・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
14-1
『GooGooZ ジン・ガイア帝国の襲撃により負傷 コンサートは絶望的か』
『防衛軍と二大企業はなにをしていたのか!!空白の三十分!!』
『国 裏切られる期待 崩れ落ちる希望 その是非を問う』
壮絶的、かつ絶望的戦いから翌日の午前九時。GooGooZの怪我を知ったマスコミが画面や誌面で騒ぐ中、ステージは誰かに修復される事無く、無残な姿を残していた。というのも、コンサート自体中止となってスタッフが引き上げ、続いて防衛軍が撤退する事で高校自体はもぬけの殻になったからだ。そんな中でラントムチームはGooGooZの玲香が入院する病院にて四人つきっきりで護衛、外界から隠れるように表に出る事は滅多になかった。そんな中、テグサーチームは涼、飛田以外全員事務所で待機させられていた。
「はぁ…」
居間のソファーに座って髪をかきあげる穂乃花の表情は暗い。それは、他のメンバーも同様であった。
「ねぇ、トウマ?飛田くん、大丈夫かなぁ?」
「そうだな…なにしろ、守ろうとした大事な人を守り切れず、更には報道陣にこうも書かれたんだ。今回はちょっとキツいかも…な」
そう言いながらトウマが穂乃花に投げ渡した雑誌に新聞。そこには防衛軍のみならず、旋風重工に対して激しく批難する記事が掲載されていた。
「今までは旋風重工、テグサーマンの活躍、メディアでの扱いは自分で言うのもなんだが、かなりプラスなイメージだった。なんてってたって、防衛軍でも守り切れないのをたった数人で守ったんだからな」
「それに関しては飛田も悪い気はしてなかった。でも今日は違う。いままでとは180度ひっくり返っちまったんだ。ショックも仕方がなし、ちょっと部屋に籠りたくもなるだろうな…」
「どれ、テレビでも見て気でも紛らわすか…なんか面白いケーブル放送、やってるかな?」
そう言いながら、トウマはテレビの電源を点けた。その時間は朝のワイドショーを放送し、GooGooZの負傷に関して街頭インタビューを流している最中であった。
『なんていうか、残念ですよね。今、日本中が絶望している状況で、不幸なニュースで更に追い打ちをかけるなんて』
『え~肝心な時に役に立たんなんて、話にならないね!!なにやってんだって言いたくなるよ!!』
『え~マジっすか!!正直許せないですよね!!怒り半分と、悲しみが半分って感じっすよ!!』
「あっ、やべ!!」
昨日の事を言われているのを知ったトウマは慌ててテレビの電源を消し、穂乃花の顔を見た。彼女の表情は暗いままな上、顔色は深く青ざめていた。
「悪い穂乃花、まさかこんなピンポイントでやってるなんて…」
「う、うん…」
謝るトウマに穂乃花が素っ気なく返すと、彼女のスマホから通知音が鳴った。見ると、それはクラスメイト達からのSNSの通知音であった。
「皆からだ。なんだろ?」
友人達からのメッセージに穂乃花は表情を少しばかり明るくして、詳細欄を開く。そこには複数人でこう書かれていた。
『ミッコ:GooGooZが怪我したって本当?ニュースでやってたケド』
『嵯峨山:本当みたい。周辺が結構大騒ぎだったよ』
『芳賀直哉:マジかよ、ヤバくない?』
『ミッコ:それより、今日のコンサートどうなるんだろ?やっぱり…?』
『嵯峨山:中止になるだろう、ね』
『大矢:えーっ!!!(゜O゜)そんな、楽しみにしていたのに…』
『TOMOKI:うわぁ。ウチの学校でやるからって期待してたのに、残念、がっかりだよ…』
『武藤:酷!!怪我させた上に、中止だなんて…』
『モモコ:もぉ~これだからジン・ガイア帝国なんか大っ嫌いだぁぁぁぁ~!!!(>Δ<)』
『ショウヤ:っていうか、防衛軍はなにしてたん?かなり厳重だったじゃん。昨日見た限りだと』
『嵯峨山:ニュースを見た感じだと、怪人級が侵入して襲ったっぽいね』
『鈴垣:なにそれ、意味不明。一人一人チェックしなかったのか?なんにせよなにしてんだよって感想しか思いつかないね、正直』
『Leo:もう駄目だ、願うんなら今この場で叫びたい。泣きたいよ。暫くはなにも見たくないなぁ…俺が目指した夢、野球選手もこんな調子じゃ無理だなぁ』
『磯山シゲ:この前に続き、企業や軍は一体なになら出来るって言うんだ?駄目な大人達』
『モモコ:ホント、私達って嫌な時代に産まれたモンだよね…毎日毎日、なにかしら我慢してばかり。こんな世界、一日も終わってよ!!!』
「…っ!!!」
クラスメイトの言葉が自分に対して言っている訳ではないのは承知の筈だが、つい自分の事の様に感じ始めた穂乃花は言葉にならない声を小さく叫び、スマホの画面を閉じた。
「穂乃花、大丈夫…?顔色悪いよ?あまり、気にしない方が…」
その様子を傍で見ていた茜が彼女に声をかける。茜もまた、穂乃花と同様SNSの一連の内容を読んでいたようだ。
「う、うん…大丈夫…大丈夫だよ…大丈夫…だから」
気丈に振る舞う穂乃花であった。が、その瞳はだんだんと潤み始めていた。
「…やっぱり私達だけの力じゃ、なにも出来ないのかなぁっ!?この前も街の皆を守れなかったし、GooGooZの人達だって…!!」
「穂乃花…」
「こんな世界に希望なんてない、あっても力ですぐかき消されるだけ…理不尽な世界だよ、もう」
