散れ、散って探せーっ!!」

 

兵士達は一斉に散り、通路のT字路で三チームに別れて捜索を始めた。ある者は近くのロッカールーム、またある者は別の倉庫を…そんな中、部下数人を連れたコブンロは複数のパイプが複雑に入り組んだ空調管理室で血眼で捜索していた。

 

「くそ~どこだ、どこだ!?もし見つからなかったら、俺、兄貴にどやされる…いや、それだけじゃない。きっと、帝国から減給されるに…」

 

「あぁ~、どうしよう、どうしよう!!なぁ、どうしよう!?」

 

「こ、コブンロ様、落ち着いて下さい…」

 

コブンロは隣にいる兵士を揺すりながら叫ぶ。しかし、一所懸命に探してもどこにもいない。別働隊の部下からもなんの報告もない。コブンロが焦り、地団駄を踏み始めたその時、彼の持つ通信機から着信音が流れた。見つかった報告だと思ったのか、慌てて取り出すコブンロ。しかし、その声は部下の声ではなかった。

 

『もしもしコブンロ?テグサー1はどうなった?』

 

その声はマツナガであった。思いもよらない声にコブンロは思わず「ひぅ!?」と言葉にならない声を上げた。

 

『なんだよ、その悲鳴?なんかあったのか?』

 

「いいいいいえ、なにもありませんぜっ!!」

 

『そうか、ところで格納庫でなにかあったみたいだが、なにがあったんだ?」

 

「あっ、はい!!それはテグサー1が暴れて逃げ出したんです!!」

 

『…やっぱり、いなくなったんだな?』

 

「…あ」

 

『馬っっっ鹿野郎!!ちゃんと送れって言っただろう!!』

 

「ひぃぃぃ、ごめんなさいぃぃぃ!!」

 

『くそっ、こうなったら仕方がない。俺の息がかかった奴らを集めておくから、お前はそこにいる部下連れて監視モニターを見てこい!!履歴データに映っているかもしれないからな!!』

 

「は、はいぃぃぃぃぃ!!い、行くぞお前ら!!」

 

コブンロに促された部下達は部屋から飛び出す彼の後を追った。空調管理室はグオン、グオンとパイプから流れる駆動音しか響かない。すると、複雑に入り組んだパイプの間の僅かな隙間から、変身を解除したトウマがひょっこりと顔を覗かせた。

 

「よし、アイツら出て行ったか」

 

「へっへっへ、ここは俺の故郷。隠れ場所はよく知ってんだよ。未来島主催ちびっ子かくれんぼ大会初代チャンピオンをなめるなよ?」

 

「…といっても、二回目はなかったけどな」

 

そう呟くと、トウマはパイプをよじ登り、パイプの間の通路に降り立った。

 

「さて、もう一度変身してここからさっさと脱出するか、チェンジ、テグサー1!!」

 

トウマは変身しようとポーズをきめてテグサロイドを構えた。しかし、テグサロイドはなんの反応もない。

 

「…アレ?…あっ!?」

 

トウマはうんともすんとも言わないテグサロイドのモニターを覗き込み、驚いた。テグサロイドを使って数か月、バッテリー残量がない事を示す表示を初めて見たからだ。

 

「マジかよ、こんな時に限ってバッテリー切れかよ…。まぁ、ケーブルとプラグはこいつに内蔵されているから大丈夫だとして、まずは電源がある所探さないとな…それと食料とかも探した方がいいかな…」

 

トウマが現状を確認していたその時、未来島が上下に激しく揺れた。トウマは思わず近くのパイプにしがみついた。

 

「こ、この振動は…!!間違いない、この島、海底に潜る気だ…!」

 

「確かこの島は深海まで潜れたよな…」

 

「はぁ~、ここから脱出する為のボートかなにかも探さないとなぁ~」

 

「…それにしても、自分の故郷で二回もサバイバルする奴って、俺以外にこの世にいるのかな…多分、いないよな…」

 

揺れ続ける未来島。その中で一人、トウマは弱気に呟くのであった。

 

11-2

 

トウマが悩み続けている頃、揺れが収まった未来島で人間態のディーンはマツナガ、バドリードを前に尋問を受けていた。

 

「…以上が自分とテグサー1が共闘したいきさつです。断じてこの帝国を裏切った訳じゃありません…!!」

 