「穂乃花、そんな簡単に諦めるなよ…まだ何か、希望は見つかると思うし、それに…」
茜が穂乃花を慰めようとしたその時、彼女のスマホから通知音が流れた。
「えっ、これって…!?」
持ち主が横目で画面を見た瞬間、彼女は驚きを隠せなかった。
「ね、ねぇ、穂乃花、コレ…!!」
「え?え、なにコレ!?」
茜にスマホを見せられた穂乃花も驚きを隠せなかった。その画面は今まで見ていたSNSの画面。一枚の写真が撮られていた。
『サエサエ:ねぇ、今ウチの学校に知らない人がいるんだけど…誰だろ?』
「これって…ディーン!?」
穂乃花は写真に写っていた男の名を呼んだ。聞いたトウマ、レミーは思わず顔を上げる。
「で、でもなんでディーンが…!?」
「そ、そんなの分からないよ…兎に角行ってみよう!!」
14-2
「あっ、穂乃花、茜!!こっち、こっち!!」
人気のない高校前。サエサエこと冴子は二人と一緒に来たトウマ、レミー、飛田を見つけると、早くこっち来てと言わんばかりに腕を振った。
「ねぇ、サエ!!その人ってまだいる!?」
息を整えながら、穂乃花は冴子に尋ねた。
「う、うん…でも、何してんだろね?」
校門をくぐり、校庭に入った彼らはステージの前で止まった。
「で、ディーン…!!」
トウマはステージの前にいた男の名を呼んだ。彼はステージの前を陣取り、シートを引いて待機している最中であった。
「やあ、トウマ。久しぶりだね。待機の仕方はこれで合ってるかな?」
久々に再会したディーンは嬉しそうにトウマの名を呼び返した。
「この前は悪かったね、ピンチに駆けつけられなくて。日本の端まで旅してたから間に合わなかったんだ」
「い、いや…っていうかお前、なにしてんだここで?」
「ん?ああ、今日戻ってきたらここでコンサートをやるって聞いたからね。面白そうだから、来たんだ」
「こ、コンサートか…」
ディーンの期待に、トウマ達の表情が曇る。しかし、ディーンは彼らの胸中を知らずに楽しそうに話を続けた。
「そ、人間の歌は大勢の人達に希望や気力をもたらすって話じゃないか。だからここで待ってるんだ、人々の明日を繋ぐそれを。それと、人間の歌を生で聞くって習慣が俺にはなかった。その点も含めて楽しみにしてるんだ」
「ところで、スタッフの人達がいないのはどういう事?今日の夕方やるんでしょ?間に合うの?」
「…コンサートはもうやらない。中止だよ」
「え…?」
穂乃花の予想外の返答に、ディーンは言葉を詰まらせる。
「昨日、歌ってくれるGooGooZが帝国の襲撃で怪我したの…だから、急遽取り止めになって…」
「ゴメン、ディーン!!私達の力が及ばずに…!!」
事実を話し、感情が溢れでようとする穂乃花。
「なぁんだ、そうだったのか!!だから妙に荒れてると思ったんだ!!」
対してディーンは変わらず呑気な調子で返すと、立ち上がってステージに向かっていった。
「ディーン、一体なにを…?」
「ん~?なにって、ステージの修理さ。大丈夫、日曜大工くらいなら朝飯前って奴だよ」
そう言うと、ディーンはステージの瓦礫を持ち上げ、校庭の片隅に運んだ。それを終えると、今度はステージ上の看板の傾きを直し、きっちりとまっすぐに戻した。
「もう、もうやめてよディーン!!そんな事したって、もうコンサートは始まらない、無駄なんだよ、だから…!!」
穂乃花の呼び止める声に、ディーンは作業の手を一旦止める。そして、変わらない笑顔で穂乃花の傍に寄ると、いつの間にか流れていた彼女の頬の涙を指で拭った。
「…俺の帝国の国民はさ、ガイアランって海底の植物から誕生したモノだって知ってるよね?でも、その植物はいつも確実に花や実を咲かす訳じゃない。なぜだと思う?人間の防衛軍に吹っ飛ばされる時があるからさ」
「もうすぐで産まれようとする生命を壊されて、教育担当や育成の奴らはその度に失望、辛い思いをしていた。それでも、彼らは諦めようとはしなかった。それは帝国の命令なんかじゃない、国を良くしていきたいという自らの意志でね」
「そして、そんな彼らの意志の元、今まで帝国は新たな命を育み続けここまで大きくなった。いつか訪れる、安住の世界を目指してね。まぁ、思いがあった事は後で気付いたんだけどね…」
「だから穂乃花、一度の破壊で諦めない方がいい。こうして積み重ね続ければいつかは道が開ける。その時まで待つんだ。強い意志を胸に宿す、って感じでね」
「ディーン、でも…」
穂乃花はディーンに言葉を返そうとした。その時、トウマと飛田が彼女の傍を横切った。そして、ステージに近付くとディーンの後に続いて、瓦礫の片付けを始めるのであった。
「と、トウマ!?飛田くんまで…」
「本来は部外者のディーンがここまでやってるんだ、俺達も後に続いて、人間の意地を見せないとなぁ、飛田?」
「ええ、全くです!!彼の言う通り、いつかは来るその日を待って、修繕をしちゃいましょう!!幸い、文化祭の時に造った経験がありますし」
「あ、私も手伝うよ!!」
二人に続いて、茜も手伝い始める。すると、一連の流れを見たレミーは小さくため息をついた。
「はぁ~、やれやれ、本人がやるのは分からないってのに…」
「でも、社員が頑張ろうとしているのを社長の私が放ってはおけない。トウマ、私も手伝うわ!!」
レミーも飛び出し、トウマの元に駆け付ける。
「皆、頑張ってる…明日への希望、想いを守る為に…」
諦め、迷い続けていた穂乃花の拳に、力が漲る。
「うん、ごめん皆!!私、間違っていた!!私も手伝うよ、皆の為に!!」
こうして、高校生達によるステージの修繕が始まった。しかし、ステージの設営は思うようにいかず、更に言えば人数も少ない事もあって、陽が昇り切っても完成には程遠い状況であった。
「くそっ、どうやったらこの照明が直立するんだ?」
トウマは任されたスポットライトの設営が立たず、苛立っていた。
「ええい、こうか!?あっ、うわっ!!」
力任せに刺した瞬間、照明はバランスを崩してトウマに向かって倒れ込んできた。しかし間一髪、彼の背後から伸びてきた浅黒い腕が照明を抑え、ぶつかることなくトウマの鼻先で止まった。
「あ、ありがとう…ってお前は、樋田!?」
「よう、トウマ。俺達も混ぜてくれ」
トウマが振り返った頭上には、樋田の元気そうな顔があった。
「どうしてお前がここに!?あれからなにも見たくないって言ってたのに…」
「ああ、さっきまでそう思っていたさ。でも冴子から手伝って欲しいって連絡があってな。その時思い直したんだ」
「確かに俺達の思い出はなくなった。でも、生きている限り、何度でも立ち上がり、希望や想いを誰かに伝えられる、ってな」
「だから俺、いや、俺達は今ここに集まったんだ。いつか来るかもしれないGooGooZもしくは新たなに希望を紡ぐ誰かが来るまでここで頑張りたいって気持ちを持って…な」
「そ、そうだったのか…って、俺達って事は!?」
「うん、皆来てくれたぜ。ウチのクラスだけでなく、他のクラスや先輩後輩達がな、見てみ?」
樋田の脇越しにトウマが見た光景。そこでは数多くの生徒達がステージの設営、修繕を手伝っていた。その数、約五十人以上はいる。
「み、皆…ありがてぇ、これならすぐにでも…」
「あぁそうだ、ここに来た時、お前の知り合いって奴が校門の前に来ていたぞ。それもスタッフも連れてな」
「えっ!?それってまさか…」
樋田の話を聞いたトウマと飛田は校門に向かった。
「やっぱりそうだ、涼さん!!」
樋田の言う通り、校門にいた涼達に対して飛田は開口一番に彼女の名を呼んだ。
「ん、飛田か。それとトウマも…」
二人に気付いた涼は彼らの方を向いた。
「お前達が高校でなにかやってるって話をスタッフが聞きつけてな。連絡を受けた私も有志を募って来て貰ったんだ。やはりこういう時はプロにやって貰うのが一番だろう?」
「涼…ありがとう、これなら完全な修復が出来るぜ!!」
「フッ、最もこの人がやると言わなければこうも集められなかったけどな…」
「えっ、この人って…まさか!?」
涼が後ろにいた人物。それは怪我で来れない筈のGooGooZの三人の姿があった。
「あっ、がっ、ぐ、ぐ…」
「GooGooZの皆!?来てくれたのか!!でも怪我は…」
言葉が出ない飛田に代わって、トウマが代弁した。その質問に玲香が答える。
「怪我なら問題ないわ。多少違和感があるけど、歌って踊れるには問題はないわ」
「そ、そうなのか…でも昨日の怪我から一日と経ってないのに、どうやってそんなすぐに…?傷だけでなく、脚の骨までかなり深く折れてしばらく歩けないって聞いたのに…」
「その点は、彼らのお陰なの」
玲香が紹介した先にはラントム社の四人がいた。その中でモーラが説明しようと前に出る。
「怪我をしたって事で、私が急遽GRNから最新のメディカルマシンを調達したの」
「GRN(ジェルナ)!?それって確か数多くの世界を股にかける、対ジン・ガイア帝国対策の国際的機関じゃないですか!!確か、医療にも精通しているっていう…」
「その通りよ飛田。私、その機関にツテがあってね。大急ぎで持って来させたって訳」
「そうか、病院に籠りきりだったのはそれが下手にバレない為に…」
「そーそ。だからここまでなにもしてやれなかったの。本当にごめんなさいね?」
「い、いえ…結果オーライですから…むしろ、ありがとうございます」
「いーえ、ここまでやれたのは彼女達の意志があったからよ」
「意志…?」
飛田が疑問に思うと、今度は飛鳥が自分の想いを話し始めた。
「玲香が怪我した時、もう駄目だって三人共夢を諦めようとした。でも皆が私達に頑張ってるのを聞いてここで立ち止まってはいられないって三人共思った。そこで私達、ラントム社の皆さんに無理を言って頼んだの」
「そう、そうだよ!!玲香ちゃんや飛鳥ちゃんが言ってるように、頑張っている皆の力になりたいっていう私達の想い、夢を叶える為に必死で頼んだの!!」
「そ、そうでしたか…ありがとう、ラントム社の、皆さん…」
飛鳥と巴の想いを聞いた飛田は礼を述べた。その時、次にイリアが飛田の前にやって来た。
「ごめんなさい、飛田…!!私、皆がこんなにも熱い気持ちで立ち向かっているなんて知らなかった…!!自分の失敗はもう取り返しがつかない。それは分かっている。でも、それでも私達ラントム社も手伝ってもいいかしら?」
自身が引き起こしたミスを詫び、深く頭を下げるイリア。すると、彼女の前に手が差し伸べられた。それは飛田の手であった。
「あの時は、引き止められなかった僕も悪かった。これからミスを挽回できるよう、ベストを尽くしましょうっ!!」
「飛田…ありがとう!!」