ディーンの必死の弁明を、スーツ姿で銀髪が綺麗に分けられた人間態の壮年紳士、バドリードは自身の顎髭を触りながら聞いていた。それから少しの間を置いて、彼はゆっくりと口を開いた。

 

「フーム、君の話はよ~く理解した。テグサー1が死ねば君も死ぬと判断したからジャマーシュないし、他の者達を攻撃したということだね?」

 

ディーンはコクコクと何度も頷く。

 

「しかしだね、マツナガによれば君は戦う前、あのテグサー1、只今絶賛逃走中の彼と共に密談をしていたと聞いているが、本当かな?」

 

「そ、それは…」

 

ディーンはその質問に答えにくく、視線を逸らす。その時、しめしめと言わんばかりに、マツナガがポケットから手のひらサイズの機械を取り出した。よく見ればそれは録音機。マツナガはそれをニヤリとほくそ笑みながらスイッチを押した。

 

『たった今、彼は…トウマは敵にも関わらず、俺に生きる意味を、守るべき物を教えてくれた…そんな面白い奴を、このまま死なせてたまるか…!!』

 

「な、これは…!?」

 

録音機から流れる自身の声にディーンは戸惑いの声を上げた。それを見届けながら、笑い続けるマツナガは録音機を止めた。

 

「隊長~嘘はいけませんぜ、嘘は?人間を庇う様な発言、行動をして、裏切りはないなんて、よくそんな事が言えますな~、えぇ?」

 

「そ、それは、お前がジャマーシュを使って襲ってくるから、思わず言ったんだろうが…!!」

 

「だとしたら、わざわざ面白い奴なんて言う必要がないのではないでしょう、か~?」

 

「あ~あ、このままじゃアンタ、処刑か一番最下層まで降格のどちらかだな~あ~コリャ大変だ~」

 

「ぐ、ぐぅ…だ、だが奴が示した事をきっかけに俺が力を高めて、この帝国の礎となるかもしれないだろう!?奴が面白いからといって裏切らないとは限らない…かもしれないし…」

 

「だ、第一貴様は俺をハメて殺そうとしただろう?その点はどうなんだ?」

 

「なに訳の分からない事をおっしゃってるんです、隊長?この録音機に流れた言葉はこれだけで、俺はそんな事、一言も言った記憶もないですが?」

 

「な!?貴様、卑怯じゃないか!?」

 

話が平行線をたどり、決着が着かない二人。その時、バドリードが距離を詰める二人の間に割って入った。

 

「あぁ、待て待て待ちたまえ、君達!!このままでは永久に平行線だ。ここは私が結論を言い渡そう。そうだ…まずはディーン、私は君の忠誠心を信じようと思う」

 

「えっ!?」

 

思いもよらない結果に、ディーンは一気に表情を明るくさせ、マツナガはえぇっ!?と、驚きの表情を隠せないでいた。

 

「なにしろ君は今まで我が帝国で身を粉にして戦い抜いた信頼の実績がある。アジアでの最前線、ヨーロッパの海域での防衛戦といった様々な実績が、ね」

 

「バドリード様…」

 

「だが、今回の一連の行動は君の積み立てた信頼を一気に崩してしまう物だ」

 

「そこで、だ。君にはこの島で現在逃走中のテグサー1の変身端末を奪いに行って貰う。奴の生死は問わない。アレがなければ奴は只の人だからね」

 

「ただ、そのままで行っては君が帝国に忠義があるかどうか分からない。だから、君にはこれを携行して貰う」

 

そう言いながら、バドリードは懐から小さなカメラを取り出し、ディーンに手渡した。

 

「このカメラを常に携行し、テグサー1と対面した時に起動させ、自身の忠義の強さを撮影するんだ。簡単だろう?」

 

「バドリード様、お心遣いありがとうございます。必ずや、テグサロイドを奪い、帝国に勝利を貢献して参ります…!!それでは、失礼いたします」

 

ディーンはカメラを首にかけると、ゆっくりとした足取りで会議室を出る。彼を見送ったマツナガは慌ててバドリードに駆け寄った。

 

「ば、バドリード様!?いいんですか!?アイツは間違いなく帝国を裏切るかもしれないんですよ?早く始末しなければ、この帝国にとって…」

 