「よし、そうと決まれば早速始めましょう!!この調子で行けば、夕方には間に合うわ、きっと!!」
イリアと飛田の固い握手。それを横で見ていた玲香は手を鳴らしてその場の音頭を取った。この後、彼らは校庭に向かったが、本物のGooGooZを目の当たりにして高校生を中心に大騒ぎになったのは言うまでもない。
14-3
プロの設営スタッフの力もあって、午前中の準備より格段に早く、着々とステージが修繕、完成しつつあった。だが…
「おい、なにやってんだ、違うだろ!!」
士気が高まり、一丸となった校庭に樋田の怒号が響き渡る。彼の目の前にいたのは甲斐田。どうやらステージの部品を誤って組み立ててしまったようだ。
「この組み合わせじゃ真っすぐ立つ訳ねーだろっ!!本番で倒れたらどうすんだよ、なぁ!?だから文化祭の時、手伝わねーからこういう時に役に立たないんだよ、お前は!!」
激しく責め立てる樋田。
「…」
対して、無言で目を逸らし続ける甲斐田。その態度に、樋田の怒りは頂点に達した。
「なんだ、その態度は…お前っ!!ふざけてんのかっ!!」
「おいよせ!!こんな時に喧嘩するな!!」
と、その間をトウマが仲裁した。
「甲斐田、部品の組み立てはいい、後で俺がやる。お前はステージの飾りつけをお願いしていいか?」
「ねぇ、トウマー!!樋田くん!!こっち手伝ってくれない!?」
「あぁ、待ってろ!!今行く!!じゃあそういう事だ、頼んだぜ」
遠くの穂乃花に呼ばれたトウマは甲斐田の返答を聞くことなく樋田と共にその場を後にした。すると何を思ったか、甲斐田は部品を雑に置き、飾り付けの担当をしている女子クラスメイトの方へと向かった。
「あ、あのみんな、手伝いに…」
甲斐田が来た瞬間、それまで和気あいあいとしていた女子グループの空気が一斉に止まった。特に、女子生徒グループの中心的存在となる園田桃子には冷ややかな目で見つめられていた。
「は、なに?あ、いいよ別に、こっち人数足りてるから…」
「え、でも…トウマ…君に言われて」
「え、トウマに!?…しょうがないな、じゃあこの飾り付けやっといて」
桃子は乱暴に飾りを投げ渡した。甲斐田は早速取り掛かる。だが、作れば作るほど、飾りは曲がりくねり、正しい形となるのは十個中二、三個程度であった。その出来に、それまでお喋りを続行した女子達は嫌悪感を見せる。と、桃子が呆れた表情でため息をつき始めた。
「はぁ~、もういい…」
「え、いいって…?」
「別の所手伝ってあげなよ!!ホラ、あっちあっち!!」
彼女が乱暴に指差す先にはなにもない。倉庫だけだ。
「ホラ、早く早く行って!!」
「…ぅん」
それでも甲斐田は彼女が指す方向へとぼとぼと向かった。そして、聞こえよがしに騒ぐ桃子と取り巻き。
「なんなのアレ急に!?手伝われたら逆に時間取られたわ」
「あっ、それな!!どっか行けし!!さ、みんなで頑張ろうっ!!」
その声を背に、甲斐田は一人、物置の側に立ち尽くすばかりだ。しまいには、急がしそうに通り過ぎたクラスメイトに悪態をつかれる。
「なにやってんだよ…!!なにかしろよ、早くしろ!!」
そうは言われてもどうすればわからない。一体自分になにが出来るというのか。今また手伝えば足を引っ張り怒鳴られ、邪魔者として爪弾きにされるのは目に見えている。恐らく、今通り過ぎた連中もそうするだろう。
「…」
甲斐田は一人佇む。首を僅かに右に傾け、口を半開きにした笑顔をし、『人々』の明るい声を背にして。
そうとは知らずにトウマと仲間達は文化祭の準備と同じくGooGooZの赤い電飾の看板をロープで引っ張り上げた。
「よっしゃ、これで準備は万端。なんかやり残した事はあるかな?」
「まず、ステージはOK。んでBGMはバンド部と放送部の連中がやってくれる」
明日への希望を示すように胸を張る看板の下で、クラスメイトの言う通り、バンド部のメンバーがギターやアンプの準備をしていた。
「で、遠い人達に見せる配信は皆のスマホでやれるから大丈夫」
バンド部の横では、少々派手めな格好をした女子生徒がスマホのセッティングを始めていた。
「えぇ~と、あとなんかあるか、なんか…」
引き続き確認を怠らないトウマは辺りを見渡しながら呟く。するとその時、テレビ局の中継車が数台、校門から立ち入ってきた。
「ん、なんだぁ?」
トウマが疑問に思う間もなく、車から降りてきたテレビ局のスタッフ達は手際よく機材を持ってステージ前を陣取り、テキパキとカメラと三脚を組み立て始めた。
「GooGooZのコンサートを中継する気か?まぁそんな所か…」
トウマが自問自答すると、彼の前に女性リポーターがマイクを持って近付いてきた。
「お忙しい中。すいません~。今回の高校生達が起こした奇跡についてお伺いしたいんですけど~」
「へ、キセキぃ?」
「はい、今正に巷で話題になってるんですよ~、高校生達が自ら立ち上がり、皆の希望を繋ぐ為に頑張ってるって」
「そ、そうなんだ…」
「そこで、私達テレビ局も是非協力したいと思いまして来たんです~。それと、皆さんの想いも記録として残したいですし~」
「は、はぁ…」
「じゃ、早速聞いてもよろしいでしょうかっ!?」
リポーターはマイクをトウマに向けると、背後の屈強なカメラマンは二人を撮り始めた。
「今回のコンサートの復活作業、どのような気持ちで参加されましたか?