「分かっているよ、奴が人間に感化されている事もね」

 

「そ、それじゃ…」

 

「彼は迷っているんだ、自分はこれからどう考え、行動すればよいか、人間と帝国、どちらに着けばいいか、とね…」

 

「力のある者が迷っているのは危険だし、我が帝国には不必要だ。しかし、私の経験上、一度こちらが行き先を提示すればいとも簡単に従うものだよ」

 

「な、なるほど…それじゃあ、奴が持っていたカメラは…」

 

「あのカメラはテグサーマンが変身した時に放出される粒子に反応して、狂った様に暴れ回る針を出す様に仕込んである。以前、ドルカの戦いで人間達が作った物を参考にした物だ。そうだろう、グシャンモス?」

 

バドリードが背後をチラリと見た瞬間、視線の先にあるカーテンが開かれた。そこには、顔や上半身がヒビや傷だらけのグシャンモスの姿があった。

 

「うぐぐ…その通りだ…」

 

「それにしてもアイツは…ディーンは怪我をいい事に、俺の支援をしなかった…あの時、奴がいてくれたら勝てた物を…バドリード。アンタの策略、俺は期待しているぞ…」

 

「あぁ、期待してくれたまえ。近々行われる本格的な防衛軍の巡航ミサイル制圧作戦も近い時に邪魔な者は整理したいし、私としても、奴につけられた傷が未だに疼くからね」

 

バドリードがYシャツを捲ると、腕には生々しい傷が彼の体を覆っていた。その傷は昔の物らしく、白くガサガサに乾燥していた。

 

「…かつて、私はディーンと最前線で戦っていた。私はその戦場で最大の目標である基地に向かって走ったのだが、横からの相手の砲弾に倒れ、大怪我を負った。その時、奴は私の横を駆け抜けて基地を破壊。そして奴は大手柄だと上層部から褒め称えられ、私はその怪我が原因で戦場から退く事となった…」

 

「私は奴を許さん、手柄を横取りした挙句、昇進した奴を…例えそれは部署が変わり、上にのし上がった今でも変わらない…!!」

 

「ディーンめ、その事を全く憶えていないようだが、いまこの日をもって私と同じような苦しみを味わうがいい…!!」

 

「フッフッフッフ、ハッハッハッハ!!」

 

勝利を確信し、魚型の怪人へと変わるバドリードの高笑い。その光景をマツナガは引きつった笑顔で眺めていた。

 

「お、おぉ、成功するといいですね…」

 

11-3

 

「トウマ…皆、ゴメン…私がいながら…」

 

「だ、大丈夫だって!!トウマの事だ、意地でも帰ってくるよ!!」

 

「そ、そうよ!!アイツはいい加減に見えてやる時はやるんだから!!なんてったって私が選んだ奴なんだし!!」

 

時を同じくしてテグサーチーム事務所。トウマが浚われた事を知った茜とレミーは意気消沈する穂乃花を慰めていた。

 

「トウマさん、待ってて下さいね…必ず、僕が見つけますから…!!」

 

その横で飛田はパソコンを前に必死でキーボードを叩き、テグサー1の所在を探っていた。

 

「飛田、探索の音波の範囲をもっと広めて探せないか?そっちの方が効率的だと思うが…」

 

その横では涼がその様子を見つめ、指示を送っている。

 

「それだと、他のも拾って全然違う物をテグサー1だと認識してしまいますから、範囲を狭めて一つ一つ探っていかないと…」

 

「そうか…」

 

飛田の意見を聞いて、涼は無言で腕を組んで彼の作業を黙って見つめ始めた。

 

「ポイント、S78…いない。なら海岸線からW38地区は…駄目だ、ここにも反応がない…」

 

「なら、まさかここかな…海岸から更に沖を重点的に探して…」

 

ピピピッ。

 

飛田がマウスを素早く動かした瞬間、パソコンから効果音が流れた。それと同時にモニターに表示されている地図に『テグサー1』と座標が示されていた。

 

「ビンゴ…!やっぱりトウマさんはここにいるんだ…!!未来島に…!!」

 

飛田が発した『未来島』という単語に、その場にいた者は一斉に彼を見る。その表情は全員驚きを隠せないでいた。全員が黙って飛田に注目する中、穂乃花がいの一番に叫ぶ。

 

「そんな…!!それじゃトウマはそこに誘拐されたっていうの!?」

 

「恐らくはそうかと…あっ!?」

 

「どうしたの、飛田くん!?」

 

「い、今…テグサー1の反応が消えました…」

 

「そ、そんなぁ!?ま、まさかトウマは…」

 

「な、ねぇ、どうなの!?トウマはどうなったの!?」

 

トウマの安否を知らせる唯一の手段が閉ざされた。この事実に、穂乃花は取り乱しながら飛田に近寄った。

 

「落ち着いて下さい、穂乃花さん!!まだトウマさんが死んだと決まった訳じゃありません!!恐らくテグサロイドのバッテリーが切れて座標に表示されなくなっただけかもしれません…!!だから落ち着いて…!!」

 

「そ、そうなの…?それじゃ…!!」

 

穂乃花は近くにあった、自身の上着を引っ掴む。急ぎ足で事務所の出入口に向かった。

 

「待て、何処に行く気だ…?」

 

と、穂乃花に向けられた涼の素っ気ない言葉に、彼女はグルンと振り向いた。

 

「そんなの決まってるじゃん、トウマを助けに行くんだよ、今すぐに…」

 

「ダメだ、許可は出来ん」

 

「えぇっ、どうして!?」

 

「今や中がどう変わったか、政府や防衛軍ですらわからない場所になんの情報を得ずに行くのは無謀だ。それに、我が社の決まりとして本国に許可なく行くのは禁止だと制限されている。もし行けばお前もまたそこで安否不明になる可能性があるかもしれない可能性があるからな…」

 

「そ、そんな!?それじゃ涼さんはトウマがどうなってもいいって言うの!?」

 

「そうは言っていない…!!行った後の事も考えろと言ってるんだ…!!ジン・ガイア帝国と戦っているのは今だけだと思うな…!!生きて帰れるか分からないし、何よりもクビになる可能性があるぞ!!ここにいる社長の父、本社の父が決めた事には従うんだ…!!」

 

「じゃあ、どうすればいいの…!?今、トウマは苦しんでいるかもしれないのに…!!」

 

「時期を待つんだ。この後、私は本社に行って上層部にこの事を報告、それから行政や防衛軍に持ち掛けて、そこから…」

 

「そんなに…」

 

「ん?」

 

涼は突如割り込んできた穂乃花に一旦話を中断した。見ると、彼女の丸い瞳が大きく潤んでいた。

 

「そんなに待ってられないよ…!!大事な友達が向こうで身動き取れない上に、もしかしたら怪我しているかもしれないんだよ!?それなのに、それなのに大人しく待っていろって言うの!?」

 

「そんなの…私、堪えられない…!!」

 

「穂乃花…」

 

彼女の頬を伝う涙を見て、涼は話を続けるのをためらった。しかし、続けねばならないのは、上司としての役目であた。

 

「穂乃花、お前の気持ちは分かる。だが、何度も言うが時期を待つんだ。上手くいけば防衛軍も協力するかもしれないしな…兎に角、なにか進展があった時にはこちらから連絡する。それまで待て、いいな?」

 

「もういい…許可が出るまで我慢する…トウマが怪我していない事を祈りながら今日は帰ります。それじゃ、お疲れ様でした…」

 

穂乃花は全員に向けて軽く会釈し、重い足取りで事務所を後にした。それと同じ様に、取り残された者達と事務所を包む重い空気。そんな中で、飛田が涼に向けて口を開いた。

 

「涼さん、未来島への潜入を試みた企業や団体はいくつかあります。でも、帰ってきた所は一つも…それは防衛軍も一緒です。それなのに、許可なんていつかかるか…」

 

「分かっている…だが私達はこの世界を守る者であると同時に、企業に勤める者だ…自分達だけの裁量で勝手な事は出来ない…」

 

「ところで飛田、前に頼んだ新パーツ、アクアパーツは完成しているのか?」

 

「え?えぇ、まぁ完成してますけど…涼さん、一体なにを…?」

 

「…」

 

11-4

 

翌朝、学校に登校した茜、飛田は朝礼を前に、自身の席に座りながらスマホを一心不乱に眺め続ける穂乃花を心配そうに見つめ、囲っていた。

 