「え、あいや、その、急に言われても…まぁその、知り合いが期待しているってのがあって、その、本人が来るか分からなかった…まぁ来られましたけど、それでもっと頑張ろうとおもいまして。あの…」
しどろもどろに答えるトウマ。それを見たカメラマンは顎を僅かに上げてリポーターに合図し、リポーターも応える様に静かに頷いた。
「あぁ~、ゴメンなさい。突然向けられて緊張しますよね…答えが纏まってからもう一度聞いてみますね…すいませ~んっ!!」
リポーター達は言い終える前にトウマの元を去り、すぐ近くの高校生の元へ向かった。
「なんだ、ありゃ…どっから聞いたんだ?」
ポツンと一人になり、トウマは疑問を抱く。そんな彼の背後にスーツ姿の中年の紳士が近付いた。
「私が呼んだんだよ。折角の希望をもっと広めたいからね」
「あぁ?」
背後から声をかけられたトウマは振り向き、紳士の方を見た。
「やぁ、君は富田トウマ君だね。レミーは元気かい?」
「はぁ、そうですけど…誰です、アンタ?」
「あぁ、すまないね。私は…」
「パパッ!!」
紳士の自己紹介を割り込んで聞こえてきた甲高い声はレミーの声であった。その声を聞きつけて、穂乃花と飛田もトウマの元に向かった。
「え、パパ…?ってことは、社長、この人は、お前のパパ…?」
「なに言ってんの!?それ以外になにがあるって言うの!?」
「ま、マジか…!?」
近付いてきたレミーに真実を突きつけられたトウマは焦った。
「や、やべぇ…って事は、ウチの会社の本社社長、つまりトップって事じゃねーか…!!」
「あ、あのすんませんっ!!そうとは知らず、失礼な態度を…いや、そもそも目上の人にそんな態度をするのもあれだけど…」
「はっはっはっ、気にしていないよ」
「そ、そうですか…よかった」
本社社長の懐の深さに、トウマはホッと胸をなで下ろした。
「さて、自己紹介がまだだったね。私の名は旋風海斗(せんぷうかいと)。レミーの父です。どうぞよろしく」
「あっ、どうも…」
海斗の会釈にトウマも合わせる。
「私は今まで日本のみならず、世界中を走り回っている。だから新プロジェクトであるテグサーマンの発足から一度も生で見た事がなかった。それで今回の一連の動きを機会にしてやって来たんだ」
「な、なるほど…それで、そのついでにテレビ局の人達も連れて来たって訳か…」
「その通り。皆の折角の想いを無駄にしたくないと思ってね。幸い、局に知り合いがいて、少々無理を言って頼んだんだ」
「どう、トウマ?ウチのパパ凄いでしょっ!?あんなに大きなテレビ局を動かせるんだからっ!!」
海斗の腕に捕まってドヤ顔で自慢するレミー。
「おいおい、レミー?身内の偉さは人に自慢する物じゃないぞ?」
「え~いいじゃないパパ~、ちょっと位~」
「ふぅ…やれやれ…」
「あっ、そうだっ!!折角だから、コンサートの方案内してあげるっ!!ホラ、行こうっ!!」
「お、おいおい…っとそうだ、穂乃花くん、君に話があるんだが…」
「あっ、はい!!なんでしょう!?」
突如海斗に話しかけられた穂乃花は背筋を伸ばして反応した。いつの間にかいたようだ。
「君、いや、君達は先日我が社の規則を破って未来島に行ったそうだね?」
「う…!!す、すいません勝手な事をして…!!」
「いやいやいいんだ。自らの危険を顧みず、規則を破ってでも大事な親友を助けに行くのは素晴らしい。誇りに思うべきではないが、心の奥に秘めておきたい事だ」
「それより、君達が島で拾ったというデータがあるそうだが、飛田くん?」
海斗の登場に、飛田も来ていた。
「あっ、はい。暗号になっていて現在解析中ですが…」
「勝手ですまないが、そのデータは全て本社に預からせて貰うよ。その方が君の負担も減って、テグサーマンの研究を更に突き進められるだろうしね」
「そ、そうですか…分かりました」
「も~パパ?こんな時に仕事の話ししないで?それより早くステージに行こうっ!!」
「はいはい、それじゃ皆、この後も頑張ってくれたまえよ~」
レミーは海斗の腕を引っ張ってステージの方へと向かった。トウマ達三人をほったらかして。
「行っちまった…嵐のように過ぎ去っていったな」
「それにしても、大企業のトップだってのに、随分とフランクだったね~」
「ああ、うん…」
「お~い皆~!!なにしてんだよ、こっち来て手伝ってよ~!!」
「ああ、はいはい!!今行くよっ!!」
茜に呼ばれたトウマ達は急ぎ足でその場を後にした。それからトウマ達は、薄暗くなっても設営準備を進め、旋風親子はその様子を仲良く見学していた。
「やったー!!完成だー!!」
「おぉぉーっ!!」
準備が完了し、大はしゃぎで喜び合う高校生達。
「む、そろそろ時間だな…」
そんな彼らを静かに見ていた海斗はちらりと腕時計を見た。
「え、パパ行っちゃうの?」
「ああ、他にも用事があるんでね。せめて皆の一生懸命な姿を見たくて来たんだ」
「そ、そうなんだ…」
父親が帰ることで、寂しそうに俯くレミー。
「そう落ち込むな、皆の活躍は明日のニュースでゆっくりと見させて貰うよ、それじゃ…」
「ニュース…」
その単語を聞いた時、レミーの脳裏にある事が蘇った。昨日イリアに言われた旋風重工の疑惑の記事である。
「ね、ねぇパパ…」
「ん、どうした?」
レミーの呼び止めに、海斗は立ち止まる。
「昨日、ちょっとしたニュースを見たんだけど…その、ウチの…」
「ウチの…?」
「う、ううん何でもない!!ごめんなさい引き止めて!!お仕事、頑張ってね!!」
「そうか、それじゃ行ってくるよ」
「い、行ってらっしゃーい!!」
高校を後にし、去る海斗の背中に、手を振るレミー。その間、彼女は脳内で自身を咎めていた。
(もう、なにやってんのよ、私!!皆が盛り上がってるこんな時に自分の会社の悪い所を聞こうとするなんて!!兎に角、今は目の前にある事を一生懸命にやる!!余計な事は後回しっ!!)
(それじゃあ早速、皆の所へ行かなくちゃ…)
レミーは足早にステージに向かった。
「わぁ…」
ステージには既に照明が灯り、音楽の準備も完了。その煌びやかさにレミーは思わず感嘆の声を上げた。その時、飛田のノートパソコンからアラームが鳴った。帝国の怪人が出現したという、現状最も聞きたくない音が。
「く、一体なにが…!?」
警報音に不安を感じる人々の間をすり抜ける飛田はノートパソコンを開いてキーボードを操作、ディスプレイに映るレーダーを覗いた。
「た、大変だ…!!皆さん、海岸線に怪人級が出現しました!!」
「チッ、こんな時にか…!!隊長!!」
ジョージの呼びかけに、イリアは頷く。
「よし、行くわよ皆!!私達の手で、奴らの暴虐を水際で食い止めるわっ!!」
「おうっ!!」
ラントムチームは一斉に駆け出した。
「よし、僕たちも行きましょう!!」
「おおっ!!」
テグサーチームも飛田の呼びかけと共に駆け出そうとした。すると、彼らの背後にクラスメイトが迫った。
「お前達、テグサーマンだったんだな…」
「へ?あっ、しまった!!」
樋田の言葉に、飛田達は足を止めた。この瞬間自分達の正体がテグサーマンである事がクラスメイト達にばれてしまったからだ。
「は、はい、実は…」
「やっぱり、それじゃあ、昨日のも…」
「ごめんなさい…!昨日はGooGooZを守れなくて…!!」
樋田が昨日の事を追及する前に、穂乃花は深く謝罪した。しかし、樋田達は怒りの表情を見せるどころか、穂乃花達を安心させるように笑顔を返した。
「いやいや、いいんだ。お前達は誰かのために一生懸命戦ったんだろ?なら、それで十分さ。気にするなよ」
「樋田くん…」
「頑張ってくれよ、俺達の…いや、この世界の人々の希望の為に…頼んだぜ」
「そうだそうだ、頑張れ皆!!」
樋田に続いて、他のクラスメイトも前に出た。テグサーチームに想いを伝える為に。
「私、この数日、暗い気持ちだった…だから、負けないで!!」
「なにも出来ないけどエールを送るぜ、トウマ!!」
「え~と、飛田!!ファイト!!」
「「「穂乃花ー!!頑張ってー!!」」」
「この前の蹴りは効いたぜ!!その脚で頑張れよ、茜!!」
「皆…」
クラスメイトのエールに感無量のトウマ。それは他のメンバーも同じであった。
「よし、行くぜ…!!俺達は皆の想いを守る、テグサーマンだっ!!」
「「「おうっ!!」」」
「「「「チェンジ、テグサーマン!!」」」」
トウマの呼びかけと皆の想いを共に、四人はテグサーマンに変身。その片隅で、ディーンもまた怪人態に変身した。
「テグサーマン、出動!!チェンジ、ウイングパーツ!!」
四人はテグサロイドを駆使してウイングパーツを装着、薄暗い空へと一気に飛んだ。
「行けー!!頑張れー!!」
「ファイトファイトー!!」
「やっつけろー!!」
クラスメイトは空の彼方へ消えたテグサーマン達にエールを送る。彼らの勝利を祈るように。
「トウマさん、皆頑張って下さい…!!僕もここから通信でアドバイスを送ります!!」
「涼…」
残った飛田とレミーも同様にエールを送った。共に戦う戦士に向けて。
14-4
「こ、こいつは…!?」
いつもなら人気のない砂浜の海岸。到着したテグサー1は開口一番に戦慄した。そこにいたのは大量のヤドカヤン。彼らは群れをなしていた。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
一足早く来ていたラントム社。ダイ・ソードは空を舞う大剣に載って敵を切り裂き、
「でりゃああああ!!」
キャノン・ダイザーは右腕のガトリングを回してヤドカヤンの駆除を始めていた。しかし、相手は海岸を埋め尽くす程の数。一騎当千の武器でも焼け石に水であった。
『どうやら、昨日の逃げた奴が成長、この時を待っていたようですね…』
「もしかして、昨日みたいに倒したらいっぱい増えるんじゃ…」
不安そうに尋ねるテグサー2に飛田は通信を続ける。
「大丈夫です。奴の体内に卵が確認できません。なので、そのまま倒しても増える事はありません!」
「それなら一つの問題は解決だな…」
「各員散開しろ!!一匹たりとも街に入れるな!!」
「了解!!」
飛田の報告を受けたテグサー3はテグサーチームに指示を出す。それを受けたテグサーチームはパーツを解除して一気に散らばった。彼らに気付き、迫るヤドカリヤン。目の当たりにした各員の拳に力が漲る。
「てりゃああ!!」
テグサー1は熱く滾る拳を一発一発ヤドカリヤンの腹部に当て、怯んで倒れた瞬間に足を掴むと、全力でジャイアントスイング。周りを囲むヤドカリヤンに激突させた。凄まじい回転、衝撃に吹き飛ぶ異形の生命体。テグサー1は掴んでいたヤドカリヤンを投げ飛ばすと、間髪入れずに近くにいた敵に向かっていった。
「やっ、はぁ!!」
テグサー2は風竜剣を槍モードにして、襲い来るヤドカリヤンを連続して斬りつけた。その斬撃で次々と倒れるヤドカリヤン。しかし彼女は気付かない。後ろから一匹のヤドカリヤンが迫っているのを。
「ガァッ!!」
背後のヤドカリヤンはテグサー2に飛びつこうとした。その時、彼のこめかみを一発の銃弾が貫く。
「えっ、なに!?」