「穂乃花、そんなにジッと見続けても早く来る訳じゃないよ。ここは連絡を待って心と体を落ち着けないと…」

 

「…ん~」

 

茜の言う事を話半分で聞いているのを体現するかの様に、穂乃花は口を開ける事なく生返事を返し、木製の机に右頬を密着させて再度スマホを眺め続けた。

 

「いや、姿勢の問題じゃなくて…一旦スマホを置いて目を休ませろって事なんだけどなぁ…」

 

「ん~…」

 

「はぁ…やれやれ…」

 

相変わらず口を開かずに返事を返す穂乃花に茜はため息をつく。その瞬間、ガラッと教室の出入り口である引き戸が開かれた。

 

「…!!トウマ!?」

 

一瞬、トウマが帰ってきたと思い込んだ穂乃花は椅子が後ろに倒れる勢いで立ち上がった。その椅子は後ろにいた飛田が素早くキャッチした。そして、倒した当の本人の笑顔は一瞬にして消え去った。入り口にいたのは、出席簿を持った、頭頂部が禿げた中年の男、穂乃花達の担任教師であった。

 

「ほれ、席に着け~出席を採るぞ~」

 

間延びした喋りをしながら、担任は着席した生徒を前に、教壇に立って出席簿を開いた。

 

「え~、安藤、石川…」

 

淡々と苗字を呼ばれ、「はい」と返事を返す生徒達。十五人程呼んだ所で、タ行の所まで辿り着いた。

 

「田沢、富田…富田?アレ、富田はどうした?今日は休みか?三千院、なにか知ってるか?」

 

トウマが欠席な事を今知った担任は幼馴染である穂乃花に事情を聞こうとした。しかし、彼女は聞く耳を持たず、虚ろな目で校庭を見つめていた。

 

「おい、三千院…!?聞いてるのか…!?」

 

担任が再度呼びかけても返事どころか見向きもしない穂乃花。痺れを切らした彼は教壇から離れ、近寄ろうとした。それに気付いた飛田は慌てて席から立ち上がる。

 

「うわぅ!!え、えっとトウマさんは今日風邪で休むって言ってました…!!すいません、伝えてくれって頼まれたのをすっかり忘れてました!!」

 

「…ん、そうだったのか。しかし、こういうのは親御さんから連絡がある物なんだが、それがないのは変だな…こんな時代だし、家族ぐるみでなんかあったのかな?まぁいいか。それじゃ、出席確認を続けるぞ~」

 

(あ、危なかった…)

 

なんとか言い訳を通した飛田はほっと胸をなでおろしながら穂乃花の方を見た。先程の慌ただしさを余所に、彼女はジッと校庭を見つめ続けていた。

 

「穂乃花さん…」

 

それから、出席確認が終わった直後の授業中。穂乃花は着席しながら居眠りをし、机の上で舟をこいでいた。担任は気付いていない様だ。

 

「ん…んん…」

 

心地よい日光を浴び続ける穂乃花は陽の光とは真逆の暗闇の中にいる夢を見ていた。

 

「ん、アレ、ここは…?」

 

そうとは知らずに、周囲を見渡す穂乃花。その時、なんと言っているのか分からない、言葉にならないかすかな声が背後から聞こえた。振り向いた瞬間、穂乃花は大いに喜んだ。数m先にいた者。それは待ち焦がれる男、トウマの姿があったからだ。

 

「トウマ、無事だったの!?待ってて、今すぐそこに…」

 

穂乃花はトウマに駆け寄ろうとした。しかしその瞬間、トウマの体を化け物じみた無数の手が彼にしがみついた。そしてそれらはあろうことか彼の体をグイッ、と背後の闇に引きずろうとし始めた。

 

「な、なんだコイツらは…!?は、離れろ…!!」

 

トウマは必死で抵抗した。しかし、手は一向に離れようとしない。穂乃花は彼を助けようと走った。しかし、夢の中の為か上手く走りだせない。そうこうしているうちにトウマはズルズルと後ろに下がり徐々に闇に包まれ始めていた。

 

「と、トウマ!!」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!助けてくれ、穂乃花、穂乃花ぁー!!」

 

「トウマ、トウマー!!」

 

「穂乃花ぁ…!!」

 

「トウマ!!」

 

トウマの名を呼び続けて三回目、穂乃花は現実の世界に目が覚めると同時に椅子から立ち上がった。突然の絶叫に、生徒達そして授業中の担任は一斉に彼女を見た。

 

「あ、アレ…?トウマ…?」

 

穂乃花は立ったままで周囲を見渡した。当然ながら、彼女の視界の中には、先程まで見ていた闇はなく、いつもの見慣れた教室が映り込んでいた。

 

「おい、三千院~今日一日トウマに会えないからってそんなに深刻になるなよな~。仲いいのは知ってるけどさ~」

 

「ギャハハハハハ!!」

 

担任の軽口に、生徒達は爆笑の渦に包まれた。いや、その中で渦に包まれていない者が二名いた。

 

「穂乃花…」

 

「穂乃花さん…」

 

その二人とは事情を唯一知っている茜と飛田であった。それから放課後の下校中、三人は人気のないコンクリートの海岸に来ていた。

 

「穂乃花さん、本気で言ってるんですか…?一人で未来島に行くなんて無茶ですよ…!!」

 

飛田が真剣な目つきで見ている先には、海を背にしてテグサロイドを構える穂乃花の姿があった。彼の傍らでは、すぐにでも穂乃花を止められるようにと茜がテグサロイドを握っている。

 

「だって、今は海底に沈んでるけど目と鼻の先でトウマが待っているんだよ、助けに行かない訳にはいかないよ…!!」

 

「しかし、未だに内情が不明の場所に行くなんて危険です!!だから…」

 

「そんな事言われたって、私は行くよ!!トウマが待ってるから!!」

 

「ほ、穂乃花…アンタ本気で…」

 

穂乃花の威勢のいい言葉に思わず詰め寄る茜。その時、物陰から二人の女性が現れた。

 

「穂乃花…お前、自分がなにを言ってるのか分かっているのか…?」

 

現れた女性は涼とレミーであった。あれ程念を押したにも関わらず行こうとする穂乃花を、涼は冷ややかな目で睨んでいる。しかし、穂乃花は物怖じせずに自身の主張を貫く。

 

「本気だよっ!!私は絶対にトウマを助けに行く!!傷ついても構わないっ!!」

 

「それより涼さん、上に報告して、結果はどうなったの!?ずっと待っていたんだよ!?」

 

「残念だが、我々はこれ以上テグサーマンを失う訳にはいかない。よって、出動は出来ん。それと、軍によれば捜索隊は出すそうだ。ただし、以前の経験から装備を揃える点から一週間はかかるそうだが、な」

 

「そ、そんな…!!目の前に困っている人がいるってのに…!!ようし、それなら…!!」

 

穂乃花は海に向き直し、テグサロイドを構える。その姿を目の当たりにした涼はふぅ、とため息をついて目を伏せた。そして、穂乃花を睨んだ。

 

「そうか、あくまで行くのならば仕方がない…」

 

涼もまた、懐から自身のテグサロイドを取り出す。それが何を意味するか。知っている茜と飛田は思わず「あっ…!!」と驚愕した。

 

「今ここで、お前を力ずくで止めるしかないな…!!チェンジ、テグサー、3!!」

 

装甲に包まれ、涼はテグサー3に変身、刀を鞘から抜くと、穂乃花に向かって駆け出した。

 

「涼さん…!!」

 

「チェンジ、テグサー、2!!」

 

テグサー3の突撃に気付いた穂乃花は彼女の方を向き直し、テグサー2に変身。その瞬間、目の前で振り下ろされる刀を風竜剣の柄で受け止めた。飛び散る火花。その衝撃にテグサー2は膝を曲げる。

 

「ふっ!!」

 

激しいつばぜり合いになる前に、テグサー3は刀を下げて一歩後退、懐から取り出した複数のクナイをテグサー2目掛けて投げ飛ばした。

 

「…!!こんのぉ!!」

 

テグサー2は槍へと変形した風竜剣を円形に振り回し、迫るクナイを弾こうとした。しかし、無情にもクナイは回り続ける風竜剣の隙間をすり抜け、テグサー2の胸部に突き刺さった。

 

「きゃっ!!」

 