銃弾に気付いたテグサー2は銃声のした崖上を見る。そこには、銃口から煙を出している狙撃銃を構えたロックオン・スナイプの姿があった。
「モーラさん…ありがとう」
「いーえ、助け合うのはお互い様よ」
お互いの声が聞こえない程の遠距離。にも関わらず、通じ合っているかのように言葉を交わした。
「うぉぉぉぉりゃあああ!!」
フォーチェイサーを駆るテグサー4はウィリーをして、次々と迫るヤドカリヤンに向かって激走した。タイヤを頭部に当てられ、激しく吹き飛ぶヤドカリヤン。しかし次の瞬間、フォーチェイサーのタイヤが砂浜に深く埋まってしまった。
「げっ、しまった…!!早くしないと…!!」
テグサー4はアクセルを吹かして進もうとした。だが、エンジンが空回りするだけでタイヤは進まない。そうこうしているうちに、残りのヤドカリヤンが彼女に向かって一斉に襲い掛かった。
「う、うわぁぁっ!!」
逃げる事も間に合わず、テグサー4は身を屈めた。その時、彼女の体がフォーチェイサーごとフワリと浮き上がった。
「え、なになに…」
間一髪でヤドカリヤンの猛攻を避けられた事に安堵しつつ、テグサー4は車体に絡まる黒い紐を見つけた。元を辿ると、そこにはスケールヘヤーを駆使して踏ん張るメデューザの姿があった。
「今よ、テグサー4!!」
「おうっ!!おおおおおっ!!」
テグサー4はロッドを引き抜くと、下で蠢くヤドカリヤンに向けて刃側面から光線を連射した。それに続いてメデューザは出力を抑えたソニックランチャーで乱射をし、同じ標的を狙い撃ち続けた。
「ゲギャァァァァ!!」
銃弾を浴びて次々と倒れるヤドカリヤン。その周囲には残骸だけが彼女の周囲に残るだけとなった。
「ふぅ…全く、油断禁物よテグサー4?」
フォーチェイサーをゆっくりと降ろしてから窘めるメデューザ。今度は彼女の背後に他のヤドカリヤンが迫る。しかし、襲い来る彼らの体は斬撃によって吹き飛ぶ。この瞬間に気付いたメデューザは後ろを見た。
「ふっ、はっ!!」
視界の先にいたのはテグサー3。彼女は次々に迫るヤドカリヤンの鋏を刀で受け止め、つばめ返しで斬り払った。
「あ、ありがとう…」
「当然の事をしたまでだ、お嬢さん?」
「…ふふっ、ライバル同士であった両者が土砂固めて助け合う。やっぱり人間は面白いね」
すぐそばで戦っていたディーンは二人の様子をほのぼのと見つめていた。最も、彼の周囲はヤドカリヤンの残骸ばかりで、全くほのぼのとしていないが。
「…ん?」
ディーンは足にかかる波が大きくなったのを感じ、後ろを振り向いた。その瞬間、波は彼の胸元まで上がり、同時に海中から巨大なヤドカリヤンが顔を覗かせた。
「な、なんだコイツは…ぐあっ!!」
ディーンが言い切る前にヤドカリにより近い姿をした、赤い巨大ヤドカリヤンことオオヤドカリヤンは鋏でディーンを吹き飛ばした。
「ディーン!!」
倒れるディーンに、テグサーチーム、ラントムチームが集う。
「で、デカい、デカすぎるぜ…!!」
キャノン・ダイザーが言うように、オオヤドカリヤンは彼らの身長の三倍を優に超していた。凄まじい威圧感に怯む両社。オオヤドカリヤンは怯む隙を与えずに一気に飛び、砂浜に着地した。
「く、くそっ!!撃てっ!!撃って撃ちまくるのよ!!」
モーラの指示で両社の戦士は手持ちの飛び道具を一斉に連射した。しかし、オオヤドカリヤンの体の爆炎が駆け巡るだけで、ダメージを受けている様子は全くなかった。
「オォヤドォ~!!」
反撃と言わんばかりにオオヤドカリヤンは鋏から光弾を連射した。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
「きゃああああっ!!」
光弾の着弾で、連続して起こる爆発。飛び散る砂浜。そして、戦士達の悲鳴。誰もが膝をつく中、立ち込める煙の中をかいくぐって二人の戦士、テグサー1とメデューザが前に出た。
「受けてみなさい、ソニックランチャー!!」
メデューザは銃身にエネルギーを溜め、一気に放った。しかし、オオヤドカリヤンは鋏で顔を庇い、エネルギーの塊、爆発を完全に受け止めた。
「そ、そんな…一発必殺のソニックランチャーが…」
自慢の武器を防がれ、意気消沈するメデューザ。彼女の前にテグサー1が出る。その時、彼の通信機に飛田からの通信が入った。
『待って下さい、トウマさん!!今、撃竜拳、もしくは波を撃っても同じ展開になるだけです!!」
「なんだって!?それじゃ、どうすれば…」
『方法はあります。それは、テグサー1とメデューザの力を一つにする事です!!』
「えぇっ!?」
「な、なんですって!?」
飛田から対策を聞き、驚くテグサー1とメデューザ。
『手短に話します。トウマさん、まずはメデューザの後ろにつき、ソニックランチャーのエネルギー供給口に触れて、撃竜拳の要領でエネルギーを籠めて下さい』
『そしてイリアさん。あなたはテグサー1のエネルギーが入ったのを確認したらソニックランチャーをチャージして下さい。そうすればお互いのパワーが混ざった最強の技、名付けて『ソニ竜波』が撃てます!!』
『でも、チャンスは一回。必ず一発で仕留めて下さいね!!』
「了解した!!」
指示を受けたテグサー1はメデューザの背後にピタリとつき、掌でソニックランチャー供給口に触れた。すると、テグサー1の手は青白く光り、ソニックランチャーに次々とエネルギーが流れ込んでいった。
「ちょ、ちょっとトウマ!?なんでそんなに近いの!?」
全身アーマーとは言え、男性に抱きかかえられたメドゥーザは不快感を露にして、距離を取るように腰を左右に振った。
「しょ、しょうがねーだろ!!これしか両手で触れる方法ないんだから!!第一、どれだけ反動があるか分からないし…」
「い、いや手前に行って担ぐとか方法が…」
言い争う二人。そうこうしているうちにソニックランチャーのエネルギーとテグサー1のエネルギーが混ざったという通知音が銃身から鳴った。
「ええい、仕方がない…!!立て直す暇もないし、このまま一気に狙うとするわ!!チャージ、開始!!」
メデューザはトリガーを引き、銃口に球状のエネルギーの塊を作り出す。通常時であれば青白いエネルギーだが今回は違う。青い波と赤い波の球体が静かに入り混じった、熱く、強力なパワーのあるエネルギーであった。
「よ、よし、チャージは完了…あとは、あとは狙い撃つだけ…!!そう、トリガーを引いて、終わり…!!」
自分に言い聞かせるメデューザ。だがその視界は極度のプレッシャーでぼやけ、手は緊張で震えている。その為、オオヤドカリヤンに合わせていた照準は少しずつズレ、ふらつくこととなった。
「う、うぅ…ここ一番で私は…仲間や部下がいなければ駄目なの…?」
「イリア!!」
緊張感でネガティブになるメデューザに、自身を両腕で挟むテグサー1が声をかけた。その力は遠慮しがちな先程とは違い、しっかりと力強いものであった。
「あまり緊張するな。見ろ、お前の仲間も共に戦ってるんだから」
「え…?」
メデューザは銃身を見た。そこには、少しでも狙いを正確にしようと、銃を支えるラントム社の三人の姿があった。
「隊長!!ここで一発、デカいのを上げましょう!!」
銃身を下から支えるのは、キャノン・ダイザー。
「大丈夫、自信を持って…」
ダイ・ソードは銃身右側を支えている。
「こんな所で震えるなんて、らしくないわよ。ドンと行きましょう!!」
そして、ロックオン・スナイプは銃身左側からいつもの幼馴染として接していた。
「み、皆…よし、行くわっ!!」
「おぉっ!!」
メデューザの合図に、全員の身が引き締まる。
「「ソニ竜波、シューット!!」」
テグサー1とメデューザは同時に叫び、トリガーを引いた。発射されたエネルギーは凄まじく、堅牢な五人であっても反動で後ろに引き下がる程であった。
「来たぞ、退避!!」
膨大なエネルギーが発射された事に気付いたテグサー3は指示を出し、ディーンとテグサーマン達は今の今まで相手にしていたオオヤドカリヤンの前から大急ぎで遠ざかった。
「や、ヤドォ~!?」
轟音を立てて飛び立ったエネルギーは反応が遅れたオオヤドカリヤンに直撃。その瞬間、砂浜の砂が大嵐になる程の大爆発が起こった。その爆風に巻き込まれ、殻に籠るヤドカリヤン。
「く、クグァアアアア…!!」
そして、爆心地の中でその身は、その熱線によって溶けつつあるのであった。
「や、やったか…?」
爆風と砂嵐が止み、キャノン・ダイザーは体の砂を払いながらオオヤドカリヤンを見た。
「う、うわ…ゴアだな」
オオヤドカリヤンは殻に半分籠っていたとはいえ、当の殻は溶けた鉄の様にドロドロとなり、鋏や体もまた同様であった。
「こ、これで終わったのか…このままにするのはマズいよな…なんらかの形で始末する必要があるな」
キャノン・ダイザーは一人呟きながらオオヤドカリヤンに近付く。その瞬間であった。
「ヤドォ…」
「なにっ!?」
オオヤドカリヤンはまだ倒されていなかった。油断していたキャノン・ダイザーはオオヤドカリヤンの鋏の直撃を受け、後方へ大きく吹き飛んだ。
「うわっ!!」
「ジョージ!?きゃっ!!」
吹き飛ばされたキャノン・ダイザーに気付いたロックオン・スナイプはその瞬間、彼の巨体と激突した。その間、オオヤドカリヤンはよろよろと立ち上がる。
「ま、まだ来るのか…!!」
『み、皆さん気を付けて…!!」
強靭な怪人に身構える現場の戦士と通信越しの飛田。しかし、オオヤドカリヤンは彼らを狙う事はなかった。
「ヤドォ~…」
「や、ヤドッ!?」
「ヤド~!!」
起き上がってから最初に鋏で挟みこんだのはなんと残存のヤドカリヤン。それをあろうことか口に運び、喰らってしまった。
「な、なんだアイツ、まさか…!?」
ダイ・ソードの予想通り、オオヤドカリヤンは咀嚼する度に体を再生し始めた。徐々に修復される殻、鋏、体。
「ヤドリャ~!!」
オオヤドカリヤンは完全とはいかなかったが、全身を修復させた。
「そ、そんなのってアリ…?」
今までの戦いが徒労に終わったと感じたテグサー2は膝をつく。
「あ、諦めるな穂乃花!!二回戦目が始まっただけだ…!!」
テグサー3は励ます様にテグサー2の肩を叩く。最も、励ます彼女の手は弱弱しかったが。
「そうだ、涼の言う通りだ。俺達の背後には皆がいる。これくらいの事で負けて、たまるかぁぁぁぁっ!!」
テグサー1は膝を叩いて立ち上がり、オオヤドカリヤンに向かって一直線に走った。そんな彼の装甲は戦闘でボロボロ。装着者の足腰もまた戦闘開始時と比べて勢いが衰えていた。それでも彼は戦う。人々の希望を守る為に。