クナイが刺さり、風竜剣の回転を止めて怯むテグサー2。その隙をテグサー3は見逃さない。刀を鞘に収めてすぐさま急接近し、テグサー2の手首目掛けて手刀の一撃を当てた。クナイの衝撃もあって、テグサー2は思わず手に持つ風竜剣を落とした。ガランガラン…と音を立ててコンクリートの地面を転がる風竜剣。テグサー2はそれを拾おうと手を伸ばした。大きく一直線に伸びる隙だらけの腕。その腕をテグサー3は掴む。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー3は掴んだ腕をそのまま自身の肩に回すと、雄たけびと共に、一気に背負い投げにテグサー2を地面に叩き付けた。

 

「きゃあっ!!」

 

防ぐ暇もなく、受け身も取れずに叩きつけられたテグサー2は思わず悲鳴を上げた。それでも痛みに耐え、立ち上がろうとした瞬間、喉元に伸びる刀身に躊躇し、動きを止めた。その刃物はテグサー3の刀の切っ先であった。

 

「う、うぅ…」

 

「…私にも勝てないのに、行こうなどとよく言えた物だな」

 

冷徹に見下ろすテグサー3に、テグサー2はなにも言えなかった。代わって、レミーが叫ぶ。

 

「もう、やめてよ二人とも!!テグサーマン同士で戦うなんて間違ってるわよ!!」

 

「誰かを救える大きな力を、こんな事に使うべきじゃない、そうでしょ!?」

 

「それに、責任なら私が負うわ!!あと、本社長のパパにも言って…!!」

 

「社長は黙っていろ…!!今はそんな事を言ってる場合じゃない…!!」

 

「う…!!」

 

気迫溢れるテグサー3の言葉と自身に向けられた冷ややかな視線。レミーは無意識に後ずさり。それを確認したテグサー3は再度テグサー2の方へ向き直した。

 

「穂乃花、今は一旦諦めろ。別に助けに行かないとは言ってないんだ。少し待てばいつか…」

 

「トウマは…」

 

「ん?」

 

「十年前、トウマはそのいつかを待ち続けて、目の前でかけがえのない友人、家族を失った…!!誰かの助けも来ずにずっと、あの島で…!!」

 

「私はその時の恐怖を、孤独を知らない…でも、大事な友達にこれ以上苦しい思いは…」

 

「させたくないっ!!」

 

テグサー2は強い意志と共に、傍の風竜剣を取り、テグサー3の刀へ投げた。

 

「うぅっ!?」

 

突然の激突に驚愕したテグサー3は思わず刀から手を放した。その隙にテグサー2は起き上がり、相手に向かってキックを放った。瞬発的にその脚を腕で防御するテグサー3は反撃として脚を払いのけた後、綺麗に一回転した回し蹴りをお見舞いした。

 

「は、はぁぁぁぁぁっ!!」

 

「おぉぉぉぉっ!!」

 

それから繰り広げられる、二人の激しい拳と拳のぶつかり合い。最初はお互い一歩も譲らない攻防戦であった。しかし、想いの強さが勝っているのか、テグサー3は徐々にテグサー2から繰り出される拳の数々に押し負けていた。そして大振りの右拳がテグサー3の防御を弾いた瞬間。テグサー2は大きく振りかぶって左の拳を構えた。

 

「私は止まらない…ここで止まる訳には…」

 

「いかないんだぁぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー2の叫びと共に繰り出される左拳による渾身のストレートパンチ。しかし、間一髪でテグサー3はしゃがみ込み、近くに落ちていた刀を拾い上げるとすぐさま振り上げた。

 

「きゃっ!?」

 

テグサー2は間一髪で後ろに退き、刀は放物線を描いて彼女の顎スレスレを通った。

 

「し、しまった…!!さっき吹き飛ばした刀が近くにあったなんて…!!」

 

「残念だったな。私は刀を拾いたくて、あえて押し負けているふりをしていたんだ」

 

そう言いながら、テグサー3は刀身にエネルギーを溜める。青白く輝くその刀身を前に、テグサー2は防御の姿勢を取った。次に来るのがなにか知っているからだ。

 

「ここでお前を吹き飛ばしてやろう…!!」

 

「くらえ、天下無双刀・奥義、一閃斬り!!」

 

縦一閃に振るう、青白いエネルギーの刀。テグサー2はそれを避ける間もなく、予め構えていた腕へ直撃した。

 

「き、きゃあぁぁぁっ!!」

 

その衝撃で彼女は数歩後方へよろめき、倒れ、水飛沫をあげて海中へと着水した。

 

「終わったか…」

 

テグサー3は海岸ギリギリに立つと、テグサー2が落ちた海面を覗き込んだ。そこにはテグサー2の姿はなく、波が下のコンクリートを濡らすだけであった。

 

「酷い、酷すぎるわよ、涼!!こんな事をする人とは思わなかったわ!!アンタなんかクビよ、クビ!!」

 

海を覗き続けるテグサー3を激しく責め立てるのはレミー。しかし、変身を解除し、涼へ戻った彼女は自身の足元で騒ぐ子供を気にせず、すぐ後ろの飛田に近寄った。

 

「ちょっと、無視しないでよ!!この件は絶対にパパに…」

 

「飛田。テグサー2は私との特訓中に、不慮の事故で海中に落下、現在捜査中である。そうだな?」

 

「え…?」

 

涼の突然の発言にレミーは戸惑った。名指しされた飛田を見ると、そこにはいつの間にかカメラを構えている飛田の姿があった。

 

「えぇ、そうです。その点はバッチリ録画しています。で、只今テグサー2は海中に流れ続け、未来島に向かっています。まー、この状況から察するにあと十五分後に未来島に到達するので救助は無理ですね…」

 

「そうだな…まぁ捜索はするが救出するのは無理だろうな…なにしろ、私達の手に届かない未来島に流れてしまっているんだからなぁ…」

 

そう言いながら、涼はチラリと横目でレミーを見た。その視線から、何かを察したレミーは飛田と涼の二人を交互に見た。

 

「ま、ままままさかアンタ達、そういう体にして穂乃花を送り届けたんじゃ…」

 

レミーの投げかけに、涼は小さく頷く。

 

「そうだ、そういう体にしておけば、あまり問題にはならないし、上手く誤魔化せるかもしれん…正直苦しい苦肉の策だがな…」

 

「それに、アイツの意志がどれだけの物か試してみたかった…もしここで挫ける様なら、助けには行かせん…」

 

「さて、今頃アイツは、飛田が送ったアクアパーツを装着して海を優雅に泳いでいる頃かな…無事でいるといいが…」

 

「あ、ありがとう涼!!やっぱり頼れるのは涼だけよ!!」

 

涼が海を再度眺めた瞬間、レミーは突然嬉しそうに涼の腰に手を回し、抱きついた。その様子に、涼はふぅ、と軽くため息をついた。

 

「全く、さっきはクビにするって言ってなかったか?まぁいいか…」

 

「…穂乃花、無事で帰ってこいよ。正直、誤魔化すにしても、助けるにしても時間が限られているんだからな…!!」

 

一方で海中深く。海底に沈む多くの廃棄物、群れをなして泳ぐ魚の間を進むテグサー2の姿があった。その背面には二対の酸素ボンベが取り付けられ、中心の水中ジェットパックで猛スピードで進んでいた。テグサー2は前方に注意しつつ足のヒレで泳ぎ、黒い深海で一人呟いた。

 

「…あの時、涼さんは私と鍔迫り合いした時、刃を向けずに…え~と、なんだっけ…」

 

「…あぁそうだ、峰打ちって奴で斬ろうとしていた…」

 

「今思えば、私の事を最初から行かせようと、私の意志を確かめようとしていたんだ…」

 

「…ありがとう、涼さんに飛田君。二人が私の為に託した想い、絶対に無駄にはしない…!!」

 

「…!!見えた!!あれが未来島…!!」

 

テグサー2の視線の先、そこには海底で静かに佇む金属の島、未来島があった。

 

「待ってて、トウマ。あの時、ちっちゃい頃に私を助けてくれた恩、いまここで返すよ…!!」

 

テグサー2は突き進む。テグサーチーム全員の想いを背負って。果たして、彼女は島に取り残されたトウマを救うことが出来るのか?そして、ディーンとの決着は?それは次回に続く。

 




皆さんどうも!!
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!!
次回も是非、お楽しみくださいませ!!
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